東洋史学専修ホームページ 専修講義案内

時間割(令和六年後期)

1 8:45〜10:15
矢木 特殊講義
古松 特殊講義
箱田 演習Ⅲ
2 10:30〜12:00
石川 特殊講義
宮宅 特殊講義
箱田 特殊講義
小野寺 演習
特殊講義
中砂 演習
3 13:15〜14:45
承 志 特殊講義
太田 特殊講義
吉本 演習Ⅰ
4 15:00〜16:30
中砂 特殊講義
村上 演習
吉本 特殊講義
5 16:45〜18:15
箱田 演習
中砂 演習Ⅱ
吉本 演習

※(学部)は学部生のみ、(院)は原則大学院生のみの科目。

講義内容【特殊講義】

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石川禎浩 中国共産党史の諸問題

(授業の概要・目的)
中国共産党にとって、革命の歴史を如何に描くか、および自党や各指導者の役割を如何に位置づけるかは、路線闘争と権力確立のための重要課題であったがゆえに、政治と歴史(研究)とは、半ば一体不可分であったと言える。中国共産党が結党以来3度(1945年、1981年、2021年)にわたって、歴史叙述と歴史解釈を党の決議事項として定めたことはその最も見やすい例である。
 本講義では、中国共産党史上のいくつかの事件、トピックを対象として、それらに関する歴史記述や評価が如何に変遷してきたのかを、時々の革命情勢、党内事情(例えば、延安整風運動や『毛沢東選集』の編纂)と結びつけながら考察する。

(到達目標)
中国共産党の歴史をその自己認識と合わせて概述することにより、中国現代史の一重要側面を通史的に理解することを目指す。また、中国共産党の歴史について、同党自身が折々に提示する公的な歴史像がどのように形作られ、その時々の政治情勢によってどのような変化を見せたのかを合わせて解説することにより、歴史と歴史叙述の両側面から、重層的に中国現代史の展開を理解する。

(授業計画と内容)
1 ガイダンス 党史と歴史決議、『毛沢東選集』
2 マルクス主義の伝播と党の結成(1919-1921年)
3 国民革命(中国国民党との合作とその崩壊 1923-1927年)
4 農村革命への転換
5 中華ソヴィエト共和国の樹立(人民共和国のプロトタイプ)
6 長征(1930年代中期)と毛沢東の台頭
7 抗日統一戦線政策(1930年代後期)と西安事変
8 抗日戦争と第二次国共合作
9 延安整風運動と毛沢東の指導権(1940年代前期)
10 抗日戦争の終結と国共内戦の開始(1940年中期)
11 国共内戦の帰趨と中華人民共和国の成立(1940年代後期)
12 中ソ同盟への道と朝鮮戦争(1950-53年)
13 中国共産党による社会管理(単位、戸籍、政治運動、思想改造)
14 毛沢東論、革命家として、政治家として、文化人として
15.フィードバック

宮宅潔 法廷から眺めた中国古代

(授業の概要・目的)
近年公表されている中国古代の出土文字史料のうち、裁判に関連する文献(睡虎地秦簡「封診式」、岳麓書院所蔵簡や張家山漢簡の裁判記録)を活用し、統一秦の頃から漢代初期に至るまでの、政治や社会の状況について講義する。まず、裁判が行われる場やその手続きについて整理し、制度の特徴や限界を明らかにする。そのうえで居住区や交易の場など、当時の地域社会の様子について紹介する。さらに秦~漢初の政治状況、たとえば統一に伴う混乱や、皇帝と諸侯王との関係などについて、いくつかトピックを取りあげて講義する。こうした考察を通じて、中国古代の専制国家の姿について、理解を深めることを目指す。

(到達目標)
中国古代史の諸制度について、基本的な知識を身につけたうえで、そこからうかがえる古代社会の有様について理解を深め、古代史研究の基礎を確立する。

(授業計画と内容)
1.ガイダンス
2.裁判制度について
 (1)秦漢時代の法制史料
 (2)裁きの場―獄という場所―
 (3)裁判手続きの概要とその特徴
3.社会のありさま
 (1)里の風景
 (2)市の風景
4.秦~漢初の諸相
 (1)秦と楚
 (2)戦争と平和
 (2)逃亡者たち

ガイダンスの後、各単元を1~2回に分けて講義する。

中砂明徳 近世ヨーロッパ人の世界認識

(授業の概要・目的)
フランスの史家セルジュ・グリュジンスキは、スペイン・ハプスブルク家のフェリペ2世が1580年にポルトガル王となることで成立した帝国のもとで、グローバルな意識を持つ人々が生まれてきたと論じている。しかし、そうした作品の多くは今日ではあまり顧みられていない。本授業では、ヨーロッパを越えた世界記述を行った作品をとりあげてその内容を紹介するとともに、テクスト産生の背景をさぐる。

(到達目標)
1, 近世の西欧人の世界認識を知ることができる。
2, 忘れ去られたテクストの持つ意味について考えることができる。

(授業計画と内容)
1、導入
2~4、ジョバンニ・ボテロ『一般誌』(1595)
5、ヘロニモ・デ・ロマン『世界の共和国』第三部(1595)
6、トマソ・カンパネッラ『スペイン王国論』(1600)
7、ジョアン・ドス・サントス『東エチオピア』(1609)
8、コルネリス・ヴィートフリート『東西インド一般史』(1611)
9、ピエール・デュ・ジャリック『東インド布教史』(1608-14)
10・11、ピエール・ダヴィティ『世界諸国誌』(1613)
12、サミュエル・パーチャス『巡礼』(1625)
13、アンソニー・シャーリー『全世界の政治的重み』 (1622)
14、ヨハンネス・デ・ラエト『新世界』(1625)
15、フィードバック

矢木毅 朝鮮史詳説(古代篇2)

(授業の概要・目的)
朝鮮半島に展開した諸部族・諸国家の歴史を概観し、古代における政治・社会の特質について考察する。漢文史料の読解能力を高めるとともに、東アジア世界(特に中国史)との関係にも留意しつつ、朝鮮の歴史への理解を深めることを目的とする。

(到達目標)
基本史料(漢文)を読解して平易な現代日本文で説明する能力を養う。また、その史料の背景となる政治や社会の特質を理解し、現代社会との対比において説明する能力を養う。

(授業計画と内容)
1.百済遺民の動向
2.高句麗遺民の動向
3.新羅の「三韓」統一
4.渤海と日本
5.唐・平盧軍と渤海・新羅
6.新羅の骨品制
7.新羅の骨品制(続き)
8.張保皐と円仁
9.張保皐と円仁(続き)
10.新羅海賊の出没
11.新羅末の群盗
12.崔致遠の帰国
13.崔致遠の帰国(続き)
14.唐朝の滅亡と新羅
15.まとめ(史料講読)

箱田恵子 近代中国における「主権」意識について

(授業の概要・目的)
近代中国には租界や租借地、中東鉄道収用地など、中国の領土でありながら外国が行政や司法を行使する空間が様々な形態で存在した。日清戦争後には清朝もその問題性を認識し、自開商埠の設置によって対抗しようとしはじめる。近年、近代中国の「主権」意識については「領土」意識の形成との関係で議論がなされているが、本講義では租界など外国の行政・司法が行使された空間の存在が近代中国の「主権」意識に与えた影響を検討する。

(到達目標)
清末中国における対外関係や国際環境の変化について、基本的な事項を理解する。あわせて、中国に存在した租界などの空間の設置課程とその性質、清朝の認識の変化について学び、近代中国における「主権」意識の特徴について考察を深めることができる。

(授業計画と内容)
第1回 導入:前近代の広州における外国人への姿勢
第2回 アヘン戦争と上海租界の設置
第3回 第二次アヘン戦争と上海租界の拡大
第4回 租界の諸相:法制度
第5回 租界の諸相:社会
第6回 日清戦争後の租界の増加
第7回 利権獲競争と租借地
第8回 自開商埠の登場
第9回 満洲における自開商埠の拡大
第10回 中東鉄道収用地
第11回 日露戦争後の満洲の状況
第12回 ハルビン自治問題―問題の性質
第13回 ハルビン自治問題―露清交渉と清朝の「主権」
14.まとめ
15.フィードバック

承志 マンジュ語『内国史院档』の研究

(授業の概要・目的)
マンジュ語『内国史院档』は、ダイチン=グルンの成立の歴史を研究する上で最も重要な原典史料であり、ジュシェン(女真)人のマンチュリア支配から中国本土支配への移行期の歴史を正確に把握するためにも必読の基本史料である。この授業では、マンジュ語の原典に基づいて文献解説と講読を行う。初回の授業では世界におけるマンジュ語史料の保存状況と研究の実態、必要な辞典類・目録・索引・史料集および主なマンジュ語史料のデジタルデータなどを紹介する。最終回ではまとめを行う。前期の3-14回の授業ではマンジュ語入門と基礎文法、史料の読解、参加者との質疑・討論を行う。

(到達目標)
・マンジュ語史料の研究方法を習得できる。
・マンジュ語の基礎的な文法を学ぶことができる。
・史料を読み解くことができるようになること。

(授業計画と内容)
第1回 イントロダクション
第2回 『内国史院档』の研究史とその内容
第3回~14回 『内国史院档』の読解、参加者との質疑・討論
第15回 まとめ

吉本道雅 孔子伝の展開

(授業の概要・目的)
前漢中期の『史記』孔子世家は、孔子伝の基本的な枠組みを提示した。前漢後期から後漢における緯書や、魏晋における『孔子家語』『孔叢子』は孔子の事蹟を新たに創作した。北宋以降、孔子年譜の編纂が試みられ、明代以降、孔子絵伝たる聖蹟図が盛行した。本講義では、仇英・文徴明『聖蹟図』、夏洪基『孔子年譜綱目』を素材に、孔子世家以降の孔子伝の展開を考察する。

(到達目標)
歴史文献学に基づく、中国文献の批判的分析の方法論を習得する。

(授業計画と内容)
以下の項目を逐次論ずる。
第1回~第2回 序論
第3回~第14回 『聖蹟図』の分析
第15回 結論
*フィードバック方法は授業中に説明する。

古松崇志 中国石刻史料の研究

(授業の概要・目的)
中国史研究において、石刻史料はきわめて重要な史料群である。本講義では、中国本土およびその周辺の石刻史料を取り上げ、歴史研究に利用するための手法を、実際に受講生が史料(京都大学人文科学研究所所蔵の拓本実物を含む)を読み解きながら学んでいく。

(到達目標)
漢語で書かれた中国石刻史料の史料としての特性を理解し、研究手法を学びとって、みずからの研究に活用できるようにする。

(授業計画と内容)
1.ガイダンス(1回)
2.石刻史料釈読(13回)
3.まとめ(1回)

※釈読する石刻史料は、担当者の専門分野の契丹(遼)・宋・金・元(モンゴル帝国)時代のものを中心に取り上げる予定だが、適宜受講生の関心に応じた史料を読むことも検討している。また、担当者が勤務する京都大学人文科学研究所所蔵の拓本を実見する機会を設けるほか、できるだけ拓影(拓本の写真)のあるものを用いるが、典籍文献(伝統的な石刻文献や地方志、文集など)のみに載せられているものも適宜取り上げる。

辻正博 唐史研究史料論

(授業の概要・目的)
唐代の歴史や文化は、古代の日本にも大きな影響を与えた。この講義では、唐史研究はもちろん、古代日本の政治制度や文化を研究する際にも利用することになる主要な唐史研究史料について、その概要を説明するとともに、それぞれの史料を利用する際に必要となる実用的な知識についても言及したいと思う。どのテキストを使うのがよいのか(言い換えれば、参照に不適切なテキストはどれなのか)などの点についても検討を加えたい。

(到達目標)
唐史研究史料に関する基礎的な知識を身につけるとともに、史料の伝存・整理事情についての理解を深める。

(授業計画と内容)
以下のテーマについて、おおよそ1~2週を目処に講義を進める。
0.ガイダンス……学期の授業計画および講義で必要とされる諸事項について説明する
1.正史
(1)『旧唐書』―実録・国史との関係
(2)『新唐書』―宋代の史学
2.『資治通鑑』―『通鑑考異』と胡三省注
3.『通典』―政書(1)
4.『文献通考』―政書(2)
5.『唐会要』―政書(3)
6.『大唐六典』
7.『唐大詔令集』―唐代の詔勅
8.『冊府元亀』―類書について
9.石刻史料
10.敦煌・トルファン出土文献
11.まとめとフィードバック

太田出 中国近世の訴訟と地域社会

(授業の概要・目的)
本授業では、明清時代中国の江南デルタ(現在の上海・蘇州・南京・杭州付近)を中心として、その時代・地域に特有の犯罪、法典・裁判制度の運用と地域社会との関わりについて、当時の地方志や裁判史料などを用いながら実証的に解説していく。現在の私たちが日常的な生活を送るうえで重要な法的なタームを確認するとともに、実際に発生した裁判案件などを分析しながら、犯罪者・警察・司法官といった地域社会における様々なアクターの有り様を浮き彫りにする。

(到達目標)
中国近世の地域社会をめぐる基礎知識を身につけると同時に、実際の歴史文献を扱うことで史料を読み解く力を養っていく。

(授業計画と内容)
第1回:ガイダンス
第2回:「刑罰」の語の成り立ち
第3回:地域社会の有力者「紳士」
第4回:「五刑(五罪)」とは?
第5回:パノプティコン(一望監視装置)とは?
第6回:「民事案件」と「刑事案件」
第7回:明清時代までの法典
第8回:明清時代の裁判文書(1)
第9回:明清時代の裁判文書(2)
第10回:明清時代の裁判の性格
第11回:明清時代の判決の性格
第12回:明清時代の訴訟と地域社会(1)
第13回:明清時代の訴訟と地域社会(2)
第14回:訴訟と地域社会をめぐるアクターと論点
第15回:おわりに

演習内容【演習】

村上衛 在イギリス領事報告を読む

(授業の概要・目的)
19世紀初頭から第1次世界大戦までイギリスは覇権国家であり、中国の最も重要な交渉相手もイギリスであった。また、イギリスは開港直後から各開港場に領事を派遣、列強の中で在中国領事館の整備が最も進んでいた。したがって、開港から第1次世界大戦期までの中国に関わる外交文書はイギリスのものが最も充実している。
このうち領事報告はアヘン戦争後、中国の開港場に赴任したイギリス領事がイギリス公使に送付したものである。この領事報告は開港場におけるイギリスと清朝側の外交交渉の詳細のみならず、開港場とその周辺の政治・経済・社会について、中国側の史料では知り得ない貴重な情報を提供する。
本演習ではイギリス外交文書についての基本的な知識を身につけたうえで、中国近代の社会・経済に関する英文史料を精読する。英文史料を読むことによって、イギリス人などの外からの目を利用しつつ、中国近代社会経済史に対する理解を深める。

(到達目標)
イギリス外交文書の使用を通じて英文史料の扱い方、長所・短所などを理解し、中国近代史を研究するにあたって利用する史料の可能性を広げ、また史料操作能力の向上を図る。

(授業計画と内容)
1~2回 本演習のオリエンテーション。イギリス外務省、イギリスの公文書と外交文書、中国に関わるイギリス外交文書、在中国イギリス領事報告の解説を行う。
3回~14回 在中国イギリス領事の報告(FO228)を精読する。受講者が担当部分について音読・翻訳を行う。具体的には、中国における華人関係の紛争など、主として社会に関わる紛争を取り上げる。必要に応じてFO228に含まれている英文史料に対応する漢文史料も読む。なお、史料は非常に細かい内容のものが多いため、講義形式の解説を加え、史料を中国近代史の中に位置づけていく。
15回 読み進めてきた史料をもとに、総合的に討論する。

箱田恵子 『外交報』と関連史料の精読

(授業の概要・目的)
『外交報』は、日本の『外交時報』にならい、1902年に張元済らによって創刊された外交・国際問題の評論誌であり、日本をはじめ海外の外交・国際関係に関する論説、報道も多数翻訳されている。この授業では、『外交報』から厳復らの論説や海外の論説・報道の翻訳記事などを選んで精読する。海外の論説・報道の翻訳記事については、もとの文献と比較し、近代的概念の翻訳状況や語彙の変化についても考察する。後半は受講生が自らの関心によって文章を選択し、関連文献とあわせて読解を担当する。

(到達目標)
20世紀初めの漢文史料を正確に読解する能力を身につけるとともに、関連する文献を調査する方法を理解する。翻訳記事をもとの文献と照らしあわせて精読することで、近代中国における近代的概念の翻訳状況や清末知識人の認識、語彙の変化などについても理解する。

(授業計画と内容)
第1回 ガイダンス:史料の説明や担当について
第2回-第9回 『外交報』の中から重要な文章を選んで輪読(翻訳記事についてはもとの文献もあわせて読む)
第10回-第14回 受講生が選んだ記事を担当して読解(関連文献もあわせて読む)
第15回 フィードバック

中砂明徳 『明清档案』

(授業の概要・目的)
中央研究院が刊行中の『明清档案』に収録されている清朝順治年間の文書を読み、中国制圧の過程を清朝サイドから見てゆく。明清の王朝交代は、日本では「華夷変態」として、またヨーロッパでも宣教師によってそのニュースが紹介されるなど、大事件として受けとめられていた。しかし、明末清初の動乱に関する歴史記述とそれを承けた研究は、満州人王朝の世界史的意義が強調されるようになった今日においてもなお「敗者」の側に片寄りすぎている。あらためてこの史料集を読むことで、勝者の視点から冷静に支配確立の過程を見てゆきたい。
今年は順治八年(1651)の档案を読む。清朝支配の試行錯誤の過程を、文書を通じてたどってゆく。

(到達目標)
1、白文に取り組むことで、自力で句読を行う能力を身につけることができる。
2、行政文書の形態に習熟できる。
3、清朝の中国征服史について理解を深めることができる。

(授業計画と内容)
1回『明清档案』のテキストの性格を説明し、昨年読んだところについて言及しながら、順治年間前半の政治情勢について解説する。 1コマにつき一、二本を読む予定。
2~14回でとりあげる予定の档案のテーマは以下のとおり。
反乱(山西、湖広、江西、浙江)、漕運、殺人、胥吏、黄河の治水、官員の挙劾など
15回 フィードバック

小野寺史郎 中国近現代史に関する文献の講読

(授業の概要・目的)
近現代中国の歴史を扱った、研究史上重要な論文や研究書、関連史料を講読する。特に、先行する諸研究がどのような文脈や史料状況、問題意識の下で書かれたものか、論証の仕方や結論にどのような特徴があるか、同分野の研究の展開にどのような影響を及ぼしたか、といった点から検討を加えることで、それらのもつ意味についての理解を深める。

(到達目標)
中国近現代史に関する文献や史料の読解能力および理解力を身につける。先行研究や史料を読むことを通じて、受講者が自らの歴史学研究の方法を意識して作り上げていくことをめざす。

(授業計画と内容)
近現代中国の歴史を扱った論文や研究書、史料を講読する。
テキスト案として挙げたものの中から、担当するテキストと担当日を決める。担当者がレジュメを作成して内容要約と解説、疑問点の提示などを行い、それについて参加者全員で討議を行う。
第1回 ガイダンス、授業の進め方や分担の決定。
第2回 教員によるテキスト講読
第3-14回 受講者によるテキスト講読
第15回 フィードバック
また、必要に応じて論文作成に向けた研究報告とコメント、討議を行う。

箱田恵子 薛福成『庸庵海外文編』

(授業の概要・目的)
清末の洋務思想家・外交官として知られる薛福成の『庸庵海外文編』を輪読し、あわせて郭嵩燾など他の清末知識人の思想との比較を行い、薛福成の洋務思想の位置づけ、変法思想との関係などを検討する。

(到達目標)
清末の漢文史料を正確に読解する能力を身につけるとともに、関連する歴史事象や史料を調査できるようになる。薛福成の洋務思想を他の清末知識人の思想と比較し、薛の洋務思想の特徴を理解する。

(授業計画と内容)
第1回 清末の洋務・変法思想について
第2回 清末の漢文史料の読解について(教員による読解)
第3回-第14回 『庸庵海外文編』の輪読、関連文献との比較
第15回 フィードバック

中砂明徳 外国語論文のレビュー

(授業の概要・目的)
この授業では、受講者が自らの関心にしたがって外国語(受講者にとっての外国語。英語でも、中国語でも、他の言語でもよい)の論文を選んで、その内容を紹介するととともに、その論文の学界における位置づけを参加者(講師も含む)にわかりやすいように行う。
 かつては、言語ごとに論文のスタイルはずいぶん異なっていた。現在でも、日本語、中国語、英語それぞれ特有の「癖」は存在するが、英語論文の影響により、かなり平準化してきている。外国語論文を読むことで、ある種のスタンダードを知るとともに、その問題点を個々の受講者が感じ取るようになれば、この授業の目的は達成される。

(到達目標)
1、外国語論文の「癖」を知ることで、自国語論文のスタイルについて再考することができる。
2、日本では数少ない「論文のレビュー」(『史学雑誌』の「回顧と展望」は、単なる紹介に過ぎない)を授業の場で公表し、それに対する疑義を受け止めるなかで、自分なりの評価の型を作ることができる。
3、査読者の立場に身を置くことで、投稿者としての自己を振り返ることができる(ちなみに、査読付きの論文だからといって、これ以上の査読を必要としないほどに完成しているわけではない)。

(授業計画と内容)
1回 全体の趣旨説明
2~14回 受講者が1回分を担当する。時間の半分を論文の紹介、評にあて、残り半分の時間で、出席者全員による質疑応答を行う。受講者の数が少ない場合には、適宜受講者自身の研究発表の場を設ける。
15回 フィードバック

吉本道雅  『春秋左伝正義』

(授業の概要・目的)
十三経注疏の一つである『春秋左伝正義』を輪読する。

(到達目標)
漢文資料を文法的に正確に読解する能力を身につけるとともに、経学(中国古典注釈学)の基礎的な方法論・春秋時代史の研究資料としての活用法を理解する。

(授業計画と内容)
前期の続き。魯の年代記の形式を採る『春秋』と、その注釈書の形式を採る『左伝』は春秋時代を研究するための基本的な資料である。『春秋』『左伝』の成立過程については今なお活発な議論が進行中である。『左伝』には、西晋・杜預の『春秋経伝集解』、唐・孔頴達の『正義』が附されている。本演習では『正義』を精読することで、漢文を文法的に正確に読解する能力を養うとともに、『正義』の引用する唐代以前の諸文献を調査し、また『正義』の論理構成に習熟することによって、経学の基本的な方法論を理解する。また、先秦期の文献・出土資料を全面的に参照することによって、『春秋』『左伝』の成立過程についても考察し、先秦史研究の資料学的素養を身につける。
第1回~第15回 『春秋左伝正義』の輪読
*フィードバック方法は授業中に説明する。

吉本道雅  中国古代史史料学

(授業の概要・目的)
銭穆『先秦諸子繋年』を輪読し、関連史料・研究を批判的に検討する。

(到達目標)
中国古代史研究に関わる文献・出土文字資料・考古学的資料の運用能力を向上させる。

(授業計画と内容)
前期の続き。従来の戦国史(453-221BC)研究は、戦国後期の秦史に偏しており、戦国前・中期や六国については、資料の絶対量の乏しさに加えて、『史記』紀年の混乱が、歴史的推移の時系列的把握を困難にしてきた。1990年代以降の戦国楚簡の出現は、とりわけ思想史的研究を活発化させているが、かえって文献に対する研究の立ち後れを露呈させている。本演習では、銭穆『先秦諸子繋年』(香港中文大学、1956)を輪読し、関連史料・研究を批判的に検討することによって、中国古代史研究に関わる文献・出土文字資料・考古学的資料の運用能力を向上させる。
第1回~第15回 『先秦諸子繋年』の輪読
*フィードバック方法は授業中に説明する。