香港の香港城市大学中文及歴史学系において、第九回東アジア人文研究博士学生ワークショップが開催されました。
2024.12.10 (Tue)

香港の香港城市大学中文及歴史学系において、第九回東アジア人文研究博士学生ワークショップが開催されました。

11月29日~12月4日に、香港の香港城市大学中文及歴史学系において、第九回東アジア人文研究博士学生ワークショップが開催されました。京都大学文学研究科からは、中国語学中国文学専修、中国哲学史専修、哲学専修、美学美術史学専修、東洋史学専修、地理学専修の大学院生、筒井忠仁准教授、成田健太郎准教授、池田恭哉准教授が参加しました。

本ワークショップは、2013年より復旦大学と京都大学の合同で開始され、2017年の第五回より香港城市大学も加わりました。コロナ禍による中断を挟みつつも回を重ね、今回は第五回以来久しぶりに香港での開催となりました。

まず11月30日・12月1日の両日、ワークショップにて学生が研究発表を展開しました。発表者は香港城市大学15名、復旦大学11名、京都大学13名の計39名を数え、計9つのセッションが設けられました。研究発表(10分間)は短いながらもみな濃密で、また他の発表者の中から前もって指定されたコメンテーターによる講評(5分間)やそれに対する応答、さらに自由討論の場では、学生が積極的に意見を投げかけあい、また相手の意見を真摯に受け取りまた応答しようとする様子が見て取れました。休憩時間にも議論は止むことがなく、各自の今後の研究推進にとって、貴重な場となったと信じます。

12月2日の朝には、香港の名門中等教育学校の一つである中華伝道会安柱中学から20名の中高生と先生方が合流し、香港歴史文化考察(フィールドトリップ)に出かけました。まず午前には、香港島上環地区の文武廟と百姓廟という二つの施設を見学しました。文武廟は、香港の華人たちの信仰の場であると同時にコミュニティの中心でもあり、ルーティンのように拝礼しては去っていく地元住民に混じって、私たちも線香の煙に包まれながら様々な思いをめぐらせました。百姓廟には、中国内地から移り住んで帰郷を果たさぬまま香港で没した市井の人々の無数の位牌が安置されており、その光景には胸を打たれました。
昼食時には新界の安柱中学へ移動して、同校の生徒で編成されたボーイスカウト・ガールスカウトの隊列の歓迎を受け、生徒による古箏の演奏を鑑賞しました。また、京都大学を代表して筒井准教授が、生徒が描いた水墨画作品を受け取り、この記念品は帰国後に出口研究科長に贈呈されました。

午後はまず、南宋末の亡国の皇帝ゆかりの地とされる九龍半島の宋王台を訪れ、その近くの地下鉄駅構内に陳列されている、地下鉄建設時に出土した考古文物の陳列も見学しました。さらに、かつて香港政庁の施政権の及ばない無法地帯として知られ、現在は公園として整備されている九龍寨城公園に足を伸ばしました。清朝時代の遺跡が物語る歴史、犯罪の温床として名を馳せた過去、すがすがしくしつらえられた庭園が市民生活を潤す現在がないまぜになったこの場所は、私たちに強烈な印象を与えてくれました。
以上のフィールドトリップ第1日は、10班に分かれて行動し、班ごとに安柱中学の中高生2名が先導して懇切に解説してくれました。丁寧に下調べしたうえに、丸一日ガイド役を務めてくれたことに、参加者一同心から感謝しています。

12月3日のフィールドトリップ第2日は、まず午前に全員で九龍半島の美術館M+を訪ねました。香港島上環地区を対岸に望む埋立地に整備された西九文化区の目玉施設であるM+は、現代アートを主題とする最先端の美術館で、その規模と展示内容の多彩さ、新鮮さにはみな驚かされました。午後は自由行動となり、九龍半島の中国美術を中心とする香港芸術館を見学する一団もあれば、香港島へ渡る一団もあり、はたまた時間が足りなかったとM+へ再度赴く参加者もありました。
4日間の交流を通して、参加者は所属大学や国籍の違いなど気にせず、すっかり打ち解けた様子でした。東アジア人文研究に志す仲間と共有した経験を、ぜひ今後の糧にしてほしいと思います。最後に、今回のワークショップを成功に導いてくださった香港城市大学ならびに復旦大学の関係者各位に、衷心より感謝申し上げます。

ワークショップの様子は、こちらをご覧ください。


なお、本事業は一般財団法人橋本循記念会2024年度研究交流活動助成「京都大学―復旦大学―香港城市大学「東アジア人文研究討論会」」の助成を受けました。