現代文化学 現代史学専修

小野沢 透 教授
国際関係史、アメリカ現代史
塩出 浩之 教授
日本近現代史

現代史学専修では、人類の歴史が「ひとつの世界」の世界史として展開するようになった時代を「現代」と捉え、この「現代」に生起する様々な歴史的事象を考察します。

古代から、世界の各地域間にはさまざまな交流がありましたが、19世紀後半以降には、交通・通信技術の発展と普及、そして主権国家体制・植民地支配の拡大によって、地球上のすべての地域が相互に結びつけられ、人・モノ・カネ・情報などが、それ以前とは比べものにならない速度と規模で、日常的に往来するようになりました。したがって現代の歴史は、ひとつの国や地域の内部で完結するものとして捉えることはできません。現代史学専修は、さまざまな国や地域における政治的・経済的・社会的な変容の相互関係や、世界的な思想・運動の共時的な展開を視野に入れながら、おもに20世紀以降の歴史的事象を分析し、現代世界の成り立ちを世界史的な視点から明らかにすることを目指しています。

現代史の研究は、歴史学の他の分野と同様に、研究対象の同時代に生み出されたさまざまな史料に基づいておこないます。史料には、各国政府の公文書(一般に公開まで30年程度を要します)のほか、新聞などの定期刊行物、組織・団体の刊行物や内部文書、個人の日記や書簡などの私文書や、聞き取り調査による証言資料など、さまざまなものがあります。適切な史料を探し出すことが、現代史研究の第一歩です。

最近の卒業論文

  • ・第一次世界大戦におけるイギリス兵の帰還と社会復帰
  • ・戦中の対ビルマ工作と戦後日緬関係

最近の修士論文

  • ・小笠原諸島をめぐる戦後日米外交と米海軍
  • ・ボスニア内戦における性暴力――フォチャ地方の事例から

最近の博士論文

  • ・Asymmetric Remembering in Post-Authoritarian South Korea
  • ・西ドイツ「68年運動」と戦後政治秩序の変容――「共同決定」の変容を中心に

文学部所蔵の原敬文書に収められている、西園寺公望から原敬への書簡

1956年8月6日付、スエズ危機開始まもなくの時期の、ブルック書記官からイーデン英首相宛メモ。桃色インクの走り書きからはイーデンの苛立ちが窺える。(英国立公文書館、PREM11/1098)

南アフリカ国立文書館ケープ分館。世界記憶遺産のオランダ東インド会社文書などが所蔵されている。

文学部受験生向けメッセージ

現代史学専修では、現代世界の歴史を研究します。歴史学の中で、いちばん新しい時代を研究するところ。あるいは、現代世界を歴史学的に考察するのが現代史学専修です。

現在、わたしたちが住んでいる世界では、遠く離れたところで生じたできごとであっても、ほとんど瞬時のうちに知ることができます。しかもその情報を、これまた遠く離れたところに住んでいる、互いに顔も見たことがない人々と共有しあっています。そして、地球上の遠く離れたところで生じたできごとが、さまざまな形で、わたしたちの生活に影響をおよぼします。つまり、わたしたち現代世界に住む人間は、地域や国家を越えたグローバルな規模において、互いに密接なつながりをもちながら日々生活しているのです。

このようなグローバルなつながりの中に人類社会がおかれるようになったのは、それほど昔ではありません。19世紀後半以降のことなのです。そして19世紀後半以降、人類の歴史は「世界史」として展開するようになりました。ですから、現代史とは「世界史」にほかならないのです。現代史学専修では、常にグローバルな視点に立って、「世界史」としての現代の歴史を研究します。

現代史学専修に興味をもったら、一度ウェブサイトをのぞいてみてください。より詳しい手がかりがつかめるでしょう。最近の卒業生の卒業論文題目に目をとおしていただければ、現代史の研究がどんなものか、具体的なイメージがわくと思います。

現代史学専修ウェブサイト

大学院研究科受験生向けメッセージ

現代史学は歴史学の一分野です。ただし、私たちの現代史学専修では、「現代」においては、地球上の社会が互いに緊密に結びつき、影響・依存しあっているので、人間の歴史も、地域や国家の枠をこえたグローバルな世界史としてのみ成立すると考えます。それゆえに、この時代を研究するには、特定の国や地域のみを対象とする伝統的な歴史学とは異なる分析上の視点やアプローチが必要とされるという前提に立っています。

もちろん、現代においても国家システムは厳然として存在しており、世界政治を規定する枠組みであることは明らかです。しかし同時に、国家そのものが、国境や地域の枠をこえて広域的に行き交うモノや人、科学や情報、あるいは世界的な規模の政治的・社会的・経済的動向に強く影響を受けています。歴史を動かす大きな要因である、国家の枠を越えたグローバルな状況・動向にたえず注視し、国家単位の政治史を検討するにも「比較」や「相関」の視点を導入することを忘れない。そうした世界史的な視野に立って現代史の研究を進めるのが、本専修のめざすところです。

現代史学専修では、歴史学の他の分野と同様に、分析対象の当事者や同時代の観察者が残した史料の批判的読解に立脚して過去を考察します。本専修を選ぶ学生は、実証的な歴史学の手法を体得していることを求められます。同時に、本専修の特徴は、史料から得られた知見を、可能な限り世界史的な文脈に位置づけて捉えようとする点にあります。そのためのアプローチは、無限にあるといえます。国際関係史や比較史のアプローチ、あるいはトランスナショナルな視点が有効なこともあるし、ナショナリズム、ポストコロニアル、ジェンダーなど、さまざまな理論が、複雑に絡まりあう事象を解きほぐすのに役立つこともあるでしょう。

本専修では、いずれの分野あるいは特定の国・地域を自らの研究テーマとして選んでもかまいません。しかし、現代史が世界史である以上、本専修を選ぶ学生は幅広く現代世界に係わる知識を持つことが求められます。また最低でも2つの外国語をマスターしていることを期待しています。

現代史学専修ウェブサイト