- 宮崎 泉
- 仏教学
仏教は紀元前5世紀にインドに起り、中央アジアを通って中国へ伝わり朝鮮半島を通って日本に伝わって来ました。長い年月をかけて多くの地域を伝わる間に、もとの仏教とは似ても似つかない変容を遂げている場合があります。日本に伝わった仏教は、日本人のものの考え方に大きな影響を与え、日本の精神文化を支える重要な要素の一つとなりました。その仏教のルーツを文献を通じて探る、というのが「仏教学」専修の主眼とするところです。従って仏教学専修では、先ずインドの原典(サンスクリットやパーリ語)、さらにはそのインドの原典(特にサンスクリット)を言語的に忠実に継承しているチベット語の文献の読解を通じて仏教の思想や歴史を解明することを目指しています。授業も主にインドやチベットの原典を読むことを中心に行われています。
このようにインド仏教、チベット仏教を中心にしていますが、中国仏教や日本仏教は人文科学研究所その他からの専門家の出講によってこれを補っています。仏教学は国際性の高い学問ですので専門の古典語はもとより近代語の英独仏語も十分習得する必要があります。海外からの研究者の訪問や留学生も多く、逆にこちらから海外の大学や研究機関へ留学する機会も少なくありません。インドの文献を扱う関係上、関連講座のインド古典学専修とはいくつかの授業を共有し、卒論、修論、博論の審査は協力してやっています。年度末の予餞会も合同でやっています。
最近の卒業論文
- ・『楞伽経』における肉食禁止に関する考察
- ・『悲華経』における釈迦の前世について
- ・SāmaññaphalasuttaにおけるSañjaya説と仏教
最近の修士論文
- ・『瑜伽師地論』「声聞地」の修道論における無常の研究
- ・Karmasiddhiṭīkāの研究ー瑜伽行派と一致する業論ならびに関連する諸問題
- ・『根本説一切有部律』「破僧事」の研究ーデーヴァダッタの破僧を中心に
- ・プラジュニャーカラマティの修行論ーBodhicaryāvatārapañjikā第4章を中心に
最近の博士論文
- ・中観派が説く諸法の体系ー月称造『中観五蘊論』研究
- ・瑜伽行派における種姓説の展開ー初期瑜伽行派から中期瑜伽行派へ
- ・カマラシーラの無自性性論証研究
文学部受験生向けメッセージ
京都大学文学部に「仏教学」の専修があると聞いて受験生の皆さんはどんな感じを持たれるでしょうか。お線香でも焚いてお経でも読んでいるのかしら、と思われるでしょうか。或いは、研究室に畳を敷いて座禅でもやっているのだろうか、と考えられるかも知れません。いえいえそうではありません。ここでやっているのは、サンスクリットやパーリ語やチベット語といった古い言葉で書かれた文献の読解を通じて仏教の思想や歴史を解明する文献学なのです。
仏教は紀元前5世紀にインドに起り、中央アジアを通って中国へ伝わり朝鮮半島を通って日本に伝わって来ました。長い年月の間に多くの地域を通って伝わった仏教はもとの仏教とは似ても似つかない変容を遂げている場合があります。日本に伝わった仏教は、日本人のものの考え方に大きな影響を与え、日本の精神文化を支える重要な要素の一つとなりました。その仏教のルーツを文献を通じて探る、というのが「仏教学」専修の主眼とするところです。仏教学は国際性の高い学問ですので専門の古典語はもとより近代語の英独仏語も十分習得する必要があります。言うは易く行うのは大変ですが、受験の難関を突破しうる優秀な皆さんならきっと出来るでしょう。合格したら一度研究室を尋ねてみて下さい。
大学院研究科受験生向けメッセージ
本専修は、インド及びチベットの仏教思想史の研究と教育を中心としているが、中国仏教については協力講座である人文科学研究所のスタッフその他学内及び学外の研究者の出講によってこれを補っている。日本仏教は扱わない。
本専修を志望するものは、サンスクリット語(パーリ語)及びチベット語の修得を既に終わり、かなりの程度にオリジナルの文献を読んだ経験のある者が望ましい。漢文仏教文献を扱い得る漢文の素養も必要であることはいうまでもない。仏教学は国際性の高い学問であり、諸外国の研究者や留学生との交流や留学の機会も多いため、本格的に研究を進めようと思う学生は英・独・仏のうち少なくとも一つについては作文・会話を含めて十分に習得することが望まれる。
宮崎教授は後期インド仏教を専門とし、そのチベットへの伝播についても関心を持っている。特に、インド禅定思想のチベットへの受用の問題、並びにチベット大蔵経の形成過程について研究中である。
本専修のスタッフによる特殊講義、演習、講読のほかに、サンスクリット語、パーリ語、チベット語の初級、中級の授業も用意され、またインド古典学専修の授業のうちいくつかは本専修と共通となっている。