西洋文献文化学 ドイツ語学ドイツ文学専修

川島 隆 教授
近現代ドイツ語文学、メディア論、ジェンダー論
籠 碧 准教授
近現代ドイツ語文学、マイノリティ研究

ドイツ語学ドイツ文学専修の教育と研究は、専任教員の専門分野からもわかるように、近代から現代にかけてのドイツ文学を中心にして行われています。ただしそれ以外の研究領域についても、人間・環境学研究科や人文科学研究所の教員、ならびに学外からの非常勤講師の協力を得て、ドイツやオーストリアやスイス等のドイツ語圏の言語、文学、芸術に関する多種多様な授業が開講されています。

現在、本専修には、学部と大学院をあわせて約20名の学生が在籍しています。共同研究室では、他の専修や研究科の学生たちもまじえた研究会や読書会の活動も盛んです。近年は、大学間の交流協定を利用してドイツ語圏の大学に留学する学生も多くなりました。また、博士後期課程を終えて博士の学位を取得する学生も少なくありません。大学院生を中心にして、『研究報告』という雑誌も毎年発行されています。

本専修の教育研究の特色は、今から100年余り前に講座が開設されて以来、一貫して原典の綿密な読解を重視する点にあり、この伝統は現在もなお生き続けています。しかしその一方で、近年では、狭い意味でのドイツ語学ドイツ文学研究の枠にとらわれることなく、広く西洋の文化、思想、社会全般に目を向けようとする姿勢が、本専修のもう一つの特色となっています。

最近の卒業論文

  • ・カフカの語り手について
  • ・ドイツの国語教育が生徒に求める能力――文学的文章を中心に

最近の修士論文

  • ・Umweltkrise und Körper in Christa Wolfs Sommerstück
  • ・Über den Spracherwerb Rotpeters in Franz Kafkas Ein Bericht für eine Akademie

最近の博士論文

  • ・初期ドイツ連邦共和国における知識人の諸相、自己省察から討議へ――アドルノ、ハーバーマス、そしてエンツェンスベルガー
  • ・ドイツ語圏近代における自然詩の展開とスイス

授業風景

グリム兄弟のドイツ語辞典

文学部受験生向けメッセージ

ドイツ語学ドイツ文学と聞いて、皆さんはまず何を思いうかべるでしょうか。古いところではゲーテやシラー、20世紀ならトーマス・マンやヘッセ、リルケやカフカといった作家たちでしょうか。あるいはむしろ、今の日本でもっともよく知られているドイツの文学者といえば、グリム兄弟とミヒャエル・エンデかもしれません。

そして、かつてグリム童話やエンデの文学に親しんだことのある人は、知らず知らずのうちにドイツ文学の森のなかへ足を踏みいれているのです。というのも、グリム兄弟のメルヒェン収集は、詩と学問との統合をめざしたドイツロマン主義の精神につらなるものであり、エンデの作品に登場する不思議な少女や灰色の男たち、本のなかの本や鏡のなかの鏡といったモティーフは、ドイツ文学のなかにくり返しあらわれてくるものだからです。

けれどもまた、ドイツ文学がけっしてドイツ一国だけのものではなく、オーストリアとスイスの一部にもおよんでいることを忘れてはなりません。とりわけ19世紀末から20世紀初頭にかけてのウィーンでは、シュニッツラーやホーフマンスタールらの文学者、クリムトやシーレらの芸術家、マーラーやシェーンベルクらの音楽家、さらには哲学者ヴィトゲンシュタインや医師フロイトといった多彩な才能が、独自の文化を開花させました。

こうして文学だけにはとどまらず、広くドイツ語圏の文化の諸相をその時代や社会とのかかわりのなかで学ぶのが、本専修の特色です。

ドイツ語学ドイツ文学専修ウェブサイト

大学院研究科受験生向けメッセージ

本専修の研究教育の対象領域は、中世から現代へといたるドイツ語圏(オーストリア、スイスを含む)の言語文化全般にわたっている。川島教授は、フランツ・カフカやヨハンナ・シュピーリを専門とするかたわらメディア論とジェンダー論を研究している。籠准教授は20世紀前半の狂気表象を専門としつつ、「マイノリティ」の描写を考察しようと試みている。専任教員の専門分野からもわかるように、研究教育の中心をなしているのは近現代のドイツ語文学であるが、それ以外の研究領域についても、人間・環境学研究科や人文科学研究所の教員や学外からの非常勤講師、さらには外国人教師の協力を得て、多種多様な授業が開講されている。ドイツ語学に関する授業も毎年おこなわれている。授業の他に、学生による読書会も盛んである。

本専修の研究教育の特色は、講座開設当初から一貫して、原典の綿密な読解を重視する点にあり、この伝統は今日もなお生きつづけている。だが他方では、新しい方法論の出現と対象領域の拡大によってますます多様化しつつある現在の研究状況をふまえて、せまい意味での語学・文学研究の枠組にとらわれることなく、広くドイツ語圏の諸芸術や文化と社会のさまざまな問題に目を向けることもまた必要であろう。

さらに、ドイツ語圏の言語文化が他の欧米諸国との密接な影響関係のもとに成立、発展してきたことを考えるなら、ドイツ語学ドイツ文学を西洋文化全体とのかかわりのなかでとらえようとする視点もまた、今後ますます重要になってくるだろう。

このような意味で、ドイツ語学ドイツ文学を研究しようとする学生諸君には、ドイツ語のテクストを正確に読みこなすだけの語学力と西洋文化全般に対する広範な関心を期待したい。

ドイツ語学ドイツ文学専修ウェブサイト