科学哲学科学史専修ウェブサイト 授業情報

今年度の授業

系共通

伊勢田 哲治「科学哲学入門(上)」(講義) 前期水3

[授業の概要・目的]
科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。 前期の講義においては、科学とはなにかという問題、科学的推論や科学的説明をめぐる問題を、科学全体に関わるテーマと個別の領域に関わるテーマに分けて論じる。

[到達目標]
科学とは何か、科学的推論とは何か、科学的説明は何か、といった問題について、科学哲学の基礎的な概念と考え方を理解し、それを適切に科学の具体的事例に適用できるようになる。

[授業計画と内容]
1 科学とは何か (4回)
2 科学的推論 (4回)
3 個別科学における科学的推論(2回)
4 科学的説明(2回)
5 個別科学における科学的説明(2回)
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伊勢田 哲治「科学哲学入門(下)」(講義)後期水3

[授業の概要・目的]
科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。 後期の授業では科学的実在論や科学の変化、科学と価値などのテーマを順にとりあげ、関連する個別科学におけるテーマも検討する。

[到達目標]
科学における実在の問題とは何か、科学はどのように変化するか、科学と価値の関係はどうなっているか、といった問題について、科学哲学の基礎的な概念と考え方を理解し、それを適切に科学の具体的事例に適用できるようになる。

[授業計画と内容]
1 実在論と反実在論(3回)
2 個別科学における実在論問題(3回)
3 科学の変化と科学革命(3回)
4 個別科学における変化の問題(2回)
5 科学と価値(3回)
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伊藤 憲二「科学史入門1(名著による科学史研究への招待)」(講義)前期水2

[授業の概要・目的]
科学史とはどのような学問だろうか。学問としての科学史は、自然科学をめぐる様々な出来事をたどって年表を作ることでも、いわゆる「科学者」の様々なエピソードを集めることでもなく、「科学」だけの歴史だけでもない。その一つの野心は、現在「科学」と呼ばれるものがどのように、いかなるものとして立ち現れたかを歴史的に調べることによって、「科学」が何かを明らかにすることである。その学問的内容は多様であり、さまざまな関心の人がその中から自分にとって興味のある内容や、アプローチを見出すことができる。この授業では科学史という研究分野を形作ってきた数々の名著のうち、日本語でも読める14の魅力あふれる著作を選んでおおよそ年代順に紹介し、関連する研究について述べる。それを通して科学史の研究における様々なアプローチとその可能性について論じ、科学史という学問の面白さを伝える。授業は講義形式で行い、事前に文献を読むことは要求しない。ただし、課題提出のために読むことが必要なこともある。

[到達目標]
・通俗的な科学史についての考え方を打破し、科学史という学問の多様性とその中の主要なアプロ
ーチを知る。
・科学史という学問がどのような点で履修者にとって興味深いものとなり得るのかを理解する。

[授業計画と内容]

  1. ガイダンス:科学史の通史なるものの虚構性について(シェイピン『科学革命とは何だったのか』)
  2. 科学思想史という方法とその限界:コイレ『コスモスの崩壊』
  3. 科学者集団の社会学:マートン『社会理論と社会構造』
  4. パラダイムと科学革命:クーン『科学革命の構造』
  5. 非西洋学問とニーダム問題:ニーダム『文明の滴定』
  6. 権力と規律と知識:フーコー『監獄の誕生』
  7. 実験装置と政治思想の科学史:シェイピン&シャッファー『リヴァイアサンと空気ポンプ』
  8. ジェンダーと科学史:シービンガー『科学史から消された女性たち』
  9. アクターネットワーク理論:ラトゥール『パストゥール』
  10. 物質文化の科学史:ギャリソン『アインシュタインの時計 ポワンカレの地図』
  11. 視覚実践と認識論的徳:ダストン&ギャリソン『客観性』
  12. 知識のグローバルヒストリー:ラジ『近代科学のリロケーション』
  13. 非知の科学論:オレスケス&コンウェイ『世界を騙しつづける科学者たち』
  14. まとめ:絡み合った世界の存在論:バラッド『宇宙の途上で出会う』
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伊藤 憲二 「方法としての日本科学史(重要著作を通した日本科学史研究入門)」(講義)後期水2

[授業の概要・目的]
日本の科学史を通して、科学について何を明らかにできるだろうか。この授業では日本の科学技術に関する歴史研究の重要著作のうち、特に刺激的で興味深いと思われる14の著作を選んでおおよそ年代順に紹介することを通して、日本の科学技術の歴史研究における様々なアプローチを説明し、それが「科学」とは何かを明らかにするのにどのような意義があるのかについて論じる。授業は講 義形式で行い、事前に文献を読むことは要求しない。ただし、課題では読むことが必要なこともある。

[到達目標]
・日本の科学技術についての歴史研究の様々なアプローチを知る。
・日本の科学技術についての歴史研究に関して、これまでどのような研究がなされ、今後、どのような研究がありうるのかについて理解する。

[授業計画と内容]

  1. イントロダクション:なぜ日本の科学技術史か?
  2. 日本の科学思想史:辻哲夫『日本の科学思想』(1973)
  3. 社会史(科学の体制化論):広重徹『科学の社会史』(1973)
  4. 戦後日本における科学の社会史::中山茂『科学と社会の現代史』(1981)
  5. 科学の文化史:金子務『アインシュタイン・ショック』(1981)
  6. 大学史:潮木守一『京都帝国大学の挑戦』(1984)
  7. 初期近代の分岐点:板倉聖宣ほか『日本における科学研究の萌芽と挫折』(1990)
  8. 国際関係・安全保障と科学技術:リチャード・サミュエルズ『富国強兵の遺産』(原著1996)
  9. 官僚性と科学:吉岡斉『原子力の社会史』(1999, 2011)
  10. 時間技術と近代:栗山茂久・橋本毅彦編『遅刻の誕生』(2001)
  11. 科学とイデオロギー:泊次郎『プレートテクトニクスの拒絶と受容』(2008)
  12. 科学社会学と災害研究:松本三和夫『構造災』(2012)
  13. 科学とジェンダー:古川安『津田梅子』(2022)
  14. まとめと番外編:伊藤憲二『励起:仁科芳雄と日本の現代物理学』(2023)ができるまで
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特殊講義(学部・大学院共通)

伊藤 憲二「軍事研究の科学技術史(1):マイクロ波研究開発を中心として」(特殊講義)前期月2

[授業の概要・目的]
この授業では軍事研究をめぐるさまざまな考えを整理しながら、主に20世紀の具体的な事例を通して軍事研究と科学技術史とのかかわり、とくに軍事研究によって科学技術がどう変わるのか、何を得て、何を失うのかを検討するものである。事例を通して戦争と軍事技術の内容にも立ち入ることを目指す。前期の授業では科学技術と戦争および戦略思想との関係を概観したのち、レーダーなどと深いかかわりのあるマイクロ波の研究と開発を中心とした事例を扱う。受講者の関心などによって講義内容を変更することがある。

[到達目標]
軍事技術と科学史とのかかわりを通して、科学が社会とどのように相互作用して発展し、性格を変えていくのかについての理解を深める。

[授業計画と内容]

  1. オリエンテーション: 軍事研究とはなにか
  2. 20世紀初頭までの科学技術と戦争・戦略思想(1) 古代・中世
  3. 20世紀初頭までの科学技術と戦争・戦略思想(2) 近世
  4. 20世紀初頭までの科学技術と戦争・戦略思想(3) 18世紀から19世紀
  5. 20世紀初頭までの科学技術と戦争・戦略思想(4) 20世紀初頭
  6. 索敵と科学技術:光学、音響、電波
  7. 通信技術と軍事
  8. 真空管の発明とマグネトロン
  9. 英国におけるマイクロ波研究とマグネトロン開発
  10. アメリカにおけるマイクロ波研究とマグネトロン開発
  11. 日本におけるマイクロ波研究とマグネトロン開発
  12. マイクロ波研究と基礎物理学
  13. 戦後の電子工学と軍事研究
  14. まとめ:軍事研究には良いこともあるのか?
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伊藤 憲二「軍事研究の科学史(2):核兵器を中心として」(特殊講義)後期月2

[授業の概要・目的]
この授業では軍事研究をめぐるさまざまな考えを整理しながら、主に20世紀の具体的な事例を通して軍事研究と科学技術史とのかかわり、とくに軍事研究によって科学技術がどう変わるのか、何を得て、何を失うのかを検討するものである。事例を通して戦争と軍事技術の内容にも立ち入ることを目指す。後期の授業では第二次世界大戦期における核研究・核開発とそれが戦後に及ぼした変化を中心とした事例を扱う。核反応論や同位体元素の分離技術を含む原爆開発の具体的な詳細を検討しつつ、それによる科学者の社会的な役割の変化、そしてオッペンハイマーという人物の理解に大きな重点を置く。受講者の関心などによって講義内容を変更することがある。

[到達目標]
軍事技術と科学史とのかかわりを通して、科学が社会とどのように相互作用して発展し、性格を変えていくのかについての理解を深める。

[授業計画と内容]

  1. オリエンテーション:世界戦略と科学技術
  2. 20世紀原子物理学の理論と実験
  3. エックス線と放射能性物質と人体への影響
  4. 核分裂の発見と連鎖反応の理論
  5. アインシュタインの責任?:質量欠損および核分裂による電磁的エネルギーの放出
  6. 英国における核物理、戦時核研究・核開発
  7. マンハッタン計画(1)
  8. マンハッタン計画(2)
  9. オッペンハイマー
  10. ドイツにおける戦時核研究
  11. 日本における戦時核研究
  12. 放射線影響研究と生物学
  13. 戦後日本における軍事研究と学術会議
  14. まとめ:軍事研究には良いこともあるのか?
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伊勢田 哲治「科学哲学入門上級 Advanced Introduction to Philosophy of Science」(特殊講義)前期金2

[授業の概要・目的]
The aim of this special lecture is to introduce the participants into the field of philosophy of science using a recent textbook, Recipes For Science. The textbook covers basic topics of philosophy of science using many concrete examples from scientific practice. In this semester we go through chapters on the definition of science, experimental method, models, inference and probability. Through lectures and class discussions, this class try to convey the basic concerns of philosophy of science.

[到達目標]
To understand philosophical way of looking at science. In particular, this means understanding philosophical arguments and positions covered in the lecture.

[授業計画と内容]
The lectures will be given in English, and structured according to the textbook.

  1. The importance of science
  2. Defining science
  3. Recipes for science
  4. Experiment
  5. Controlled experiment
  6. Non-experimental method
  7. Models in science
  8. Varieties of models
  9. Learning from models
  10. Deductive reasoning
  11. Hypothesis testing
  12. Inductive and abductive reasoning
  13. Roles of statistics and probability
  14. Probability theory
  15. Wrap-up

伊勢田 哲治「気候科学の哲学 Philosophy of Climate Science」(特殊講義)後期金2

[授業の概要・目的]
Climate science is a field of research which plays an essential role in policy making as to climate change. Because of the importance, climate science also became a focus of philosophical investigations in recent years. We will look at some basic issues in philosophy of climate science using Eric Winsberg’s book, Philosophy and Climate Science, as a guide.

[到達目標]
To understand philosophical ways of looking at climate science, and to acquire capacity to analyze them critically.

[授業計画と内容]
The lectures will be given in English, and structured according to the textbook.

  1. Introduction
  2. Data (1): nature of scientific data
  3. Data (2): evidence of warming
  4. Models (1): energy balance model
  5. 5odels (2): mediating models
  6. Simulations (1): what is computer simulation?
  7. Simulations(2):the purposes of climate modeling
  8. Probability
  9. Confidence (1) sources of uncertainty
  10. Confidence (2) quantification of uncertainty
  11. Decision (1): probability and inference
  12. Decision (2): risk and uncertainty
  13. Value (1): risk
  14. Value (2): values and biases
  15. wrap-up

市川 浩「ソ連における“科学”と“技術”の語られ方」(特殊講義)後期月4

[授業の概要・目的]
1933年,唯物論研究会の論客,戸坂潤は次のように述べている.「資本主義の破壊的危機と対蹠関係に立つものがソヴェート同盟に於ける社会主義建設であることは,改めて云ふ迄もない.技術の問題はここでは,資本主義の危機と結びつく代りに,それが本性上結び付くべきであった社会の建設と結び付く」(『戸坂潤全集』第1巻,勁草書房,1966年.233ページ).旧ソ連邦にその後生起した事態は,かつては曲がりなりにも社会主義に希望を託していたひとびとをも落胆させるのであるが,そこでの“科学”と“技術”の語られ方は新鮮で,大きな影響力を有していた.反面,それらはおうおうにして“唯一の官許哲学”であったマルクス主義に基づく,紋切り型の,無内容な政治的言説とも理解されていた.ソ連解体から30年以上を経て,マルクス主義の枠内とはいえ,そこで展開されたさまざまな議論に新しい光が当てられ,豊かな論点が浮かび上がってきた.本講義ではこれらを取り上げ,総じていささかの単純化をも赦すことなく,ソヴィエト流“科学論”,“技術論”の諸相を問うことにしたい.

[到達目標]
本講義を履修し,学修目的を達成すれば,ソ連という特殊な社会思想的文脈における“科学”と“技術”の語られ方を理解することで,現代科学思想史全般に関する理解をよりいっそう豊かににすることができる.

[授業計画と内容]

  • 1. ガイダンス―わが国“マルクス主義科学論・技術論”の源流へ―
  • 2. 前史:ヴラジーミル・ヴェルナツキーの“知識史”
  • 3. 転回:ボリス・ゲッセン「ニュートン『プリンキピア』の社会・経済的根源」
  • 4. 試練:相対性理論,量子力学とマルクス主義の相剋
  • 5. 探究:ソ連科学アカデミー・科学史=技術史研究所とハイム・ガルベルの“技術論”
  • 6. 要請:高等工業教育における“マルクス主義的技術史”科目とニコライ・ヴォルコフ
  • 7. 野心:ニコライ・マル派の“物質文化史”
  • 8. 逸脱:“ルィセンコ学説”という社会現象
  • 9. 内訌:“愛国的・唯物論的物理学者”
  • 10.真摯:ヤーコヴ・テルレツキーと量子力学の “唯物論的ペレストロイカ”
  • 11.含意:社会改良運動としての“サイバネティクス”
  • 12.終幕:ソ連最後の公認科学思想=“科学技術革命論”
  • 13.追加講義(1):受講生の希望などを通じて講師が必要と判断したトピックスについて講義する.
  • 14,追加講義(2):受講生の希望などを通じて講師が必要と判断したトピックスについて講義する.
  • 《定期試験》.
  • 15.フィードバック

喜多 千草「コンピューティングの技術文化史」(特殊講義)後期火1

[授業の概要・目的]
本特殊講義では、情報学の重要文献を取り上げながら、各年のテーマに沿って、現在のコンピューティングのスタイルがどのようにできあがってきたのか、それに関わった人々は、どのような技術的背景・知的状況の中で思考し、技術的なアイデアを生み、社会の中で実装につなげてきたのかを考えます。

 本年度のテーマは「戦争とコンピュータ」です。

 扱う資料はまずは文献ですが、近過去を対象にしているため、映像・音声資料、インタビュー記録、その他のデジタルデータなども史料となりますし、文献資料の中には技術論文、設計図なども含まれます。

[到達目標]
・現在進行形で日々変化しているコンピューティング環境のありようについて、歴史的な理解をもつことで大局的な理解ができるようになる。

[授業計画と内容]

  1. オリエンテーション
  2. 軍事研究をめぐる近年の議論の整理
  3. 電信技術と帝国
  4. 総力戦と技術
  5. 暗号解読とコンピュータ
  6. 「巨大な脳」の構築
  7. 人間機械混成系という概念
  8. 全米防空網SAGE
  9. 航空宇宙開発とコンピュータ
  10. コンピュータ・ネットワークの誕生
  11. コンピュータ・ネットワークの発展
  12. スターウォーズ構想とコンピュータ専門家
  13. 人工知能と戦争
  14. 戦乱とインフラとしての情報技術
  15. フィードバック

藤原 辰史「食と農の人文学」(特殊講義)前期水3

[授業の概要・目的]
とりわけ20世紀以降、食と農はどのように変化を遂げてきたのか? ドイツと日本を中心に、食べものをめぐる制度や文化や技術の変遷を追う。この講義の目的は、現代史の知識を蓄えることではない。あるいは、現代史の概略をつかむことでもない。現代史を批判的に眺める目を獲得し、食と農の未来の構築するためのヒントを考えることである。

[到達目標]
現代史における食と農の変遷について理解し、現代社会の食と農の問題を広いパースペクティヴでとらえることができるようになる。

[授業計画と内容]
以下の課題について、1週から3週かけて講義する予定である(全15回)

  1. 食をめぐる研究の方法
  2. 明治大正期の食
  3. アジア太平洋戦争までの食
  4. 戦後の食
  5. 牛乳の歴史学
  6. 品種改良の歴史学
  7. フィードバック

藤原 辰史「食と農の人文学」(特殊講義)後期水3

[授業の概要・目的]
とりわけ20世紀以降、食と農はどのように変化を遂げてきたのか? ドイツと日本を中心に、食べものをめぐる制度や文化や技術の変遷を追う。この講義の目的は、現代史の知識を蓄えることではない。あるいは、現代史の概略をつかむことでもない。現代史を批判的に眺める目を獲得し、食と農の未来の構築するためのヒントを考えることである。。

[到達目標]
現代史における食と農の変遷について理解し、現代社会の食と農の問題を広いパースペクティヴでとらえることができるようになる。

[授業計画と内容]
以下の課題について、1週から3週かけて講義する予定である(全15回)

  1. 食糧戦争としての第一次世界大戦
  2. 有機農業の歴史
  3. 毒ガスと農薬の歴史
  4. トラクターの歴史
  5. 戦時期の農村女性たち
  6. 食糧戦争としての第二次世界大戦
  7. フィードバック

平岡 隆二「江戸の宇宙観」(特殊講義)前期集中

[授業の概要・目的]
江戸時代の天文暦学者たちは、西洋や中国から伝来する古今東西の天文学知識を手掛かりに、独自 の宇宙観・自然認識を練り上げていった。その成立と変遷をたどることで、科学史・思想史・日本文化史・東西交流史についての理解を深める。また、京大が所蔵する関連史料の実地調査に参加し、その整理や取り扱いの方法を学ぶ。

[到達目標]
現代とは異なる自然認識とその利用のあり方を、具体的な史料に即して理解する能力を養う。またその特質と意義を、当時の文脈を踏まえつつ俯瞰的に説明する能力を養う。

[授業計画と内容]

1.本授業の位置づけ
2・3.近世日本天文学とその史料
4・5.キリシタンと科学伝来
6・7.西学書の渡来と影響
8・9.江戸後期の天文暦学―蘭学と梵暦運動―
10~14.書誌調査とその方法
15.フィードバック

井頭 昌彦「人文学・社会科学の研究方法論:質的研究アプローチの意義と課題」(特殊講義)前期集中

[授業の概要・目的]
人文学および社会科学には多様な研究アプローチが存在するが、本講義ではその中でも「質的研究」とラベリングされる一群の研究アプローチに焦点化し、研究方法論という観点からその意義と課題について議論する。

[到達目標]
・人文学および社会科学における質的研究アプローチについて概要を理解する。
・対置される量的研究と比較しながら、質的研究の意義と課題について理解する。
・質的研究に対してどのような批判的議論がなされてきたかを把握し、自分なりの回答ができるようになる。
・研究方法論について議論する際の基本的な心構えを身につける。

[授業計画と内容]
基本的に以下に従って講義を進めます.ただし受講者の反応および進捗に応じて順序や内容などを変えることがあります.

  1. イントロ(社会科学のあり方)/推測統計
  2. RCT
  3. 擬似実験
  4. 質的研究
  5. 量的研究と質的研究の関係性(教育研究を例に)
  6. 人文学における質的研究(歴史学&文化人類学)/閑話:地球外生命体との接触?
  7. 中間レポート講評
  8. 質的研究をめぐる社会科学方法論争(1):KKVの主張とKKV論争
  9. 質的研究をめぐる社会科学方法論争(2):KKV批判の概略
  10. 質的研究をめぐる社会科学方法論争(3):通俗ベイズ、過程追跡、QCA
  11. KKVへのさらなる応答(1):教育学と政策学の視点から
  12. KKVへのさらなる応答(2):EMCAと文化人類学の視点から
  13. 新たな火種:質的研究におけるQRPsと価値中立性理念
  14. 科学哲学的観点からの総括
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演習(学部・大学院共通)

伊藤 憲二「分類の科学論:歴史的存在論と知識のインフラストラクチャー」(演習)前期火3

[授業の概要・目的]
我々はいかに世界の構造を作り上げ、我々自身を作り上げるか?世界の構造の典型が分類であり、 分類について語ることは存在論を語ることである。同時に分類は個人によってではなく知識のインフラストラクチャーによってこそを可能になる。従って、分類について語ることは知識のインフラストラクチャーについて語ることでもある。存在論や知識がそれ自体歴史を持つように、分類もまた、それ自体歴史をもつ。従って分類は、科学史あるいは知識の歴史の対象となる。この授業では、歴史的存在論と知識のインフラストラクチャーを横断する、分類についての科学史、科学社会学、科学哲学の著作のうち、比較的重要で、入門的なものを取り上げ、分類についての科学論の出発点とする。とくに重点を置くのは、精神疾患や生物の分類である。取り上げる文献は、入手可能性、参加者の関心・語学力等に応じて、変更する可能性がある。

[到達目標]
分類についての科学史、科学社会学、科学哲学の入門的な文献の読解を通して、分類についての科学論的理解を深めると同時に、関連分野の文献を理解し、討論する技能を高める。

[授業計画と内容]

  1. オリエンテーション:ミシェル・フーコー『言葉と物』から「序」
  2. 歴史的存在論:ハッキング『知の歴史学』から第1章「歴史的存在論」(pp. 1- 66)と第6章「人々を作り上げる」(pp. 209- 235)
  3. ジェンダーと分類:ロンダ・シービンガー『女性を弄ぶ博物学』から「なぜ哺乳類は哺乳類と呼ばれるのか?」(pp. 52- 88)と「ジェンダーと人種の理論」(pp. 163- 204)
  4. 体系学の発展と生物学の哲学(1):三中信宏『系統体系学の世界:生物学の哲学とたどった通のり』(勁草書房, 2018)から第1章「第一幕:薄明の前史―一九三〇年代から一九六〇年代まで」(pp. 21-126)
  5. 体系学の発展と生物学の哲学(2):三中信宏『系統体系学の世界:生物学の哲学とたどった通のり』(勁草書房, 2018)から第2章「第二幕:論争の発端―一九五〇年代から一九七〇年代まで」 (pp. 127-204)
  6. 体系学の発展と生物学の哲学(3):三中信宏『系統体系学の世界:生物学の哲学とたどった通のり』(勁草書房, 2018)から第3章「第三幕:戦線の拡大―一九七〇年代から現代まで」(pp. 205-308)
  7. 体系学の発展と生物学の哲学(4):三中信宏『系統体系学の世界:生物学の哲学とたどった通のり』(勁草書房, 2018)から第4章「生物学の哲学はどのように変容したか:科学と科学哲学の共進化の現場から」(pp. 309-344)
  8. 体系学論争を越えて:Beckett Sterner and Scott Lidgard, “Moving Past the Systematics Wars,” Journal of the History of Biology 51 (2018): 31-67.
  9. 分類とインフラストラクチャー(1): Geoffrey C. Bowker and Susan Leigh Star, Sorting Things Out: Classification and Its Consequences (MIT Press, 1999), “Introduction”(pp. 1-32), Chapter 1 “Some Tricks of the Trade in Analyzing Classification” (pp. 33-50).
  10. 分類とインフラストラクチャー(2): Geoffrey C. Bowker and Susan Leigh Star, Sorting Things Out: Classification and Its Consequences (MIT Press, 1999), “I. Classification and Large-Scale Infrastructure”(p. 51), Chapter 2, “The Kindness of Strangers: Kinds and Politics in Classification Systems,” (pp. 53-106)
  11. 分類とインフラストラクチャー(3): Geoffrey C. Bowker and Susan Leigh Star, Sorting Things Out: Classification and Its Consequences (MIT Press, 1999), Chapter 3, “The ICD as Information Infrastructure”(pp. 107-133) (Chapter 4, “Classification, Coding, and Coordination,” pp. 135-161).
  12. 分類とインフラストラクチャー(4): Geoffrey C. Bowker and Susan Leigh Star, Sorting Things Out: Classification and Its Consequences (MIT Press, 1999), “IV The Theory and Practice of Classifications”(pp. 283-284), Chapter 9, “Categorical Work and Boundary Infrastructures: Enriching Theories of Classification”(pp. 285-317), Chapter 10, “Why Classifications Matter” (pp. 319-326)
  13. 種問題の科学哲学:網谷祐一『種を語ること、定義すること―種問題の科学哲学』(勁草書房, (2020)から、第一章「種問題とは何か」、第四章「「投げ捨てられることもあるはしご」としての種」
  14. 分類と種問題に対する実践的・新物質主義的アプローチ
    David Ludwig, “From Naturalness to Materiality: Reimagining Philosophy of Scientific Classification,” European Journal for Philosophy of Science 13, 8 (2023). https://doi.org/10.1007/s13194-023-00509-w.
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伊藤 憲二「科学史研究法:理論と実践」(演習)後期火3

[授業の概要・目的]
科学史の研究にはよく用いられる理論的な枠組みや、実際の研究を進めていく上で、役に立つノウハウや、様々な道具が存在する。この演習では、卒業論文、修士論文、博士論文などで、科学史およびその周辺分野の研究をこれからしようとする人を対象に、科学史分野で用いる理論的枠組みを考えるのに有益な論文を読みつつ、研究や研究者としての活動を実際に遂行するにあたって有用なリソースやノウハウを紹介し、実際の研究の一部を演習する。

[到達目標]
科学史の理論的枠組みの一部を習得し、同時に研究を行うスキルの基礎的なものを身につけること。

[授業計画と内容]
この授業は各回の授業は理論パートと演習パートからなるが、授業の6回目と14回目は各自の提出物に基づいたワークショップ形式で行う。
理論パート:Biagioli ed., Science Studies Readerから論文をピックアップして演習実践パート:研究上のリソースやノウハウを紹介し、時には実演する。
ワークショップ:研究に関する実際の作業に基づき、合評をする。

  1. ガイダンス、概要説明、分担決定、科学史研究によく使うツール
  2. 理論:実験と研究者集団の科学史的分析: Kohler, “ Moral Economy”
    実践:テーマ設定と研究設計、研究計画書
    レポート課題1発表
  3. 理論:技術の社会構築: MacKenzie, “ Nuclear Missile Testing
    実践:先行研究と一次資料の文献調査法:科学史関係のデータベース、図書館、その他
  4. 理論:標準の科学論: Schaffer, “ Late Victorian Metrology”
    実践:文献の入手と整理の実践(書籍、論文、その他、図書館と書店の利用法)
  5. 理論:実験室の科学史: Shapin, “ House of Experiment”
    実践:リーディングとノートテイキングの技法
    課題1レポート提出期限
  6. 研究計画書ワークショップ
  7. 理論: 非西洋科学: Hart, “ On the Problem of Chinese Science”
    実践:書評と査読
    レポート課題2発表
  8. 理論:「パラダイム論」を超えて: Galison,“ Trading Zone”
    実践:アーカイブズ調査/資料撮影とその整理
  9. 理論:科学と表象: Martin, “ Toward an Anthropology of Immunology”
    実践:新聞データベースの利用
  10. 理論:実験室とANT: Latour, “ Give Me a Laboratory”
    実践:学会発表とスライド
  11. 理論:バウンダリー・オブジェクト: Star and Griesemer, “ Institutional Ecology”
    実践:ライティングの技法とバックアップ
  12. 理論:実験と物質の科学論: Pickering, “ The Mangle of Practice”
    実践:スタイルと論文投稿と改稿
  13. 理論:新物質主義とフェミニズム: Barad, “ Agential Realism”
    実践:科学史における研究倫理
    レポート課題2提出期限
  14. 書評/査読報告ワークショップ
  15. フィードバック

伊勢田 哲治「化学の哲学」(演習)前期金3

[授業の概要・目的]
化学はどのような点で哲学の問題となるだろうか。この問題を考える化学の哲学は1990年代から分野としての形を整え、次第に科学哲学の一分野としての存在感を増している。この授業では、近年の論文集からいくつかの論文を読むことで、化学と物理学の関係や化学の存在論など化学の哲学の主要なテーマについて理解を深める。

[到達目標]
化学の哲学における主要なテーマと主な立場を理解し、それらの立場を批判的に検討できるようになる。

[授業計画と内容]
以下の論文集からいくつかの論文を輪読形式で読み、内容についてディスカッションを行う。
Scerri, E. and Fisher, G. eds. (2016) Essays in the Philosophy of Chemistry. Oxford University Press. (S&F)
Scerri, E. and McIntyre, L. eds, (2015) Philosophy of Chemistry: Growth of a New Discipline. Springer. (S&M)

基本的に一回の授業でテキスト7~8ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。
授業の進行は以下のとおり。

  • イントロダクション(1回)学生による発表担当
  • Scerri “The changing views of a philosopher of chemistry on the question of reduction (2回)(S&F) Manafu “A novel approach to emergence in chemistry” (2回)(S&M)
  • Harre “Causality in chemistry; regularities and agencies (3回)(S&F) Chang “Scientific realism and chemistry” (3回)(S&F)
  • Hendry “Natural Kinds in Chemistry” (2回)(S&F) Needam “One substance or more?” (2回)(S&M)

伊勢田 哲治「確率の哲学」(演習)後期金3

[授業の概要・目的]
確率の哲学は哲学の諸問題だけでなく隣接するさまざまな問題領域に適用される応用範囲の広い分野である。しかしその基礎概念は必ずしもよく理解されているとは言えない。この演習では確率の哲学に関するアンソロジーを利用して、この分野についてのより正確で深い理解を身に着けていくことを目指す。

[到達目標]
確率の哲学の様々な立場を正しく理解し、それらを批判的に検討できるようになる。

[授業計画と内容]
以下のアンソロジーからいくつかの論文を輪読形式で読み、内容についてディスカッションを行う。
Hajek, A. and Hitchcock, C. eds. (2016) The Oxford Handbook of Probability and Philosophy. Oxford University Press.

基本的に一回の授業でテキスト7~8ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。
授業の進行は以下のとおり。イントロダクション(1回)
La Caze “Frequentism” (3回)
Zynda “Subjectivism”(3回)
Gillies “The propensity interpretation” (2回) Millstein “Probability in biology” (3回) Kotzen “Probability in Epistemology” (3回)

伊勢田 哲治・伊藤 憲二「科学哲学科学史セミナー」(演習)前期水4

[授業の概要・目的]
科学史および科学哲学における,基礎的な知識の理解を向上させるとともに,近年の研究動向についての知識を得る.
それらを基盤として,卒業論文の作成に必要な基礎的な力を養う.

[到達目標]
科学哲学・科学史の基礎知識を向上させるとともに,論文作成のための基礎的な力を身につける.

[授業計画と内容]
授業に出席する各学生に研究の進行状況を報告してもらい,研究テーマの設定,先行研究についての理解などについて個別に指導を行う.(第1回~第15回)
発表順や具体的な発表課題・内容等については,出席学生と担当教員とで相談をして決める.

伊勢田 哲治・伊藤 憲二「科学哲学科学史セミナー」(演習)後期水4

[授業の概要・目的]
科学史および科学哲学における,基礎的な知識の理解を向上させるとともに,近年の研究動向についての知識を得る.
それらを基盤として,卒業論文の作成に必要な基礎的な力を養う.

[到達目標]
科学哲学・科学史の基礎知識を向上させるとともに,論文作成のための基礎的な力を身につける.

[授業計画と内容]
授業に出席する各学生に研究の進行状況を報告してもらい,研究テーマの設定,先行研究についての理解などについて個別に指導を行う.(第1回~第15回)
発表順や具体的な発表課題・内容等については,出席学生と担当教員とで相談をして決める.

時間割表

前期

1 8:45〜10:15
2 10:30〜12:00
伊藤憲二 軍事研究の科学技術史(1)
伊藤憲二 科学史入門1
伊勢田哲治 科学哲学入門上級
3 13:15〜14:45
伊藤憲二 分類の科学論
伊勢田哲治 科学哲学入門(上)
藤原辰史 食と農の人文学
伊勢田哲治 化学の哲学
4 15:00〜16:30
伊勢田哲治・伊藤憲二 科学哲学科学史セミナー
5 16:45〜18:15

後期

1 8:45〜10:15
喜多千草 コンピューティングの技術文化史
2 10:30〜12:00
伊藤憲二 軍事研究の科学史(2)
伊藤憲二 方法としての日本科学史
伊勢田哲治 気候科学の哲学
3 13:15〜14:45
伊藤憲二 科学史研究法
伊勢田哲治 科学哲学入門(下)
藤原辰史 食と農の人文学
伊勢田哲治 確率の哲学
4 15:00〜16:30
市川浩 ソ連における“科学”と“技術”の語られ方
伊勢田哲治・伊藤憲二 科学哲学科学史セミナー
5 16:45〜18:15

過去の授業