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国際シンポジウム「文学と言語に見る異文化意識」

講演者・報告者紹介

紀平 英作(きひら えいさく)  拠点リーダー・京都大学大学院文学研究科長

Peter F. Kornicki(ピーター・コーニツキ)  ケンブリッジ大学東洋学部教授

 1950年生。オックスフォード大学,同大学院卒業。オーストラリア・タスマニア大学講師,京都大学人文科学研究所助教授,ケンブリッジ大学助教授を経て現職。書物の文化史を中心に,日本学のさまざまな領域・時代に関する多数の業績がある。英国学士院会員。

 著書に,『明治初期の文学改良運動』(1982, 英文),『日本紹介』(1987,英文。以後ドイツ語訳,オランダ語訳等),『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』(林望と共著,1991,和文),『ケンブリッジ日本百科大辞典』(リチャード・バウリングと共編,1993,英文),『日本の宗教』(ジェームズ・マクマレンと共編,1995,英文),『日本における書物の文化史』(1998,英文),『明治日本』(1998,全4巻責任編集,英文),『ロシア国立図書館所蔵和漢書目録』(1999刊,英露日文),『米欧回覧実記英訳版』第4巻担当(2002刊,英文)など。

 日本語論文に,「『金色夜叉』私論」(1980),「貸本文化比較考」(1984),「地方出版について」(1985),「明治五年の和歌山博覧会とその周辺」(1986),「十九世紀オーストラリアの博覧会における《ジャパン》」(1992),「寛政十年の近江国犬上郡東沼波村農民所蔵の書物に関する報告書「書物留帳」―翻刻と解説」(2003)など。ほかに英文論文多数。

大谷 雅夫(おおたに まさお)  京都大学大学院文学研究科教授

 1951年生。大谷女子大学専任講師,京都府立大学助教授等を経て,現職。京都大学大学院生時代から今日まで,一貫して日本における中国文学・思想の受容史について研究している。たとえば江戸時代の京都の儒者伊藤仁斎は,青年時代に当時の新思想であった中国の朱子学を熱心に学ぶが,後にそれを批判して古義学とよばれる独自の儒学を確立する。大学院生時代の論文「恕とおもいやりとの間」「伊藤仁斎の詩と学問」などの論文は,その朱子学批判の背景に,京都の町人として仁斎が自然に身につけていた情緒や常識や思想があったこと,つまり仁斎の学問は儒学の日本的変容という意味をもつことを指摘した。受容する主体があるかぎり,変容はとうぜん生じる。その変容のさまを明らかにすることによって,日本と中国の文学と思想のそれぞれの特質は,より鮮明に捉えられるだろう。そのような関心と方法にもとづいて,この十年余は,『萬葉集』における中国文学の受容と変容の研究に従事してきた。その成果は,2003年10月に完結した新日本古典文学大系『萬葉集』1〜4(共著,岩波書店)に示されている。

横地 優子(よこち ゆうこ)  京都大学大学院文学研究科助教授

 サンスクリット文献学,近年はインドにおける戦闘女神信仰・神話の形成史,スカンダ・プラーナの女神神話を研究。著作に, 『ヒンドゥー教の聖典二篇:ギータゴーヴィンダ・デーヴィーマーハートミャ』(共著,平凡社東洋文庫,2000), 『遊女の足蹴―インド古典劇チャトゥルバーニー』(共著,春秋社,1994),The Goddess in the Krsna legend: Reconsidered 『インド思想史研究』13(2001)など。.

西村 雅樹(にしむら まさき)  京都大学大学院文学研究科教授

 1947年生。19世紀末から20世紀初頭にかけての世紀末ウィーン文化を,文学を中心に研究している。京都大学文学研究科の21世紀COEプログラムには,「世紀末ウィーンにおける異文化受容」をテーマとして加わっている。

 世紀末ウィーンにあって活躍したバールやホーフマンスタール等「若きウィーン派」の文学者たちの中には,日本への関心を示した人々がいた。その関心は,西洋の理性中心主義への批判という問題意識に発するものであった。この問題意識は言語への懐疑と批判として展開され,同時代に東洋思想への傾斜を示したオーストリア人マウトナーの論ともつながりを持つ。また世紀末ウィーンにあって主要な役割を果たしたユダヤ系知識人においては,キリスト教を精神的支柱とする西欧文明に同化するにあたって葛藤が見られた。シュニッツラーには,この点を扱った問題作が見られる。ユダヤ系知識人が抱えていた西欧文明受容というこの問題は,近代西洋精神への問い直しという問題として,前述のウィーンの作家たちの東洋への関心とも重なるものと言える。

 著書としては,『言語への懐疑を超えて─近・現代オーストリアの文学と思想』(東洋出版,1995)が,論文やエッセイとしては,「ウィーンのユダヤ系文化史家ハンス・ティーツェ」(『中欧─その変奏』,鳥影社,1998)や「世紀末ウィーンの芸術と光」(『知のたのしみ学のよろこび』,岩波書店,2003)などがある。

増田 眞(ますだ まこと)  京都大学大学院文学研究科助教授

 18世紀フランスの思想と文学,近年はルソーにおける言語論と政治思想,ルソーとディドロ,18世紀フランス文学における身体,などを研究。著作に,『フランス文学―中世から現代まで―』(共著,放送大学教育振興会,1994), 『フランス文学史』(共著,東京大学出版会,1995)など。

庄垣内 正弘(しょうがいと まさひろ)  京都大学大学院文学研究科教授

 1942年生。京都大学助手,神戸市外国語大学助教授,同教授を経て現職。専門は言語学で,文献言語学およびチュルク語研究を中心に世界の第一線で活躍している。代表的な業績は古代ウイグル語仏教文献の研究に関わるものである。文献言語学は,今はもう話されていない―従ってその姿が明らかでない―古代言語,別の古代言語―やはりその姿は未詳である―や同系の諸言語を手掛かりとして解明していくという,困難きわまりない学問である。それに加えて,仏教文献は書かれている内容自体が極めて難解であり,読み解くにはあまりにも広く深い知識が必要とされる。最も顕著な業績とされる『古代ウイグル文阿毘達磨倶舎論実義疏の研究(I〜III)』 (京都:松香堂,1991〜1993)は,難解なことで知られていた全7000行にも及ぶ文献を解き明かしたもので,その本領が存分に発揮された記念碑的著作であると言える。このほか,『ロシア所蔵ウイグル語文献の研究―ウイグル文字表記漢文とウイグル語仏典テキスト―』(京都大学大学院文学研究科,2003)など多数の著作がある。現在は,ソビエト連邦崩壊後に一般に公開されるようになったロシア科学アカデミー東方学研究所所蔵の古文献の研究を,内外の研究者の中心となって推進している。

木田 章義(きだ あきよし)  京都大学大学院文学研究科教授

 国語学,近年はウイグル語と日本語の比較,シベ語と日本語の比較,などを研究。著作に「濁音史摘要」(『論集日本文学日本語1上代』,角川書店,1978),「活用形式の成立と上代特殊仮名遣」,『国語国文』57/1(1988), 『注解 千字文』(共著,岩波書店,1984)など。