60号(2017年)
59号(2016年)
58号(2015年)
57号(2014年)
56号(2013年)
55号(2012年)
54号(2011年)
53号(2010年)
52号(2009年)
51号(2008年)
50号(2007年)
49号(2006年)
48号(2005年)
47号(2004年)
46号(2003年)
45号(2002年)
44号(2001年)
43号(2000年)
西洋史学専修は本年度、三回生一四名、修士課程一回生三名を新しいメンバーとして迎えました。学部学生三八名、修士課程一五名、博士後期課程六名、合計五九名のかなり大所帯です。四月二一日に開かれた新歓コンパでは、恒例の一言挨拶を聞きましたが、参加者全員が話し終えるのにかなりの時間を要しました。しかし、仲間が多いことは嬉しいことで、教員も元気をもらっております。
三月には、九名が学部を卒業、修士課程を二名が修了しました。また、二名が博士後期課程を終えました。学部卒業、修士修了の皆さんは、企業や高校教員など多様な進路を歩み始めています。ポーランド留学から帰国した博士後期課程の福元健之さんが、四月から関西学院大学特任助教として就職され、プロジェクトによる研究活動を開始しています。皆さんのご活躍を祈ります。
専任教員は今年度も南川、小山、金澤の三人で、それぞれフル回転で仕事をしています。授業につきましては、人文科学研究所の小関隆教授、伊藤順二准教授、藤井俊之助教、小川佐和子助教の皆さんに指導いただき、学外からも、山辺規子・奈良女子大学教授、栗原麻子・大阪大学教授(前期)、桐生裕子・神戸女学院大学准教授(後期)の先生方に担当いただいています。
大学院生は、授業や自身の研究活動のほか、学会・研究会への参加や運営の実務担当などにたいへん忙しくしています。五月開催の日本西洋史学会大会では谷口良生さんと安平弦司さんが、六月開催の歴史家協会大会では酒嶋恭平さんが、それぞれ意欲的な研究報告をおこないました。
今年度の西洋史読書会例会は、同窓の梶さやかさん(岩手大学准教授)の著書『ポーランド国歌と近代史』(群像社)を取り上げ、同じく同窓の上垣豊さん(龍谷大学教授)に書評をお願いする合評会として、七月二二日に開催します。また、一一月三日の西洋史読書会大会は、午前中通常通り自由論題報告を行い、午後にシンポジウムを開催します。「西洋史における時代区分をめぐって」と題して、古代史から現代史まで関係する大きな問題を扱うことにしております。京都大学の全学行事のため百周年時計台記念館のホールが使用できませんので、文学部校舎近くの総合研究三号館(土木総合館)に会場を移して開催いたします。同窓の皆様には、どうか多数ご参加くださいますようにお願いしたします。 (南川記)
服部良久先生は昨年度末に定年を迎えられ、名誉教授となられました。四月一七日には服部先生ご夫妻をお迎えして京都ホテルオークラにて「服部良久先生のご退職をお祝いする会」が開催され、先生のご指導をうけた同窓の方々にご参加をいただきました。
今年度の西洋史学専修の在籍者は、新三回生二二名を迎えて学部生が三四名となり、大学院は修士一五名、博士後期課程九名(うち二名が留学中)、研修員一名で、計五九名の大所帯となりました。他方で、教室を運営する教員のほうは、服部先生のご退職にともなって、四月より南川、小山、金澤の三名となりました。幸い今年度は、客員教授として大阪市立大学の大黒俊二先生をお招きすることができ、中世史の演習を担当していただいております。また、学外からの非常勤講師として、関西学院大学の藤井崇先生(古代史、後期)、立命館大学の小林功先生(中世史、前期)、摂南大学の林田敏子先生(近代史、前期)、武蔵大学の踊共二先生(近世史、集中講義)にご出講をお願いしております。学内からは人文科学研究所の小関隆先生に特殊講義を、伊藤順二先生に特殊講義とロシア語講読を、藤井俊之先生に独書講読をそれぞれご担当いただいております。
昨年度のことになりますが、岸本廣大氏が論文「重層的な古代ギリシアの共同体に関する研究――コイノン・エトノス・ポリス」によって博士号を取得しました。本年度前半期の学会活動では、増永理考氏(古代史、D3)と春日あゆか氏(近代史、研修員)が日本西洋史学会大会で、元根範子氏(中世史、D2)が歴史家協会大会で意欲的な報告を行いました。
読書会の活動は、今年度も、院生のスタッフを中心に進められています。七月九日の「読書会例会」では、上垣豊著『規律と教養のフランス近代』(ミネルヴァ書房、二〇一六年刊)がとりあげられました。書評者として明治大学より前田更子先生をお迎えし、院生のコメントもふまえて活発な議論が展開されました。「読書会大会」は、今年も十一月三日に京都大学百周年時計台記念館において開催を予定しております。みなさまのご参加を心よりお待ちしております。 (小山記)
今年度の西洋史学専修は、新3回生10名を加え、学部生32名、大学院では修士課程11名、博士後期課程10名(うち5名は留学中)の計53名の大所帯となりました。専修主任の南川さんは4月より副研究科長・評議員に就任、多忙な日々をお過ごしです。大学院修了者では、京都大学白眉研究員であった藤井崇さん(古代史)が関西学院大学に、君塚弘恭さん(フランス近世史)が早稲田大学に就職されました。
授業では、学外非常勤講師として本年前期には京都府立大学の川分圭子さん(イギリス近代史)、後期には甲南大学の佐藤公美さん(イタリア中世史)、また九月には集中講義で千葉大学の澤田典子さん(古代ギリシア史)にご出講をお願いしています。学内からは例年通り、人文科学研究所の小関隆さんに特殊講義を、伊藤順二さんに特殊講義とロシア語講読を、小川佐和子さんにフランス語講読をお願いしています。
読書会例会は8月2日に、南直人さんの著書『≺食≻から読み解くドイツ近代史』(ミネルヴァ書房、2015年刊)をとりあげ、人文科学研究所の藤原辰史さんを評者として闊達な議論を行いました。
本年前半期の学会活動では、博士後期課程の杉本陽奈子さん、山下孝輔さん(何れも古代史)が「日本西洋史学会第64回大会(富山大)」で、安平弦司さんが「歴史家協会(同志社大)」で報告し、それぞれ好評を博しました。この他、海外留学中の博士後期課程の院生やOD・PD諸君も積極的に国内外の学会やワークショップで研究成果を公表しており、やはり「国際化」には教員より院生の方が適応性があるようです。「読書会大会」も例年通り11月3日、時計台記念館での開催のため、院生スタッフを中心に鋭意準備を進めております。近年、参加者数がやや減少気味で、従来通り「文化の日」がよいのか、私学勤務の方には週末の方がよいのか、近々アンケート調査の実施を考えておりますのでご協力をお願い致します。
公表された国立大学法人における人社系部局の統廃合という、高等教育の展望も理念もない政府の方針に対しては、大学を超えた教員の連携がなければ、大学間差別と競合の策に絡め取られることでしょう。国立大で人文学、歴史学を学ぼうとする多数の若者の希望を無視してはなりません。
なお私(服部)は今年度をもちまして定年退職致します。26年の京都大学在職中、皆様には大変お世話になりました。 (服部記)
同窓の皆様、いかがお過ごしでしょうか。西洋史研究室の様子をお伝えいたします。
まず、服部良久教授が文学研究科長・文学部長としての2年間の激務を無事に終えられましたことをご報告いたします。専修の主任教授は引き続き南川高志教授がつとめます。今春は学部生9名が卒業、修士課程院生6名が修了しました。代わって、新しい研究室メンバーとして、学部3回生19名(近年では前例のない大人数です)、修士課程1回生6名、博士後期課程1回生3名を迎え、現在の研究室所属学生は、学部32名、大学院修士課程12名、博士後期課程9名、合計53名です。また、博士後期課程修了者のうち、今春、南雲泰輔氏が山口大学、福嶋千穂氏が東京外国語大学、松本涼氏が福井県立大学に、それぞれ就職されました。益々のご活躍をお祈りしております。
研究室院生・博士後期課程修了者の研究活動はすこぶる活発です。5月31日・6月1日の日本西洋史学会大会では中田恵理子氏、6月の歴史家協会大会では杉本陽奈子氏が意欲的な研究報告をいたしました。なお、昨年度には博士後期課程院生のヨーロッパ派遣も実施し、12月には「日韓若手西洋史研究者ワークショップ」を開催して、韓国から4名、当研究室から5名の研究報告を得て、充実した学術的交流をおこなうことができました。小山哲教授が何年も前から培ってこられた韓国の研究者とのつながりが、この実現には決定的に重要でした。ここで読まれたペーパーは、註を付し英文校閲を経た上で、まとめて冊子にいたしましたことも申し添えておきます。また、今年3月にも、ドイツとスイスから招聘した外国人研究者を中心に、古代史に関するセミナーと国際ワークショップが持たれ、当研究室メンバーも報告者として登壇し、活発な議論をしました。加速する国際化の流れを、若くて情熱にあふれる研究者はしっかりと受け止めて、努力し、前向きに自分の糧にしてくれているようで、頼もしく感じております。
恒例行事としましては、7月19日の西洋史読書会例会では金澤周作編『海のイギリス史』(昭和堂、2013年)が取り上げられ、専門家だけでなく学部生も含む評者の方々の報告をきっかけに、活発な議論をすることができました。それから、今秋11月3日の西洋史読書会大会は、第82回になります。どうかご参集ください。
末筆ながら、同窓の皆様のご健康とご活躍をお祈りいたします。(金澤記)
同窓の皆様、いかがお過ごしでしょうか。西洋史研究室の様子をお伝えいたします。
まず、当研究室が中心となって昨年より準備してきた第63回日本西洋史学会大会が、5月11日、12日の両日にわたり、京都大学吉田キャンパスで開催されました。参加者総数は昨年度大会よりも100名も多い900名に及び、内容も充実した会となりました。大会準備と開催にあたって、同窓の皆様からご心配やご支援をいただいたことに対し、厚くお礼申し上げます。
大きな課題であった学会主催を無事盛会裏に終えて、研究室教員一同はほっとしておりますが、文学研究科長・文学部長2年目の服部良久教授は、大学組織改編など難題を前に、引き続き忙しくされています。
今春は学部生5名が卒業、修士課程院生6名が修了しました。代わって、新しい研究室メンバーとして、学部3回生8名、修士課程1回生4名、博士後期課程1回生2名を迎え、現在の研究室所属学生は、学部23名、大学院修士課程12名、博士後期課程7名、合計42名です。また、博士後期課程修了者のうち、昨秋に佐藤公美氏が甲南大学に、今春櫻井美幸氏が宮城学院女子大学、梶さやか氏が岩手大学、山中聡氏が東京理科大学、そして藤井崇氏が京都大学白眉センターに、それぞれ就職されました。益々のご活躍をお祈りしております。
研究室院生・博士後期課程修了者の研究活動はすこぶる活発です。5月の日本西洋史学会大会では上柿智生氏と岸本廣大氏、6月の日本西洋古典学会大会では南雲泰輔氏、歴史家協会大会では谷口良生氏が意欲的な研究報告をいたしました。また、無線ランが整備されるなど、機器の点で、西洋史研究室の研究環境がずいぶんよくなったことも報告させていただきます。さらに、昨年度末には博士後期課程院生のヨーロッパ派遣も実施し、イギリスからは若手研究者を招聘して院生との学術交流もおこないました。今年度も、院生を派遣するだけでなく、韓国の若手西洋史研究者を招いて、学術交流を行う予定です。欧米と学術交流だけでなく、アジアの歴史研究者との交流もぜひ進めてゆきたいと思っています。
今秋11月3日の西洋史読書会大会は、第81回になります。どうかご参集ください。同窓の皆様のご健康とご活躍をお祈りいたします。(南川記)
東日本大震災から一年と三か月がたちました。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
今年度の西洋史学専修の在籍者は、学部生二一名、院生は修士一四名、博士後期課程七名(うち一名が留学中)の計四二名となりました。昨年よりも学部生一名増、修士四名増で、とくに大学院演習は質疑応答が活発になったように思います。それとは別に、二つの事情から、西洋史研究室のスタッフは、例年とは少し違った緊張感をもって仕事をしております。一つは、来年五月十一・十二両日に京都大学で開催される日本西洋史学会第六三回大会に向けて、本格的な準備作業に取り組んでいることです。もう一つは、服部良久教授が本年四月より文学研究科長に就任したことです。多忙を極める服部教授に代わって、今年度の教室主任は南川高志教授が担当しています。
本年度は、学外からの非常勤講師として、関西大学の朝治啓三先生(中世史、通年)、立命館大学の森永貴子先生(近代史、前期)、千葉商科大学の師尾晶子先生(古代史、集中講義)にご出講をお願いしております。学内からは、人文科学研究所の小関隆先生に特殊講義を、伊藤順二先生に特殊講義とロシア語講読を担当していただいております。
昨年度のことになりますが、南雲泰輔氏が論文「ローマ帝国の東西分裂 ――ローマ帝国解体期の政治行政史的研究」によって博士号を取得しました。本年前半期の学会活動では、西山喬貴氏(近代史)が「歴史家協会大会」で意欲的な報告を行いました。また、博士後期課程修了者のうち、阿部拓児氏が京都府立大学に、図師宜忠氏が近畿大学に、高田良太氏が駒澤大学にそれぞれ就職されました。今後のご活躍をお祈りいたします。
教員側が先に述べたような事情で例年にない仕事を抱えているなか、読書会の活動は、院生のスタッフを中心に、例年どおり進められています。七月七日の「読書会例会」では、田中きく代・中井義明・朝治啓三・高橋秀寿編『境界域からみる西洋世界』(ミネルヴァ書房、二〇一二年刊)をとりあげ、同窓OB・院生のコメントをふまえて活発な議論が展開されました。「読書会大会」は、今年も十一月三日に京都大学百周年時計台記念館において開催を予定しております。みなさまのご参加を心からお待ちしております。(小山記)
はじめて「研究室だより」を書かせていただきます。この一年を振り返り、バックナンバーを数号読み返してみると、研究室の場所やメンバーに変化や入れ替わりはあるものの、西洋史研究室の連続性というか自己同一性というか、いい意味での不変性を強く印象づけられ、何かしら静かな感慨をおぼえます。もちろん、毎年ないしは数年のサイクルで研究室には独特のカラーがあったはずで、どれひとつをとっても同じではないでしょう。それでも、大切な根幹は揺らいでいないのではないか、というのが私の観測です。
さて、この春、西洋史研究室から九人の学部生が巣立っていきました。皆さん、新天地で充実した日々をおくっていることと思います。大学院生では、四名が修士課程を修了し、二名が博士後期課程を終えられました。かたや、新たに研究室に加わったのは、学部三回生の七名と、修士課程の三名(中世一、近代二)、そして博士後期課程の三名(中世二、近世一)です。その結果、今年度の研究室は学部生一九名、修士課程八名、博士後期課程七名(うち留学中が二名)、合計三四名です。
博士後期課程修了者の就職状況につきましては、西岡健司氏が大手前大学に講師として赴任されましたことをご報告いたします。総じて、雌伏の時期が続きますが、日本学術振興会特別研究員(PD)や非常勤講師などをしながら、皆さん、たゆまず研鑽を積まれ、その成果をさまざまなところで発表しておられます。来年度も良いニュースをお伝えできたらと願っております。昨年度には疋田隆康氏(古代ケルト史)と山中聡氏(フランス革命史)が学位(課程博士)を取得されました。また、藤井崇氏(ローマ史)が、ドイツ・ハイデルベルク大学でPh.Dを取得されています。
授業に関しては、四教員の受け持つものはいつもと基本的に変わりません。とはいえ、従来の三回生実習の前段階にあたるものとして、昨年から、教員間の持ち回りで担当する二回生セミナーを開講しています。西洋史への分属希望者でない学生たちが多数派を占めていますので、そういう学生たち――まじめで積極的です――を相手にどのような内容を提供すれば良いのか、模索が続いています。学外からは、今年度は小田内隆先生、中井義明先生、園屋心和先生にご出講いただいています。九月の集中講義には武蔵大学の平野千果子先生に来ていただく事になっています。学内からは、人文科学研究所の小関隆先生、伊藤順二先生、田中祐理子先生にご出講いただいています。おかげさまで、学生や院生たちには多彩な「西洋史学」を提供できています。
研究室の同窓会としての役割も持つ西洋史読書会は例年通り、まず七月三日に例会を開催いたしました。根津由喜夫先生のご著書『夢想のなかのビザンティウム――中世西欧の「他者」認識』(昭和堂)をとりあげ、大阪大学の江川溫先生に評者をお願いいたしました。また、来たる一一月三日には大会が開かれます。博士課程の院生諸氏をはじめ、内外から研究者の方々に来ていただき、西洋史研究の最前線に触れることのできるまたとない機会になろうかと存じます。大会後には懇親会もございますので、しばらく大学から遠ざかっておいでの社会人の方々も、この機会に是非、お誘いあわせの上、お顔を出してくださいましたら幸いです(詳細は、いずれ研究室のホームページに掲載いたします)。
その他の学会活動では、五月二九-三〇日に別府大学で開催された第六〇回日本西洋史学会大会において、南雲泰輔氏が後期ローマ帝国の政治史に関する意欲的な報告をされました。六月五日の日本西洋古典学会大会では、一時帰国した藤井崇氏が、ローマ帝国時代の皇帝崇拝に関する報告をされました。六月一九日に関西学院大学で行われた歴史家協会第九回大会では、昨年に留学から戻られた藤井翔太氏が二〇世紀後半のイギリス・スポーツ行政に関する発表をされました。
研究室の教員四名を編者とする『人文学の接近法――西洋史を学ぶ』(京都大学学術出版会、二〇一〇年、二〇〇〇円・税別)の紹介をさせてください。西洋史に興味を抱いている学部生・高校生・社会人の方々、それに進路指導をされる高校の先生方などに対して、「西洋史学」とはどのような由来・特徴・意味・面白さを持つ学問なのかを、できるだけ分かりやすく伝えようとしたものです。ささやかなものですが、研究室出身の社会人と研究者の方々の体験記もふんだんに織り交ぜた、これまで類のない書物だと思います。西洋史の本にしては比較的安価(!)でもあります。ぜひ、お読みくださり、忌憚のないご意見をお寄せいただけたら幸いです。西洋史の教育と研究を少しでも向上させられるよう、教員一同全力で取り組んで参りたいと思っております。
来年二〇一一年には、服部良久教授のもと、京都大学で日本西洋中世学会の大会が開催されます。また、二〇一三年にはここで「日本西洋史学会大会」が開催されます。このたび正式決定し、カウントダウンが始まっています。同窓の関係各位におかれましては、どうかご支援たまわりますよう、お願い申し上げます。末筆ながら、皆さまのご健勝を心よりお祈り申し上げます。(金澤記)
今年度の西洋史研究室の近況報告は、金澤周作先生が准教授として今春着任されたことからお伝えします。先生は1995年、学部御卒業、近代イギリス史を専攻され、大学院修了後、川村学園女子大学に8年間勤められました。先生の赴任で研究室は久しぶりに3教授1准教授体制を回復し、また研究室全体が若返った印象もあります。
本年度は、新しい研究室メンバーとして、3回生7名、修士課程1回生3名を迎えました。学部学生は合計21名、大学院修士課程が9名、博士後期課程6名、そして聴講生等が5名で、研究室全体の在籍者は合計41名となります。加えて、博士後期課程を終えて研究職を目指し研鑽に励むメンバーがかなりの数おりますが、この中から、今春は轟木広太郎氏がノートルダム清心女子大学に、藤井真生氏が秀明大学に、堀内隆行氏が新潟大学に就職されました。また、園屋心和氏、堀内隆行氏、阿部拓児氏が博士(文学)の学位を取得されました。
他の専修と同様、西洋史でも院生の数が一時に比べて減りましたが、学会・研究会活動はたいへん精力的です。6月13、14日両日開催の日本西洋史学会大会では、博士後期課程の松本涼氏と西村昌洋氏がそれぞれ中世史と古代史の分野で報告し、それに先立つ6月6、7日の日本西洋古典学会大会で佐野光宜氏が、同7日の第8回歴史家協会大会で南雲泰輔氏が、それぞれ研究報告をしました。学会に関しては、さらに二つ報告すべきことがあります。一つは、先頃設立された全国学会、西洋中世学会が、6月27、28日の両日、服部良久教授を大会準備委員長として記念すべき第1回大会を東京大学で開催したことです。もう一つは、2013年開催予定の日本西洋史学会大会を、私ども京大西洋史研究室の主催でおこなうよう正式決定がなされたことです。後者については、大きな学会ですので、研究室の同窓諸兄姉や院生・学生諸君のお力添えをお願いしなければなりません。どうか御協力のほどお願いいたします。
本年度は、学外から京都女子大学の山田雅彦教授に出講いただいており、後期には大阪大学の古谷大輔准教授、集中講義として名古屋大学の周藤芳幸教授にもお世話になる予定です。学内人文科学研究所の小関隆准教授、伊藤順二准教授、田中祐理子助教にも授業を担当いただいております。専任教員4名は、従来の担当授業に加えて、文学部2回生を対象とする新しい入門演習を今年度より開講し、リレー方式で担当しています。そこでは、西洋史に関心を寄せる2回生に、西洋史を学ぶ面白さと大切さを伝えられたらと願い奮闘しておる次第です。
研究室の同窓会を兼ねる西洋史読書会は、7月4日に例会を、金澤准教授の著書『チャリティとイギリス近代』(京大学術出版会刊)の合評会として開催する予定です。大会の方は予定通り、11月3日に時計台記念館の国際交流ホールで開きます。大会の研究報告後の懇親会は、学会の懇親会としてだけでなく、西洋史同窓生の旧交を温める機会としても活用いただけたらと考えております。研究室のホームページに大会の情報を掲載いたしますので、御覧の上、ぜひ御参加ください。
今春は、研究室所属の12名が学部を卒業して、多くが銀行や商社、出版社などに就職し、2名が大学院に進学しました。世は不景気で学生・院生の就職状況は厳しくなっておりますが、教員一同、学生・院生の教育、そして活発な研究室活動のために一層努力する所存ですので、同窓の皆様には今後とも御支援賜りますよう心よりお願い申し上げます。(南川記)
研究室の引っ越しから一年が経ちました。他学部の研究室や教室が同居する総合研究二号館(旧工学部四号館)の空気にもだんだんと馴染んできたように思います。学生たちのなかにはすでに「東館には入ったことがありません」という人が出現しつつあります。
今年度の西洋史研究室は、七名の新三回生を迎え、四回生と合わせて学部生は二七名となりました。一方、大学院は、修士課程が九名(うち本年度進学者四名)、博士後期課程は三月に八名が課程を修了したために七名(うち三名が七月現在留学中)となりました。大学院生の人数が二〇名を下回るのは、大学院重点化以降では初めてのことではないかと思います。これが一時的な現象であるのかどうか、気になるところです。
本年度の授業では、学外から神戸市外国語大学の指昭博先生(通年)、大阪大学の栗原麻子先生(前期)にご出講いただき、七月には東京大学の池上俊一先生に集中講義をお願いいたしました。学内からは、人文科学研究所の小関隆教授と伊藤順二准教授に特殊講義を、田中祐理子助教に仏書講読をご担当いただいております。加えて今年度前期は、客員教授としてポーランドよりエドヴァルト・オパリンスキ先生をお招きしました。オパリンスキ先生は人文学・自然科学大学ピョートルクフ・トリブナルスキ分校教授、ポーランド科学アカデミー研究員で、近世ポーランド政治史がご専門です。授業では近世の身分制議会の比較史について英語で講義していただくほか、大学院生が英語で発表し討論する研究会にも参加していただき、ご指導をいただきました。
博士後期課程を修了された方のうち、青谷秀紀さんが清泉女子大学に講師として、橋川裕之さんが早稲田大学高等研究所に助教として、それぞれ赴任されました。また、菊地信彦さんが国会図書館に、島田勇人さんが東京書籍に就職されました。今後のご活躍をお祈りいたします。また、昨年度末に佐藤公美氏(課程博士)、本年七月に松本悠子氏(論文博士)が学位を取得されました。研究室のメンバーによる学会活動としては、五月十一日に島根大学で開催された日本西洋史学会第五八回大会で図師宣忠さん、君塚弘恭さん、藤井翔太さんの三名が、六月十四日に立命館大学で開催された歴史家協会第七回大会では松本涼さんが、それぞれ意欲的な報告を行いました。西洋史読書会では、六月二八日に例会を開催しました。今回は松本悠子先生のご著書『創られるアメリカ国民と「他者」――「アメリカ化」時代のシティズンシップ』(東京大学出版会)をとりあげ、中野耕太郎先生(大阪大学准教授)にメイン・コメンテイターを、堀内隆行さん(日本学術振興会特別研究員)にサブ・コメンテイターをお願いし、参加者全員で討論を行いました。十一月三日恒例の西洋史読書会大会は時計台記念館の国際交流ホールで、大会後の懇親会は正門横のカフェテリア「カンフォーラ」で開催される予定です。皆さまのご来会をお待ち申し上げております。
また、これは前年度のことになりますが、昨年八月に急逝された佐久間大介さんの「思い出を語る会」を十二月一日に催しました。五〇名を超える方々にお集まりいただきました。あらためて故人のご冥福をお祈りすると同時に、ご協力いただきました皆さまに御礼申し上げます。
人数が少なくなった分、研究室の運営にかかわる大学院生諸君の負担も大きくなっていますが、若手の研究活動に支障が生じることのないよう教員一同努力する所存です。同窓の皆さまのご健勝とご活躍をお祈りいたしますとともに、今後とも当研究室にご支援をたまわりますようお願い申し上げます。(小山記)
本年度の最大の「事件」は、西洋史研究室が昭和38年以来の東館を離れ、改修した旧工学部四号館(東館の北西)の南側(二階)に移転したことです。若干広くなった新研究室に、新しい院生用デスク、書架などが入り、機能的にはなりましたが、東館で苦楽をともにした教員やオーバードクター諸君は、旧研究室と、処分される古い木製机等に一抹の哀惜を感じてもおります。なお教員三人の研究室も、新館およびその西に連なる旧文系共同棟に移転しました。
数年来西洋史学を学ぼうとする学部生の数はコンスタントに10~15名を数え、今年度の西洋史学専修は、3、4回生が各15名、修士課程9名、博士後期課程14名(7月現在5名は留学中)、オーバードクターを加えると総勢70名を越えています。また院生の留学と博士の学位取得はほぼ定着しつつありますが、研究職への就職状況が芳しくないこともあって、近年、内部からの大学院進学希望者は減少しており、今後が気になるところです。しかし修士課程を修了し国家・地方公務員、ジャーナリズムなどの職に就く院生も増え、こうした進路の多様化を前提にして今後の大学院のあり方を考えるべきなのでしょう。
本年度の授業では、学外から非常勤講師として京都女子大学の桑山由文先生(ローマ史・通年)、神戸大学の高田京比子先生(イタリア中世史・前期)に出講いただいており、12月には東京外国語大学の立石博高先生(スペイン近代史)に集中講義をお願いすることになっています。また今年度は伊藤順二氏(ロシア・グルジア現代史)が福井県立大学から人文科学研究所准教授に着任され、講義などで今後ご協力いただけることと楽しみにしています。
研究室の活動としては、6月30日の西洋史読書会例会では南川高志編『知と学びのヨーロッパ史』をとりあげ(評者は伊藤順二・橋川裕之・梶さやかの三氏)、執筆者の出席をも得て、有益な議論を行いました。
学会活動については、新潟大学における日本西洋史学会大会では博士後期課程の佐野光宜(ローマ史)、林良彦(ドイツ近世史)、菊池信彦(スペイン近代史)、島田勇人(ドイツ現代史)の四氏が、日頃の研究成果に基づく意欲的な発表を行いました。
2002年に始められた京都大学文学研究科を中心とするCOEプログラムにおいては、西洋史研究室も二つの分野プロジェクトを組織し、国際シンポジウムの開催、研究成果の刊行、院生の海外派遣など多岐にわたる活動を行い、昨年度に全ての活動を終了しました。教員は奔走していたのみの感もありますが、院生の研究支援、内外の研究者との交流では一定の成果があったと自負しております。
なお、昨年度末には京都女子大学の常松洋氏(論文博士)、藤井真生、庄子大亮、橋川裕之(学術振興会特別研究員)の三氏(課程博士)が学位を取得されました。
留学などにより、実際に本学で研究活動を行っている博士後期課程の院生が少なくなり、助教(助手)を欠く研究室の運営には院生諸氏に一層の協力・負担をいただいていますが、今年度も院生チームを中心に、11月3日の西洋史読書会大会の準備が着実に進められています。昨年度に続き時計台記念館が会場ですので、多数ご参加くださいますようお願い申し上げます。(服部記)
まず、悲しい報告を申し上げます。病気療養中でいらした名誉教授の越智武臣先生が、本年1月10日に逝去されました。享年82歳。御葬儀は先生のご遺志により、御家族のみで済まされました。そこで、本研究室同窓のイギリス史研究者の方々を中心とする有志が発起人となり、5月20日に京大会館で「越智先生を偲ぶ会」が開催され、多くの本研究室同窓生や元同僚らが集まり、越智先生の学問と御生涯、受けた学恩を偲びました。
次に、人事の報告をいたします。谷川稔教授御退職後空席になっていた西洋近代史担当教授に、4月1日付で小山哲助教授が昇任いたしました。今後、できるだけ速やかに教員4人体制に復帰したいと願っております。
本年度は、新しい3回生11名を得て、西洋史研究室のメンバーは、学部学生22名、大学院修士課程12名、博士後期課程16名、聴講生等2名、合計52名となりました。大学院在籍者のうち、6月初めの時点で8名が海外で研究に励んでおります。
今春は、学部生12名が卒業し、地方公務員やメーカー、金融機関などに就職して、3名が大学院修士課程に進みました。修士課程修了者の方も、ほとんどが地方公務員やメーカー、出版社などに就職して、1名が博士後期課程に進学しただけです。大学院重点化の結果として、修士課程修了者が増えるとともに、そのほとんどが公務員や企業への就職を目指すという形が定着してきたようです。
本年度は、専任教員の授業に加えて、学内から人文科学研究所の小関隆、王寺賢太両助教授、学外からは大黒俊二大阪市立大学教授、山之内克子神戸市外国語大学助教授に出講いただき、年末には本村凌二東京大学教授に集中講義をお願いしております。
研究室メンバーの関係する学会活動は、研究報告、論文執筆ともに熱心になされております。5月14日に千葉大学で開催の第56回日本西洋史学会大会では、日本学術振興会特別研究員である橋川裕之氏が意欲的な報告をおこないました。6月17日には西洋史読書会の例会を開催し、合田昌史甲南大学教授の近著『マゼラン』を取り上げ、渡邊伸京都府立大学助教授の御書評をもとに出席者全員で検討しました。
ところで、11月3日恒例の西洋史読書会大会は、今秋から会場を学内に移し、時計台内の百周年記念ホールで開催することになっております。懇親会も正門近くのカフェテリアでおこないます。学内開催へと変わるのを機に、よりいっそう多くの方々の御参加を期待しております。とくに、懇親会は同窓会として利用していただき、研究者以外の卒業生の皆様にも御出席いただければたいへん嬉しく存じます。
本研究室の教員は、ここ4年間にわたり、文学研究科COEプログラムに属する2つの研究会を主導し、外国人研究者を招いて京都で幾度も国際シンポジウムを開いてきましたが、本年度は他の研究会とも協力して、「人文学の統合」をテーマに、9月25日にイギリスのケンブリッジ大学古典学部で国際シンポジウムを開くことになりました。このように、教員や学生・院生の研究・教育活動の方法や環境が近年急速に変わってきておりますが、100年前の講座創設以来の伝統をつねに振り返り大切にしつつ、新しい時代に積極的に対応したいと考えております。
先輩諸兄姉におかれましては、今後とも西洋史研究室に御支援のほど、よろしくお願いいたします。(南川記)
今年度の教室だよりは、残念なお知らせから始めなければなりません。1998年度より7年間にわたり主任教授を務められた谷川稔先生が、今春3月末日をもって退職されました。この間、先生は、お体に不安を抱えながらも研究・教育と教室運営にご尽力され、ピエール・ノラ編『記憶の場』日本語版の編訳を完成されたほか、一昨年には、先生を編者として西洋史読書会大会70回記念シンポジウムの成果にもとづく論文集『歴史としてのヨーロッパ・アイデンティティ』が刊行されました。このたび定年を待たずに職を退かれたことは私たちにとってたいへん残念なことですが、先生には静かな環境のもとでご健康を回復されますようお祈り申し上げます。
服部良久教授が3月末から2か月間、ドイツのミュンスター大学に出張されたため、2005年度の教室運営は、南川高志教授と私の2人体制でスタートしました。服部教授は5月末に帰国され、現在は3名で研究室を運営しております。本年度は、専任の3教員の担当する授業のほかに、学外から小野清美大阪外国語大学教授、栗原麻子大阪大学助教授にご出講いただいております。また、7月には根津由喜夫金沢大学助教授に集中講義をお願いしております。学内からは人間・環境学研究科より川島昭夫教授に、人文科学研究所より小関隆助教授、田中祐理子助手、藤原辰史助手にそれぞれ授業をご担当いただいております。
今年度、西洋史研究室は8名の新3回生を迎えました。4回生15名と合わせると、学部生は23名となります。大学院生は、修士課程15名、博士後期課程18名、計33名で、依然として増加傾向が続いています。留学する人数も増えており、現時点では10名が留学中です(イギリス2、イタリア2、ウクライナ1、オーストリア1、ドイツ2、フランス1、ポーランド1)。今年度後期には、さらに数名が留学する予定です。学部や修士課程在学中に留学するケースがみられるのは、新しい傾向といえるかもしれません。5月14・15両日に神戸大学で開催された日本西洋史学会第55回大会では、大学院在学中の阿部拓児、高田良太、藤井崇、山中聡の4氏が意欲的な報告を行い、注目を集めました。また、博士後期課程を修了された井上文則さんが筑波大学大学院人文社会科学研究科に、中村敦子さんが豊田工業高等専門学校に、それぞれ講師として赴任されました。今後の活躍をお祈りいたします。院生を中心に運営されている西洋史読書会では、例年よりやや遅れて7月2日に例会を開催しました。今回は、小倉欣一編『近世ヨーロッパの東と西』(山川出版社)をとりあげ、阿河雄二郎先生(関西学院大学教授)と大学院生諸君にご批評をいただきました。大会は例年どおり11月3日に開催されますので、今年もどうぞご参加いただきますようお願い申し上げます。
4年目を迎えた「21世紀COEプログラム」の一環として、昨年度より南川高志教授をリーダーとする共同研究「ヨーロッパにおける人文学知形成の歴史的構図」が進行中です。1月9日には国内シンポジウム、3月6日にはヴェルナー・エック(ケルン大学)、エドヴァルト・オパリンスキ(ポーランド科学アカデミー)両氏をお招きして国際シンポジウムを開催しました。本プロジェクトの詳細につきましては、ホームページをご参照いただければ幸いです。
最後になりましたが、同窓の皆様のご健勝とご活躍をお祈りいたしますとともに、今後とも当研究室にご助力をたまわりますようお願い申し上げます。(小山記)
名誉教授の前川貞二郎先生が本年3月9日に逝去されました。ご長命であられたとはいえ、常におおらかな父親のようであった先生を失ったことは、(私も含めて)教え子には、まことに寂しいことでありました。先生のご冥福をお祈り申し上げます。
今年度の西洋史研究室は、3回生12名、4回生19名、修士課程15名、博士後期課程13名(6月現在、4名は留学中)、博士課程修了者を加えると総勢80名近い大所帯となりました。この人数は年々増加する傾向にあります。西洋史学を志望する学部生が増加するのは喜ばしいことですが、大学院重点化、そして法人化によって増え続ける院生の就職機会が、大学再編等により逆に狭まっているという矛盾した状況は、西洋史学という学会全体が直面する問題でもあります。ともあれ今春には15名が学部を卒業、うち7名が大学院に進学しました。また学術振興会特別研究員の櫻井康人氏は東北学院大学文学部専任講師に採用されました。
本年度は学外からの非常勤講師として同志社大学から中井義明先生、大阪府立大学から佐々木博光先生(前期)に出講いただいており、12月には東京大学の長谷川まゆ帆先生に集中講義をお願いすることになっています。
研究室の活動としては、西洋史読書会例会では朝治啓三氏の新著『シモン・ド・モンフォールの乱』をとりあげ(評者は中村敦子氏)、50名をこえる出席者を得て闊達な議論を行いました。学会活動については、東北学院大学における日本西洋史学会大会では博士後期課程の疋田隆康、梶さやかの両氏が意欲的な報告を行ったほか、博士課程修了者の山内暁子氏が日本西洋古典学会大会に、また学術振興会特別研究員の橋川裕之氏がウェスト・ミシガン大学の国際中世学会に出席して、各々研究成果を発表しました。学生、院生の人数が増えた分、自主的な勉強会や研究会の活動も盛んで、学部生向けの読書会、各種古典語、外国語の輪読会も行われ、「図体」の大きさに見合うエネルギーをも感じさせられるのは嬉しいことです。このほか「古代史研究会」「関西中世史研究会」「近世史研究会」「近代社会史研究会」といった各教員のかかわる研究会においても、西洋史研究室の院生が事務を担当し、また積極的に報告するなど重要な役割を担っています。こうした学問的エネルギーがふさわしい果実を得ることを願うばかりです。
なお2002年に西洋史研究室を中心に始められたCOEプログラムの分野研究会、「歴史としてのヨーロッパ・アイデンティティ」は本年3月をもって終了し、報告書を刊行しました。この間、昨年9月、本年3月には海外からの研究者数名を迎えて、各々、古代史および近世中・東欧に関するシンポジウムを行いました。当日の盛会に加え、その前後の外国人研究者と院生の交流、「国際セミナー」も大変有益であったと自負しております。また本年度からは南川教授をリーダーとする新しいCOE研究会「ヨーロッパにおける人文学知形成の歴史的構図」が発足し、来年3月にはやはり国際シンポジウムが企画されています。詳細は、京都大学ないし文学研究科のホームページにリンクされた研究会ホームページをご覧下さい。(なお西洋史研究室のホームページも同様にご覧いただければ幸いです。)
今年も博士後期課程の院生をリーダーとするチームを中心に、11月3日の西洋史読書会大会の準備が着実に進められています。例年通り、多数ご参加くださいますようお願い申し上げます。(服部記)
平成15年度の西洋史研究室の状況をお伝えいたします。
当研究室は、昨年の18名に続き、今春も例年より多い14名の新3回生を迎えました。学部生の総数は34名になり、当研究室としては記録的な数となりました。大学院の方は修士課程7名、博士後期課程(留学等のための休学を含む)18名、そして修了者9名でこれに聴講生3名を加えますと研究室構成員の総数は71名となります。この総数も研究室の歴史の中で最も多いのではないかと思います。
一方、今春は7名が学部を卒業してうち2名が企業に就職し、5名が大学院生等になりました。また、大学院修了者のうち、長らく史林の編集委員として尽力された伊藤順二氏が昨年12月に福井県立大学の講師となられ、日本学術振興会特別研究員として研修しておられた藤内哲也氏が今春鹿児島大学法文学部助教授となられて、それぞれ研究室を巣立ってゆかれました。
本年度は、専任4教官や学内の先生方の授業の他に、山田史郎同志社大学教授、山辺規子奈良女子大学助教授に出講いただいており、後期は上垣豊龍谷大学教授に客員教授として特殊講義を、豊田浩志上智大学教授に集中講義を、それぞれおこなっていただく予定です。授業はもちろんですが、授業以外の研究会や学会活動もたいへん盛んで、とくに5月10日、11日両日に愛知県立大学で開催された日本西洋史学会大会では、庄子大亮、高木啓子、西岡健司、佐久間大介、堀内隆行の5名もの大学院生諸氏が、日頃の研鑽の成果を発表して注目されました。6月7日、8日の千葉大学における日本西洋古典学会大会でも、日本学術振興会特別研究員の井上文則氏が意欲的な報告をおこなうなど、研究室メンバーの研究活動は順調です。イタリア、ドイツ、チェコ、ポーランド、そしてベルギーに留学中の諸氏も本場で力を蓄えつつあり、また大学院修了者9名は全員、研究だけでなく非常勤講師として諸大学の教育にも貢献しております。6月14日には西洋史読書会例会を開催し、同窓の谷口健治先生の近著『バイエルン王国の誕生』(山川出版社)をやはり同窓の南直人先生に書評していただいた上で、出席者全員で検討いたしましたが、盛会でした。大会の方も、例年通り11月3日に開催しますので、ぜひ御参集ください。
本年度の「教室便り」で特記すべきは、当研究室を拠点とする「21世紀COEプログラム」による研究活動でしょう。服部良久教授をリーダーとして「歴史としてのヨーロッパ・アイデンティティ」という研究会を立ち上げ、昨年11月の西洋史読書会大会第70回記念シンポジウムから実質的な活動を始めました。すでに研究会や外国人学者を招いてのセミナーなどをおこなっており、本年9月と来年3月には国際会議を開きます。研究会の活動については、次のホームページを御覧いただくと幸いです。https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/archive/jp/projects/projects_completed/hmn/europid/ 本研究会の活動の成果は、まず昨秋のシンポジウムを基礎とする論文集として、谷川稔教授を編者に山川出版社より刊行の予定です。なお、本プロジェクトに関係の深い出版物として、谷川教授をリーダーとし、同窓の研究者の方々も活躍された『記憶の場』の日本語版全3巻(岩波書店)が今春刊行され、学会の内外で注目を集めたことは、当研究室にとってたいへん嬉しい出来事でありました。
国立大学としての京都大学からお届けする「教室便り」はこれが最後になりそうですが、同窓の皆様には今後も変わりなく西洋史研究室に御助力たまわりますようお願い申し上げます。(南川記)
同窓生の皆様にはいかがお過ごしでしょうか。今年度の教室だよりをお届けいたします。
筆をとっている現在(6月30日)、サッカーのワールドカップも大詰めを迎え、後は決勝戦を残すのみです。期間中は「ワールドカップの試合を観にいくので授業を欠席します」と申し出る学生も現われ、教室にも思わぬ余波が及びました。教える側は授業を休むわけにもいかず、夜のTV観戦のみでしたが、谷川稔教授が『国民国家とナショナリズム』の冒頭で述べておられますように、スポーツは国民意識のありようや国境を越える人や文化の動きを如実に表す媒体でもあり、歴史を学ぶものとしていろいろ考えさせられました。
さて、今年度、西洋史研究室は18名という近来にない多数の新3回生を迎え、4回生と合わせると学部学生は28名となりました。日本における西洋史研究の存在意義をめぐっていろいろと議論があるなかで、このように多くの学生諸君が本専修を選んでくれたことに、励まされるものを感じています。大学院生は、修士課程9名(うち本年度進学者2名)、博士課程15名です。博士課程修了者と聴講生を含めると、教室全体では64名となります。大学院生の専攻分野については、中世史が最も多く、古代史がそれに続く傾向は変わりません。大学院生のうち留学している者は、イタリアに2名、ドイツに1名、イギリスに1名、チェコに1名の計5名です。
今年度は、南川高志教授が、途中一時帰国をはさんで4月から9月までケンブリッジ大学に海外出張されています。南川教授の不在中、前期の古代史の演習は神戸大学の毛利昌教授に担当していただいております。学外からはこのほかに、大津留厚神戸大学教授に帝政期オーストリア史を通年でご講義いただき、山代宏道広島大学教授に中世イギリス史の集中講義(9月)をお願いしております。学内からは、昨年度に引き続き川島昭夫総合人間大学教授(イギリス近代史)にご出講いただいております。
5月18日、19日の両日、東京外国語大学で開催された本年度の日本西洋史学会では、図師宣忠、福嶋千穂、宮坂康寿の3氏が意欲的な報告を行ないました。史学研究会の学会誌『史林』にも、ほぼ毎号、院生・ODの論文や書評が掲載されています。また、南川教授が中心となって昨年度創刊された『西洋古代史研究』は「国際化」を意識しながら古代史研究の成果を積極的に発信するメディアとして注目すべき新たな試みです。なお、この3月には修士2名、学士6名が社会人として新たな一歩を踏み出されました。また、桑山由文氏が兵庫教育大学に、宮川剛氏が群馬工業高等専門学校に就職されました。今後のご活躍をお祈りいたします。
読書会は、今年度も院生諸君によって運営されています。恒例の例会は6月8日に開催されました。今回は本田毅彦帝京大学助教授の近著『インド植民地官僚』がとりあげられ、川分圭子京都府立大学助教授に丁寧な書評をいただいた後、熱のこもった討論が展開されました。来る11月3日の大会では70回を記念するシンポジウムの開催を予定しており、現在準備を進めております。
西洋史学を含めて人文学の世界全体が、一方で社会に向けて成果をアピールしながら、他方で地道で息の長い研究スタイルも守っていかなければならない難しい時代にさしかかっています。同窓の皆様のより一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。(小山記)
平成13年度の教室だよりをお届けします。
まず悲しい報告から始めなければなりません。名誉教授の藤縄謙三先生が、平成12年10月4日に急性呼吸不全のため、入院先の京都市内の病院にて逝去されました。先生は5月より体調を崩して入院しておられましたが、あまりに急な深夜の御逝去に多くの者が言葉を失いました。御生前より先生は通常の葬儀を固く禁じておられたため、ご親族のみの密葬がとりおこなわれました。先生が残された膨大な学問的遺産を今一度深く学び、継承してゆくことが、私たち後進にとってなにより御学恩に報いることと信じております。
次に嬉しい報告をいたします。名誉教授の越智武臣先生は、今春の叙位勲章で勲三等旭日中綬章を受けられました。先生は足が御不自由ですが、お目にかかれば談論風発、お元気でいらっしゃいます。ますますのご健康をお祈りいたします。もう一つ嬉しい報告があります。今春、当研究室の新たなスタッフとして、小山哲助教授をを迎えました。小山先生はポーランド近世史が専門で、京都大学助手、島根大学、京都大学人文科学研究所を経ての着任です。このため、谷川教授主宰の近代史のセミナーとは別に、小山助教授の近世史セミナーも開講されました。教官4人の体制は、当研究室にとって実に久しぶりです。若い助教授の着任は、3教授にとってもたいへん有り難いことであります。
さて、本年度の研究室の構成は、学部学生18名、大学院生25名、そして博士課程修了者や聴講生も含めると合計58名になります。院生の増加に耐えかねて、西洋史共同研究室で長年開いてきた大学院演習を、今年度は別の広い演習室でおこなっています。学部学生と大学院生の専攻分野を見てみると、もっとも多いのが中世史で18名、次いで近世・近代史の14名、そして古代史の11名です。引き続き中世史専攻者が最多勢力ですが、最少の古代史でも専攻者が11名もおり、筆者(南川)が藤縄先生のマンツーマンに近い指導を受けていた頃に比べると隔世の感があります。
今年度も、博士後期課程の大学院生が共同研究室の世話係をしており、また研究室行事の準備も、修士課程院生の手伝いを得て熱心に進めています。6月23日には西洋史読書会の例会が開かれ、岡山大学教授永田諒一先生の近著『ドイツ近世の社会と教会』を、京都府立大学助教授渡邊伸先生に書評していただいたのち、著者御自身も交えて出席者全員で討論いたしました。11月3日の大会の方も着々と準備が進んでおり、御参集をよろしくお願いいたします。
院生や博士課程修了者の諸君は、研究室行事や様々な研究会の実務をこなしながら、自身の研究も精力的に進めております。5月12日、13日に東京都立大学で開催された日本西洋史学会において、園屋心和、橋川裕之、藤井真生の3氏が意欲的な研究報告をおこない、注目を集めました。学会誌『史林』への投稿も積極的になされており、中村敦子、伊藤順二の両編集委員、そしてこの二年間編集長の重責を務められた谷川先生には、たいへん多くのお仕事をこなしていただいております。京都大学に限りませんが、西洋史の分野における大学教官への就職は近年きわめて難しくなっており、並大抵の研究業績では職が得られないような状態ですが、当研究室の院生は博士課程在学中に留学や短期滞在をしながら本場で自らを鍛え、帰国後課程博士論文を準備するなど、積極的に未来を切り開こうとする強さを持っており、今後は次第によい展望が開かれてくるものと、教官としては大いに期待している次第です。なお、今春は金澤周作氏が川村学園女子大学に、日本学術振興会特別研究員として京大で研修しておられた林田敏子氏が摂南大学に、それぞれ就職されました。
どこの大学でも将来のあり方が不透明になっておりますが、先輩諸兄姉には京大西洋史研究室の今後の歩みに力強い御支援をたまわりますようお願い申し上げます。(南川記)
大学院重点化が完了し、ようやく落ち着いてきたかと思えば、この度は「独法化」でまたぞろ、私たちの将来は?と浮き足立ってしまうこのごろ、しかし最大の被害者は学生諸君なのかもしれません。研究室の近況をおしらせします。昨年度、学術振興会の特定国派遣事業によりウィーン、インスブルック等で研修する機会を与えられた服部が1月に帰国し、今年度はまた谷川・服部・南川の3教官が揃って研究室の指導・運営にあたっております。昨秋体調を損なわれた谷川教授も授業には支障のないところまで快復されました。
西洋史学専修の構成員は、学部生18名、院生24名、学振特別研究員を含めたオーバードクターが11名と、ますます大所帯になりつつあります。時代の選択については、大学院ではあいかわらず中世史専攻者が多く、他大学からの進学者も加えて古代史を選ぶ院生も着実に増えていますが、近代史専攻の院生が少ないという数年来の傾向にはあまり変化がありません。専攻地域では、英・仏・独・伊の他、スウェーデン、フィンランド、ポーランド、ロシア、チェコと多様化の一途をたどり、研究指導も試行錯誤を重ねるこのごろです。
日常の研究室管理は院生の当番制により、また読書会例会・大会の運営は毎年4月に発足する院生チームによって引き継がれており、この点は大所帯の利点かもしれません。本年5月の大阪外国語大学における西洋史学会は、同大学の阿河雄二郎教授らのご尽力で、三つのシンポジウムを含む大変充実した学会になりましたが、西洋史研究室からは博士後期課程の井上文則(ローマ史)、佐藤公美(イタリア中世史)、森谷美幸(ドイツ中・近世史)の3氏が研究発表を行い、幸い好評を得ることが出来ました。6月10日の読書会例会では、服部春彦・谷川稔編著『フランス史からの問い』をとりあげ、多数の出席者を得て盛会のうちに終えることができました。
授業関係では、全額共通科目を兼ねた西洋史学序説を服部が担当し、近代世界の成立に関する戦後の研究史を辿りながら歴史学の「現状と課題」を論じています。特殊講義では谷川教授は「フランス的国民意識」の特質を「記憶と歴史」の視点から考察し、南川教授は「ローマン・ブリテン史」を論じます。時代別演習では南川教授の古代史演習はラテン語史書「ローマ皇帝伝」(Historia Augusta)をとりあげ、服部の中世史演習はRosenwein(ed.)、Dabating the Middle Agesをテクストとして近年の諸論争を検討し、谷川教授の近代史演習は、「新しい歴史学」の検討をテーマとしています。この他教官は、卒論演習・大学院演習・購読・実習・1回生の「ポケットゼミ」など、平均週6コマの授業を担当し、夏休みが唯一の研究期間という現状です。3教官以外には例年通り、学内からは総合人間学部の川島昭夫教授、人文科学研究所の前川和也教授(西南アジア史と共通)、小山哲助教授、学外からは大阪大学の合阪学教授(古代史・前期)、滋賀大学の谷口健治教授(ドイツ近代史)に特殊講義を担当していただき、12月には東京大学の樺山紘一教授が集中講義に来られます。また大阪市立大学教授の井上浩一教授には西洋古典学と共通の特殊講義で、京都府立大学の川村貞枝教授には英書購読でお世話になっています。
今春は人文研の髙田京比子助手が神戸大学文学部に移られ、学振特別研究員の中本真生子氏が立命館大学国際文化学部に就職されましたが、オーバードクターは増える一方です。数年来の大学改革や私立大学のリストラ・組織再編は、歴史のような伝統的専攻枠の流動化をともない、西洋史研究者の就職は以前にまして難しくなっているようです。当然ながら大学院生には、留学と学位論文作成により、研究者としての力量をアップすべく指導しておりますが、引き続き皆様のお力添えを頂ければ幸いに存じます。(服部記)
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