時間割(令和七年前期)
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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1
8:45〜10:15
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矢木
特殊講義
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古松
特殊講義
|
箱田
特殊講義
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2
10:30〜12:00
|
石川
特殊講義
宮宅
特殊講義
|
箱田
演習II
|
小野寺
特殊講義
辻
特殊講義
|
中砂
演習
|
|
3
13:15〜14:45
|
承 志
特殊講義
|
太田
特殊講義
|
佐藤
演習
|
||
4
15:00〜16:30
|
中砂
特殊講義
村上
演習
|
||||
5
16:45〜18:15
|
箱田
演習
|
中砂
演習I
|
※(学部)は学部生のみ、(院)は原則大学院生のみの科目。
講義内容【特殊講義】
できます
石川禎浩 中国共産党と外国メディア
(授業の概要・目的)
革命政党にとって、自党の方針や主張を社会に広く訴える広報、宣伝活動は、その党の盛衰に直結する重要な活動である。とりわけ、国際的な連帯を標榜して革命活動を展開した共産主義政党は、党組織にかんする秘密保持と対外宣伝という相反するベクトルの活動を両立させなければならなかった。それはどのような思想的思惑のもとに行われたのだろうか。本講義では、中国共産党の「実情」をはじめて海外に紹介したことで知られる米人ジャーナリストのエドガー・スノー(Edgar Snow)の活動をあと追うことにより、その取材がどのような背景で可能になったのかを分析する。また、スノーだけでなく、中国報道に携わった西側ジャーナリストの報道活動と中国共産党の関わりを分析し、現代的な取材者と被取材者の関係構築について歴史的検討を行う。。
(到達目標)
中国報道にかかわったジャーナリストと中国共産党の対外広報活動との協力とせめぎ合いの過程を系統的に分析することを通じて、中国近現代史に対する理解を深めると共に、近現代の中国に関する内外の報道が、どのような規制の中で行われたのかを理解する。
(授業計画と内容)
1 ガイダンス(外国メディアと中国史)
2 エドガー・スノー小伝
3 スノーの中国共産党へのアプローチ
4 中国共産党の対外広報戦略――革命運動と宣伝工作
5 スノーの取材(1936年夏-秋)
6 取材記録の整理と執筆、そしてルポの刊行(『中国の赤い星』)
7 『中国の赤い星』の衝撃と後世への影響
8 スノーのあとを追って中国共産党根拠地を取材した欧米ジャーナリスト(1)
9 スノーのあとを追って中国共産党根拠地を取材した欧米ジャーナリスト(2)
10 取材と検閲、加筆、削除――報道倫理のあり方
11 『中国の赤い星』の欧米各国での受け入れ状況――名作をいかに読むか?
12 日本・ソ連における『中国の赤い星』の状況
13 中国革命における外国人ジャーナリストとエンベッド取材
14 人民共和国における外国人ジャーナリスト
15 フィードバック
宮宅潔 出土文字史料より見た始皇帝の時代
(授業の概要・目的)
近年公表されている秦代の出土文字史料(睡虎地秦簡、岳麓書院所蔵簡、里耶秦簡など)を活用しつつ、始皇帝の時代の政治や社会の状況について講義する。始皇帝個人の一生を紹介したうえで、中国全土を支配することになった秦王朝が如何なる問題に直面し、そのためにどのような制度が整えられていたのかを分析する。特に秦による征服と統治の展開を、制度面から跡づけていく。こうした考察を通じて、中国古代の専制国家の姿について、理解を深めることを目指す。(到達目標)
中国古代史の諸制度について、基本的な知識を身につけたうえで、そこからうかがえる古代社会の有様について理解を深め、古代史研究の基礎を確立する。(授業計画と内容)
1.ガイダンス
2.『史記』が語る始皇帝の生涯
3.統一戦争の諸相
4.新占領地の統治
5.「法治」の実態:法家の理想と統治の現実
6.『史記』と始皇帝:伝世史料と秦史研究ガイダンスの後、各単元を2~3回に分けて講義する。
中砂明徳 16・17世紀の世界図と世界地誌
(授業の概要・目的)
本講義では、16世紀後半から17世紀半ばまでに作られた世界地図・地誌を題材にして、当時の西洋人の世界観の変遷を探る。新井白石が日本に潜入した宣教師シドッチを尋問した際に、オランダのヨハン・ブラウが制作した地図を参照したことは比較的知られていようが、宣教師によって世界地図がもたらされることでその世界観に触れる機会を持った者は白石のほかにもいた。オルテリウス『世界の舞台』(1570)以降、ブラウの『大地図帳』(1662)にいたるまでの地図・地誌制作を跡付けることで、世界のある部分が当時共有するにいたった世界観を明らかにしたい。(到達目標)
1、近世世界地図の概要を知ることができる
2、地図と地誌のメッセージのギャップを把握できる(授業計画と内容)
第1回 導入
第2回 ルシェッリ『プトレマイオス地理学』イタリア語訳(1561)
第3回 オルテリウス『世界の舞台』(1570)
第4回 プランシウス『新地理・水路図』(1592)
第5回 ボテロ『世界誌』(1591-95)
第6回 メルカトル『アトラス』(1595)
第7回 ウィトフリート『プトレマイオス補遺』(1597)
第8回 利瑪竇『坤輿万国全図』(1602)「亜細亜」
第9回 同「利未亜」
第10回 同「亜墨利加」
第11回 ダヴィティ『世界諸国誌』(1613)
第12回 へイリン『コスモグラフィー』(1652)
第13回 イエズス会士の地図製作
第14回 ブラウ『大地図帳』(1662)
第15回 フィードバック
矢木毅 朝鮮史詳説(中世篇2)
(授業の概要・目的)
朝鮮半島に成立した高麗国(918~1392)の歴史を概観し、政治・社会の特質について考察する。漢文史料の読解能力を高めるとともに、東アジア世界(特に中国)との関係を通して朝鮮史への理解を深めることを目的とする。
(到達目標)
基本史料(漢文)を読解して平易な現代日本文で説明する能力を養う。また、その史料の背景となる政治や社会の特質を理解し、現代社会との対比において説明する能力を養う。
(授業計画と内容)
1.毅宗朝の政局
2.武臣政権の成立
3.崔氏政権の成立
4.民乱の時代
5.崔氏政権の権力機構
6.武臣政権時代の外交
7.モンゴル軍の侵攻
8.武臣政権の崩壊
9.武臣政権の崩壊・続き
10.元寇の背景
11.事元期の王権:忠烈王と忠宣王
12.事元期の王権:忠宣王と忠肅王
13.事元期の王権:忠肅王と忠惠王
14.事元期の王権:忠惠王と恭愍王
15.まとめ(質疑応答)
(授業の概要・目的)
マンジュ語『内国史院档』は、ダイチン=グルンの成立の歴史を研究する上で最も重要な原典史料であり、ジュシェン(女真)人のマンチュリア支配から中国本土支配への移行期の歴史を正確に把握するためにも必読の基本史料である。この授業では、マンジュ語の原典に基づいて文献解説と講読を行う。初回の授業では世界におけるマンジュ語史料の保存状況と研究の実態、必要な辞典類・目録・索引・史料集および主なマンジュ語史料のデジタルデータなどを紹介する。最終回ではまとめを行う。3-14回の授業では史料の読解、参加者との質疑・討論を行う。(到達目標)
・マンジュ語史料の研究方法を習得できる。
・マンジュ語の基礎的な文法を学ぶことができる。
・史料を読み解くことができるようになること。(授業計画と内容)
第1回 イントロダクション
第2回 『内国史院档』の研究史とその内容
第3回~14回 『内国史院档』の読解、参加者との質疑・討論
第15回 まとめ
古松崇志 契丹史研究の新展開
(授業の概要・目的)
唐の崩壊とモンゴル帝国の出現とにはさまれた10~13世紀のユーラシア東方は、複数の王朝が並存する多極共存の時代であった。この時代の前半に騎馬軍事力を背景に覇を唱えたのが遊牧王朝の契丹(遼)である。後にユーラシアを統合するモンゴル帝国の統治制度に影響を及ぼすなど、世界史上における重要性は小さくないが、その歴史はかつては謎に包まれていた。本講義では契丹の歴史に焦点を当て、新史料の発見や文献学の進展など中国・日本を中心に長足の進展を遂げている近年の研究成果をふまえながら、制度・軍事・対外関係・儀礼・信仰などの多方面から検討をくわえ、ユーラシア東方史(東アジア史)における遊牧王朝の特質と意義について考えてみたい。(到達目標)
モンゴル帝国以前の多極化した時代のユーラシア東方史について、現段階での研究の到達点について理解する。漢語で書かれた典籍文献や考古資料を含む史料の活用方法を学び、みずからの専門研究に活かすことができるようになる。(授業計画と内容)
1.導論:多極共存時代のユーラシア東方史概観
2.建国以前の契丹の歴史
3.契丹国建国:耶律阿保機の新王朝
4.契丹の支配のしくみ:部族・オルド・捺鉢
5.契丹における都市と定住民
6.契丹と中原王朝の関係:セン淵の盟の締結まで
7.契丹・北宋の平和共存:国境・文書・使節団
8.多国体制と西夏・高麗
9.契丹と中央ユーラシア:軍事と交易ネットワーク
10.契丹の統治空間と自他認識
11.契丹の王権と信仰:基層信仰と仏教
12.考古資料の発見と契丹史研究の新展開①10世紀契丹墓葬の新発見
13.考古資料の発見と契丹史研究の新展開②慶陵・慶州城遺址と契丹皇帝の喪葬儀礼
14.金・カラ=キタイの東西対峙からモンゴル帝国の統合へ
15.まとめ
※いちおうの目安、研究の進展により変更の可能性あり。典籍文献(伝統的な石刻文献や地方志、文集など)のみに載せられているものも適宜取り上げる。
小野寺史郎 中国近現代史に関する文献・史料の講読
(授業の概要・目的)
近現代中国の歴史を扱った、研究史上重要な論文や研究書、関連史料を講読する。特に、先行する諸研究がどのような文脈や史料状況、問題意識の下で書かれたものか、論証の仕方や結論にどのような特徴があるか、同分野の研究の展開にどのような影響を及ぼしたか、といった点から検討を加えることで、それらのもつ意味についての理解を深める。
(到達目標)
中国近現代史に関する文献や史料の読解能力および理解力を身につける。先行研究や史料を読むことを通じて、受講者が自らの歴史学研究の方法を意識して作り上げていくことをめざす。
(授業計画と内容)
近現代中国の歴史を扱った論文や研究書、史料を講読する。
教員がテキスト案として挙げたもの、或いは受講者の希望したテキストの中から、担当するテキストと担当日を決める。担当者がレジュメを作成して内容要約と解説、疑問点の提示などを行い、それについて参加者全員で討議を行う。
第1回 ガイダンス、授業の進め方や分担の決定。
第2回 教員によるテキスト講読
第3-14回 受講者によるテキスト講読
第15回 フィードバック
また、必要に応じて論文作成に向けた研究報告とコメント、討議を行う。
辻正博 唐史研究史料論
(授業の概要・目的)
「唐史研究史料論」
唐代の歴史や文化は、古代の日本にも大きな影響を与えた。この講義では、唐史研究はもちろん、古代日本の政治制度や文化を研究する際にも利用することになる主要な唐史研究史料について、その概要を説明するとともに、それぞれの史料を利用する際に必要となる実用的な知識についても言及したいと思う。どのテキストを使うのがよいのか(言い換えれば、参照に不適切なテキストはどれなのか)などの点についても検討を加えたい。(到達目標)
唐史研究史料に関する基礎的な知識を身につけるとともに、史料の伝存・整理事情についての理解を深める。(授業計画と内容)
以下のテーマについて、おおよそ1~2週を目処に講義を進める。
0.ガイダンス……学期の授業計画および講義で必要とされる諸事項について説明する
1.正史
(1)『旧唐書』―実録・国史との関係
(2)『新唐書』―宋代の史学
2.『資治通鑑』―『通鑑考異』と胡三省注
3.『通典』―政書(1)
4.『文献通考』―政書(2)
5.『唐会要』―政書(3)
6.『大唐六典』
7.『唐大詔令集』―唐代の詔勅
8.『冊府元亀』―類書について
9.石刻史料
10.敦煌・トルファン出土文献
11.まとめとフィードバック太田出 「中国近世・近代の謡言とパニック」—明清・民国期中国における恐怖心をめぐって
(授業の概要・目的)
近年、事実とも虚構とも言いがたい言説が、インターネットの普及に促されて流布している。そこには事実認識をめぐってさまざまな混乱が見られる。一定の人々から見るとあきらかに事実に反するとみなされる言説が、別の人々に強い影響を与え、人と人との間を一方ではつなげつつ、他方では分断する。言説の流布は人々に少なからぬ影響を与えているのである。本授業では、光緒2年(1876)の謡言を俎上に乗せて本格的な分析を加える。謡言のナラティヴや散りばめられた諸要素はもちろん、謡言と民間社会における宗教や慣習・儀礼などとの連関性も重要な検討課題となる。(到達目標)
中国近世・近代の地域社会をめぐる基礎知識を身につけると同時に、実際の歴史文献を扱うことで史料を読み解く力を養っていく。(授業計画と内容)
第1回:ガイダンス
第2回:現代社会におけるフェイクニュースと陰謀論(1)
第3回:現代社会におけるフェイクニュースと陰謀論(2)
第4回:恐怖心の歴史(1)
第5回:恐怖心の歴史(2)
第6回:謡言・パニックに関する先行研究と問題関心
第7回:光緒2年(1876)の謡言とパニックの分析(1)
第8回:光緒2年(1876)の謡言とパニックの分析(2)
第9回:光緒2年(1876)の謡言とパニックの分析(3)
第10回:謡言とパニックの系譜(1)
第11回:謡言とパニックの系譜(2)
第12回:清朝国家(皇帝)と謡言
第13回:謡言・パニックに関する民国期の解釈
第14回:謡言・パニック発生のメカニズム
第15回:おわりに箱田恵子 近代中国における東西の交流と相互認識
(授業の概要・目的)
この講義では、近代中国における東西の交流と相互認識の歴史を概観する。その際、とくに中国にやってきた外国人宣教師やジャーナリスト、また中国から海外に派遣された留学生や外交官など、国境を跨いで行き来した人物を取り上げ、近代中国における西洋の影響および東西の相互作用について検討する。(到達目標)
受講生は、まず近代中国における東西文化交流の歴史を知り、西洋知識・文化の中国に対する影響について基本的な知識を身につけることができる。中国と西洋それぞれの具体的な著作を通じて、双方の相手に対するイメージとその相互作用について理解する。(授業計画と内容)
第1回 導入
第2回 近代初期の来華宣教師とその活動
第3回 五港開港期の西学東漸
第4回 第二次アヘン戦争後の西学東漸
第5回 清朝の遣米欧使節とその記録
第6回 官費留学生の派遣:米国と欧州
第7回 清朝外交官の派遣と初期の出使記録
第8回 清朝外交官の西洋事情紹介①1880年代
第9回 清朝外交官の西洋事情紹介②1890年代前半
第10回 変法とジャーナリズム
第11回 中国人の日本留学とその影響
第12回 日露戦争後の中国の変化と外国人の認識①宣教師
第13回 日露戦争後の中国の変化と外国人の認識②ジャーナリスト
第14回 清朝による対外宣伝の動き:英文新聞・雑誌の発行
第15回 まとめ
演習内容【演習】
村上衛 在中国イギリス領事報告を読む
(授業の概要・目的)
19世紀初頭から第1次世界大戦までイギリスは覇権国家であり、中国の最も重要な交渉相手もイギリスであった。また、イギリスは開港直後から各開港場に領事を派遣、イギリス領事館は列強の在中国領事館の中で最も整備されていた。したがって、開港から第1次世界大戦期までの中国に関わる外交文書はイギリスのものが最も充実している。
このうち領事報告はアヘン戦争後、中国の開港場に赴任したイギリス領事がイギリス公使に送付したものである。この領事報告は開港場におけるイギリスと清朝側の外交交渉の詳細のみならず、開港場とその周辺の政治・経済・社会について、中国側の史料では知り得ない貴重な情報を提供する。
本演習ではイギリス外交文書についての基本的な知識を身につけたうえで、中国近代の社会・経済に関する英文史料を精読する。英文史料を読むことによって、イギリス人などの外からの目を利用しつつ、中国近代社会経済史に対する理解を深める。
(到達目標)
イギリス外交文書の使用を通じて英文史料の扱い方、長所・短所などを理解し、中国近代史を研究するにあたって利用する史料の可能性を広げ、また史料操作能力の向上を図る。
(授業計画と内容)
1~2回 本演習のオリエンテーション。イギリス外務省、イギリスの公文書と外交文書、中国に関わるイギリス外交文書、在中国イギリス領事報告の解説を行う。
3回~14回 在中国イギリス領事の報告(FO228)を精読する。受講者が担当部分について音読・翻訳を行う。具体的には、外国籍を主張する華人関係の紛争や流通税に関わる商業紛争など、主として社会・経済に関わる紛争を取り上げる。必要に応じてFO228に含まれている英文史料に対応する漢文史料も読む。なお、史料は非常に細かい内容のものが多いため、講義形式の解説を加え、史料を中国近代史の中に位置づけていく。
15回 読み進めてきた史料をもとに、総合的に討論する。
箱田恵子 『外交報』と関連史料の精読
(授業の概要・目的)
『外交報』は、日本の『外交時報』にならい、1902年に張元済らによって創刊された外交・国際問題の評論誌であり、日本をはじめ海外の外交・国際関係に関する論説、報道も多数翻訳されている。この授業では、『外交報』から厳復らの論説や海外の論説・報道の翻訳記事などを選んで精読する。海外の論説・報道の翻訳記事については、もとの文献と比較し、近代的概念の翻訳状況や語彙の変化についても考察する。後半は受講生が自らの関心によって文章を選択し、関連文献とあわせて読解を担当する。
(到達目標)
20世紀初めの漢文史料を正確に読解する能力を身につけるとともに、関連する文献を調査する方法を理解する。翻訳記事をもとの文献と照らしあわせて精読することで、近代中国における近代的概念の翻訳状況や清末知識人の認識、語彙の変化などについても理解する。
(授業計画と内容)
第1回 ガイダンス:史料の説明や担当について
第2回-第9回 『外交報』の中から重要な文章を選んで輪読(翻訳記事についてはもとの文献もあわせて読む)
第10回-第14回 受講生が選んだ記事を担当して読解(関連文献もあわせて読む)
第15回 フィードバック
中砂明徳 『明清档案』
(授業の概要・目的)
中央研究院が刊行中の『明清档案』に収録されている清朝順治年間の文書を読み、中国制圧の過程を清朝サイドから見てゆく。明清の王朝交代は、日本では「華夷変態」として、またヨーロッパでも宣教師によってそのニュースが紹介されるなど、大事件として受けとめられていた。しかし、明末清初の動乱に関する歴史記述とそれを承けた研究は、満洲人王朝の世界史的意義が強調されるようになった今日においてもなお「敗者」の側に片寄りすぎている。あらためてこの史料集を読むことで、勝者の視点から冷静に支配確立の過程を見てゆきたい。(到達目標)
1、白文に取り組むことで、自力で句読を行う能力を身につけることができる。
2、行政文書の形態に習熟できる。
3、清朝の中国征服史について理解を深めることができる。(授業計画と内容)
1回『明清档案』のテキストの性格を説明し、昨年読んだところについて言及しながら、順治年間前半の政治情勢について解説する。 1コマにつき一、二本を読む予定。
2~14回でとりあげる予定の档案のテーマは以下のとおり。
地方官の腐敗、南明勢力、陝西、山東の「叛逆」など。
15回 フィードバック箱田恵子 薛福成『庸庵海外文編』
(授業の概要・目的)
清末の洋務思想家・外交官として知られる薛福成の『庸庵海外文編』を輪読し、あわせて郭嵩燾など他の清末知識人の思想との比較を行い、薛福成の洋務思想の位置づけ、変法思想との関係などを検討する。(到達目標)
清末の漢文史料を正確に読解する能力を身につけるとともに、関連する歴史事象や史料を調査できるようになる。薛福成の洋務思想を他の清末知識人の思想と比較し、薛の洋務思想の特徴を理解する。(授業計画と内容)
第1回 清末の洋務・変法思想について
第2回 清末の漢文史料の読解について(教員による読解)
第3回-第14回 『庸庵海外文編』の輪読、関連文献との比較
第15回 フィードバック
中砂明徳 外国語論文のレビュー
(授業の概要・目的)
この授業では、受講者が自らの関心にしたがって外国語(受講者にとっての外国語。英語でも、中国語でも、他の言語でもよい)の論文を選んで、その内容を紹介するととともに、その論文の学界における位置づけを参加者(講師も含む)にわかりやすいように行う。
かつては、言語ごとに論文のスタイルはずいぶん異なっていた。現在でも、日本語、中国語、英語それぞれ特有の「癖」は存在するが、英語論文の影響により、かなり平準化してきている。外国語論文を読むことで、ある種のスタンダードを知るとともに、その問題点を個々の受講者が感じ取るようになれば、この授業の目的は達成される。(到達目標)
1、外国語論文の「癖」を知ることで、自国語論文のスタイルについて再考することができる。
2、日本では数少ない「論文のレビュー」(『史学雑誌』の「回顧と展望」は、単なる紹介に過ぎない)を授業の場で公表し、それに対する疑義を受け止めるなかで、自分なりの評価の型を作ることができる。
3、査読者の立場に身を置くことで、投稿者としての自己を振り返ることができる(ちなみに、査読付きの論文だからといって、これ以上の査読を必要としないほどに完成しているわけではない)。(授業計画と内容)
1回 全体の趣旨説明
2~14回 受講者が1回分を担当する。時間の半分を論文の紹介、評にあて、残り半分の時間で、出席者全員による質疑応答を行う。受講者の数が少ない場合には、適宜受講者自身の研究発表の場を設ける。
15回 フィードバック
佐藤達郎 『文館詞林』選読
(授業の概要・目的)
初唐に編纂され、日本にのみ逸書として残る詩文集『文館詞林』の中から魏晋南北朝期の詔令などの散文を選読する。
(到達目標)
主に四六文で書かれた六朝期の文章を白文で読む能力を養うとともに、当該時代の政治社会上の諸問題に関する理解を深める。
(授業計画と内容)
1回:ガイダンスとして『文館詞林』の概要、授業の進め方について解説する。
2~14回 学生による『文館詞林』輪読
15回 フィードバック