2017年度授業概要

系共通

○伊藤和行「科学史I」(講義)(前期 火2)

〔授業の概要・目的〕

科学とは時間や空間を超えた普遍的なものと一般に考えられているが,人間の営みである以上,科学も歴史のなかで誕生し発展してきたものであり,その成果も歴史的な文脈によって規定されている.とりわけ近代科学は17世紀西欧社会において誕生したと考えられ,近世・近代日本における自然研究および近代日本への西欧科学の導入を,当時の歴史的文脈の中で理解することは,現代科学の理解にとっても重要である.

〔授業計画と内容〕

本講義では,近世日本における科学の発展を,17世紀から20世紀初頭(江戸時代から明治・大正期)までたどり,どのようにして近代西欧科学が日本に移入され,定着されていったのかを検討する.

  • イントロダクション
  • 西欧における科学の誕生と発展
  • 江戸時代の科学:蘭学から洋学へ
  • 明治維新前後の科学
  • 明治日本の近代科学の導入
  • 大正日本における科学の定着
○伊藤和行「科学史II」(講義)(後期 火2)

〔授業の概要・目的〕

科学とは時間や空間を超えた普遍的なものと一般に考えられているが,人間の営みである以上,科学も歴史のなかで誕生し発展してきたものであり,その成果も歴史的な文脈によって規定されている.とりわけ近代科学は17世紀西欧社会において誕生したと考えられ,「科学革命」と呼ばれている.この歴史的事件を当時の歴史的コンテキストの中で科学的活動を理解することは,現代科学の理解にとっても重要なものである.

〔授業計画と内容〕

本授業では,西洋世界における科学の歩みを,古代ギリシアから17世紀科学革命までたどる.

具体的には,近代科学誕生の際に中心となった天文学と運動論の歴史的変遷を古代から17世紀まで考察する.

次のような計画に従って講義を進める予定である.

  • 1. イントロダクション
  • 2. 天文学の歴史
    • 2-1. 天体の運動について
    • 2-2. 古代の天文学:地球中心説(プトレマイオスの理論)
    • 2-3. 近代の天文学:太陽中心説(コペルニクスからケプラー、ガリレオへ)
  • 3. 運動論の歴史
    • 3-1. 古代・中世の運動論:アリストテレスの理論とインペトゥス理論
    • 3-2. 近代の運動論:ルネサンスの技術者とガリレオの運動論
  • 4. 17世紀科学革命:ニュートンによる天上と地上の運動理論の統合
○伊勢田哲治「科学哲学入門(上)」(講義)(前期 水3)

〔授業の概要・目的〕
科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。 前期の講義においては、科学とはなにかという問題、科学的推論や科学的説明をめぐる問題を、科学全体に関わるテーマと個別の領域に関わるテーマに分けて論じる。

〔授業計画と内容〕
以下のそれぞれのテーマについて2~3週をかけて論じる。

  • 1 科学とは何か
  • 2 科学的推論
  • 3 個別科学における科学的推論
  • 4 科学的説明
  • 5 個別科学における科学的説明

フィードバックについては授業内で指示する。

〔教科書〕
サミール・オカーシャ 『科学哲学』(岩波書店)

○伊勢田哲治「科学哲学入門(下)」(講義)(後期 水3)

〔授業の概要・目的〕
科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。 後期の授業では科学的実在論や科学の変化、科学と価値などのテーマを順にとりあげ、関連する個別科学におけるテーマも検討する。

〔授業計画と内容〕
以下のそれぞれのテーマについて2~3週をかけて論じる。

  • 1 実在論と反実在論
  • 2 個別科学における実在論問題
  • 3 科学の変化と科学革命
  • 4 個別科学における変化の問題
  • 5 科学と価値

フィードバックについては授業内で指示する。

〔教科書〕
サミール・オカーシャ 『科学哲学』(岩波書店)

特殊講義(学部・大学院共通)

○伊藤和行「明治期日本おける地震学の誕生」(特殊講義)(前期 木2)

〔授業の概要・目的〕
この授業では,明治期日本における地震学の誕生を採り上げ,近代初期における西欧科学の導入と発展の過程について考察する.具体的には,日本における物理学の導入,地震学会の誕生,濃尾地震と震災予防調査会,古地震学(歴史地震学)などについて検討する.

〔授業計画と内容〕
以下の項目に従って進める予定である。

  • 1. イントロダクション
    • 明治期の西欧科学の導入
    • 19世紀後半の地球物理学の発展
  • 2. 地震学会の誕生
  • 3. 濃尾地震
    • 震災予防調査会
    • 古地震学(歴史地震学)
○伊藤和行「江戸時代の天文学—望遠鏡による天体観測を中心に」(特殊講義)(後期 木2)

〔授業の概要・目的〕
本授業では,江戸時代の天文学を取り上げ,当時の自然科学についての理解を深める.とくに18世紀後半以降の望遠鏡による天体観測の史料に焦点を当て,惑星を中心とした天体の描写や記述の検討を通じて,望遠鏡という新しい観測機器の導入が江戸の天文学に与えた影響を考察する.

〔授業計画と内容〕
以下の項目に従って進める予定である。

  • 1. イントロダクション
    • 江戸の科学:鎖国と蘭学の誕生
  • 2. 江戸の天文学の発展
  • 3. 望遠鏡による天体観測
    • 望遠鏡の発明
    • 望遠鏡の日本への移入
    • 望遠鏡による天体観測に関する史料の検討
○伊勢田哲治「技術・工学の哲学(Philosophy of Technology and Engineering Sciences)」(特殊講義)(前期 金2)

〔授業の概要・目的〕
この特殊講義のテーマは科学の哲学的側面にかかわるさまざまな話題をとりあげる形で毎年変更されます。今回の講義では技術や工学について哲学でどのような議論が行われているかを、日本における事例を使いながら一緒に考えていきます。日本語では科学技術と一口に言いますが、英語のscience and technology はそれほど一体化していません。歴史的にも科学と技術の関係は複雑です。そうした背景に照らして考えたとき、科学の方法論や対象の捉え方はどのくらい技術や工学にあてはまるのでしょうか。また、技術はわれわれの社会を変えていく力を持ちますが、われわれの文化や価値観と技術の間にはどのような関係がある(あるべき)と考えられるでしょうか。このような問題を日本という文脈の中で考えていきたいと思います。

The topic of this special lecture varies every year, picking up various topics related to the philosophical aspects of science. This year, we explore philosophical discussions on technology and engineering sciences. In Japanese, the expression ‘kagaku-gijutsu’ is often used to refer to science and technology as a unity, but English counterpart ‘science and technology’ does not seem to have a similar implication. Historically speaking, the relationship between science and technology is complicated. How much of scientific methodology and viewpoint are applicable to technology and engineering sciences, given the background? Also, technology has a significant power to change our society; what is (and should be) the relationship between our culture and values on the one hand and technology on the other? We look at these and related issues in Japanese context.

〔授業計画と内容〕
授業は日本語と英語で行われます。 以下は扱うトピックの暫定的リストです。(一項目に1〜2週かけます)

The lectures will be given both in Japanese and English. Tentative list of topics (we will spend one or two weeks for each topic)

  • 第一部:科学・技術と工学(science, technology and engineering sciences)
    • 1 歴史的背景(Historical background)
    • 2 技術とは何か?工学とは何か?(What is technology?; what is an engineering science?)
    • 3 工学的知識の分析(Analysis of engineering knowledge)
    • 4 事例研究:遺伝子工学(Case study: genetic engineering)
  • 第二部:技術と工学の存在論(Ontology of technology and engineering sciences )
    • 5 人工物とその機能(Artifacts and their functions)
    • 6 設計の概念(The concept of design)
    • 7 事例研究:ロボットの存在論(Case study: ontology of robots)
  • 第三部:技術対文化・価値観(Technology vs. culture and values)
    • 8 技術の社会的構成(Social construction of technology)
    • 9 技術の文化・価値観への影響(Influence of technology on culture and values)
    • 10 事例研究1:リスクと安全性(Cases study 1: Risk and safety)
    • 11 事例研究2:ポストヒューマニティ(Case study 2: Posthumanity)
○伊勢田哲治「量子力学の哲学入門」(特殊講義)(後期 金2)

〔授業の概要・目的〕
量子力学の哲学は科学哲学の定番のテーマでありながら、必要とされる前提知識が多いために敷居の高い領域となっている。本講義では、アルバートらの入門書を利用して、必要最低限のバックグラウンドを身につけながら、量子力学の解釈問題へとアプローチしたい。

〔授業計画と内容〕
以下の項目について、それぞれ1~2週で論じる。

  • 重ねあわせ
  • 数学的背景
  • 非局所性、コッヘン=スペッカーの定理
  • 観測問題
  • 波動関数の収縮、GRW理論
  • 多世界解釈
  • ボーム理論
  • 近年の諸解釈
○網谷祐一「進化論の哲学論争」(特殊講義)(前期集中)

〔授業の概要・目的〕
進化論およびそれに基づいて人間本性を探求する研究は、様々な哲学的論争を引き起こしてきた。本授業ではそうした論争を概説した上で、それぞれの論争についてどの立場が有力かを考える。現在のところ、具体的には人間の理性の進化、道徳の進化、および進化心理学にまつわる問題について考えることを計画している。[ただし内容を変更する場合がある]

〔授業計画と内容〕

  • (1) ガイダンス(1-2回)
  • (2) 道徳の進化の問題(3-6回)
  • (3) 理性の進化の問題(7-11回)
  • (4) 社会生物学・進化心理学の問題(12-15回)

〔参考書等〕

  • 長谷川寿一・長谷川眞里子 『進化と人間行動』 (東京大学出版会)
  • R・ボイド&J・シルク 『ヒトはどのように進化してきたか』 (ミネルヴァ書房)
  • ソーバー 『進化論の射程』 (春秋社)
○喜多千草「情報技術と戦争」(特殊講義)(後期 木4)

〔授業の概要・目的〕
この講義では、戦争と技術の関わりについて、コンピューティング史の観点から考察する。
具体的には、第二次世界大戦中のデジタルコンピュータの開発や暗号解読、冷戦時の全米防空網の構築からコンピュータ・ネットワークの開発などの諸問題を取り上げる。これにより、受講生はコンピューティング史のアプローチを学び、過去の経緯・帰結が現在のありようにどのように影響してきたかについて理解を深めることになるだろう。

〔到達目標〕
コンピューティング史の文献の扱い方の基本を学び、戦争と技術の関わりについて研究するための視点を得る。

〔授業計画と内容〕
授業概要(各項目について1~3回程度の授業を行う)

  • オリエンテーション
  • Giant Brainの構築
  • 暗号解読と計算機
  • 人間機械混成系という概念
  • 全米防空網SAGE
  • 航空宇宙開発と計算機
  • コンピュータ・ネットワークの発展
  • まとめ・フィードバック
○中尾麻伊香「核時代の科学と文化 」(特殊講義)(後期 木5)

〔授業の概要・目的〕
20世紀に進展した核をめぐる科学・技術は、世界のあり方を大きく変容させた。それは、いまだ解決の見えないさまざまな問題をも生み出してきた。人類は、核時代をどのように迎え、核をめぐる問題をどのように認識してきたのだろうか。この講義では、核をめぐるさまざまな表現に注目しながら、核兵器開発から今日に至るまでの歴史を学んでいく。毎回の講義では、基本的事柄に関する講義に加え、関連の資料(文字、写真、映像など)を用いて、人類は核をどのように捉えてきたか、核への期待と恐怖はどのように共存してきたか、被爆国がなぜ原発大国となったのか、核時代に人々の生活・思想・文化がどのように変容したか、などを考えていく。

〔授業計画と内容〕
以下のテーマについて、各1~3回とりあげる。

  • 1.核兵器開発
  • 2.核の被害
  • 3.原発推進と原発事故
  • 4.反核運動の展開
  • 5.ポピュラー文化における核
  • 6.原爆をめぐる記憶と資料

演習(学部・大学院共通)

○伊藤和行「Thomas Harriotの科学」(演習)(前期 火3)

〔授業の概要・目的〕
この授業では,17世紀初頭に活躍した,イギリスの数学者・天文学者Thomas Hariott (ca.1560-1621)の科学的活動を検討する.Hariottは,望遠鏡による天体観測を最初に行った者の一人として知られているほか,代数学や航海術に関して業績を残している.

〔授業計画と内容〕
以下の項目に従って進める予定である.

  • 1:イントロダクション
    • 17世紀科学革命
    • Harriotの人生と科学的業績
  • 2:望遠鏡による天体観測
  • 3:数学的業績

〔教科書〕使用しない.
授業で使用するテキストは,担当教員が用意して配布する.

○伊藤和行「Hubbleと20世紀前半の天文学の発展」(演習)(後期 火3)

〔授業の概要・目的〕
この授業では,20世紀前半に活躍した,アメリカの天文学者Edwin Powell Hubble (1889-1953)の科学的活動を中心に,20世紀前半の天文学の発展を検討する.Hubbleは20世紀を代表する天文学者であり,銀河系が宇宙の中の一つの島宇宙であること,そして宇宙が絶えず膨張していることを観測結果に基づいて示したことで知られ,現代宇宙論に大きな影響を与えている.

〔授業計画と内容〕
以下の項目に従って進める予定である.

  • 1:イントロダクション
    • 近代から現代までの天文学の歴史
    • Hubbleの人生と天文学的業績
  • 2:銀河系の問題
  • 3:膨張宇宙の問題
○伊勢田哲治「科学技術社会論」(演習)(前期 金3)

〔授業の概要・目的〕
科学技術社会論はさまざまな角度から科学と技術と社会の関係について研究する、多面的で活発な分野である。科学をどのように捉えるかという科学哲学もまた科学技術社会論の理論的背景の一角をなすが、科学哲学者はあまり科学技術社会論の議論に参加していないというのが現状である。この授業では科学技術社会論の定評あるハンドブックからいくつかの章を読みつつ、科学技術社会論と科学哲学の関係についてともに考えていきたい。

〔授業計画と内容〕
基本的に一回の授業でテキスト15ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。 現時点では以下のハンドブックからいくつかの論文をピックアップして読むことを予定している。(2016年12月に改訂版が出版予定なのでそちらを利用する可能性もある。) E.J. Hackett et all (2008) The Handbook of Science and Technology Studies, Third Edition. The MIT Press. 授業で取り上げる候補として考えているのは以下の章であるが、実際に何を読むかは初回の授業で決定する。

  • Doing “Give me a laboratory and I will raise a discipline: the past, present and future politics of laboratory studies in STS”
  • The Virtual Knowledge Studio “Messy Shapes of Knowledge— STS explores information, new media and academic work”
  • Bucchi and Neresini “Science and public participation” Evans and Collins “Expertise: from attribute to attribution and back again?”
  • Johnson and Wetmore “STS and ethics: implications for engineering ethics”
  • Mirowski and Sent “The commercialization of science and the responses of STS”
○伊勢田哲治「科学における創造性」(演習)(後期 金3)

〔授業の概要・目的〕
科学者はいかにして新しい発見を行い、新しい理論を作っていくのだろうか。そして、そのプロセスは芸術などの他の創造的な営みとどういう共通点・相違点を持つだろうか。創造性研究は心理学で盛んに行われてきたが、その成果は科学哲学であまり参照されてきたとは言いがたい。この授業では、心理学者による科学の創造性についての著作を科学哲学の目で読み、創造性研究の科学哲学的含意を一緒に考えていく。

〔授業計画と内容〕
基本的に一回の授業でテキスト15ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。主なテキストとしては以下の本を予定している。
Simonton, D.K. (2004) Creativity in Science: Chance, Logic Genius, and Zeitgeist. Cambridge University Press.
以下の章を中心に読む。

  • 1 Scientific Creativity
  • 2 Creative Products
  • 3 Combinatorial Processes
  • 4 Scientific Activity
  • 6 Scientific Discovery
○伊藤和行・伊勢田哲治「科学哲学科学史セミナー」(演習)(前期 水4)

〔授業の概要・目的〕
科学史および科学哲学における、基礎的な知識の理解を向上させるとともに、近年の研究動向についての知識を得る。それらを基盤として、卒業論文/修士論文の作成に必要な基礎的な力を養う。また関連する研究会や学会での発表に向けて、日本語および英語での発表の技量を磨くとともに、研究会誌や学会誌への投稿へ向けて執筆に必要な基礎力を養う。

〔授業計画と内容〕
授業に出席する各学生に研究の進行状況を報告してもらい、研究テーマの設定、先行研究についての理解などについて個別に指導を行う。研究会や学会の発表に備えてそのシミュレーションを行ってもらい、各自のプレゼンテーション技法について指導を行う。発表順や具体的な発表課題・内容等については,出席学生と担当教員とで相談をして決める。

○伊藤和行・伊勢田哲治「科学哲学科学史セミナー」(演習)(後期 水4)

〔授業の概要・目的〕
科学史および科学哲学における、基礎的な知識の理解を向上させるとともに、近年の研究動向についての知識を得る。それらを基盤として、卒業論文/修士論文の作成に必要な基礎的な力を養う。また関連する研究会や学会での発表に向けて、日本語および英語での発表の技量を磨くとともに、研究会誌や学会誌への投稿へ向けて執筆に必要な基礎力を養う。

〔授業計画と内容〕
授業に出席する各学生に研究の進行状況を報告してもらい、研究テーマの設定、先行研究についての理解などについて個別に指導を行う。研究会や学会の発表に備えてそのシミュレーションを行ってもらい、各自のプレゼンテーション技法について指導を行う。発表順や具体的な発表課題・内容等については,出席学生と担当教員とで相談をして決める。

○矢田部俊介「論理学演習1」(演習)(前期 火5)

〔授業の概要・目的〕
本授業の最終的な目標は、受講者が論理的で明晰な思考に慣れ、何かを主張する際にはその主張がどのような根拠に基づいているかを明確化し、抜けも漏れもない論証ができるようになることである。そのための練習の題材としては、哲学的論理学、そのなかでも「論理とは何か」という問題をとりあげる。我々は日常、推論を行い、そして「論理的」という言葉をよく使う。もちろん「論理的」であることが要求される。しかし、「論理」とはいったい何だろうか。日頃、無反省に、知っているつもりで使っている概念の意味を問い直すのは、哲学の重要な仕事の一つである。本演習では、数学における定理の証明がシミュレートできる、「論理」と呼ばれうるような、記号を処理する体系(「形式的体系」)を紹介する。具体的には、最小述語論理の自然演繹の体系の解説と問題演習を行う。

〔授業計画と内容〕
最小述語論理は、論理結合子の導入規則と除去規則のみを持つ、基本的な論理体系の一つである。前期の前半は、まず最小述語論理の自然演繹の体系を紹介する。問題演習を通じ、各自が自然演繹の証明が出来るようになることが目標である。また、後半には、最小論理上で算術の体系「最小算術Q」を例に、数学における多くの証明が最小論理で遂行可能であることを示す。同時に、原始再帰法など計算の基本概念を紹介する。

〔参考書等〕

  • 戸次大介 『数理論理学』(東大出版会)
  • 小野寛晰 『情報科学における論理』(日本評論社)
  • Dag Prawitz 『Natural Deduction: A Proof-Theoretical Study』
○矢田部俊介「論理学演習2」(演習)(後期 火5)

〔授業の概要・目的〕
我々は日常的に推論を行う。また「論理的」という言葉をよく使う。哲学においてももちろん「論理的」であることが要求される。 しかし、「論理」とはいったい何だろうか。日頃、無反省に、知っているつもりで使っている概念の意味を問い直すのは、哲学の重要な仕事の一つである。また「論理」とはいったい何かという問題は、現代の大きな問題である。というのも、20世紀以降、古典論理の体系以外にも多くの異なる論理体系が提案されているからである。それらの非古典的な体系が論理と呼ばれるなら、ある体系が「論理」と呼ばれるためには、どんな性質を満たしていることが必要だろうか。
本演習では、最小述語論理の自然演繹の体系の解説から始め、最小論理・直観主義論理・古典論理での論理式の証明とそのモデルを使った議論が出来るようにすることを目的とする。その中で、単なる記号の処理を行なう体系が「論理」と呼ばれるにはどんな性質を満たす必要があるかを考察する。

〔授業計画と内容〕
前半では、前期に紹介した最小述語論理を例にとり、論理結合子の意味とは何かを、「証明論的意味論」と呼ばれる立場から考察する。具体的には、ベルナップの「トンク」の例を題材に、論理結合子の条件とは何かを考え、保存拡大性や証明の正規化といった論理学の基本概念を理解することを目指す。後半では、最小論理に論理規則を付加し拡張した論理体系を紹介する。つまり、最小論理に矛盾律、排中律と論理規則を加え、直観主義論理、古典論理の体系を得る。これらの例により、論理規則が加わるにつれて、論理式の証明は難しくなるものの、そのモデルは簡単になることを示す。また、その考察により、健全性や完全性といった記号とモデルの関係に関する基本概念の理解を目指す。
最後に、論理学の話題として、ゲーデルの不完全性定理等も紹介する。

〔参考書等〕

  • 戸次大介 『数理論理学』(東大出版会)
  • 小野寛晰 『情報科学における論理』(日本評論社)
  • Dag Prawitz 『Natural Deduction: A Proof-Theoretical Study』

授業時間割表

※上段は前期を、下段は後期を表す

1限 2限 3限 4限 5限
伊藤 講義
科学史I

伊藤 講義
科学史II

伊藤 演習
Thomas Harriotの科学

伊藤 演習
Hubbleと20世紀前半の天文学の発展

矢田部 演習
論理学演習1

矢田部 演習
論理学演習2

伊勢田 講義
科学哲学(上)

伊勢田 講義
科学哲学(下)

伊藤・伊勢田
科哲史セミナーI

伊藤・伊勢田
科哲史セミナーII

 伊藤 特講
明治期日本おける地震学の誕生

伊藤 特講
江戸時代の天文学


喜多 特殊講義
情報技術と戦争


中尾 特殊講義
核時代の科学と文化

伊勢田 特講
技術・工学の哲学

伊勢田 特講
量子力学の哲学入門

伊勢田 演習
科学技術社会論

伊勢田 演習
科学における創造性

 

集中・その他

(前期集中)特講 網谷「進化論の哲学論争 」