2022年9月21日(水)から22日(木)にかけて、人文知連携拠点の主催により、統計分析ソフトウェア「R」の使い方を学ぶワークショップを開催しました。人文知連携拠点では、人文学・社会科学分野の連携のきっかけのひとつとして分野横断的にデジタル的手法を学ぶ機会を提供してきました。その取り組みの一つとして、初学者でもデジタルツールを実践できるようになることを目的に、「Kyoto University Digitization Hub of the Humanities, Social and Cognitive Sciences (KUDH) Basics」と題したワークショップシリーズを2021年より始動しました。初年度にはシリーズ第1弾として組版ソフトウェア「LaTeX」講座、第2弾として文献管理ソフトウェア・ワークショップ、第3弾として人文学資料のデジタル化に役立つTEI(Text Encoding Initiative)ワークショップを開催したほか、専門家向けに京都大学デジタル人文学国際会議KUDH2021 ”Digital Transformation in the Humanities”も開催しました。2年目となる今年度は、KUDH Basicsワークショップの第4弾として、2日間のワークショップを、オンサイトとオンラインのハイブリッド形式で開催する運びとなりました。
今回のワークショップでは、データ分析を効率的に行うことができるフリーソフトウェア「R」の使い方について、2名の先生方に解説していただきました。授業動画は人文知連携拠点の Webサイトに公開されています(https://www.ceschi.bun.kyoto-u.ac.jp/kyoten/)。ワークショップは2日共に午前(10:30-12:00)・午後(13:15-14:45)の2部に分かれて行われました。オンサイトでは文学部校舎3階 情報端末室で実施し、オンライン参加者向けにZoomミーティングにて中継を行いました。今回のワークショップでは演習が大半を占めることを鑑みて、2名の先生方のうち一方がメイン講師として全体の進行を管理し、もう一方の先生がサブ講師として授業中の個別の質問に対応されました。また、拠点の教員2名もサブ講師に加わり、万全のフォローアップ体制でワークショップに臨みました。
1日目は導入編として、北陸先端科学技術大学院大学で日本学術振興会特別研究員として活躍する山本寛樹先生をお招きし、Rのインストールと基礎的な操作方法について、実演形式で解説と演習を行いました。1日目午前の部では、山本先生の説明を受けながら、参加者が各自のパソコンに、Rとそのグラフィカル・インターフェースである「R Studio」をインストールしました。インストール作業終了後は、R言語の基礎的な文法の解説と共に、分析結果をドキュメントファイルとして保存できる「R Markdown」機能のレクチャーを行いました。午後の部では、「データの可視化」をテーマに、作図に特化した拡張機能である「ggplot2」パッケージの使い方を解説しました。
2日目は応用編として、立命館大学総合心理学部で日本学術振興会特別研究員として活躍する山﨑大暉先生をお招きし、高度なデータ操作や作図技法について解説と演習を行いました。2日目午前の部では、効率的なデータ分析に欠かせないパッケージ群を一つにまとめた「tidyverse」パッケージを用いて、R独自のデータ型である「データフレーム」を自在に操作する方法を解説しました。例えば、データフレーム内のグループごとに、要約統計量を瞬時に算出する方法などを実演していただきました。午後の部では、1日目に導入した「ggplot2」の使い方を掘り下げ、グラフの見た目をよりわかりやすく且つ美しく整えるテクニックを解説していただきました。
各日3時間、2日間に及ぶワークショップには、オンサイト・オンライン合わせて、学内外から学部生や大学院生、大学教員など、約 40 名が参加しました。参加者の多くは人文学や社会科学を専攻する文系の学生で、申込時のアンケートから、Rの使い方を基礎から網羅的に学びたいという需要が大きいことがわかりました。こうしたニーズを受けて、当初の授業計画を一部変更し、より基礎部分に重点を置いたワークショップを意識しました。受講後アンケートによれば、基礎的な内容については充実度・理解度共に高評価でしたが、一方で、統計解析など、より高度なデータ分析の習得を望む声も大きいことがわかりました。今回の内容を踏まえて、より高度な解析をRで行うワークショップの開催を現在検討しています。
今回のワークショップが、参加者にとって、研究活動におけるデータ分析技術向上の一助になれば幸いです。人文知連携拠点では、今後もデジタルツールを用いた研究手法・データ管理について入門的なワークショップを開催していきたいと考えています。なお、本ワークショップは若手重点戦略に関連する活動です。