京都大学文学部 行動・環境文化学系 地理学専修
当地理学専修は,地理学,地域環境学,環境動態論の3分野から構成されています。具体的には,人口地理学,村落地理学,都市地理学,経済地理学,政治地理学,社会地理学,文化地理学,計量地理学,GIS,行動地理学,歴史地理学,地理学史,地理思想,海外地域研究といった地理学の諸領域に及ぶもので,3名の専任教員でカバーし得ない領域については,学内外の非常勤講師を依頼して,講義内容の多様化を図っています。
当地理学専修の学風の1つは,常に内外諸地域の比較研究を目指す点にあります。そのため教員自ら,複数の国に研究対象を求めるよう努めています。また,かつて史学科人文地理学教室として発展した経緯から,現在の場所・空間・環境にかかわる諸現象を捉える際,その現在へと至る形成過程を重視する点も,特色ある学風です。
京都大学文学部では,3回生進級時に「専修」に分属することになります。分属に先立ち,2回生から地理学入門として講義と実習を受講することができます(いずれも地理学専修者は必修)。3回生からは特殊講義と演習Ⅰ(同じく必修)を,4回生はさらに演習Ⅱ(同じく必修)を受講し,卒業論文を提出することになります。
実習では,地形図分析,GIS,統計分析,調査旅行,古地図分析など実際的な訓練を積みます。調査旅行では,受講生の総意によって選ばれた市町村を対象としてフィールドワークを行い,調査報告書を編集して発刊します。
講読は,外国語で書かれた地理学の専門書ないし論文を輪読するもので,英語地理書講読を2回生から受講することができます。さらに,近代地理学の成立にかかわるドイツ・フランスの講読としてドイツ地理書講読とフランス地理書講読,ならびに中国地理書講読を3回生から受講することができます。1~2回生時の語学の選択にあたっては,この点に留意して下さい。
演習Ⅰでは,地理学のさまざまな文献(主として論文)を探す技術を身につけた上で,学術論文を読みこなす能力や論文内容を要約して発表する能力,さらに、受講生同士で質疑したり議論する習慣を養うことを目標としています。受講生は,各自の興味や関心にそって幅広い文献を読み,地理学の知識を増やすとともに,方法論や研究動向にも目を向けながら,卒業研究に向けてテーマの絞り込みをすることになります。演習Ⅰでは、受講生の視野や関心をより広め深めるために、各専任教員が開催する個別プログラムも組み込んでいます。受講生の積極的な参加が望まれます。
演習Ⅱは,卒業論文作成のためのものであり,卒業研究のテーマや対象地域の選定,調査法や分析手法の選択等に始まり,関連する文献の精読,調査や分析の実施,図表の作成,論文執筆に至る一連のプロセスを含みます。受講生自身によって研究を進めることが基本ですが,演習Ⅱの場での中間発表に基づく受講生同士の議論も,教員のアドバイスやサポートを受けることも欠かせない大切な部分です。また,1月に卒業論文を提出するまでの長期的な計画の立案とその遂行が不可欠であることは言うまでもありません。1年近い月日をかけた充実した卒業論文の完成を期待しています。近年の卒業論文では,学生諸君の一人ひとりの問題意識に従って,「これも地理学なの?」と思うような実に多様なテーマが選ばれています。
なお,当地理学専修は,日本の大学に設置された最初の地理学教室であり,長期にわたって当教室が蒐集した民族資料,古地図,アトラス,内外の地形図類は,京都大学総合博物館に収蔵されています。とくに第2次世界大戦以前から揃っている地形図類や,606点にのぼる古地図類は,当専修における研究と教育に有効に活用されています。収蔵古地図の目録としては,『京都大学所蔵古地図目録』(189~240頁)があります。