2015年度授業概要

系共通

○小長谷大介「科学史入門I」(講義)(前期 月3)

〔授業の概要・目的〕
 現代社会は近代科学の成果によって成り立っているといっても過言ではない。こうした近代科学は、主に西欧を中心にして16-17世紀に生まれ、19世紀以降は諸産業と強く結びつき、現代の科学・技術の基盤となるにいたった。明治維新期以降の日本も近代科学との接点を強めながら経済的発展を遂げて、現在にいたっている。
 本講義では「近代日本の科学の歴史」を主要なテーマとして、最初に西欧の近代科学誕生と発展を概観したのち、日本ではどのような過程を経て近代科学を導入し吸収していったかを、19世紀後半以降の日本の科学の歴史を振り返りながら考察する。

〔到達目標〕
 近代日本の科学の歴史的発展を事例にして、科学と社会の相互関係を理解する。

〔授業計画と内容〕
 以下の各項目に沿って進める予定である。なお、授業を進めるなかで、項目内容や回数に多少の変更が加わることもある。

    • 西欧における近代科学の誕生と発展(第1~3回)
    • 産業革命期における科学(第4~5回)
    • 明治維新前後の日本の科学(第6~8回)
    • 明治日本の近代科学導入(第9~10回)
    • 戦前・戦中の日本の科学の発展(第11~12回)
    • 戦後日本の科学の発展(第13~14回)
    • まとめ(第15回)

〔履修要件〕
特になし

〔成績評価の方法・基準〕
授業内に行う小レポート、小テストによって評価する。評価は到達目標の達成度に基づく。

〔授業外学習〕
予習:事前に配布するプリント、もしくは指示した資料に目を通す。
復習:授業中に課された課題を考察する。

〔教科書〕
授業中に指示する

〔参考書等〕
授業中に紹介する

〔その他(オフィスアワー等)〕
オフィスアワー実施の有無は、KULASISで確認してください。

○伊藤和行「科学史入門II」(講義)(後期 火2)

〔授業の概要・目的〕
 科学とは時間や空間を超えた普遍的なものと一般に考えられているが、人間の営みである以上、科学も歴史のなかで誕生し発展してきたものであり、その成果も歴史的な文脈によって規定されている。とりわけ近代科学は17世紀西欧社会において誕生したと考えられており、当時の歴史的コンテキストの中に科学的活動を位置付けることは、現代科学の理解にとっても重要なものと考えられる。

〔到達目標〕
 本講義を通じて、科学とは何かという問題を歴史的な側面から考察する視点を養い、科学についての人文学的理解をより深める。

〔授業計画と内容〕
 本授業では、西洋世界における科学の歩みを、古代ギリシアから17世紀科学革命までたどる。
具体的には、近代科学誕生の際に中心となった、天文学と運動論を扱い、次のような計画に従って講義を進める予定である。
(各セクション1回から2回の授業を割り当てる)

      • イントロダクション
      • 天文学の歴史
        • 天体の運動について
        • 古代の天文学:地球中心説(プトレマイオスの理論)
        • 近代の天文学:太陽中心説(コペルニクスからケプラーへ)
      • 運動論の歴史
        • 古代の運動論:アリストテレスの理論
        • 中世の運動論:インペトゥス理論と運動の量化
        • 近代の運動論:ルネサンスの技術者とガリレオの理論
      • 17世紀科学革命:天上と地上の運動理論の統合へ向けて:ガリレオ、ホイヘンス、ニュートン
      • まとめ

〔履修要件〕
特になし

〔成績評価の方法・基準〕
授業内に行う小レポート、小テストによって評価する。評価は到達目標の達成度に基づく。

〔授業外学習〕
授業中に参考資料を配付するので、予習・復習においては、それらを精読すること。
また授業の際に参考文献一覧を配布するので、図書館等で適宜読むように。

〔教科書〕
使用しない

〔参考書等〕
授業中に紹介する

〔その他(オフィスアワー等)〕
※オフィスアワー実施の有無は、KULASISで確認してください。

○伊勢田哲治「科学哲学入門(上)」(講義)(前期 金3)

〔授業の概要・目的〕
 科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。 前期の講義においては、科学とはなにかという問題、科学的推論や科学的説明をめぐる問題を、科学全体に関わるテーマと個別の領域に関わるテーマに分けて論じる。

〔到達目標〕
 科学とは何か、科学的推論とは何か、科学的説明は何か、といった問題について、科学哲学の基礎的な概念と考え方を理解し、それを適切に科学の具体的事例に適用できるようになる。

〔授業計画と内容〕
 以下のそれぞれのテーマについて2~3週をかけて論じる。

  • 科学とは何か
  • 科学的推論
  • 個別科学における科学的推論
  • 科学的説明
  • 個別科学における科学的説明

フィードバックについては授業内で指示する。

〔履修要件〕
特になし

〔成績評価の方法・基準〕
2回のレポートで評価を行う。評価は到達目標の達成度にもとづいて行う。
1回でもレポートをさぼると不可となるので注意されたい。

〔授業外学習〕
受講者は各授業前にテキストの該当箇所を読むことが期待されている。

〔教科書〕
サミール・オカーシャ 『科学哲学』(岩波書店)

〔参考書等〕
授業中に紹介する。

〔その他(オフィスアワー等)〕
オフィスアワーは水曜日15:00-16:30を予定

○伊勢田哲治「科学哲学入門(下)」(講義)(後期 金3)

〔授業の概要・目的〕
 科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。 後期の授業では科学的実在論や科学の変化、科学と価値などのテーマを順にとりあげ、関連する個別科学におけるテーマも検討する。

〔到達目標〕
 科学における実在の問題とは何か、科学はどのように変化するか、科学と価値の関係はどうなっているか、といった問題について、科学哲学の基礎的な概念と考え方を理解し、それを適切に科学の具体的事例に適用できるようになる。

〔授業計画と内容〕
 以下のそれぞれのテーマについて2~3週をかけて論じる。

  • 実在論と反実在論
  • 個別科学における実在論問題
  • 科学の変化と科学革命
  • 個別科学における変化の問題
  • 科学と価値

フィードバックについては授業内で指示する。

〔履修要件〕
特になし

〔成績評価の方法・基準〕
2回のレポートで評価を行う。評価は到達目標の達成度にもとづいて行う。
1回でもレポートをさぼると不可となるので注意されたい。

〔授業外学習〕
受講者は各授業前にテキストの該当箇所を読むことが期待されている。

〔教科書〕
サミール・オカーシャ 『科学哲学』(岩波書店)

〔参考書等〕
授業中に紹介する。

〔その他(授業外学習の指示・オフィスアワー等)〕
オフィスアワーは水曜日15:00-16:30を予定

○矢田部俊介「基礎演習Ia(論理学演習1)」(講義)(前期 火5)

〔授業の概要・目的〕
 本授業の最終的な目標は、受講者が論理的で明晰な思考に慣れ、何かを主張する際にはその主張がどのような根拠に基づいているかを明確化し、抜けも漏れもない論証ができるようになることである。そのための練習の題材としては、哲学的論理学、そのなかでも 「論理とは何か」という問題をとりあげる。我々は日常、推論を行い、そして「論理的」という言葉をよく使う。もちろん「論理的」であることが要求される。 しかし、「論理」とはいったい何だろうか。日頃、無反省に、知っているつもりで使っている概念の意味を問い直すのは、哲学の重要な仕事の一つである。本演習では、数学における定理の証明がシミュレートできる、「論理」と呼ばれうるような、記号を処理する体系(「形式的体系」)を紹介する。 具体的には、最小述語論理の自然演繹の体系の解説と問題演習を行う。

〔到達目標〕
 最小述語論理の自然演繹で、基本的な演習問題が解けるようになる。
このことを通し、形式的体系における演繹がどのように進むのかを理解し、同時に日常的な推論がどのように形式的体系においてシミュレートされるのかを理解する。

〔授業計画と内容〕
 最小述語論理は、論理結合子の導入規則と除去規則のみを持つ、基本的な論理体系の一つである。前期の前半は、まず最小述語論理の自然演繹の体系を紹介する。問題演習を通じ、各自が自然演繹の証明が出来るようになることが目標である。また、後半には、最小論理上で算術の体系「最小算術Q」を例に、数学における多くの証明が最小論理で遂行可能であることを示す。同時に、原始再帰法など計算の基本概念を紹介する。

〔履修要件〕
特になし

〔成績評価の方法・基準〕
ほぼ毎回出題する宿題の累計成績に準じて行う。

〔授業外学習〕
授業資料は毎回、事前(1~2日前)にwebsite (下記の授業Blog)にアップします。学生は、授業前に資料にざっと目を通しておくことが望ましい。

〔教科書〕
毎回ハンドアウトを配布する。

〔参考書等〕

  • 戸次大介 『数理論理学』(東大出版会)
  • 小野寛晰 『情報科学における論理』(日本評論社)
  • Dag Prawitz 『Natural Deduction: A Proof-Theoretical Study』

〔その他(オフィスアワー等)〕
形式的な体系を理解するためには、まず手を動かして練習問題の証明をやってみよう。記号の意味は何か、と考えるのはそれから。
※オフィスアワー実施の有無は、KULASISで確認してください。

○矢田部俊介「基礎演習Ib(論理学演習2)」(講義)(後期 火5)

〔授業の概要・目的〕
 我々は日常、推論を行い、そして「論理的」という言葉をよく使う。もちろん「論理的」であることが要求される。 しかし、「論理」とはいったい何だろうか。日頃、無反省に、知っているつもりで使っている概念の意味を問い直すのは、哲学の重要な仕事の一つである。ま た、「論理」とはいったい何かという問題は、現代の大きな問題である。というのも、古典論理の体系以外にも、20世紀以降、多くの異なる論理体系が提案さ れているからである。それらの非古典的な体系が論理と呼ばれるなら、ある体系が「論理」と呼ばれるためには、どんな性質を満たしていることが必要だろうか。本演習では、最小述語論理の自然演繹の体系の解説から始め、最小論理・直観主義論理・古典論理
での論理式の証明とそのモデルを使った議論が出来るようにす ることを目的とする。その中で、単なる記号の処理を行なう体系が「論理」と呼ばれるにはどんな性質を満たす必要があるかを考察する。また、学期末には、もう一つのトピックとして、「真理とは何か」という、論理と密接に関係する別の話題を取り上げ、その論理学的性質を探る。

〔到達目標〕
 直観主義論理と古典論理の自然演繹で、基本的な演習問題が解けるようになる。
 このことを通し、最小論理との比較により、論理規則が増えることが何を意味し、推論に同影響を与えるのかを理解する。

〔授業計画と内容〕
 前半では、前期に紹介した最小述語論理を例にとり、論理結合子の意味とは何かを、「証明論的意味論」と呼ばれる立場から考察する。具体的には、ベルナップの「トンク」の例を題材に、論理結合子の条件とは何かを考え、保存拡大性や証明の正規化といった論理学の基本概念を理解することを目指す。
 後半では、最小論理に論理規則を付加し拡張した論理体系を紹介する。つまり、最小論理に矛盾律、排中律と論理規則を加え、直観主義論理、古典論理の体系を得る。これらの例により、論理規則が加わるにつれて、論理式の証明は難しくなるものの、そのモデルは簡単になることを示す。また、その考察により、健全性や完全性といった記号とモデルの関係に関する基本概念の理解を目指す。最後に、論理学の応用的話題として、近年研究が進んでいる公理的な真理理論をとりあげ、その論理学的な概観を紹介する。時間があれば、その関係で、ゲーデルの不完全性定理等も紹介する。

〔履修要件〕
特になし

〔成績評価の方法・基準〕
ほぼ毎回出題する宿題の累計成績に準じて行う。

〔授業外学習〕
授業資料は毎回、事前(1~2日前)にwebsite (下記の授業Blog)にアップします。学生は、授業前に資料にざっと目を通しておくことが望ましい。

〔教科書〕
毎回ハンドアウトを配布する。

〔参考書等〕

  • 戸次大介 『数理論理学』(東大出版会)
  • 小野寛晰 『情報科学における論理』(日本評論社)
  • Dag Prawitz 『Natural Deduction: A Proof-Theoretical Study』

〔その他(オフィスアワー等)〕
形式的体系を理解するためには、まず手を動かして練習問題の証明をやってみよう。記号の意味は何か、と考えるのはそれから。
※オフィスアワー実施の有無は、KULASISで確認してください。

特殊講義(学部・大学院共通)

○伊藤和行「量子力学の歴史」(後期 木2)

〔授業の概要・目的〕
 量子力学が現代物理学の基礎理論であることは周知の通りである。一方その基礎理論については、誕生からすでに100年近くが過ぎようとしているにも拘わらず、いまだに議論の対象となっており、科学史的にも科学哲学的にも重要な問題で有り続けている。また近年は、基礎理論に関わる問題を実験的に確証することが可能となってきており、単なる哲学的問題では無く、実験物理学、さらには量子光学や量子論理などと結び付いた実践的問題となっている。

〔到達目標〕
 本講義を通じて、量子力学の基礎理論の歴史を辿った研究書をガイドとして、量子力学が内包している基礎的問題について、歴史的かつ哲学的に理解を深める。

〔授業計画と内容〕
 授業では、最初に、担当教員(あるいはこの分野を専門とする学生)が、量子力学の基礎理論の歴史に関して概要をまとめる。そのあとガイドとして、ウィテッカー『アインシュタインのパラドックス―EPR問題とベルの定理』を用い、その邦訳の各章の内容を、出席者がまとめて発表する形で授業を進めていく。具体的なトピックは次のようなものである。各回、1~3のトピックを扱っていく。

  • 第1部:第一期の量子論
    • 量子論
    • 量子論と離散性
    • シュレーディンガー方程式
    • 重ね合わせ
    • さらに複雑な問題
    • 量子論と正統的解釈と非正統的解釈
  • 第2部:量子論の基礎をめぐって
    • エンタングルメント
    • ジョン・ベルの功績
    • 実験哲学―最初の十年
    • アラン・アスペー情報伝達の排除
    • ベルの不等式に関する最近の発展
    • 不等号なしのベルの定理
    • 新時代
    • ベルの最後の思い

〔履修要件〕
特になし

〔成績評価の方法・基準〕
平常点(出席および発表、レポート)によって評価する。

〔授業外学習〕
授業前に、必ずテキストの該当部分を読解し、疑問点等をまとめておくこと。
またテキストの理解に必要な物理的知識に関しては、授業中に参考文献等を紹介するので、適宜自学するように。

〔教科書〕
授業で必要なテキストは、担当教員が用意して配布する。

〔参考書等〕
授業中に紹介する

〔その他(オフィスアワー等)〕
特になし
※オフィスアワー実施の有無は、KULASISで確認してください。

○伊勢田哲治「統計の哲学とその含意(Philosophy of Statistics and Its Implications)」(総合生存学館提供科目)(前期 水2)

〔授業の概要・目的〕
 この特殊講義のテーマは科学の哲学的側面にかかわるさまざまな話題をとりあげる形で毎年変更されます。今年度は統計学の哲学とさまざまな科学分野におけるその含意について考える。統計学と統計的思考は多くの科学分野の核をなすが、その背景となる哲学が論じられることは少ない。この授業においては、統計学の哲学におけるいくつかの理論(ベイズ主義、尤度主義、錯誤統計学)とともに統計的方法を実際に使ういくつかの分野(統計力学、量子力学、集団遺伝学、社会調査など)を検討の対象にする。

The topic of this special lecture varies every year, picking up various topics related to the philosophical aspects of science. This year, we explore philosophy of statistics and its implication in various sciences. Statistics and statistical thinking are at the core of many scientific fields, but the philosophical basis behind it is rarely discussed. In this class, we look at several theories in philosophy of statistics (Bayesianism, Likelihoodism, and Error Statistics) along with several fields that actually use statistical method (statistical mechanics, quantum mechanics, population genetics, social survey etc.).

〔到達目標〕
 科学に対する哲学的なものの見方というのがどのようなものか理解する。とりわけ、今年度の授業においては、統計学の哲学における諸理論と、そのさまざまな科学分野への含意を理解すること。授業で取り上げた哲学理論を具体的な事例に応用できるようになること。
To understand philosophical way of looking at science. In particular, this year, to understand various theories in philosophy of statistics and their implications for various scientific fields. To be able to apply the philosophical theories discussed in the class for concrete cases.

〔授業計画と内容〕
The lectures will be given both in Japanese and English.
Tentative list of topics (spend one or two weeks for each topic)

  • Part I: philosophy of statistics
    • philosophy of probability
    • Bayesianism
    • classical statistics and its rationale
    • likelihoodism
    • error statistics
    • Akaike information theory
  • Part II: Implications for various fields
    • statistical mechanics
    • quantum mechanics
    • population genetics
    • social survey

〔履修要件〕
No background is required, but if you are not familiar with philosophy of science ingeneral, please read some introductory book by yourself. Okasha’s introductory book (邦訳オカーシャ『科学哲学』) is recommended.

〔成績評価の方法・観点及び達成度〕
 中間の論文計画の提出と期末論文の提出を総合的に100点満点(60点以上合格)で評価する。
評価は、授業で取り上げられた理論が適切に理解できているか、そうした理論が適切に具体例に適用できているか、という視点から行われる。講師の中間論文計画へのコメントへの反応も評価の対象となる。
A midterm paper project and the final paper. The project and the final paper as a whole is evaluated numerically, where full mark is 100 and passing mark is above 60.
The assessment is done from the viewpoint of (1) whether the paper reflects proper understanding of the theories discussed in the class and (2) whether the theories are properly applied to concrete cases. Responsiveness to the instructors comment to the paper project is also assessed.

〔授業外学習(予習・復習)等〕
宿題となったリーディングは事前に読み、クラスディスカッションに参加できるようにしておくことを求めます。
Students are expected to read the assigned reading before each class to be able to take part in the class discussion.

〔教科書〕
Reading assignments will be distributed in the class.

〔参考書等〕
授業中に紹介する。

〔その他(授業外学習の指示・オフィスアワー等)〕
オフィスアワーは水曜日15:00-16:30を予定
iseda.tetuji.6n@kyoto-u.ac.jp

○伊勢田哲治「人を対象とした科学の哲学」(後期 水2)

〔授業の概要・目的〕
 科学の多様性はさまざまな形で哲学的考察の対象となってきているが、人間や人間の営みを対象とする諸領域(医学をはじめ人間を対象とする生命系諸科学、行動系科学、社会科学全般、モード2諸科学など)は、人間が関わらない領域に比べて独自の(しかもある程度共通の)問題をかかえることが多い。まず、人間に対しては他の研究よりもはるかに研究手法への制限がきびしい。次に人間は研究結果を理解し反応するため、予言の自己成就・自己否定という現象がおきる。また、知りたいことが他の自然科学的領域と異なって、「理解」である場合がある。もう一つ、研究結果の社会や政策への含意が非常に大きいために、研究の問題設定、基本概念、研究手法や結果の公開の方法など、あらゆる面で人間を対象とする研究は気をくばる必要がある。最後に、アクション・リサーチ(研究自体が積極的に特定の価値観にコミットして行われる研究)や当事者研究(研究主体として通常想定されないタイプの人々が自らを対象に行う研究)など、自然科学の研究モデルから大きくはみだす研究が存在する。これらの特徴について考えていくことで、人を対象とした研究の姿に哲学の立場から迫ることが本講義の目的である。

〔到達目標〕
 人を対象とした科学の哲学に特有なさまざまな問題と、それらの問題が科学哲学の観点からどのように分析されるかを理解し、その理解した内容を具体例に当てはめて考えることができるようになる。

〔授業計画と内容〕
 以下のそれぞれのテーマについて2~3週をかけて論じる。

  • 人を対象とした科学とは
  • 研究手法への制約
  • 予言の自己成就と自己否定
  • 研究目標としての「理解」
  • 実践的含意の研究への影響
  • アクション・リサーチと当事者研究

フィードバックについては授業内で指示する。

〔履修要件〕
特に履修要件はもうけないが、科学哲学の基礎的事項については知っているものという前提で授業が行われる。最低限オカーシャ『科学哲学』(岩波書店)は全体を読み理解しておくことが望ましい。

〔成績評価の方法・観点及び達成度〕
2回のレポートで評価を行う。評価は授業内容をどの程度理解できているか、またその理解した内容をどの程度活用して具体例が分析できているか、という視点から行う。

〔授業外学習〕
宿題となったリーディングは事前に読み、クラスディスカッションに参加できるようにしておくことを求める。

〔教科書〕
授業内で配布

〔その他(授業外学習の指示・オフィスアワー等)〕
オフィスアワーは水曜日15:00-16:30を予定

○林晋「ITと哲学の相即」(前期 月5)

〔授業の概要・目的〕
 IT(情報技術)は社会を根底から変えつつある。そのため人文社会学の様々な分野で「社会と情報技術」や「人間と情報技術」の問題が検討され議論されている。たとえば情報社会論、情報倫理学、情報の哲学などである。これらは、人文社会学の諸学が、その学問の立場の中からITという新しい技術的・社会的存在を理解するものである。一方で、WEB登場後には、IT技術者が、自分たちが持つ技術により社会の根幹を変革できるという希望と期待が生まれた。その典型は、Google 社の活動に見ることができる。これはITという技術からの社会への働きかけである。本講義の目的は、このどちらの立場とも異なり、これらの反対方向の二つの「現象」の背後にある「形而上学的仕組み」とでもいうべきものの存在を明らかにすることである。それは、何故ITは他の技術に比べて容易に「社会的」になってしまうのかの理由を、哲学とITの構造的類似性の観点から説明しようという試みである。取り上げるテーマは、プラトン・アリストテレス形而上学とオブジェクト志向アーキテクチャから、マックス・シェーラーの実質倫理学と Google 検索、西谷啓治の回互的連関とNFS ネットワーク・ファイル・システムなどであり、これらの構造的な類似性をITと哲学の双方の概念を説明し、また、関連付けることにより明らかにする。

〔到達目標〕
 人文学からの技術論、テクノロジーからの社会変革諭などには、しばしば、それぞれの分野の観点のみから、異質なものを理解しようとする一面的な思考が見られる。その一面性に陥らないような視点を養うことを目的とする。

〔授業計画と内容〕
 次の項目をそれぞれ2~3回講義する。

  • 導入:様々な情報社会論・情報技術論とIT社会変革運動
  • 存在:プラトン・アリストテレスの形而上学と Java 言語(オブジェクト志向)
  • 連続:西谷の回互とNFS―京都学派とITの相即の理由
  • 倫理:シェーラーの実質倫理学と Google Page Rank
  • 現存在:HCI(Human Computer Interaction)が「存在と時間」をモデルにする理由
  • Umwelt:ユクスキュルの環世界(Umwelt)とロボット工学
  • 他の思想・研究との比較:L. Floridi The 4th Revolution

など。

項目のオーダーは、この通りではない。たとえば、7は1の導入の後に行う可能性も高い。各項目とも、哲学とITの基本的知識の解説を行い、その上で、両者を結び付ける。できれば、どちらかの知識を持っていると理解に助けになるが、基本的にはどちらも知らなくても理解できるように講義する。また、各講義の終わりに5分ほど時間を取り、質問票に質問を書いてもらい、次回の冒頭に、それに答える。

〔履修要件〕
特になし

〔成績評価の方法・基準〕
レポートにより採点する。

〔授業外学習〕
基本事項から説明するが、項目が多いので、各自、講義資料、講義中に紹介する参考文献などでの
復習が必要である。参考文献は講義のためのサイトに掲示する。

〔教科書〕
使用しない
教科書は使わないが、毎回、詳細な講義資料を作成し、それを講義のサイトで公開する。

〔参考書等〕
授業中に紹介する

〔その他(オフィスアワー等)〕
KULASIS以外に講義用のサイトを開設し、講義資料、参考文献などを掲示する。そのサイトのURLは最初の講義の際に伝える。
※オフィスアワー実施の有無は、KULASISで確認してください。

○喜多千草「情報技術と戦争」(後期 木3)

〔授業の概要・目的〕
 この講義では、戦争と技術の関わりについて、コンピューティング史の観点から考察する。
 具体的には、第二次世界大戦中のデジタルコンピュータの開発や暗号解読、冷戦時の全米防空網の構築からコンピュータ・ネットワークの開発などの諸問題を取り上げる。これにより、受講生はコンピューティング史のアプローチを学び、過去の経緯・帰結が現在のありようにどのように影響してきたかについて理解を深めることになるだろう。

〔到達目標〕
 コンピューティング史の文献の扱い方の基本を学び、戦争と技術の関わりについて研究するための視点を得る。

〔授業計画と内容〕
授業概要(各項目について1~3回程度の授業を行う)

  • オリエンテーション
  • Giant Brainの構築
  • 暗号解読と計算機
  • 人間機械混成系という概念
  • 全米防空網SAGE
  • 航空宇宙開発と計算機
  • コンピュータ・ネットワークの発展
  • まとめ・フィードバック

〔履修要件〕
特になし

〔成績評価の方法・基準〕
平常点による(授業でのディスカッションなどと学期末のレポート)。

〔授業外学習〕
授業で言及する文献の一部については、予習して参加することが望ましい。

〔教科書〕
適宜、授業内にプリント配布、およびウェブサイトに資料をアップロードなどする。

〔参考書等〕
授業中に紹介する

〔その他(オフィスアワー等)〕
詳しくは授業用ウェブサイトから指示する。
※オフィスアワー実施の有無は、KULASISで確認してください。

○児玉聡「規範倫理学I」(前期 金2)

〔授業の概要・目的〕
 普段から倫理理論や原則に従って意識的に行動している人は少ないかもしれないが、本講義で受講生は功利主義や義務論といった規範的な倫理理論およびいわゆる応用倫理学における規範的な議論について学び、批判的に検討することを通じて、規範理論の基礎的知識を身に付けるとともに、体系的な倫理的思考を行うにあたっての基礎的能力を身に付ける。

〔到達目標〕
 現代倫理学の基本をなす功利主義や義務論の立場の要点を理解し、その視点から現代社会の諸問題を吟味し、考察することができるようになる。

〔授業計画と内容〕
 以下の各項目について講述する。各項目には、受講者の理解の程度を確認しながら、【 】で指示した週数を充てる。各項目の講義の順序は固定したものではなく、担当者の講義方針と受講者の背景や理解の状況に応じて、講義担当者が適切に決める。

  • 本講義の視座と問題意識【2週】
  • 加藤尚武『バイオエシックスとは何か』の検討【5~6週】
  • 功利主義(批判)、世代間倫理、安楽死

  • 加藤尚武『現代倫理学入門』の検討【7~8週】
  • カント倫理学(批判)、 ロールズ正義論

※フィードバック方法は授業中に説明します。

〔履修要件〕
特になし

〔成績評価の方法・基準〕
レポート試験の成績(70%) 平常点評価(30%)
平常点評価は毎回の出席と積極的な発言、テキストの概要の発表を含む。

〔授業外学習〕
本年度は加藤尚武のテキストを中心に検討するので、参考書に挙げた関連文献も含めて読んでおく
ことが望ましい。

〔教科書〕

  • 加藤 尚武 『バイオエシックスとは何か』(未来社)ISBN:4624010825
  • 加藤 尚武 『現代倫理学入門』(講談社)ISBN:406159267X

〔参考書等〕

  • 加藤尚武 『脳死・クローン・遺伝子治療』(PHP新書)ISBN:4569607144
  • 加藤尚武 『応用倫理学入門』(晃洋書房)ISBN::47710127079
  • 加藤尚武・飯田亘之編 『バイオエシックスの基礎』(東海大学出版会)ISBN:4486009932
  • 児玉 聡 『功利主義入門』(ちくま書房)ISBN:4480066713
  • 児玉 聡 『功利と直観』(勁草書房)ISBN:4326154136

〔その他(オフィスアワー等)〕
授業中はディスカッションの時間を取れるように工夫するので積極的に参加すること。
※オフィスアワー実施の有無は、KULASISで確認してください。

○児玉聡「規範倫理学II」(後期 金2)

〔授業の概要・目的〕
 規範倫理学1で学んだ知識を基礎に、さらに規範理論の批判的検討を行なう。本講義を通じて受講生は、今日的な問題を考える際に体系的な倫理学の知識を当てはめて考えると同時に、さまざまな規範理論の意義と問題点に関する理解を深める。

〔到達目標〕
 現代倫理学の基本をなす功利主義や義務論の立場の要点を理解し、その視点から現代社会の諸問題を吟味し、考察することができるようになる。

〔授業計画と内容〕
 以下の各項目について講述する。各項目には、受講者の理解の程度を確認しながら、【 】で指示した週数を充てる。各項目の講義の順序は固定したものではなく、担当者の講義方針と受講者の背景や理解の状況に応じて、講義担当者が適切に決める。

  • 本講義の視座と問題意識【2週】
  • 加藤尚武『環境倫理学のすすめ』の検討【5~6週】
    自然の生存権、世代間倫理、地球全体主義
  • 加藤尚武『応用倫理学のすすめ』の検討【7~8週】
    他者危害の原則、アファーマティヴ・アクション

※フィードバック方法は授業中に説明します。

〔履修要件〕
前期の規範倫理学Iを受講していることが望ましい。

〔成績評価の方法・基準〕
レポート試験の成績(70%) 平常点評価(30%)
平常点評価は毎回の出席と積極的な発言、テキストの概要の発表を含む。

〔授業外学習〕
本年度は加藤尚武のテキストを中心に検討するので、参考書に挙げた関連文献も含めて読んでおくことが望ましい。

〔教科書〕

  • 加藤尚武 『環境倫理学のすすめ』(丸善出版)ISBN:462105032X
  • 加藤尚武 『応用倫理学のすすめ』(丸善出版)ISBN:4621051253

〔参考書等〕

  • 加藤尚武編 『環境と倫理』(有斐閣)ISBN:4641122660
  • 加藤尚武 『新・環境倫理学のすすめ』(丸善出版)ISBN:4621053736
  • 加藤尚武 『現代を読み解く倫理学』(丸善出版)ISBN:4621051962

〔その他(オフィスアワー等)〕
講義中にディスカッションの時間が取れるよう工夫するので、積極的な参加を求める。
※オフィスアワー実施の有無は、KULASISで確認してください。

演習(学部・大学院共通)

○伊藤和行「ダーウィンの進化論」(後期 火3)

〔授業の概要・目的〕
 進化論は、現代生物学において重要な領域の一つであり、科学史のみならず、科学哲学においても常に話題となっているテーマである。とりわけ近代の本格的な理論的進化論の創始者ダーウィンの進化論は、現代生物学にも大きな影響を与え続けていると言えよう。このダーウィンの理論を歴史的な文脈において理解することは、現代生物学を歴史的および哲学的文脈において論じる上で重要である。

〔到達目標〕
 授業では『種の起源』(The Origin of Spieces, 1859)を、自然選択説を論じた部分を中心に精読することによって、彼の進化理論について理解を深める。また生物学の歴史および哲学において中心的の問題の一つである進化論の基本的な用語や概念を理解する。

〔授業計画と内容〕
 『種の起源』は全14章から構成される、かなり大きな著作である。演習では、とくに自然選択説の議論が展開されている第4章を、主として第1版をテキストとして読解を行うが、必要に応じて、第2版以降との内容の異同についても検討し、彼の進化論についての理解を深める。授業の最初に進化論の概要と歴史的発展、ダーウィンの人生と業績について概括する。毎回適当な分量を出席者に翻訳してもらい、教員が説明を行う形で授業を進める。読解の際には必要に応じて、大幅な改訂が行われたことが知られている第6版(1872)との内容の異同についても検討していく。

〔履修要件〕
特になし

〔成績評価の方法・基準〕
平常点(出席および発表、レポート)によって評価する。

〔授業外学習〕
授業前に、必ずテキストの該当部分を読解し、疑問点等をまとめておくこと。
テキストは19世紀中頃のものであるので、予習の際には、十分に時間を掛けて精読することが不可欠である。

〔教科書〕
授業で使用するテキストは、担当教員が準備して配布する。
『種の起源』原典のpdfファイルはウェブ上でダウンロード可能である。
Darwin Online (http://darwin-online.org.uk/)

〔参考書等〕
授業中に紹介する

〔その他(オフィスアワー等)〕
特になし。
※オフィスアワー実施の有無は、KULASISで確認してください。

○伊勢田哲治「イメージと論理:ギャリソンの科学哲学」(前期 水3)

〔授業の概要・目的〕
 ピーター・ギャリソンの『イメージと論理:ミクロ物理学の物質文化』(1997)は重厚な事例研究に裏打ちされながら、物理学内部におけるさまざまなローカルな文化の存在と、その相互関係について哲学的な考察を行った著作であり、交易圏(trading zone) という独自の概念を提案したことでも知られる。本書の重要性はよく認識されるところでありながら、大部でテクニカルな内容のため、具体的な内容が検討されることは少ない。この授業では、いくつかの箇所を抜粋して読んでいくことで、ギャリソンの問題意識とプロジェクトの全体像を大づかみにすることを目指す。

〔到達目標〕
 ピーター・ギャリソンの哲学的立場と事例研究を理解し、その議論を批判的に検討できるようになる。

〔授業計画と内容〕
 基本的に一回の授業でテキスト15ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。
 詳しくは授業開始時に連絡するが、Galison 1997 の第1章、第9章のほぼ全体と、他の各章の結論部分を主に読んでいく。
フィードバックについては授業内で指示する。

〔履修要件〕
特に履修要件はもうけないが、科学哲学の基礎的事項については知っているものという前提で授業が行われる。最低限オカーシャ『科学哲学』(岩波書店)は全体を読み理解しておくことが望ましい。

〔成績評価の方法・基準〕
発表の担当と期末のレポートを各50%で評価する。
発表については担当した箇所を正しく理解し、適切に紹介できているか、レポートについては、レポートのテーマとして選んだ箇所を理解し、適切に批判的な検討を行えているかどうかが評価基準になる。

〔授業外学習(予習・復習)等〕
参加者全員が事前に授業で扱う箇所のリーディングに事前に目を通す。担当者は担当箇所の内容をまとめたA4数ページ程度の資料を事前に準備する。

〔教科書〕
P. Galison (1997) Image and Logic: A Material Culture of Microphysics. The University of Chicago Press.
実際に読む箇所を授業内で配布

〔参考書等〕
授業中に紹介する。

〔その他(授業外学習の指示・オフィスアワー等)〕
オフィスアワーは水曜日15:00-16:30を予定

○伊勢田哲治「科学の不統一性」(後期 水3)

〔授業の概要・目的〕
 「統一科学」は論理実証主義のスローガンの一つであり、科学の進むべき方向の一つのイメージとしてさまざまな科学分野が橋渡しされ、統一されていくことが目標とされた。そのスローガンが過去のものになってからも、科学哲学は暗黙のうちに科学を一枚岩のものととらえ、「科学一般」を扱う研究を行ってきた。しかし、1990年代には、科学の多様性と、その多様性を踏まえた新しい科学の諸分野の関わりのありかたが問題となるようになってきた。今回の演習ではその運動の中心となったアンソロジー『科学の不統一性』の論文などを読み、科学の諸分野の関係について一緒に考えたい。

〔到達目標〕
 科学の不統一性という問題について科学哲学の中でどのような議論が行われているか理解し、それらの議論を批判的に検討できるようになる。

〔授業計画と内容〕
 基本的に一回の授業でテキスト15ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。現時点ではテキスト中の以下のような論文を読むことを想定しているが、詳しくは受講生の興味に応じて決定する。

  • J. Cat “unity of science”stanford encyclopedia of philosophy
    (http://plato.stanford.edu/entries/scientific-unity/)
  • I. Hacking “The disunity of science”
  • A. I. Davidson “Styles of reasoning, conceptual hisoty and the emergence of psychiatry”
  • J. Dupre “Metaphysical disorder and scientific disunity”
  • R. Creath “The unity of science: carnap, neurath and beyond”

フィードバックについては授業内で指示する。

〔履修要件〕
特に履修要件はもうけないが、科学哲学の基礎的事項については知っているものという前提で授業が行われる。最低限オカーシャ『科学哲学』(岩波書店)は全体を読み理解しておくことが望ましい。

〔成績評価の方法・基準〕
発表の担当と期末のレポートを各50%で評価する。
発表については担当した箇所を正しく理解し、適切に紹介できているか、レポートについては、レポートのテーマとして選んだ箇所を理解し、適切に批判的な検討を行えているかどうかが評価基準になる。

〔授業外学習(予習・復習)等〕
参加者全員が事前に授業で扱う箇所のリーディングに事前に目を通す。担当者は担当箇所の内容をまとめたA4数ページ程度の資料を事前に準備する。

〔教科書〕
Galison and Stump (1996) The Disunity of Science. Stanford University Press.
授業に使用する部分を配布

〔参考書等〕
授業中に紹介する。

〔その他(授業外学習の指示・オフィスアワー等)〕
オフィスアワーは水曜日15:00-16:30を予定

○伊勢田哲治「科学哲学科学史セミナー」(前期 金4)

〔授業の概要・目的〕
 科学史および科学哲学における、基礎的な知識の理解を向上させるとともに、近年の研究動向についての知識を得る。
それらを基盤として、卒業論文の作成に必要な基礎的な力を養う。

〔到達目標〕
 科学哲学・科学史の基礎知識を向上させるとともに、論文作成のための基礎的な力を身につける

〔授業計画と内容〕
 授業に出席する各学生に研究の進行状況を報告してもらい、研究テーマの設定、先行研究についての理解などについて個別に指導を行う。
発表順や具体的な発表課題・内容等については、出席学生と担当教員とで相談をして決める。

〔履修要件〕
特になし

〔成績評価の方法・基準〕
平常点(出席および発表等)によって評価する

〔授業外学習〕
発表担当時の準備、その他授業外作業がある場合は適宜指示する。

〔教科書〕
使用しない

〔参考書等〕
なし

〔その他(オフィスアワー等)〕
なし
※オフィスアワー実施の有無は、KULASISで確認してください。

○伊藤和行・伊勢田哲治「科学哲学科学史セミナー」(後期 金4)

〔授業の概要・目的〕
 科学史および科学哲学における、基礎的な知識の理解を向上させるとともに、近年の研究動向についての知識を得る。
それらを基盤として、卒業論文の作成に必要な基礎的な力を養う。

〔到達目標〕
 科学哲学・科学史の基礎知識を向上させるとともに、論文作成のための基礎的な力を身につける

〔授業計画と内容〕
 授業に出席する各学生に研究の進行状況を報告してもらい、研究テーマの設定、先行研究についての理解などについて個別に指導を行う。
発表順や具体的な発表課題・内容等については、出席学生と担当教員とで相談をして決める。

〔履修要件〕
特になし

〔成績評価の方法・基準〕
平常点(出席および発表等)によって評価する

〔授業外学習〕
発表担当時の準備、その他授業外作業がある場合は適宜指示する。

〔教科書〕
使用しない

〔参考書等〕
なし

〔その他(オフィスアワー等)〕
なし
※オフィスアワー実施の有無は、KULASISで確認してください。

集中講義(学部・大学院共通)

○江間有沙「科学技術と社会のパンドラの匣:ゲーム教材を考える」(前期集中 特殊講義)

〔授業の概要・目的〕
 科学技術と社会が引き起こす「最悪の事態」の事例やゲーム教材を題材とすることで、現在の科学技術を支えているシステムや社会のあり方について逆説的に議論する授業です。サイバー犯罪で捕まらないようにする技術、パンデミックを引き起こす要因、体に害をなす食べ物、健康に悪い習慣を続けさせるシステムを作り出すためには、どのような科学技術や制度があるだろうか。また、研究不正やねつ造を可能にする環境や人々を「最悪の事態」へと誘導するレトリックとはどのようなものだろうか。そして、その「最悪の事態」を防ぐためにはどうすればよいのか。授業では、なぜそのような悪いことが起きるのか(心理的・構造的問題)、取り締まりをきつくすればなくなる問題なのか(政策的・制度的問題)、そして「最悪の事態」とは誰にとってなぜ「最悪」なのか(文化的・解釈的問題)など、最先端の研究や事例を紹介しながら多角的な視点での分析・議論を行います。また同時に「最悪の事態」を防ぐためのゲームデザインに着目し、ボードゲーム・カードゲーム・シミュレーションゲームなどいくつか実際にゲームを体験することで、その問題の切り出し方の効果と限界についても議論を行います。

〔到達目標〕

  • 現在、科学技術と社会の間で問題となっていること・なりそうな事例について学ぶ
  • まだ見ぬ科学技術や社会に対する想像力を養い、リスクに備えるための思考法を身に着ける
  • 多分野の知見を用いながら、多角的に問題を議論する方法論を身に着ける
  • 常識を疑い、自分と異なる意見を尊重しながら、自らの知見を他者に説明する能力を養う
  • 科学技術社会の間での問題をゲームデザインに落とし込むうえで、科学的正確さとわかりやすさのジレンマについての理解を深める

〔授業計画と内容〕

  • 8月25日(火):13:00-18:00
    ケース1)研究環境:不正・ねつ造・偽造・倫理など
  • 8月26日(水):10:30-18:00
    ケース2)情報技術:ロボット兵士・人工知能管理・サイバー犯罪など
  • 8月27日(木):10:30-18:00
    ケース3)生命科学・医療:生活習慣病・パンデミック・エンハンスメントなど
  • 8月28日(金):10:30-18:00
    ケース4)エネルギー・環境・宇宙:原子力・地球温暖化・宇宙開発など

本講義に関連する事件や事故の発生などによって、取り上げる個別トピックを変更することがあり
ます。

〔履修要件〕
特になし

〔成績評価の方法・基準〕
本授業は、講義のほかにグループワークやディスカッション、ゲーム教材を用いた交渉や討論、シミュレーションなどが行われる双方向参加型授業です。
1)議論や討論、ゲームへの積極的な参加(30点)
2)最終レポート(70点)

〔授業外学習〕
本講義では最先端の科学、技術や社会問題についての議論も行うため、新聞やウェブなどで、日々ニュースに目を通しておくことが望ましい。

〔教科書〕
授業中に指示する

〔参考書等〕
授業中に紹介する

〔その他(オフィスアワー等)〕
※オフィスアワー実施の有無は、KULASISで確認してください。

○ 北島雄一郎「量子力学における実在と非局所性」(前期集中 特殊講義)

〔授業の概要・目的〕
 この授業の目的は、量子力学において概念的に重要な問題があることを、哲学系の学生に知ってもらうことである。数学や量子力学の予備知識は仮定しない。はじめに量子力学における概念的問題を論じるために必要な数学を述べる。その後、実在と非局所性に関係する、量子力学における概念的問題を考えていく。

〔到達目標〕
 量子力学における哲学的問題に関して論じた文献を、自力で読むことができるようになる。

〔授業計画と内容〕

  • 数学的準備(2行2列や3行3列の行列など)
  • アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼン(EPR)の議論
  • ベルの不等式
  • コッヘン・シュペッカーの定理
  • EPRに対するボーアの反論

〔履修要件〕
特になし

〔成績評価の方法・基準〕
レポート:100%

〔授業外学習〕
予習:事前に配布するプリントに目を通す。
復習:授業中に紹介した文献を読んでみる。

〔教科書〕
プリントを配布する。

〔参考書等〕
Jeffrey Bub 『Interpreting the Quantum World』(Cambridge University Press)ISBN:052165386X

〔その他(オフィスアワー等)〕
※オフィスアワー実施の有無は、KULASISで確認してください。

授業時間割表

※上段は前期を、下段は後期を表す

1限 2限 3限 4限 5限
小長谷 講義
科学史入門I
※後期は授業なし
林 特講
ITと哲学の相即
※後期は授業なし
※前期は授業なし
伊藤 講義
科学史入門II
※前期は授業なし
伊藤 演習
ダーウィンの進化論
矢田部 基礎演習Ia
論理学演習
矢田部 基礎演習Ib
論理学演習
伊勢田 特講
統計の哲学
伊勢田 特講
人を対象とした科学の哲学
伊勢田 演習
ギャリソン
伊勢田 演習
科学の不統一性
※前期は授業なし
伊藤 特講
量子力学の歴史
※前期は授業なし
喜多 特講
情報技術と戦争
児玉 特講
規範倫理学I
児玉 特講
規範倫理学II
伊勢田 講義
科学哲学入門(上)
伊勢田 講義
科学哲学入門(下)
伊勢田
科哲史セミナーI
伊藤・伊勢田
科哲史セミナーII

集中・その他

      • 江間 「科学技術と社会のパンドラの匣」(8/25~28の予定)
      • 北島 「量子力学における実在と非局所性」