現代史学専修 研究室からのメッセージ

現代史学専修

文学部 基礎現代文化学系 現代史学専修

現代史学専修では、現代世界の歴史を研究します。歴史学の中で、いちばん新しい時代を研究するところ。あるいは、現代世界を歴史学的に考察するのが現代史学専修です。

現在、わたしたちが住んでいる世界では、地球上の遠く離れたところで生じた事件(たとえば、2001年9月11日の世界貿易センタービル・テロ事件)が、ただちに自分たちの生活に影響をおよぼします。いや、たんに影響をおよぼすだけではなくて、遠く離れたところで生じたできごとであっても、ほとんど瞬時のうちに知ることができます(テレビの臨時ニュースであの映像を見た人も多いでしょう)。しかもその情報を、これまた遠く離れたところに住んでいる互いに顔も見たことない人々と共有しあっています。つまり、わたしたち現代世界に住む人間は、地域や国家を越えたグローバルな規模において、互いに密接なつながりを、むずかしく言えば相関関係を、もちながら日々生活しているのです。

このような相関関係に人類社会がおかれるようになったのは、それほど昔のことではありません。ようやく20世紀になってからのことなのです。ほんとうの意味での「世界史」はこのような現代世界においてはじめて可能になりました。現代史学とは「世界史」にほかなりません。だから、現代史学専修では、常にグローバルな視点に立って、「比較」と「相関」の見地から「世界史」を研究します。

文学研究科 現代文化学専攻 現代史学専修

現代史学講座が、京都大学文学部史学科に初めて設置されたのは、1966年という、20世紀の後半へと向かう時期であった。現代史学は、20世紀の後半に入ってはっきりとした世界史の展開に対する新しい認識を基礎として、学問的な自立を目指したのである。現代史学は歴史学の一分野である。しかし、それは19世紀に成立した国民史的な歴史学とは明確に一線を画している。いうならば現代史学は、20世紀はじめからの世界史が、地域や国家を越えた地球規模の人類史として、互いに深い相関性をもって展開しているという新しい観点に立っている。もとより20世紀においても国家システムは厳然として存在し、世界政治の大きな規範となっていた。しかし、同時に、各々の国家・社会の動きは、常に互いの国境や地域の区別を広域的に行き交うモノや人、科学や情報、あるいは世界的な規模の政治的・社会的・経済的動向によって影響を受けているのであり、その相関的影響を十分に把握せずして、現代世界の歴史的ダイナミズムを解明することは不可能なのである。対象を世界史に求め、常にグローバルな視点をもち、国家単位の政治史を検討するにも「比較」や「相関」の視点を導入する。さらには歴史を動かす大きな要因として国家の規範を越えた種々の社会的、経済的、文化的、さらには科学的動向にも注目する。そうした世界史への広い知識を基礎に、20世紀史、さらには21世紀史の研究を進めようとするのが、本専修の特徴である。

日本現代史も本専修が対象とする重要な研究領域である。日本の近代化は西洋との相関関係なくしてはあり得なかった。現代日本の様態も東アジアの政治社会動向、あるいはアメリカ合衆国・西欧との関係をぬきにしては考え難い。日本現代史は、そのような世界的相関を認識の基礎において、近代から現代へと展開する大正から昭和期前半の日本社会の歴史位相、さらには第二次世界大戦期から戦後日本の政治・社会動態を、歴史学が及ぶ限り広い手法をもって総合的に分析・検討しようとする研究領域である。

専修のカリキュラムとして個別には、アメリカ現代史、ヨーロッパ現代史、日本現代史、アフリカ現代史、中国現代史、朝鮮現代史などの特殊講義が開講されている。また20世紀の国際関係も本専修がカバーする重要な領域である。演習には現代史学演習の他に、東洋現代史演習、日本近代文書演習がある。特殊講義・演習を担当するのは、本専修所属の専任教員3名の他、二十世紀学専修所属の杉本淑彦教授、京都大学人文科学研究所の教員(水野直樹教授、石川禎浩教授、高木博志教授、村上衛准教授、藤原辰史准教授)、および総合人間学部、人間・環境学研究科のブライアン・ハヤシ(Brian M. Hayashi)教授である。

本専修を志望しようとする学生は、いずれの分野あるいは特定地域を自らの研究テーマとして選ぶのも自由である。しかし、20世紀世界史および日本現代史が世界的関連を通してこそ、よりよく理解できるものである以上、本専修を選ぶ学生は幅広く現代世界に係わる知識を持つ学生でなければならない。また最低でも二つの外国語をマスターした学生であることをわれわれは期待している。