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「永正七年正月二日実隆公条両吟和漢百韻」

 京都大学文学部国語学国文学研究室所蔵(Gm-6貴)。巻子装一巻。孤本。
 本百韻は、三条西実隆、公条父子両吟になる和漢聯句である。
 端作には「永正七年正月二日」と記されているが、『実隆公記』『再昌草』によれば、
永正七年(一五一〇)正月二日から四日にかけての三日間で少しずつ詠み継がれた
模様である。
 発句「雨はれてにほふや木のめ春日影 雪(実隆)」、
 入韻「東風雪漲溪 公條」(齊韻)。
 実隆は、後土御門天皇、後柏原天皇二代の宮廷における和歌、連歌、和漢聯句に
指導的な役割を果たした。本百韻興行時、五十六歳。公条は、その嗣子として
三条西家の古典学を継承・伝授した。興行時、二十四歳。

翻刻

 
永正七年正月二日
 和漢聯句
1雨はれてにほふや木のめ春日影
2東風雪漲溪公條
3艶聲鸝自曲
4幽趣鶴相棲
5月の夜は松かけはかりあけ残り
6おきいつる野の秋そ露けき公條
7旅衣ひとりある鹿を友と[
8斜照認吾□
9槐緑暑塵□
10草青湖水斉
11かすむよりさゝ浪とをし春の風
12舟のゆくゑや鴈かへる空公條
13分すてし外山を花に思ひやり
14身をかくさはとたのむ木の本
15去取曉猿哭
16窮憐櫪馬嘶公條
17野詩難絆景
18村酒又如泥
19賦是敵雄杜
20儀其比葛嵆公條
21くれ竹のふしておもふもうき世にて
22くるしや恋にとしもへにけり公條
23恨にはなとなき物そものわすれ
24毎愁銀櫛低公條
25屋山宜掛月
26林霧半銜霓
27今朝見るや夜の時雨のむら紅葉
28ふけはいかなる秋風の色公條
29住すてゝあれまくおしき故郷に
30門誰歌鳳兮
31衰顔堪擲鏡
32緩歩或扶藜公條
33追絮蝶遊戯
34隔花鴬乱啼
35色見えてうつるは春の日数にて公條
36かすみのは□やあり明の[
37いつまてか涙□かこつ老ならん
38あはれはしるや松風の聲公條
39琴一當家具
40金千辱御批
41鄭乎官効我
42梁也敬稱妻公條
43支睡讀書案
44移封作辨圭
45偽のことの葉ならはちらすなよ
46人めしのふの秋風のくれ公條
47おもふ斗いくよに成ぬ虫のこゑ
48月落又晨雞
49かり枕つゐにまとろむ夢もなし
50たえぬひゝきや山の瀧津瀬公條
51簾捲香爐雪公條
52鞋經劔閣梯
53鵑啼唐欲晩
54虎倒漢云提公條
55吹かはるかせのけしきを夢にみて
56人のこゝろの秋そかなしき公條
57涙もや袖にかけすは露ならん
58窈窕月窺閨公條
59蕉敗難裁扇
60花開好上笄
61うへし世をおもふにふるの山さくら
62かすめはとをき春の行末公條
63雲暮倦飛鳥
64なにゝたとへん浪のうき[
65その名もや[ための宇治の里
66吾庵不掃蹊
67散絲和雨葉公條
68奇字刻碑韲
69おもひとく心よ人にをくれめや
70しらすをこたる中もこそあれ公條
71織女はたえぬ契をたのみにて
72うしとはなにか夕暮の秋
73新月山迎鴈
74多年海牧羝公條
75帶霜筠更節
76回暖木方稊
77春しらは袖の氷も
78妨鷰鎮帷犀公條
79風慶鳴鈴索
80江遙聴皷鼙
81誓思先祖逖
82学可仰昌黎公條
83山たかきかけをたのみのすまひして
84麓の月にかへる柴舟
85秋の夜をいかなる友にしたふらん
86竹動露凄々公條
87珍簟愛凉嫩
88釣蓑任路迷
89かけふかし桃さく山の春の水
90きしの柳やみとりそふらん公條
91むら雨はかすめる空に過やらて
92錦嚢煩□□
93なかめこし[身にやつもるらん
94離筵半日稽公條
95山従盃裏湧
96●使筆頭題
97なからへん世をこそ人はたのむなれ
98二葉の松の行く末のやと公條
99うれしさをおもひあはせよ夜るの夢
100高枕置玻?公條
雪五十一句
公條四十九

京都大学大学院文学研究科21世紀COEプログラム
「極東地域における文化交流」
kanwa-hmn@bun.kyoto-u.ac.jp