〔授業の概要・目的〕
科学とはどのような営みなのだろうか。このような問いについて歴史的なアプローチを通じて考えようとするのが、科学史という分野である。また科学史は、科学者たちが直面した問題から出発して研究が深められた分野でもある。そこで本講義では、20世紀の科学者たちがどのような問題と向き合い、どのような科学史像を示したのか論じていく。そこから20世紀の現代科学と科学史の両方のあり方が見えてくるだろう。具体的には、以下のような科学史・科学論の論者を取り上げる。広重徹、柴谷篤弘、トーマス・クーン、デレック・デ・ソラ・プライス、イアン・ハッキング、ロレイン・ダストン、ピーター・ギャリソン。
〔授業計画と内容〕
ガイダンス:現代科学と科学史(1回)
Ⅰ 科学者と科学論──日本の経験(4回)
1.現代物理学と国家:科学の体制化
2.分子生物学と情報社会:反科学論
Ⅱ 科学論の展開──科学とは何か(8回)
1.パラダイムと科学者共同体
2.ビッグ・サイエンスと情報社会
3.実験の科学史
4.観察の科学史
まとめ:科学技術社会を生きる(1回)
フィードバック(1回)
〔授業の概要・目的〕
この講義では、現代の科学技術にかかわる諸問題について歴史的な視点から考えていく。とくに注目するのは環境をめぐる科学技術である。歴史の役割は、現在の諸問題への解を与えるのではなく、現在をまったく違う視点から考えられるようになることである。この授業では、長期的なスパンで環境の科学技術史を見ていくことで、自然と人間の関係について考え直すための視座を提供したい。
〔授業計画と内容〕
ガイダンス:自然と人間の科学技術史(1回)
I 災害と科学技術(7回)
1.病気の科学技術史
2.3.11の科学技術史
3.害虫の科学技術史
4.自動車の科学技術史
II 環境と科学技術(5回)
1.空気の科学技術史
2.時間の科学技術史
3.野生生物の科学技術史
まとめ:科学技術社会における環境(1回)
フィードバック(1回)
〔授業の概要・目的〕
科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。 前期の講義においては、科学とはなにかという問題、科学的推論や科学的説明をめぐる問題を、科学全体に関わるテーマと個別の領域に関わるテーマに分けて論じる。
〔授業計画と内容〕
以下のそれぞれのテーマに2~3週をかけて論じる。
1 科学とは何か (4回)
2 科学的推論 (4回)
3 個別科学における科学的推論(2回)
4 科学的説明(2回)
5 個別科学における科学的説明(2回)
フィードバック(1回)
〔授業の概要・目的〕
科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。 後期の授業では科学的実在論や科学の変化、科学と価値などのテーマを順にとりあげ、関連する個別科学におけるテーマも検討する。
〔授業計画と内容〕
1 実在論と反実在論(3回)
2 個別科学における実在論問題(3回)
3 科学の変化と科学革命(3回)
4 個別科学における変化の問題(2回)
5 科学と価値(3回)
フィードバック(1回)
[授業の概要・目的]
日本初のノーベル賞受賞者となった物理学者・湯川秀樹(1907-1981)。素粒子論という新分野を開拓した湯川の研究は、どのような時代背景のもと、どのような文化的・学術的影響を受けながら生まれ発展したのか。本授業では、近代日本の科学技術による国際的業績の一事例となった湯川の理論物理研究とその周辺を通じて、近代以降の日本の科学史の一断面を考察する。また、京都大学基礎物理学研究所の湯川記念館史料室が所蔵する史料の利用も予定している。
[授業計画と内容]
1.ガイダンス
2.近代日本の物理学の概観
3.明治期の物理学者
4.大正期の物理学者
5.昭和期の物理学者
6・7.少年期の湯川と関連史料
8~10.青年期の湯川と関連史料
11~13.青年期以後の湯川と関連史料
14.湯川秀樹と各時代
15.フィードバック
[授業の概要・目的]
「新しい○○が△△を変える」という言い回しが、世の中にはいろいろとある。たとえば、Twitterが政治を変える、ビッグデータが経済を変える、AIが仕事を変える、オンライン授業が教育を変える、マッチングアプリが恋愛を変える、メタバースがコミュニケーションなど、とくにデジタルメディアに関する事例は枚挙にいとまがない。それにともなって、新聞やテレビなどが伝える情報を批判的に読み解くという意味でのメディア・リテラシーだけでなく、インターネットを基盤とするデジタルメディアが遍在する社会を生き抜くための素養を身につけることが、小学校から大学にいたるまで、教育の現場で重視されるようになってきた。
もっとも、新しいメディアの「新しさ」を深く追究しようと思えば、結局のところ、古いメディアとの比較を避けて通ることはできない。新しいメディアをめぐるさまざまな現象に興味をもち、積極的に解釈や分析を積極的に試みることは重要だが、同時に、目の前で起こっていることを近視眼的にとらえるのではなく、過去の事例から学び、現在にいかす思考を身につけることが望ましい。
したがって、メディアについて理解するうえで、技術史の思考法はきわめて有用である。電話やラジオ、テレビが日常生活と不可分に結びついた20世紀を経て、インターネットやスマートフォンが普及した現在、メディアと人間、あるいは技術と社会の関係はどのように変わってきたのだろうか。この授業では、われわれの日常に根ざしたさまざまなメディア技術の成り立ちに目を向け、その将来までを展望する。
[授業計画と内容]
基本的に以下のスケジュールにもとづいて講義を進める。ただし、講義の進捗状況や受講者の理解度などを踏まえて、若干の変更もありうる。
第1回 イントロダクション:メディア技術史とは何か
第2回 技術としての書物:紙の本 VS 電子本への古くて新しい回答
第3回 写真はどこにあるのか:イメージを複製するテクノロジー
第4回 映画の歴史を巻き戻す:現代のスクリーンから映像の幼年時代へ(①光学装置の開発と視覚理論の発展)
第5回 映画の歴史を巻き戻す:現代のスクリーンから映像の幼年時代へ(②初期映画)
第6回 音楽にとっての音響技術:歌声の主はどこにいるのか
第7回 声を伝える/技術を楽しむ:電話・ラジオのメディア史(①電信と電話)
第8回 声を伝える/技術を楽しむ:電話・ラジオのメディア史(②ラジオ)
第9回 テレビジョンの初期衝動:「遠く(tele)を視ること(vision)」の技術史 (①電子式テレビジョン)
第10回 テレビジョンの初期衝動:「遠く(tele)を視ること(vision)」の技術史 (②機械式テレビジョン)
第11回 ローカルメディアの技術変容:ミニFMという実践を補助線に(①初期CATVの考古学)
第12回 ローカルメディアの技術変容:ミニFMという実践を補助線に(②ポストメディアとしてのミニFM)
第13回 文化としてのコンピュータ:その「柔軟性」はどこからきたのか
第14回 開かれたネットワーク:インターネットをつくったのは誰か
第15回 誰のための技術史?:アマチュアリズムの行方
〔授業の概要・目的〕
この特殊講義においては科学哲学の古典的な論文や基礎的な論文を中心とした講義を通して、科学哲学という分野に入門することをめざします。具体的には、前半ではミル、ヒューウェル、ポパー、グリュンバウムらの古典的な論文を核として、その背景についてレクチャーを行います。後半では、近年注目を集める研究領域からいくつかをピックアップし、関連する基礎文献をリーディングとしつつ、背景や現在の諸問題との関わり(特に日本という文脈での含意)についてレクチャーを行います。こうした文献の読解とレクチャーを通して、科学哲学という分野の広がりを知ってもらうことがこの授業のねらいです。
〔授業計画と内容〕
授業は日本語と英語で行われます。
第一部 科学哲学の古典的諸問題
1科学的推論(4週)
2科学とは何か(3週)
第二部 科学哲学のさまざまな基礎的課題
3 医療の哲学 (4週)
4 予防原則の哲学(3週)
まとめ(1週)
〔授業の概要・目的〕
現代社会におけるさまざまな問題に対処する上で、さまざまな分野の知見を総合し、学際的に研究を行うことの必要性は高まっている。しかし、科学哲学は伝統的に物理学や生物学などの古典的な研究分野を考察の対象とし、学際的な研究に特有の問題を扱うことは少なかった。この授業では、学際性を正面から主題にすえることで学際的な研究とはどのようなものか、そして哲学はこうした研究に対して何ができるのかを考える。
〔授業計画と内容〕
第一部 学際性とは何か
1 学術分野とは
2 学際研究とは
3 学際研究に哲学はどう関わるか
第二部 学際性にまつわる諸問題
4 学際性の類型
5 学際研究の認識論的問題
6 分野横断的研究の方法論
7学際的学習
8 産軍学共同と学際性
9 学際的研究の評価
第三部 学際研究の具体例
10 地球科学における学際性
11 生物学における学際性
12 社会科学における学際性
13 科学技術社会論
14 認知科学
15まとめ
〔授業の概要・目的〕
近年,人類の宇宙進出が急速に進展しつつある.地球外への活動領域拡大は,私たちに様々な恩恵をもたらすと同時に,新たな倫理的課題を突きつけることになるだろう.本講義では,人類の宇宙進出に伴う倫理的諸課題と,それらをめぐる倫理学的議論の概要を学ぶ.
〔授業計画と内容〕
講義は基本的に清水が担当する.基本的に以下の計画にしたがって講義を進める.ただし,進捗に応じて多少変更する場合がある.
1. 宇宙倫理学の概要
2. 宇宙倫理学と規範倫理学
3. 宇宙進出擁護論の神話
4. 有人宇宙活動
5. 宇宙機の事故リスク
6. 地球環境と宇宙開発
7. スペースデブリ
8. 中間セッション 期末レポートについて
9. テラフォーミング
10. 宇宙ビジネス
11. 安全保障と宇宙開発
12. 地球外資源開発
13. ロボットと宇宙開発
14. 人類存続義務
15.講義のまとめ
[授業の概要・目的]
江戸時代の天文暦学者たちは、西洋や中国から伝来する古今東西の天文学知識を手掛かりに、独自の宇宙観・自然認識を練り上げていった。その成立と変遷をたどることで、科学史・思想史・東西交流史についての理解を深める。また、京大が所蔵する関連史料の実地調査に参加し、その整理や分析の手法を学ぶ。
[授業計画と内容]
1.ガイダンス
2・3.史料と背景
4・5.南蛮学:アリストテレスから和時計まで
6・7.江戸の宇宙観:『天経或問』と気の哲学
8・9.天文方、望遠鏡、梵暦運動、蘭学
10~14.書誌調査とその方法
15.フィードバック
[授業の概要・目的]
1970年代から80年代にかけての第2次人工知能ブーム期には、人工知能の可能性と限界に関して、哲学者を交えた活発な議論が行われていた。そこでは、人間のような知能をもつ人工知能を実現することが不可能だと主張する哲学者も少なくなかった。その後、深層学習などの新たな手法の発展によって、人工知能研究は飛躍的な進展を遂げた。この進展によって、過去の哲学者による批判は克服されたのだろうか。汎用人工知能や人工超知能の実現は時間の問題なのだろうか。
この講義では、第2次人工知能ブーム期までの古典的な人工知能研究とそれに対する哲学的な批判を振り返るとともに、その後の人工知能研究の発展をたどり、現在の人工知能にはどのような原理的な課題や限界があるのかを検討したい。同時に、汎用人工知能の実現という文脈を超えて考えたときに、知的道具としての人工知能にはどのような可能性があるかということついても検討したい。
[授業計画と内容]
講義では、以下のテーマについて論じる予定である。それぞれのテーマについて、60分ほど講義をした後、30分ほどその内容について参加者全員で議論する。
1. 人工知能研究の基本的発想
2. 古典的人工知能研究:演繹的推論
3. 古典的人工知能研究:探索
4. 古典的人工知能研究に対する哲学的批判:意味理解
5. 古典的人工知能研究に対する哲学的批判:関連性
6. 現代の人工知能研究:機械学習
7. 現代の人工知能研究:深層学習
8. 現代の人工知能研究:強化学習
9. 人工知能と人間の心:視覚情報処理
10. 人工知能の人間の心:自然言語処理
11. 人工知能と人間の心:運動制御
12. 現代の人工知能研究の課題と限界:汎用知能は可能か
13. 現代の人工知能研究の課題と限界:身体の重要性
14. 現代の人工知能研究の課題と限界:道具としての人工知能
15. まとめ
[授業の概要・目的]
廣松渉は戦後を代表する哲学者の1人である。その独自の哲学は、関係の第一次性,事的世界観,四肢構造、共同主観性などのキー概念で知られ、その扱う主題も認識論、科学論、身体論、価値論、社会哲学など広範囲にわたっている。
本講義では廣松哲学における幾つかのトピックスを取り上げ、背景となるドイツ哲学と関連付けながら批判的に討究することにより、彼の哲学体系の一端を解きほぐしていくことを目指す。このことはまた、20世紀後半の日本哲学の動向を理解することに繋がるはずである。
[授業計画と内容]
講義では、以下のテーマについて論じる予定である。それぞれのテーマについて、60分ほど講義をした後、30分ほどその内容について参加者全員で議論する。
基本的に以下のプランに従って講義を進める。ただし講義の進みぐあい、受講者の関心などに応じて順序や同一テーマの回数などを変えることがある。
第1回 20世紀哲学と廣松哲学/『存在と意味』の体系構想
第2回 「もの」から「こと」へ 関数概念と関係主義
第3回 四肢構造論① マッハの現象主義との対峙
第4回 四肢構造論②
第5回 視覚的世界と身心の問題
第6回 表情的世界と身心の問題
第7回 表情的世界と共同主観性
第8回 判断論の問題構成① 新カント学派
第9回 判断論の問題構成② 対象論、現象学など
第10回 判断をめぐる戦前日本哲学の遺構
第11回 学知的反省と当事者意識
第12回 役割行為論
第13回 物象化論の射程①
第14回 物象化論の射程②
第15回 近代の超克?
〔授業の概要・目的〕
「科学」という自然についての説明形式は、科学革命期(1543~1687)に形作られたということを前提にして、その科学が「自然」を「見る」ことそして説明することで、「自然」がどのように見えてくるか、ということを共通のコンセプトとして、前半部では、大地の中で「化石」が見えてくることの歴史を考え、後半部では、19世紀後半に始まる「生命」を「見る」「見せる」技術の開発を通して、「自然」の一部である「生命」がどのように見えていくのかについて考え学ぶ。
二つのテキストを精読し、関連の一次資料や二次文献をサブテキストとして使用して、より広く立体的な理解をはかるように演習を進めていく予定である。
用いるテキストは以下のとおりである。
①マーティン・J・S・ラドウィック著、菅谷暁・風間敏共訳『化石の意味 古生物学史挿話』(みすず書房、2013/原著1985)
②リサ・カートライト著、長谷正人監訳、望月由紀訳『X線と映画 医療映画の視覚文化史』(青弓社、2021/原著1995)
〔授業計画と内容〕
第1回:ガイダンスとイントロダクション(必ず出席ください)
演習担当者が整理した、「科学」「技術」「科学技術」について概説し、そのうえで、演習の進め方を提案し、テキスト担当者を決める。演習参加者の人数が少ない場合は、複数回担当することがあり、また、多い場合(13人以上)は、サブテキストを適宜使用し担当してもらう。
以下予定
第2回:『化石の意味 古生物学史挿話』「第一章」
第3回:『化石の意味 古生物学史挿話』「第二章」
第4回:『化石の意味 古生物学史挿話』「第三章」
第5回:『化石の意味 古生物学史挿話』「第四章」
第6回:『化石の意味 古生物学史挿話』「第五章」
第7回:ここまでのまとめと今後の方向について。
第8回:『X線と映画 医療映画の視覚文化史』「第1章」
第9回:『X線と映画 医療映画の視覚文化史』「第2章」
第10回:『X線と映画 医療映画の視覚文化史』「第3章」
第11回:『X線と映画 医療映画の視覚文化史』「第4章」
第12回:『X線と映画 医療映画の視覚文化史』「第5章」
第13回:『X線と映画 医療映画の視覚文化史』「第6章」
第14回:『化石の意味』と『X線と映画』に関してまとめ①。それぞれのテキストのポイントに関して考え問題点を整理する。
第15回:『化石の意味』と『X線と映画』に関してまとめ②。科学が「自然」を「見る」ことそして説明することで、「自然」がどのように見えてくるか、について考え問題点を整理する。
〔授業の概要・目的〕
「科学」あるいは「科学技術」が、欧米帝国による欧米外地域の植民地化と支配において、また、後発帝国である日本によるアジア地域の植民地化と支配において、どのような意味やどのような役割を持ったのかについて考える。あるいは、そうした主題を考える場合の基本的な構えについて学ぶ。
大きくとらえると、科学・科学技術が、西欧諸国の世界支配に重要な役割を果たすのは18世紀からともいえるし、じつは大航海時代の始まりから知や技術が一定の役割を担っていたと考えることも出来る。とはいえ、科学・科学技術が、ネットワーク的な支配の重要要素となっていったのは19世紀に入ってからであろう。1960年以降の脱植民地の動きの広がりの中でも、グローバルシステムとしての科学技術は、基本的には旧宗主国に中心を置く機能として存在し働いていると考えることも可能である。
こうした現状を前提としながら、この演習では、19世紀あるは20世紀前半に「科学」あるいは「科学技術」が帝国/植民地といかに関係していたかに関して、テキストの精読を通してアプローチしていく。また、関連文献をサブテキストとすることで、より広く立体的な理解を測るように演習を進めていく予定である。
用いるテキストは以下のいずれかにする予定である。
①デイヴィッド・アーノルド著、見市雅俊訳『身体の植民地化 19世紀インドの国家医療と流行病』(みすず書房、2019/原著1993)
②アーロン・S・モーア著、塚原東吾監訳、三原芳秋ほか訳『「大東亜」を建設する 帝国日本の技術とイデオロギー』(人文書院、2019/原著2013)
〔授業計画と内容〕
第1回:ガイダンスとイントロダクション(必ず出席ください)
演習担当者が整理した、「科学」「技術」「科学技術」について概説し、そのうえで、演習の進め方を提案し、テキスト担当者を決める。演習参加者の人数が少ない場合は、複数回担当することがあり、また、多い場合(13人以上)は、サブテキストを適宜使用し担当してもらう。
第2回~第14回:上述のメインテキストのいずれか、または、両者を読む
上述のメインテキストを精読し、関連する一次資料や二次文献をサブテキストとして、セクソロジーや性科学について検討してゆく。毎回のテキスト担当者は、レジュメを用意してテキストの内容について解説検討批判する。また、論点となる要素を摘出し提示する。その後、参加者で相互に議論/ディスカッションする。
第15回:まとめ
〔授業の概要・目的〕
科学が価値中立的であるべきだという理念は現在でも大きな影響力を持つ反面、その理念がそもそも意味をなすのか、意味をなすとしても価値中立性を目指すのは望ましいことなのかなど、様々な観点から検討を要する理念でもある。こうした科学と価値の関係は21世紀の科学哲学の主要問題ともなっている。今回の演習ではダグラスの古典的著作を手がかりに、この問題について理解することを目的とする。
〔授業計画と内容〕
以下のテキストの第三章以降を輪読形式で読み、内容についてディスカッションを行う。
Douglas, Heather E. (2018) Science, Policy and the Value-free Ideal. University of Pittsburgh Press.
基本的に一回の授業でテキスト10ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。
授業の進行は以下のとおり
イントロダクション(1回)
学生による発表担当(13回)
まとめ(1回)
〔授業の概要・目的〕
創発的性質、すなわち部分に還元されないような全体の持つ性質は、さまざまな科学分野の中で取り上げられてきた考え方であり、科学哲学者たちもこの問題について考えてきた。今回の演習では創発概念の歴史的背景を知り古典的な論文を読むことで、この概念について哲学者が何を問題にし、どういうことを提案してきたのかの理解を目指す。
〔授業計画と内容〕
以下のアンソロジーからいくつかの論文を輪読形式で読み、内容についてディスカッションを行う。
Bedau, M. and Humphreys, P eds. (2008) Emergence: Contemporary Readings in Philosophy and Science. The MIT Press.
具体的には以下のような論文(抜粋含む)を読むことを考えている
B.P. McLaughlin “The rise and fall of British emergentism”
C. Hempel and P. Oppenheim “On the idea of emergence”
W. C. Wimsatt “Aggregativity: reductive heuristics for finding emergence”
P. Humphreys “How properties emerge”
J. Kim “Making sense of emergence”
D. C. Denett “Real patterns”
P.W. Anderson “More is different: broken symmetry and the nature of the hierarchical structure of science”
A. Assuad and N. H. Packard “Emergence”
J. Forder “Special sciences (Or: the disunity of science as a working hypothesis)”
基本的に一回の授業でテキスト10ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。
授業の進行は以下のとおり
イントロダクション(1回)
学生による発表担当(13回)
まとめ(1回)
〔授業の概要・目的〕
科学史および科学哲学における,基礎的な知識の理解を向上させるとともに,近年の研究動向についての知識を得る.
それらを基盤として,卒業論文の作成に必要な基礎的な力を養う.
〔授業計画と内容〕
授業に出席する各学生に研究の進行状況を報告してもらい,研究テーマの設定,先行研究についての理解などについて個別に指導を行う.(第1回~第15回)
発表順や具体的な発表課題・内容等については,出席学生と担当教員とで相談をして決める.
〔授業の概要・目的〕
科学史および科学哲学における,基礎的な知識の理解を向上させるとともに,近年の研究動向についての知識を得る.
それらを基盤として,卒業論文の作成に必要な基礎的な力を養う.
〔授業計画と内容〕
授業に出席する各学生に研究の進行状況を報告してもらい,研究テーマの設定,先行研究についての理解などについて個別に指導を行う.(第1回~第15回)
発表順や具体的な発表課題・内容等については,出席学生と担当教員とで相談をして決める.
〔授業の概要・目的〕
本授業の最終的な目標は、受講者が論理的で明晰な思考に慣れ、何かを主張する際にはその主張がどのよ うな根拠に基づいているかを明確化し、抜けも漏れもない論証ができるようになることである。そのための練習の題材としては、哲学的論理学、そのなかでも 「論理とは何か」という問題をとりあげる。我々は日常、推論を行い、そして「論理的」という言葉をよく使う。もちろん「論理的」であることが要求される。 しかし、「論理」とはいったい何だろうか。日頃、無反省に、知っているつもりで使っている概念の意味を問い直すのは、哲学の重要な仕事の一つである。
本演習では、数学における定理の証明がシミュレートできる、「論理」と呼ばれうるような、記号を処理する体系(「形式的体系」)を紹介する。 具体的には、最小述語論理の自然演繹の体系の解説と問題演習を行う。
〔授業計画と内容〕
最小述語論理は、論理結合子の導入規則と除去規則のみを持つ、基本的な論理体系の一つである。前期の前半は、まず最小述語論理の自然演繹の体系を紹介する。問題演習を通じ、各自が自然演繹の証明が出来るようになることが目標である。
また、後半には、最小論理上で算術の体系「最小算術Q」を例に、数学における多くの証明が最小論理で遂行可能であることを示す。同時に、原始再帰法など計算の基本概念を紹介する。
具体的な授業計画は以下の通り。
①論理学とは何をする学問か
②形式言語
③最小命題論理の⇒-導入規則および除去規則
④最小命題論理の∧、∨-導入規則および除去規則
⑤最小命題論理の問題演習
⑥遠回りのない証明
⑦量化子と最小述語論理
⑧最小述語論理の∀-導入規則及び除去規則
⑨最小述語論理の∃-導入規則及び除去規則
⑩最小述語論理の問題演習
⑪形式的な自然数論
⑫原始再帰的関数と”2+2=4″の証明
⑬再帰関数の数値的表現可能性
⑭総合演習
⑮形式的な論理学と言語の哲学
〔授業の概要・目的〕
我々は日常的に推論を行う。また「論理的」という言葉をよく使う。哲学においてももちろん「論理的」であるこ とが要求される。 しかし、「論理」とはいったい何だろうか。日頃、無反省に、知っているつもりで使っている概念の意味を問い直すのは、哲学の重要な仕事の一つである。
また「論理」とはいったい何かという問題は、現代の大きな問題である。というのも、20世 紀以降、古典論理の体系以外にも多くの異なる論理体系が提案されているからである。それらの非古典的な体系が論理と呼ばれるなら、ある体系が「論理」と呼ばれるためには、どんな性質を満たしていることが必要だろうか。
本演習では、最小述語論理の自然演繹の体系の解説から始め、最小論理・直観主義論理・古典論理での論理式の証明とそのモデルを使った議論が出来るようにすることを目的とする。その中で、単なる記号の処理を行なう体系が「論理」と呼ばれるにはどんな性質を満たす必要があるかを考察する。
〔授業計画と内容〕
前半では、前期に紹介した最小述語論理を例にとり、論理結合子の意味とは何かを、「証明論的意味論」と呼ばれる立場から考察する。具体的には、ベルナップの「トンク」の例を題材に、論理結合子の条件とは何かを考え、保存拡大性や証明の正規化といった論理学の基本概念を理解することを目指す。
後半では、最小論理に論理規則を付加し拡張した論理体系を紹介する。つまり、最小論理に矛盾律、 排中律と論理規則を加え、直観主義論理、古典論理の体 系を得る。これらの例により、論理規則が加わるにつれて、論理式の証明は難しくなるものの、そのモデルは簡単になることを示す。また、その考察により、健全性や完全性といった記号とモデルの関係に関する基本概念の理解を目指す。
最後に、論理学の話題として、授業の進展にあわせながら、受講生の希望を踏まえ発展的な課題を紹介する。
具体的な授業計画は以下の通り。
①論理結合子の意味とは何か、意味の理論1と意味の理論2
②意味の理論2と論理結合子の条件:プライアーの「トンク」、ベルナップの保存拡大性
③プラヴィッツの「反転原理」
④ダメットと証明の正規化可能性
⑤「ホームズ論法」と矛盾律、直観主義論理
⑥直観主義論理の問題演習
⑦排中律と古典論理
⑧古典論理における証明・問題演習
⑨古典論理と真理表
⑩古典論理と完全性定理
⑪完全性定理の証明
⑫総合演習
⑬(受講生の希望を踏まえたエクストラな話題の紹介1)
⑭(受講生の希望を踏まえたエクストラな話題の紹介2)
⑮(受講生の希望を踏まえたエクストラな話題の紹介3)
〔授業の概要・目的〕
伊勢田ほか編『科学技術をよく考える』をテキストとして、科学技術と社会の接点で生じるさまざまな問題についてディスカッションを行い、多面的な思考法と、思考の整理術を学んでいく。理系の大学院のカリキュラムでは、科学と社会の関わりについて学ぶ機会はそれほど多く与えられない。他方、東日本大震災後の状況に特に顕著にあらわれているように、科学技術が大きな影響をおよぼす現在の社会において、研究者が自らの研究の社会的含意について考えること、アカデミズムの外の人々と語り合うことの必要性は非常に高まっている。練習問題を使いながら広い視野を持った大学院生を養成することが目的である。
〔授業計画と内容〕
授業はテーマにそったグループディスカッション、全体ディスカッション、講義、演習の組み合わせで行われる。
テキストは以下の10のテーマから構成されているが、本授業ではそのうち6つをとりあげ、関連する知識やスキルとあわせて各2回程度を使って議論を行う。取り上げる題材は受講者の興味も踏まえて決定する。
・遺伝子組み換え作物 ・脳科学の実用化
・喫煙 ・乳がん検診
・血液型性格判断 ・地球温暖化
・地震予知 ・宇宙科学・技術への公的投資
・動物実験 ・原爆投下の是非を論じること自体の正当性
初回に前半のテーマ3つを決定する。5回目の授業で後半のテーマ3つを決定する。
授業の進行は以下のとおり
イントロダクション(1回)
テーマごとのディスカッション(12回)
まとめとフィードバック(2回)
※上段は前期を、下段は後期を表す
1限 | 2限 | 3限 | 4限 | 5限 | |
---|---|---|---|---|---|
月 |
|
伊勢田・清水 特講 宇宙倫理学入門 |
|||
火 | 齋藤演習
「科学」と見ること/見えるもの 齋藤演習 「科学」と帝国/植民地 |
矢田部 演習
論理学1 矢田部 演習 論理学2 |
|||
水 | 瀬戸口 講義
科学史入門1(現代科学と科学史) 瀬戸口 講義 科学史入門2(生命と環境の科学技術史) |
伊勢田 講義
科学哲学入門(上) 伊勢田 講義 科学哲学入門(下) |
伊勢田 科哲史セミナーI 伊勢田 科哲史セミナーII |
||
木 |
伊勢田 特講 科学技術と社会に関わるクリティカルシンキング 飯田 特講 メディア技術史 |
||||
金 | 伊勢田 特講
科学哲学入門上級 小長谷 特講 湯川秀樹とその時代を考える 伊勢田 特講 学際性の哲学 |
伊勢田 演習
科学における価値中立性の理念 伊勢田 演習 創発の思想 |
集中・その他
(前期集中)特講 平岡 江戸の宇宙観、 鈴木 人工知能の哲学、 直江 廣松哲学とドイツ哲学