京大独文研究室について
ドイツ語学ドイツ文学研究室は、今からおよそ100年前の1907年に、西洋文学第一講座として開設されました。
初代の教授は藤代禎輔(1868-1927)で、近代ドイツ戯曲に研究教育の中心がおかれました。さらにこの伝統は、藤代のあとをついだ成瀬清(1884-1958)へと引きつがれました。第二次大戦後は、大山定一(1904-74)が教授となり、ゲーテからリルケ、トーマス・マンへといたる近現代ドイツ文学の研究と紹介に大きな業績をのこしました。その後、リルケやヘルダーリンの研究と翻訳で知られる谷友幸(1911-81)、トラークルの詩集やゲーテの『西東詩集』の訳業のある平井俊夫(1926-93)、トーマス・マンと亡命文学の研究で知られ、『ドイツを追われた人びと―反ナチス亡命者の系譜』、『廃墟をさまよう人びと―戦後ドイツの知的原風景』、『アメリカという名のファンタジー―近代ドイツ文学とアメリカ』などの著書がある山口知三(1936-2021)、19世紀後半から20世紀前半にかけてのドイツ語圏の文化について、世紀末ウィーンの文学を中心に研究を進めており、『言語への懐疑を超えて―近・現代オーストリアの文学と思想』、『世紀末ウィーン文化探究―「異」への関わり』などの著作がある(1947-)、18世紀後半から19世紀前半にかけてのドイツ文学について、文化史、モティーフ史の観点から研究をおこない、『越境と内省―近代ドイツ文学の異文化像』などの著作がある(1959-)が、教授として研究室を支えてきました。
現在の専任教員は、川島隆教授(1976-)と、籠碧准教授(1990-)です。川島教授は、フランツ・カフカやヨハンナ・シュピーリを専門とするかたわら、メディア論とジェンダー論を研究しており、『カフカの〈中国〉と同時代言説』、『図説アルプスの少女ハイジ』などの著作があります。籠准教授は、20世紀前半の狂気表象を専門とし、『狂気のイメージ―シュニッツラー、デーブリーン、ツヴァイク』などの著作があります。
専任教員の専門分野からもわかるように、研究教育の中心をなしているのは近現代のドイツ語文学ですが、それ以外の研究領域についても、人間・環境学研究科や人文科学研究所の教員ならびに学外からの非常勤講師の協力を得て、中世から現代へといたるドイツ語圏の言語文化全般にわたる多種多様な授業が開講されています。
現在、本研究室には、学部・大学院をあわせて約20名の学生が在籍しています。廊下の窓から大文字山を望む文学部新館7階の共同研究室では、他の研究室や研究科の学生たちもまじえた研究会や読書会が活発にひらかれています。近年は、大学間の交流協定を利用してドイツ語圏の大学に留学する学生も多く、ドイツ語圏からの留学生との交流も盛んになりました。また、博士後期課程を終えて博士の学位を取得する学生も少なくありません。大学院生を中心にして毎年刊行されている雑誌『研究報告』は、こうした若い研究者たちの自由で開かれた研鑚の場となっています。
本研究室の研究教育の特色は、講座開設当初から一貫して、原典の綿密な読解を重視する点にあり、この伝統は現在もなお生きつづけています。けれでもその一方で、近年では、狭い意味でのドイツ語学ドイツ文学研究の枠にとらわれることなく、広く西洋の芸術、文化、社会全般に目を向けようとする姿勢が、本研究室のもう一つの特色となっています。
教員紹介
- 川島 隆(かわしま たかし)
- 近現代ドイツ語文学、メディア論、ジェンダー論
- 籠 碧(かご みどり)
- 近現代ドイツ語文学、マイノリティ研究
できます
所属院生
- 博士課程
D3 杉山 東洋/藤田 隼風
D2 中村 峻太郎/橋本 大樹
D1 具志堅 光星/外崎 宏/傅 姝芃 - 修士課程
M2 姜 峙琳/寺田 肯平/丸岡 登 - 聴講生
田中 祥子