西洋史学専修ウェブサイト 教室だより

令和5(2023)年度

主として外国語で書かれた情報を分析し、成果を日本語や(別の)外国語で発信する西洋史学は、「翻訳」を不可避的に含みます。対象の時空間とそこに生きた人々の特性、つまり現在の私(たち)との差異を意識しつつこの作業を進めることで、歴史理解は深まります。昨今、生成AIや自動翻訳の精度向上が話題ですが、時空を越えた翻訳に基づく歴史叙述は、人間によって担われ続けるのではないかと楽観しています。

さて、西洋史学専修は、今年度、小山教授、金澤(教室主任)、藤井准教授に加え、新しい専任教員を迎えました。近世オランダ史が専門の安平弦司講師です。どうぞよろしくお願い申し上げます。本年度の新三回生は一〇名、修士課程一回生は三名で、学部生は計二三名、大学院生は修士課程八名、博士後期課程八名となりました。三月には学部学生一一名が卒業、修士課程四名が修了し、一般企業などへ就職しました。また、留学・在外研究が本格的に再開し、今年度は博士後期課程の小山田真帆さんと林祐一郎さんがそれぞれエクセターとベルリンで研究に従事しています。藤井准教授も科研費の国際共同研究加速基金のプログラムで、今年度から二年間、ドイツに滞在します。ただし、オンラインで一部の演習などは担当し、一時帰国時には対面授業をなされます。大学への就職については、安平弦司さんの他、浮網佳苗さんが同志社女子大学表象文化学部に助教として着任されました。今後のご活躍をお祈り申し上げます。

専任教員以外で授業をして下さるのは人文科学研究所の小関隆教授、伊藤順二准教授と小俣ラポー日登美特定准教授、人間・環境学研究科の佐藤公美教授、学外からは、岸本廣大・同志社大学准教授(前)、桑山由文・京都女子大学教授(後)、草生久嗣・大阪公立大学教授(後)、阿部俊大・同志社大学教授(後)、衣笠太朗・神戸大学准教授(後)です。 

大学院生の学会活動として、本年五月の第七三回日本西洋史学会(名古屋大学)では神津智史さんと三月に修了した中辻柚珠さんが、六月の日本西洋古典学会第七三回大会(獨協大学)では岡本幹生さんが、研究報告を行いました。

専修の『フェネストラ――京大西洋史学報』と『西洋古代史研究』の出版も継続しています。京大の学術リポジトリ「紅」で公開されています。ぜひご一読ください。

本年十一月三日の読書会大会は通常開催の予定です。ご参加を心よりお待ちしております。(金澤記)

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