2009年度の授業

2009年度の授業

(本年度学生便覧より抜粋)

◆講義◆

池田秀三(教授)/宇佐美文理(准教授)> 中国哲学史概説

中国文化の中核たる哲学・思想の学習・理解を通して、中国さらには東アジア全体の文化に対する認識と洞察を深める。

【講義の概要】

前期は中国哲学・思想の全体的特質とその思考様式を鳥瞰的に概説し、あわせて中国哲学史の研究方法を、中国古典文献学に重点を置きつつ解説する。後期は、中国哲学史上の主要な思想家および書物を取り上げ、通史的に概説する。本年度は魏晋南北朝(六朝)期の思想を対象とする。

【授業項目】

前期:中国哲学・思想の特質(現実主義、合理主義、人間主義、中庸の尊重、天人合一、知行合一)、儒教の宗教性、中国の思考様式(経験重視の帰紊法、待対論、経と権、修辞学と説得術、経学的思考法、西洋的論理との相違)、中国哲学史の研究法(哲学思想史、政治思想史、倫理思想史、社会思想史、学術史それぞれの立場とその総合)、中国古典(漢文文献)の取り扱い方(中国文献学の初歩的概説)

後期:六朝時代の歴史と文化の概観、漢代経学から六朝義疏学へ、杜預の左伝学、古文尚書の諸問題、礼学の隆盛、竹林の七賢、玄学の展開、郭象の荘子注、道教の形成と展開、仏教の受容と隆盛

◆講読◆

宇佐美文理(准教授) 日知録

清朝を代表する学者、顧炎武の『日知録』を読む。漢文読解の基礎を身につけるために用意されている授業である。出席者は漢文初学者であることを念頭においた授業であるが、予習の段階において、辞書を丹念に引くのみならず、引用された文献を逐一調べるという作業がもとめられる。テキストには『日知録集釈』を用いる。巻七の『論語』に関わる筆記の部分から読み始める予定。

◆特殊講義◆

池田秀三(教授) 礼学略説

中国の学術思想を理解するためには、礼学の基礎知識が上可欠である。本講義では、民国初期の国学者黄侃の著した礼学概説書である『禮學略説』を精読しながら、礼書・礼学者・礼制を中心に礼学の基礎知識を講述する(昨年よりの継続)。

なお、原典の読解が中心となるので、受講者は基礎レベルの漢文読解力を修得していることが必要である。

宇佐美文理(准教授) 中国藝術理論史研究

今年度は、蘇東坡と黄山谷をとりあげる。北宋絵画理論史のみならず、前近代までの中国の藝術を考える上で、蘇東坡の存在意義は言うまでもなく大きなものであるが、彼を受け継ぐ位置にある黄山谷についても、のちの画論史の展開を考える上では注意が必要である。しかしながら、現在までの研究史においては、黄山谷はあまり注目される存在ではなかった。この講義では、まず蘇東坡の題画詩の重要なものをとりあげつつ彼の藝術理論の概説をしたのち、東坡題跋、山谷題跋の絵画にかかわる部分を読み進めながら、この二人の絵画観、藝術観について講述する。

武田時昌(協力講座・人文科学研究所教授) 中国占術理論の形成

中国では、自然科学の諸分野が易やそれに派生する占術と複合した術数学と呼ばれるユニークな学問分野を形成した。術数学の中心的存在である占術理論は、難解かつ通俗的であるためか、科学史研究者にも思想史研究者にも閑却されたままになっている。しかしながら、当時のサイエンスが獲得した科学知識が人々にどのように理解され、応用されたかを窺い知ることのできるものであり、きわめて興味深い。

その起源は、先秦の方術に遡り、漢代の思想革命を経て、中世に術数学へと発展する。当時に存在した術数書は、ほとんど散逸しており、今日に伝存する著作は、京氏易から先天易へと象数易の主流が移行したために近世的な変容を被ったものが大部分である。そのために、日本に残存した『五行大義』や『医心方』、陰陽道書等に多少の手がかりはあるものの、中世以前の理論がどのようなものであたのかは判然としなかった

ところが、近年に発掘された戦国末から漢に至る簡牘資料には、占術に関する有益な情報が満載されており、黎明期の占術理論を具体的に探ることができるようになた。

そこで、新出土資料を読解しながら、中国方術理論の形成過程とその理論的特色を明らかにし、方術から術数学への変容がいかなるものであったのかを考察する

中国の占術は、遊神による方位占い・日選び、天文雲気占、八風占、(医療などの)禁忌と呪い等、多岐にわたる。本年度は、そのなかで、天文雲占と八風占を中心に取り上げ、太歳、太陰等の天を遊行する諸神を用いた占術にも論及するつもりである。

読解する主なテキストは、雲夢秦簡日書、馬王堆出土の『五星占』『刑徳』等である。そこに展開されている占術について、『淮南子』や漢代象数易、緯書との関連性を明らかにしながら、理論的な分析を行う。また、それらの占術が兵陰陽の理論にどのように応用されたのかについて、『武経七書』『太白陰経』『武経総要』等の兵書と比較しながら検討する。

船山徹(協力講座・人文科学研究所准教授) 梵網経の研究―その成立と諸相

大乗の菩薩戒の具体的実践方法を説く経典として東アジア諸国において広く重視された梵網経は、インドではなく中国において五世紀に成立したと推定されている。本授業ではテキストを読解しながら、この経典の成立をめぐる様々な問題を検討する。本経に説かれている内容は戒律のみならず、大乗仏教の実践と理論とに様々な形で深く関わる。各種注釈書の内容も比較検討し、また写本と版本の特徴についても考察する。

井波陵一(協力講座・人文科学研究所教授) 漢籍目録を「読む《ために

一般に目録とは「引く《ものであると考えられている。しかし漢籍目録は「読む《べきものである。目録の構造そのものが、中国学を体系的に表現しているからにほかならない。本講義では漢籍のカード(あるいはデータ)作成要領を解説することにより、あたかも「菊を採る《人が「悠然として南山を見る《が如く、個々の研究テーマを包み込む中国学全般に対して皆さんが理解を深めるきっかけを作りたい。

南澤良彦(講師・集中) 中国古代中世における経学と天文暦法とに関する諸問題

周知の通り、前近代中国において経学と天文暦法とは密接な関係にあった。本講義では漢代より隋唐時代にいたる経学と天文暦法とに関するそれぞれの諸問題及び両者の相互関係のもたらす諸問題について論じる。

1~5 経学の諸問題

6~10 天文暦法の諸問題

11~15 経学と天文暦法との諸問題

◆演習◆

池田秀三(教授) 姚椿『国朝文録』

清朝散文の代表的総集たる『国朝文録』を読む。

清朝学人のさまざまな論題や文体の文章を精読することにより、高度な古典読解力を獲得するとともに、伝統的学術に対する深厚な造詣を修得することを目標とする。

担当者は訳注を準備すること。また単位認定は平常点によるので、履修希望者は毎回出席すること。

宇佐美文理(准教授) 朱子文集

昨年度に引き続き、朱子の書簡を読む。今年度は巻三十、答汪尚書(其八)からの予定。

麥谷邦夫(協力講座・人文科学研究所教授) 道教思想資料

当初は、昨年度の続きで『甄正論』巻下の読み残した部分を読む。その後は、唐呉筠の『宗玄先生文集』から、『神仙可学論』『心目論』『形神可固論』を訳注を作成するかたちで読む。

池田秀三(教授) 春秋左傳正義

正義(注疏)の文体に習熟すること、および春秋学の基礎を目的とするが、本演習では分量を多く読むことに意を用いたい。すなわち、精読よりむしろ速読に重点を置く。

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