今年度の授業
系共通
大塚 淳「科学哲学入門(上)」(講義) 前期水3
[授業の概要・目的]
科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。 前期の講義においては、科学とはなにかという問題、科学的推論や科学的説明をめぐる問題、および科学の目的と規範性に関する問題を扱う。
[到達目標]
科学とは何か、科学的推論とは何か、科学的説明は何か、といった問題について、科学哲学の基礎的な概念と考え方を理解し、それを適切に科学の具体的事例に適用できるようになる。
[授業計画と内容]
1. オリエンテーション
2. 科学の歩み
3. 科学的仮説とは何か
4. ポパーの反証主義と疑似科学
5. 仮説の確証と帰納の問題
6. 科学と正当化
7. 科学的説明:法則
8. 科学的説明:因果性
9. 科学的説明:モデリング
10. 還元主義
11. 科学的真理
12. 科学の変化と科学革命
13. 科学と多様性
14. 科学と規範
15. フィードバック
伊勢田 哲治「科学哲学入門(下)」(講義)後期水3
[授業の概要・目的]
科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。 後期の授業では科学的実在論や科学の変化、科学と価値などのテーマを順にとりあげ、関連する個別科学におけるテーマも検討する。
[到達目標]
科学における実在の問題とは何か、科学はどのように変化するか、科学と価値の関係はどうなっているか、といった問題について、科学哲学の基礎的な概念と考え方を理解し、それを適切に科学の具体的事例に適用できるようになる。
[授業計画と内容]
1 実在論と反実在論(3回)
2 個別科学における実在論問題(3回)
3 科学の変化と科学革命(3回)
4 個別科学における変化の問題(2回)
5 科学と価値(3回)
フィードバック(1回)
伊藤 憲二「科学史入門1(名著による科学史研究への招待)」(講義)前期水2
[授業の概要・目的]
科学史とはどのような学問だろうか。学問としての科学史は、自然科学をめぐる様々な出来事をたどって年表を作ることでも、いわゆる「科学者」の様々なエピソードを集めることでもなく、「科学」だけの歴史だけでもない。その一つの野心は、現在「科学」と呼ばれるものがどのように、いかなるものとして立ち現れたかを歴史的に調べることによって、「科学」が何かを明らかにすることである。その学問的内容は多様であり、さまざまな関心の人がその中から自分にとって興味のある内容や、アプローチを見出すことができる。この授業では科学史という研究分野を形作ってきた数々の名著のうち、日本語でも読める14の魅力あふれる著作を選んでおおよそ年代順に紹介し、関連する研究について述べる。それを通して科学史の研究における様々なアプローチとその可能性について論じ、科学史という学問の面白さを伝える。授業は講義形式で行い、事前に文献を読むことは要求しない。ただし、課題提出のために読むことが必要なこともある。
[到達目標]
・通俗的な科学史についての考え方を打破し、科学史という学問の多様性とその中の主要なアプローチを知る。
・科学史という学問がどのような点で履修者にとって興味深いものとなり得るのかを理解する。
[授業計画と内容]
1. ガイダンス:科学史の通史なるものの虚構性について(シェイピン『科学革命とは何だったのか』)
2. 科学思想史という方法とその限界:コイレ『コスモスの崩壊』
3. 科学者集団の社会学:マートン『社会理論と社会構造』
4. パラダイムと科学革命:クーン『科学革命の構造』
5. 非西洋学問とニーダム問題:ニーダム『文明の滴定』
6. 権力と規律と知識:フーコー『監獄の誕生』
7. 実験装置と政治思想の科学史:シェイピン&シャッファー『リヴァイアサンと空気ポンプ』
8. ジェンダーと科学史:シービンガー『科学史から消された女性たち』
9. アクターネットワーク理論:ラトゥール『パストゥール』
10. 物質文化の科学史:ギャリソン『アインシュタインの時計 ポワンカレの地図』
11. 視覚実践と認識論的徳:ダストン&ギャリソン『客観性』
12. 知識のグローバルヒストリー:ラジ『近代科学のリロケーション』
13. 非知の科学論:オレスケス&コンウェイ『世界を騙しつづける科学者たち』
14. まとめ:絡み合った世界の存在論:バラッド『宇宙の途上で出会う』
15. フィードバック
伊藤 憲二 「方法としての日本科学史(重要著作を通した日本科学史研究入門)」(講義)後期水2
[授業の概要・目的]
日本の科学史を通して、科学について何を明らかにできるだろうか。この授業では日本の科学技術に関する歴史研究の重要著作のうち、特に刺激的で興味深いと思われる14の著作を選んでおおよそ年代順に紹介することを通して、日本の科学技術の歴史研究における様々なアプローチを説明し、それが「科学」とは何かを明らかにするのにどのような意義があるのかについて論じる。授業は講 義形式で行い、事前に文献を読むことは要求しない。ただし、課題では読むことが必要なこともある。
[到達目標]
・日本の科学技術についての歴史研究の様々なアプローチを知る。
・日本の科学技術についての歴史研究に関して、これまでどのような研究がなされ、今後、どのような研究がありうるのかについて理解する。
[授業計画と内容]
1. イントロダクション:なぜ日本の科学技術史か?
2. 日本の科学思想史:辻哲夫『日本の科学思想』(1973)
3. 社会史(科学の体制化論):広重徹『科学の社会史』(1973)
4. 戦後日本における科学の社会史::中山茂『科学と社会の現代史』(1981)
5. 科学の文化史:金子務『アインシュタイン・ショック』(1981)
6. 大学史:潮木守一『京都帝国大学の挑戦』(1984)
7. 初期近代の分岐点:板倉聖宣ほか『日本における科学研究の萌芽と挫折』(1990)
8. 国際関係・安全保障と科学技術:リチャード・サミュエルズ『富国強兵の遺産』(原著1996)
9. 官僚性と科学:吉岡斉『原子力の社会史』(1999, 2011)
10. 時間技術と近代:栗山茂久・橋本毅彦編『遅刻の誕生』(2001)
11. 科学とイデオロギー:泊次郎『プレートテクトニクスの拒絶と受容』(2008)
12. 科学社会学と災害研究:松本三和夫『構造災』(2012)
13. 科学とジェンダー:古川安『津田梅子』(2022)
14.まとめと番外編:伊藤憲二『励起:仁科芳雄と日本の現代物理学』(2023)ができるまで
15.フィードバック
(必要に応じて授業内容を変えることがある)
特殊講義(学部・大学院共通)
伊藤 憲二「核のグローバルヒストリー」(特殊講義)前期月2
[授業の概要・目的]
この講義では20世紀を中心として世界的な核開発の歴史を扱う。核開発は多くの場合、国家的な事業として実施されるため、国単位で考えやすい。しかし、国際関係・国際秩序と密接に結びついているので、グローバルな、あるいはトランスナショナルな視点が欠かせない。この授業では、国別の開発を抑えながらも、グローバルないしトランスナショナルな観点に重点をおいて、核開発の歴史を概観する。日本に関する事柄は後期の授業で扱うので、あまり取り上げない。
[到達目標]
グローバルな観点から核開発の歴史を俯瞰できるようになる。
[授業計画と内容]
1. オリエンテーション:核のグローバルヒストリーとは何か?
2. 原子物理学の発展と核分裂の発見
3. 原子爆弾の想像と可能性
4. 科学者の移動と冶金研究所
5. 国際事業としてのマンハッタン計画
6. 放射線の人体影響
7. 冷戦における核の人工物
8. 原子力をめぐる国際条約と国際機関
9. ウランとプルトニウム
10. 核開発のグローバル化
11. 太平洋における核実験
12. 原子力事故とフォールアウト
13. 世界の反核運動
14. まとめ
15. フィードバック
伊藤 憲二「日本の核開発史」(特殊講義)後期月2
[授業の概要・目的]
どのようにして日本で原子力が開発されて、大規模事故に至ったのか?この授業では戦前から2011年ごろまでの日本における核開発の歴史におけるいくつかの側面について概観する。。
[到達目標]
日本における核開発の概要についての理解を深める。
[授業計画と内容]
授業は講義形式で行う。授業内容は必要や受講者の関心に応じて変更することがある。
1. オリエンテーション:日本における核開発史の何が問題か
2. 戦前日本の核物理学とX線
3. 日本における戦時核研究
4. 放射能の人体影響研究
5. 日本学術会議と原子力
6. 第五福竜丸事件
7. 原子力における「1955年体制」
8. 原子炉の輸入と国内政治
9. JRR-3と核技術の国産
10. IAEAと日本
11. 日本における反核運動
12. 原子力と広報
13. 福島第一原発事故
14. まとめ
15. フィードバック
伊勢田 哲治「科学哲学入門上級 Advanced Introduction to Philosophy of Science」(特殊講義)後期金2
[授業の概要・目的]
The aim of this special lecture is to introduce the participants into the field of philosophy of science through lectures focusing on classic and basic papers in the field. More concretely, In the first half of the class, we read classic papers of Hempel, Kuhn, Duhem, Nagel and others who founded the field. Lectures on the background of the papers will be given. In the latter half of the class, we pick up several areas in philosophy of science that attract attention recently. We read related basic literature and there will be lectures on the background, relationship with contemporary issues (especially implications in Japanese context) of the readings. Through such readings and lectures, this class try to show the breadth of the field of philosophy of science.
[到達目標]
To be able to explain the historical background and basic issues of the field of philosophy of science. To be able to connect ideas in philosophy of science to various contemporary issues.
[授業計画と内容]
The lectures will be given in English, and structured around the following anthology:
Martin Curd et al. eds. (2013) Philosophy of Science: The Central Issues, Second edition. Norton.
1 Introduction
2 Hempel “Criteria of confirmation and acceptability”
3 Salmon “Rationality and objectivity in science”
4 Mayo “A critique of Salmon’s Bayesian Way”
5 Kuhn “The nature and necessity of scientific revolution”
6 Kuhn “Objectivity, value judgment, and theory choice”
7 Longino “Values and objectivity”
8 Duhem “Physical theory and experiment”
9 Quine “Two dogmas of empiricism”
10 Laudan “Demystifying underdetermination”
11 Nagel “Issues in the logic of reductive explanations”
12 Feyerabend “How to be a good empiricist”
13 Foder “Special sciences (or the disunity of science as a working hypothesis)
14 Kitcher “1953 and all that”
15 wrap-up
武田 裕紀「科学革命の諸問題」(特殊講義)前期火3
[授業の概要・目的]
本講義の内容と目的は、一般的に科学革命と呼ばれる変革の時期を4つの個別問題の展開を通して検討し、科学革命という歴史上の出来事を、その呼称の妥当性をも含めて、各人が根拠をもって評価できるようになる軸を提供することである。焦点を当てる人物はデカルトとパスカルであり、デカルトについては、数学(解析幾何学)および学問的方法論、パスカルについては、自然学(静水圧)および学問的論証を扱う。直接的なテーマとして扱う時代は1620年代から1650年代であるが、その先駆として16世紀後半、後裔としてニュートン力学成立前夜までを視野に入れて考察していく。
[到達目標]
*17世紀前半における科学の転換について、複数の視点から説明できる。
*デカルトおよびパスカルの思考を、歴史的文脈において適切に理解できる。
[授業計画と内容]
1.本講義の視座と目的(1回目)
2.デカルト・人と思想【1週】
3.デカルトの解析幾何学(『幾何学』など)【2週】
4.デカルトの学問的方法論(『精神指導の規則』など)【4週】
5.パスカル・人と思想【1週】
6.パスカルの自然学(『真空に関する新実験』『流体の平衡と大気の重さ』など)【2週】
7.パスカルの学問的論証(『幾何学的精神について』など)【2週】
8.まとめ(14回目)
9.期末レポート・フィードバック 1 回(15回目)
瀬戸口 明久「物質の環境史」(特殊講義)前期火3
[授業の概要・目的]
本講義は、「物質」を中心にして歴史を書くことの可能性について考える試みである。人類は有史以前から地下から鉱物を掘り出し、金属として精錬して利用してきた。とりわけ19世紀以降は、化学工学の発達とともに、新たな化学物質が次々と生産された。それらの化学物質は、環境中に拡散し、ヒトの体内にも浸透している。「物質」を歴史を見る対象の単位とすることはいくつか利点がある。地球史と接続することによって、ディープ・ヒストリーの視点を導入できること。物質のグローバルな流れに注目することで、世界各地で起こっていたことを同時代的に見通すことができること。ヒトと自然の関係を考える環境史の視点から歴史を再検討できることなどである。本講義では、おもに日本の科学技術史・環境史の研究をもとに、化学物質と人間の歴史について考えてみたい。
[到達目標]
– 物質について、人文学の視点から考えられるようになる。
– 物質について、基礎的な自然科学の知識を得る。
[授業計画と内容]
第1回 物質の環境史序論
第2回 物質とは何か:物質の科学技術史
第3回 金属(1)銅・鉄・アルミニウム
第4回 金属(2)銅・鉄・アルミニウム
第5回 炭素(1)石炭・石油・自動車
第6回 炭素(2)石炭・石油・自動車
第7回 砒素(1)石見銀山・殺虫剤・毒ガス
第8回 砒素(2)石見銀山・殺虫剤・毒ガス
第9回 リン(1)肥料・マッチ・猫いらず
第10回 リン(2)肥料・マッチ・猫いらず
第11回 青酸:殺虫剤・毒ガス・メッキ
第12回 プラスチック
第13回 アイソトープ
第14回 まとめ
第15回 フィードバック
喜多 千草「コンピューティングの技術文化史」(特殊講義)後期金1
[授業の概要・目的]
本特殊講義では、情報学の重要文献を取り上げながら、各年のテーマに沿って、現在のコンピューティングのスタイルがどのようにできあがってきたのか、それに関わった人々は、どのような技術的背景・知的状況の中で思考し、技術的なアイデアを生み、社会の中で実装につなげてきたのかを考えます。
本年度のテーマは「デザインとコンピュータ」です。
扱う資料はまずは文献ですが、近過去を対象にしているため、映像・音声資料、インタビュー記録、その他のデジタルデータなども史料となりますし、文献資料の中には技術論文、設計図なども含まれます。
[到達目標]
・現在進行形で日々変化しているコンピューティング環境のありようについて、歴史的な理解をもつことで大局的な理解ができるようになる。
[授業計画と内容]
1. オリエンテーション
2. 可視化技術
3. 「コンピュータアート」
4. デジタル写真
5. 道具としてのコンピュータ
6. 建築デザインとコミュニケーション
7. TeXの誕生
8. 視覚的思考
9. デスクトップメタファー
10. デスクトップパブリッシング
11. スマートフォン
12. 電子書籍
13. マルチスクリーン
14. 人工知能とデザイン
15. フィードバック
藤原 辰史「食と農の人文学」(特殊講義)前期水3
[授業の概要・目的]
とりわけ20世紀以降、食と農はどのように変化を遂げてきたのか? ドイツと日本を中心に、食べものをめぐる制度や文化や技術の変遷を追う。この講義の目的は、現代史の知識を蓄えることではない。あるいは、現代史の概略をつかむことでもない。現代史を批判的に眺める目を獲得し、食と農の未来の構築するためのヒントを考えることである。
[到達目標]
現代史における食と農の変遷について理解し、現代社会の食と農の問題を広いパースペクティヴでとらえることができるようになる。
[授業計画と内容]
以下の課題について、1週から3週かけて講義する予定である(全15回)
1 食をめぐる研究の方法
2 明治大正期の食
3 アジア太平洋戦争までの食
4 戦後の食
5 牛乳の歴史学
6 品種改良の歴史学
7 フィードバック
藤原 辰史「食と農の人文学」(特殊講義)後期水3
[授業の概要・目的]
とりわけ20世紀以降、食と農はどのように変化を遂げてきたのか? ドイツと日本を中心に、食べものをめぐる制度や文化や技術の変遷を追う。この講義の目的は、現代史の知識を蓄えることではない。あるいは、現代史の概略をつかむことでもない。現代史を批判的に眺める目を獲得し、食と農の未来の構築するためのヒントを考えることである。。
[到達目標]
現代史における食と農の変遷について理解し、現代社会の食と農の問題を広いパースペクティヴでとらえることができるようになる。
[授業計画と内容]
以下の課題について、1週から3週かけて講義する予定である(全15回)
1 食糧戦争としての第一次世界大戦
2 有機農業の歴史
3 毒ガスと農薬の歴史
4 トラクターの歴史
5 戦時期の農村女性たち
6 食糧戦争としての第二次世界大戦
7 フィードバック
平岡 隆二「東西宇宙観の出会いと融合」(特殊講義)前期集中
[授業の概要・目的]
江戸時代の天文暦学者たちは、西洋や中国から伝来する古今東西の天文学知識を手掛かりに、独自の宇宙観・自然認識を練り上げていった。その成立と変遷をたどることで、科学史・思想史・文化史・東西交流史についての理解を深める。また、京大が所蔵する関連史料の実地調査に参加し、その整理や取り扱いの方法を学ぶ。
[到達目標]
現代とは異なる自然認識とその利用のあり方を、具体的な史料に即して理解する能力を養う。またその特質と意義を、当時の文脈を踏まえつつ俯瞰的に説明する能力を養う。
[授業計画と内容]
1.ガイダンス―本授業の位置づけ
2.東アジアの暦と文化
3.近世天文暦学:史料と背景
4.書誌採取入門
5.科学伝来―キリシタン布教と宇宙論
6.科学伝来―翻訳と変容
7.書誌調査とその方法(1)
8.西学書の渡来と影響―『天経或問』の流行
9.西学書の渡来と影響―『暦算全書』と舶載漢籍
10.書誌調査とその方法(2)
11.江戸後期の天文暦学―蘭学とその展開―
12.江戸後期の天文暦学―梵暦運動―
13.書誌調査とその方法(3)
14.書誌調査とその方法(4)
15.フィードバック
森元 良太「確率論と統計学の哲学」(特殊講義)前期集中
[授業の概要・目的]
現代において、確率と統計は科学を含むさまざまな分野に重要な役割を担っている。この講義では、確率論と統計学に関する哲学的問題を取り上げる。確率概念の出現の経緯を概説し、現代につながる主観的解釈と客観的解釈の二元性について検討する。また、科学哲学の観点から統計学の背後にある思考の枠組みを掘り下げる。さらに、各論として、哲学の問題に統計学の手法を用いた事例を紹介する。
[到達目標]
・確率概念の主観的解釈と客観的解釈が出現した経緯を理解する。
・統計学が帰納推論であることと、分布の捉え方が変化した経緯を学び、統計学の思考の枠組みを理解する。
・有意性検定と仮説検定の考え方の違いを理解する。
・哲学の問題を解くのに統計学を援用した議論を理解する。
[授業計画と内容]
基本的に以下のように講義を進める。ただし、受講者の反応および進捗に応じて順序や内容などを変えることがある。
1. 確率とは何か
2. 確率の二元性:主観的解釈と客観的解釈
3. 統計学と帰納推論
4. ベイズ論文を読み解く
5. 誤差論的思考
6. 集団的思考
7. フィッシャー流の有意性検定の考え方
8. ネイマン-ピアソン流の仮説検定の考え方
9. フィッシャーとネイマン-ピアソンの考え方の違い
10. ベイズ主義
11. 尤度主義
12. 頻度主義、ベイズ主義、尤度主義のまとめ
13. 各論(1):進化論 vs. 創造論
14. 各論(2):擬人主義 vs. 反擬人主義
15. フィードバック
久木田 水生「情報技術の哲学」(特殊講義)前期集中
[授業の概要・目的]
現在、情報技術は急激に発達しており、それは私たちの生活と社会的環境を大きく変化させている。情報技術はコミュニケーションの基盤であり、それゆえに私たちがどのように情報を伝え、どのように他者とつながるかということを規定する。人間は社会的な生物であるがゆえに、他者とのつながり方が変化すれば、「私たちは何者であるのか」、「私たちはいかなる世界に生きているのか」という問いに対する答えもまた変化する。そこで本講義では急速に発達する情報技術が、自己と環境(物理的世界、社会、他者)についての私たちの認識をどのように変容させているか考え、議論する。その際にはコミュニケーションは人間にとってどのような意味を持つかという問題についても議論する。またより一般的に技術と人間がどのような関係にあるのかという問題も扱う。
[到達目標]
情報技術のこれまでの発展が人間や社会に与えてきた影響について基本的な知識を身に着け、現在と将来の情報技術の影響と課題について理解する。
[授業計画と内容]
本講義ではコンピュータ、インタ―ネット、スマートフォン、ソーシャルメディア、ビッグデータ、人工知能、ロボティクス、VRなどの情報技術が社会と人間に与えるインパクトを、倫理学的哲学的観点から考察する。授業は以下の内容を含む予定であるが、変更する場合もある。
1. イントロダクション:なぜ情報技術を論じるのか
2. 情報技術によるコミュニケーションの変容
3. 情報技術に関する楽観論と悲観論
4. 技術と人間の関係(1):技術による変容的経験
5. 技術と人間の関係(2):技術と「共生」するということの意味
6. コミュニケーションとは何か(1):情報通信と意思疎通
7. コミュニケーションとは何か(2):相互同期と協調
8. インターネットと情報のコモンズ
9. インターネットの問題(1):「勝者総取り」の構造
10. インターネットの問題(2):エンゲージメント至上主義
11. インターネットの問題(3):インターネットのイドラ
12. 人工知能略史:階差機関からChatGPTまで
13. 人工知能というメディア
14. コミュニケーションの未来(1):メタバースとアバター
15. コミュニケーションの未来(2):ソーシャルロボット
演習(学部・大学院共通)
伊藤 憲二「核と市民」(演習)前期月5
[授業の概要・目的]
原子力関係施設は20世紀に出現した非日常的な存在であり、それまでの人間の生活の中にはなかったものである。これまでこのような核施設と人々はどのようにかかわり合ってきただろうか。核施設のもたらすリスクや事故に対して、人々はどのように向き合ってきただろうか。この授業では、これらの問題に関係する歴史学および周辺分野の研究のうち、比較的最近のものを取り上げて討論する。
[到達目標]
原子力と市民とのかかわりに関する和文および英文の学術文献を読みこなせるようになること。
[授業計画と内容]
この授業はリーディングセミナーの形式で行う。毎回担当者が文献を読んで、その紹介をし、かつ、ディスカッションをリードする。文献の紹介の時間は60分程度とし、残りの時間をディスカッションにあてる取り上げる文献は、参加者の関心や語学力などに応じて変更する可能性がある。
1. オリエンテーション:ラングドン・ウィナー「鯨と原子炉」をめぐって
2. ブライアン・ウィン(立石 裕二訳・解題 )「誤解された誤解 社会的アイデンティティと公衆の科学理解」(原著1996)
3. 樫本喜一「リスク論導入の歴史的経緯とその課題:関西研究用原子炉の安全性に対する日本学術会議の見解を事例に」(2005)、「初期原子力政策と戦後の地方自治―相克の発生:関西研究用原子炉交野案設置反対運動を事例に」(2006)、「研究用原子炉の都市近郊立地に関する歴史的考察:関西研究用原子炉と武蔵工業大学研究用原子炉の比較検討」(2007)、
4. ダニエル・アルドリッチ『誰が負を引きうけるのか:原発・ダム・空港立地をめぐる紛争と市民社会』(原著2008)、序章から第2章
5. ダニエル・アルドリッチ『誰が負を引きうけるのか:原発・ダム・空港立地をめぐる紛争と市民社会』(原著2008)、5章から結論
6. ケート・ブラウン『プルートピア:原子力村が生みだす悲劇の連鎖』(原著 2013)第一部
7. ケート・ブラウン『プルートピア:原子力村が生みだす悲劇の連鎖』(原著 2013)第二部
8. 竹峰誠一郎『マーシャル諸島 終わりなき核被害を生きる』(2015)から抜粋
9. Aya Hirata Kimura, Radiation Brain Moms and Citizen Scientists: The Gender Politics of Food Contamination after Fukushima (2016)から抜粋(1)
10. Aya Hirata Kimura, Radiation Brain Moms and Citizen Scientists: The Gender Politics of Food Contamination after Fukushima (2016)から抜粋(2)
11. Toshihiro Higuchi, Political Fallout: Nuclear Weapons Testing and the Making of a Global Environmental Crisis (2020)から抜粋(1)
12. Toshihiro Higuchi, Political Fallout: Nuclear Weapons Testing and the Making of a Global Environmental Crisis (2020)から抜粋(2)
13. Hamblin and Richards, Making the Unseen Visible (2023)から抜粋
14. まとめ:Kenji Ito, “Physicists versus Locals in Tanashi: The Dispute over the Establishment of the Institute for Nuclear Study,” (unpublished )
15. フィードバック
伊藤 憲二「科学史研究法:理論と実践」(演習)後期月5
[授業の概要・目的]
科学史の研究にはよく用いられる理論的な枠組みや、実際の研究を進めていく上で、役に立つノウハウや、様々な道具が存在する。この演習では、卒業論文、修士論文、博士論文などで、科学史およびその周辺分野の研究をこれからしようとする人を対象に、科学史分野で用いる理論的枠組みを考えるのに有益な論文を読みつつ、研究や研究者としての活動を実際に遂行するにあたって有用なリソースやノウハウを紹介し、実際の研究の一部を演習する。
[到達目標]
科学史の理論的枠組みの一部を習得し、同時に研究を行うスキルの基礎的なものを身につけること。
[授業計画と内容]
この授業は各回の授業は理論パートと演習パートからなるが、授業の6回目と14回目は各自の提出物に基づいたワークショップ形式で行う。
理論パート:Biagioli ed., Science Studies Readerから論文をピックアップして演習実践パート:研究上のリソースやノウハウを紹介し、時には実演する。
ワークショップ:研究に関する実際の作業に基づき、合評をする。
1. ガイダンス、概要説明、分担決定、科学史研究によく使うツール
2. 理論:実験と研究者集団の科学史的分析: Kohler, “Moral Economy”
実践:テーマ設定と研究設計、研究計画書
レポート課題1発表
3. 理論:技術の社会構築: MacKenzie, “Nuclear Missile Testing
実践:先行研究と一次資料の文献調査法:科学史関係のデータベース、図書館、その他
4. 理論:標準の科学論: Schaffer, “Late Victorian Metrology”
実践:文献の入手と整理の実践(書籍、論文、その他、図書館と書店の利用法)
5. 理論:実験室の科学史: Shapin, “House of Experiment”
実践:リーディングとノートテイキングの技法
課題1レポート提出期限
6. 研究計画書ワークショップ
7. 理論: 非西洋科学: Hart, “On the Problem of Chinese Science”
実践:書評と査読
レポート課題2発表
8. 理論:「パラダイム論」を超えて: Galison,“Trading Zone”
実践:アーカイブズ調査/資料撮影とその整理
9. 理論:科学と表象: Martin, “Toward an Anthropology of Immunology”
実践:新聞データベースの利用
10. 理論:実験室とANT: Latour, “Give Me a Laboratory”
実践:学会発表とスライド
11. 理論:バウンダリー・オブジェクト: Star and Griesemer, “Institutional Ecology”
実践:ライティングの技法とバックアップ
12. 理論:実験と物質の科学論: Pickering, “The Mangle of Practice”
実践:スタイルと論文投稿と改稿
13. 理論:新物質主義とフェミニズム: Barad, “Agential Realism”
実践:科学史における研究倫理
レポート課題2提出期限
14. 書評/査読報告ワークショップ
15. フィードバック
(履修者の関心と必要に応じて内容を変えることがある)
伊勢田 哲治「時間の科学哲学」(演習)後期火4
[授業の概要・目的]
時間は哲学のさまざまな領域で問題となってきたが、科学哲学においてはとりわけ物理学理論における時間と我々の経験する時間との関わりが重要な問題になってきた。この授業では、特に現在主義と相対性理論の関わりという話題と熱力学における時間という話題について時間の哲学に関するアンソロジーに収録された論文を読むことで、科学哲学の観点から見た時間の問題について理解を深める。
[到達目標]
時間の科学哲学の主要な論点を理解し、主な立場を批判的に検討できるようになる。
[授業計画と内容]
以下の論文集から2つの論文を輪読形式で読み、内容についてディスカッションを行う。
Callender, C. (2011) The Oxford Handbook of Philosophy of Time. Oxford University Press.
基本的に一回の授業でテキスト7~8ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。
授業の進行は以下のとおり。
イントロダクション(1回)
学生による発表担当
Zimmerman “Presentism and the space-time manifold” (10回)
North “Time in thermodynamics” (4回)
伊勢田 哲治「確率の哲学 2」(演習)後期金3
[授業の概要・目的]
確率の哲学は哲学の諸問題だけでなく隣接するさまざまな問題領域に適用される応用範囲の広い分野である。しかしその基礎概念は必ずしもよく理解されているとは言えない。この演習では昨年に引き続き確率の哲学に関するアンソロジーを利用して、この分野についてのより正確で深い理解を身に着けていくことを目指す。
[到達目標]
確率の哲学の様々な立場を正しく理解し、それらを批判的に検討できるようになる。
[授業計画と内容]
以下のアンソロジーからいくつかの論文を輪読形式で読み、内容についてディスカッションを行う。
Hajek, A. and Hitchcock, C. eds. (2016) The Oxford Handbook of Probability and Philosophy. Oxford University Press.
基本的に一回の授業でテキスト7~8ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。
イントロダクション(1回)
Sprenger “Bayesianism vs. frequentism in statistical inference”(3回)
Neapolittan and Jiang “Bayesian Network Theory” (2回)
Gillies “The propensity interpretation” (2回)
Schwartz “Best system approaches to chance”(2回)
Smithson “Human understandings of probability”(2回)
Bartha “Probability and the philosophy of religion” (3回)
大塚 淳「哲学者のための数学」(演習)後期木4
[授業の概要・目的]
古くプラトンの時代から、数学は哲学者の基礎的教養とされてきた。また20世紀以降の哲学議論においては、論理学や集合論などといった数学的道具立てが陰に陽に用いられてきた。実際、数学的思考は、高度に抽象的で一見「捉えどころのない」問題をモデル化し、思考に秩序と型を与えるという点で、哲学的思索にとって有益である。そこで本授業では、哲学に益すると目される限りでの抽象数学の基礎的な部分を概観し、それを用いて具体的な哲学的問題をモデル化することを学ぶ。
[到達目標]
– 集合、代数、位相、群など、現代数学の基本的な概念に慣れ親しむ
– 数学的概念で哲学的問題をモデル化する方法を学ぶ
– 注:本授業は取り扱われる数学理論に習熟することを目的とするのではなく、あくまでそれらの哲学的問題との関連性/使い所を知ることが主眼である。それぞれの理論をしっかりと理解するためには、別途専門の授業を受けられたい。
[授業計画と内容]
1. オリエンテーション
2. 導入と準備
3. 集合
4. 関係と関数
5. 順序
6. 束
7. トポロジー
8. モノイド
9. 群
10. 圏
11. 数理モデリング方法論
12-14. 予備およびプロジェクトのフィードバック
15. フィードバック
伊藤 憲二「科学哲学科学史セミナー」(演習)前期水4
[授業の概要・目的]
科学史および科学哲学における,基礎的な知識の理解を向上させるとともに,近年の研究動向についての知識を得る.
それらを基盤として,卒業論文の作成に必要な基礎的な力を養う.
[到達目標]
科学哲学・科学史の基礎知識を向上させるとともに,論文作成のための基礎的な力を身につける.
[授業計画と内容]
授業に出席する各学生に研究の進行状況を報告してもらい,研究テーマの設定,先行研究についての理解などについて個別に指導を行う.(第1回~第15回)
発表順や具体的な発表課題・内容等については,出席学生と担当教員とで相談をして決める.
伊勢田 哲治・伊藤 憲二「科学哲学科学史セミナー」(演習)後期水4
[授業の概要・目的]
科学史および科学哲学における,基礎的な知識の理解を向上させるとともに,近年の研究動向についての知識を得る.
それらを基盤として,卒業論文の作成に必要な基礎的な力を養う.
[到達目標]
科学哲学・科学史の基礎知識を向上させるとともに,論文作成のための基礎的な力を身につける.
[授業計画と内容]
授業に出席する各学生に研究の進行状況を報告してもらい,研究テーマの設定,先行研究についての理解などについて個別に指導を行う.(第1回~第15回)
発表順や具体的な発表課題・内容等については,出席学生と担当教員とで相談をして決める.
時間割表
前期
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
---|---|---|---|---|---|
1
8:45〜10:15
|
|||||
2
10:30〜12:00
|
伊藤憲二
核のグローバルヒストリー
|
伊藤憲二
科学史入門1
|
|||
3
13:15〜14:45
|
武田裕紀
科学革命の諸問題
|
大塚淳
科学哲学入門(上)
藤原辰史
食と農の人文学
|
|||
4
15:00〜16:30
|
伊藤憲二
科学哲学科学史セミナー
|
||||
5
16:45〜18:15
|
伊藤憲二
核と市民
|
後期
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
---|---|---|---|---|---|
1
8:45〜10:15
|
喜多千草
コンピューティングの技術文化史
|
||||
2
10:30〜12:00
|
伊藤憲二
日本の核開発史
|
伊藤憲二
方法としての日本科学史
|
伊勢田哲治
科学哲学入門上級
|
||
3
13:15〜14:45
|
瀬戸口明久
物質の環境史
|
伊勢田哲治
科学哲学入門(下)
藤原辰史
食と農の人文学
|
伊勢田哲治
確率の哲学 2
|
||
4
15:00〜16:30
|
伊勢田哲治
時間の科学哲学
|
伊勢田哲治・伊藤憲二
科学哲学科学史セミナー
|
大塚淳
哲学者のための数学
|
||
5
16:45〜18:15
|
伊藤憲二
科学史研究法:理論と実践
|