〔授業の概要・目的〕
科学とは時間や空間を超えた普遍的なものと考えられているが、人間の営みである以上、それが誕生し発展してきた過程は歴史的な文脈によって規定されている。本講義では科学とは何かという問題を歴史的視点から考察する。
前期は古代から17世紀学革命までを、後期は19世紀後半から20世紀前半までを中心として検討する。
〔授業計画と内容〕
前期は、近代西欧科学が誕生した17世紀科学革命の核心である力学の誕生について古代から17世紀までの天文学と運動論の展開を辿って検討する。
後期は、19世紀末から20世紀の科学について生物学と物理学の革命を中心に論じる。
〔授業の概要・目的〕
科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。
〔授業計画と内容〕
〔授業の概要・目的〕
本授業の最終的な目標は、受講者が論理的で明晰な思考に慣れ、何かを主張する際にはその主張がどのような根拠に基づいているかを明確化し、穴のない論証ができるようになることである。題材としては、哲学的論理学、そのなかでも「論理とは何か」という問題をとりあげる。我々は日常、推論を行い、そして「論理的」という言葉をよく使う。もちろん「論理的」であることが要求される。しかし、「論理」とはいったい何だろうか。日頃、無反省に、知っているつもりで使っている概念の意味を問い直すのは、哲学の重要な仕事の一つである。また、「論理」とはいったい何かという問題は、現代の大きな問題である。というのも、古典論理の体系以外にも、20世紀以降、多くの異なる論理体系が提案されているからである。それらの非古典的な体系が論理と呼ばれるなら、ある体系が「論理」と呼ばれるためには、どんな性質を満たしていることが必要だろうか。
本演習では、数学における定理の証明がシミュレートできる、「論理」と呼ばれうるような、記号を処理する体系(「形式的体系」)を紹介する。具体的には、最小述語論理の自然演繹の体系の解説から始め、最小論理・直観主義論理・古典論理での論理式の証明とそのモデルを使った議論が出来るようにすることを目的とする。その中で、単なる記号の処理を行なう体系が「論理」と呼ばれるにはどんな性質を満たす必要があるかを考察する。
〔授業計画と内容〕
最小述語論理は、論理結合子の導入規則と除去規則のみを持つ、基本的な論理体系の一つである。前期の前半は、まず最小述語論理の自然演繹の体系を紹介する。問題演習を通じ、各自が自然演繹の証明が出来るようになることが目標である。
また、前期の後半には、最小論理上で算術の体系「最小算術
Q」を例に、数学における多くの証明が最小論理で遂行可能であることを示す。同時に、原始再帰法など計算の基本概念を紹介する。
後期の前半では、論理結合子の意味とは何かを、「証明論的意味論」と呼ばれる立場から考察する。具体的には、ベルナップの「トンク」の例を題材に、論理結合子の条件とは何かを考え、保存拡大性や証明の正規化といった論理学の基本概念を理解することを目指す。
後期の後半では、最小論理に論理規則を付加し拡張した論理体系を紹介する。つまり、最小論理に矛盾律、排中律と論理規則を加え、直観主義論理、古典論理の体系を得る。これらの例により、論理規則が加わるにつれて、論理式の証明は難しくなるものの、そのモデルは簡単になることを示す。また、その考察により、健全性や完全性といった記号とモデルの関係に関する基本概念の理解を目指す。
〔教科書〕
毎回ハンドアウトを配布する。
〔参考書等〕
〔成績評価法〕
ほぼ毎回出題する宿題の累計成績に準じて行う。
〔コメント〕
体系を理解するためには、まず手を動かして練習問題の証明をやってみよう。~とは何か、と考えるのはそれから。
〔授業の概要・目的〕
ニールス・ボーアは、初期量子論から量子力学の成立期において中心的な役割を果たしたことが知られている。講義では、彼の活動を中心に量子力学の誕生の過程を再検討する。
〔授業計画と内容〕
主として以下のトピックを扱うが、適宜参加者にも発表してもらう予定である。
附:ボーアの日本訪問
〔授業の概要・目的〕
大正から昭和前半は日本の物理学が黎明期を迎えているが、その時期に物理学、そして科学はどのような学問として捉えられていたのだろうか。授業では、主として物理学者による科学論を四篇選び、時代をたどりながら検討する。
〔授業計画と内容〕
最初に、明治から昭和前半までの日本の物理学の変遷をたどり、次いで科学論の著作を検討していく。前半は田邊元と石原純、後半は寺田寅彦と中谷宇吉郎の著作を扱うが、適宜出席者に発表してもらう予定である。
〔授業の概要・目的〕
In this lecture, we explore the philosophical implication of the use of simulations and thought experiments in science. Experiments as the source of knowledge has been a focus of philosophical interests. In such philosophical accounts, material aspects of experiments are often emphasized. Then, what about computer simulations? Do they play the same epistemic role as ordinary experiments? If yes, how? If no, what is the point of conducting simulations? What can philosophers say about good and bad simulations? Are simulations similar to thought experiments? These are the kind of questions we discuss. The aim of the lecture is to deepen the understanding on the nature of contemporary science through such discussions.
〔授業計画と内容〕
The lectures will be given both in Japanese and English.
Tentative list of topics
〔授業の概要・目的〕
科学哲学は「役に立つ」だろうか。科学哲学は科学について哲学的に考察する分野であり、それ自体としては有用性を志向してはいない。しかし、科学哲学で蓄積されてきた議論や手法、あるいは科学哲学の問題関心がどの程度の有用性を持ちうるのかというのは、それ自体、文系的な学問と理系的な学問の相互作用のありかたについての科学哲学的な問いとなりうる。本講義では、いくつかの具体的な分野をとりあげつつ、冒頭に挙げた問いを受講生とともにさまざまな角度から考えていく。科学について哲学的に考えることの意義についてより深い理解に到達することが本講義の目標である。
〔授業計画と内容〕
本授業ではおおむね以下のような話題をとりあげていく。
〔授業の概要・目的〕
現代の社会は科学技術の発展と深く関わっており、それなしに社会は成り立たない。他方、科学技術とそれに伴う産業経済の発展は、環境破壊や生命倫理の問題など様々な社会問題を引き起こしてもいる。そしてそれら問題の解明や解決にも、科学技術の発展は不可欠のものになっている。社会の中での科学技術の影響や役割をいかに理解し、制御していくかは、今日、第一級の学術的かつ実践的な課題であり、そのためには人文・社会科学的なアプローチが不可欠である。本講義では、とくに「リスクとイノベーションのガバナンス」という観点から、現代社会における科学技術の諸問題について理解を深める。
〔授業計画と内容〕
以下のようなテーマについて授業をする予定である。。
授業のなかでの質疑・討論の内容次第で、取り上げるトピックや各テーマを扱う週数は変更することがある。
〔授業の概要・目的〕
この講義では、コンピューティングに関わる歴史において、知識の循環・共有がどのようにおこなわれてきたかについて考察する。
具体的には、ユーザコミュニティや、コンピューティングの技術に関する知的所有権をめぐる諸問題等を採り上げる。これにより、受講生はコンピューティング史のアプローチを学び、過去の経緯・帰結が現在のありようにどのように影響してきたかについて理解を深めることになるだろう。
文献などを通じて検討する。
〔授業計画と内容〕
授業は基本的には歴史学的方法論で進めるが、必要に応じて、科学技術社会論の論点についても言及する。
授業概要(各項目について1~3回程度の授業を行う)
〔授業の概要・目的〕
技術哲学の研究が進みつつある。現代は科学・技術の時代と言われるが、科学哲学と技術哲学はあり方をかなり異にする。技術に関する鳥瞰的・形而上学的考察から「経験論的転回」を経て、現在は技術的知識の知識論、工学の科学哲学、人工物の存在論、規範論、技術による媒介論など、技術の内側に立ち入った課題が問題となりつつある。それはまた、技術の倫理とも密接な関係にある。
本講義では、技術の哲学の議論(Kapp, Cassirer,Bungeなど)を概観し、1990年代の北米学派(Ihde, Feenbergら)、2000年代のオランダ学派(Kroes, Verbeekら)など現代の主要な議論をを紹介し、いかなる問題が立てられ、解決が試みられているかを解説する。また、実験器具の哲学や、技術の具体的事例分析にも言及する予定である。
〔授業計画と内容〕
講義で取り上げる予定の主なトピックスは次のようなものである。
〔授業の概要・目的〕
モーガンは20世紀前半に活躍した米国の遺伝学者であり、彼によって遺伝子が染色体上に存在することが実証されている。授業では、彼の代表的な著作の読解を通じて、遺伝学成立期の理論状況を理解する。
〔授業計画と内容〕
当時の遺伝学の状況とモーガンの業績について簡単に紹介した後、次のテキストを読んでいく。
Thomas Hunst Moga, The Theory of the Gene,1926. (邦訳:『遺伝子説』(1935)も合わせて検討する)
〔授業の概要・目的〕
スウィフトは18世紀英国を代表する風刺作家である。彼の代表作『ガリヴァー旅行記』の第三章「ラピュタ渡航記」は、当時の英国科学を風刺していたことでも知られており、その読解を通じてニュートン科学に対する当時の状況を検討する。
〔授業計画と内容〕
18世紀の英国科学とスウィフトについて簡単に紹介した後、次のテキストの第三章を読んでいく。
Jonathan Swift: Gulliver’s Travels, Claude Rawson, ed., with notes by Ian Higgins, Oxford
〔授業の概要・目的〕
「メカニズム」の概念は、長らくあまりきちんと定義されずにさまざまな分野で使われてきた。マカマー=ダーデン=クレーバーの共著による2000年の論文はこの概念をあらためて定義し直し、その結果メカニズムは21世紀の科学哲学、とりわけ生物学の哲学や認知科学の哲学のホットトピックの一つとなっている。メカニズムという概念はどのように定義するのが適当なのか。メカニズムは科学理論や科学的説明においてどのような役割を果たすだろうか。古くからの因果の問題にメカニズムの概念はどうかかわってくるだろうか。本演習を通してこれらの問題について理解を深めてほしい。
〔授業計画と内容〕
基本的に一回の授業でテキスト10ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。
まだ完全に決定してはいないが、以下のような論文を読む予定にしている。
〔授業の概要・目的〕
この演習では、ロベルト・トレッティの『物理学の哲学』を読みながら、現在の物理学の哲学につながるさまざまな考え方がどのように形成されてきたかを学んでいく。今回の授業では冒頭から19世紀ごろまで読み進めることを想定している。
〔授業計画と内容〕
授業は基本的に一回の授業でテキスト15ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する (担当者は事前に決めておく)。テキストの章立てでいえば以下の各章を今回カバーする。
〔教科書〕
Roberto Toretti (1999) The Philosophy of Physics (Cambridge University Press).
〔授業の概要・目的〕
発表演習。四回生必修。卒論作成に向けて、卒論のプランや途中経過などの研究発表をしてもらいます。
〔授業計画と内容〕
欠席が多い学生には、発表しただけでは単位を与えないことがあるので注意してください。
※上段は前期を、下段は後期を表す
1限 | 2限 | 3限 | 4限 | 5限 | |
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月 | |||||
火 | 伊藤 講義 科学史入門 |
伊藤 演習 モーガン 伊藤 演習 スウィフト |
矢田部 基礎演習 I 論理学演習 |
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水 | 伊勢田 特講 シミュレーション 伊勢田 特講 科学哲学の応用 |
伊勢田 演習 メカニズム 伊勢田 演習 物理学の哲学 |
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木 | ※前期は 授業なし 喜多 特講
知識の循環・共有 |
※前期は 授業なし 平川 特講
科学技術論 |
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金 | 伊藤 特講 ボーア 伊藤 特講 大正・昭和前期 |
伊勢田 講義 科学哲学入門 |
伊藤・伊勢田 科哲史セミナー |
集中