2012年度の授業(当年度講義題目より抜粋)
◆講義◆
宇佐美文理(教授) 中国哲学史講義
中国哲学史における、主要な概念、あるいは主要な学説を紹介しつつ、中国哲学の基本的な発想についての理解を深める。
◆特殊講義◆
宇佐美文理(教授) 文献学研究
清朝の代表的な蔵書家である黄丕烈の讀書記『士禮居蔵書題跋記』を読みながら、清朝の文献学ならびに学術全般についての理解を深める。
武田時昌(協力講座・人文科学研究所教授) 類書の思想史的考察
中国では膨大な量の書物が著述されたが、そのなかで類書と総称される書物群は、様々な書物から語句や文章を抄出して類別したものであり、異色の存在である。その用途は、皇帝が社会的教養を学ぶ帝王学の書であったり、詩文作成のための情報ツールとして活用されたり、あるいは庶民の生活便利帳だったり、多種多様であるが、そこに中国的な「知」のあり方を具体的に窺うことができる。そこで、類書の思想史的考察を通して、中国的教養の特色を構造的に把握し、かつての日本人の教養基盤を明確にし、漢籍が文化形成に与えた影響を考える。受講者に設定した最終的な課題は、東アジア世界における「教養ある人間」とはどのような人物像であるのかについて、遡及的な考察を踏まえつつ、今日的問題として複眼的に思索するところにある。
井波陵一(協力講座・人文科学研究所教授) 目録法と分類法
漢籍目録の作成要領および四部分類法を理解することを通じて、中国学の基礎構造を把握する。
船山徹(協力講座・人文科学研究所教授) 注釈書に見る中国六朝時代の学術仏教
仏教教理学史形成の実態を知る上で注釈書は重要である。注釈は何ら個性のない単なる語句の注解である場合も皆無ではないが,多くの場合,注釈家は経典への注釈という形を借りて,仏教に対する自らの理解や他説との相違を様々に表現した。時に注釈は独立した著作よりも雄弁である。この授業は中国の六朝時代における仏教の注釈の特徴を扱う。仏典の様々な書物形式の中で注釈という形態にいかなる特徴があるか,インド仏教と比較して中国の注釈にはどのような特徴があるか,六朝時代の注釈書にはどのような特徴や制約が認められるかを考える。また注釈作成における学派と他説の採用,剽窃,個性の問題などもあわせて検討する。とりわけ五世紀から五世紀前半頃の南朝における『涅槃経』に対する一注釈を中心として具体的検討を試みる。
川原秀城(東京大学大学院人文社会系研究科教授) 東アジア思想史概説
東アジアの思想、特に朝鮮王朝期の思想を概観する。真の意味の東アジア思想の解明には、朝鮮思想の分析を欠くことができないとの認識にたつ。
◆演習◆
宇佐美文理(教授) 日知録集釋
清朝考証学の代表的な著作、『日知録』を精読する。出典に細かく当たりながら読むことによって、中国古典学に対する理解を深めるとともに、漢文読解力を養成する。
吉本道雅(教授) 『春秋左伝正義』
十三経注疏の一つである『春秋左伝正義』を精読する。漢文資料を文法的に正確に読解する能力を身につけるとともに、経学(中国古典注釈学)の基礎的な方法論・春秋時代史の研究資料としての活用法を理解する。
麥谷邦夫(協力講座・人文科学研究所教授) 道教思想資料
六朝後半から隋・初唐にかけての時代は、道教が仏教教理の影響を受けつつも、自己の教理体系を形成・展開していった重要な時期にあたる。この時期の道教の思想・教理を理解するための基本的文献を選んで精読する。
木下鉄矢(総合地球環境学研究所特別客員教授) 中庸章句・朱子語類
朱熹の『中庸章句』第一章および『朱子語類』巻第六十二「中庸一」以下を精読します。朱熹の思索がいかなる活動であったのか、その語彙選択の深層、発想の現場、その理路の主軸と展開を「読み」の遂行の中で生き生きと発現せしめる「読みの現場」を自ら展開しうる能力を養うことを目的とします。
◆講読◆
金志玹(人文科学研究所助教) 中国哲学史(講読)
中国古典を読むための基礎知識を身に付け、漢文読解力の習得と向上を目的とする。テキストは中国哲学史に対する代表的な著作、馮友蘭の『中国哲学史』を用いる。中国哲学の重要問題に触れるとともに、主要な中国古典の原文に接することをめざす。