東洋史学は、本学創設期以来、桑原隲蔵・内藤湖南をはじめ、日本における東洋史学研究のトップランナーとして、すぐれた人材・研究者を数多く世に送り出してきた。現在は吉本・中砂・箱田が、それぞれきわめてユニークかつ突出した研究を展開し、学生・院生・OD・留学生らとともに多様なアプローチの研究を繰り広げている。(吉本 道雅)
吉本道雅 教授
【主要業績】
・『中國先秦史の研究』(京都大学學術出版会、2005)
・『周代中国の社会考古学』(翻訳、京都大学學術出版会、2006)
・『内蒙古東部における青銅器文化関係資料の調査に基づく先秦時代北方民族の研究』(科研費報告書、2009)
・『内蒙古東部・遼寧西部における出土資料の調査に基づく鮮卑・契丹史の研究』(科研費報告書、2013)
・「清華簡繋年考」(『京都大学文学部研究紀要』52、2013)
・「國語成書考」(『京都大学文学部研究紀要』53、2014)
【自己紹介】
秦始皇帝の天下統一から宣統帝退位にいたるImperial Chinaを相対化して考えるため、始皇帝統一以前の「先秦」時代の研究を続けてきましたが、近年はこれに加えて、東北アジア(戦前のいわゆる「満蒙」)の研究も進めております。現在はもっぱら、『左傳』を中心に、先秦時代の歴史記述のありかたを考えております。
中砂明徳 教授
【主要業績】
・『中国近世の福建人』(名古屋大学出版会、2012)
・『江南』(講談社選書メチエ、2002)
・「マカオ・メキシコから見た華夷変態」(『京都大学文学部紀要』52、2013)
・「イエズス会の極東関係史料――「大発見の時代」とその後」(『東アジア書誌学への招待』第二巻、東方書店、2011)
・「イエズス会士フランチェスコ・サンビアシの旅」(『アジア史学論集』3、2013)
・「マルティ二・アトラス再考」(『大地の肖像』京都大学学術出版会、2007)
【自己紹介】
16~17世紀に世界各地で活動していたイエズス会士の活動と彼らが残した記述を通して、近世のグローバリゼーションのありようについて考え、それについての駄文を『京都大学文学部研究紀要』に載せています。(https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/287305)
箱田恵子 教授
【主要業績】
・『外交官の誕生』(名古屋大学出版会、2012)
・『出使日記の時代』(岡本隆司氏・青山治世氏との共著、名古屋大学出版会、2014)
・「第二辰丸事件と仲裁裁判」(『史林』106-5、2024)
・「清末中国の新聞・雑誌にみる仲裁裁判観」(『史窓』78、2021)
・「琉球処分をめぐる日清交渉と仲裁裁判制度」(『史窓』77、2020)
・「清末中国における仲裁裁判観―1860、70年代を中心に」(『京都女子大学大学院文学研究科研究紀要(史学編)』17、2018)
【自己紹介】
近代中国の外交史について、とくに19世紀後半以降に海外に派遣された清朝の外交官の活動や彼らが任地で記した「出使日記」を中心に研究してきました。近年は、紛争の平和的解決手段として世界的に注目されていた仲裁裁判の制度が、近代中国においてどのように受容されたのかを研究しています。