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KYOTO - CAMBRIDGE International Symposium

KYOTO - CAMBRIDGE International Symposium
"Integrating the Humanities:the Roles of Classics and Philosophy"

開催記

 

京都大学文学研究科COEプログラム「グローバル化時代の多元的人文学の拠点形成」は、本年9月25日にイギリスのケンブリッジ大学古典学部を会場として、西洋古典学(西洋古典文学、西洋古代史、西洋古代哲学)と哲学に関する国際シンポジウムを主催した。人文学、とりわけ西洋古典学や哲学という西洋系の学問に関してイギリスでシンポジウムを主催することは、今年100周年を迎えた京都大学文学部の歴史においても初めてのことであろうし、わが国の大学の文学部系の活動としてもきわめて稀なことではないかと思われる。以下はその準備と開催日当日の簡単な記録である。スケジュールの詳細や報告題目は、当シンポジウム専用ホームページを参照されたい。

準備

 本シンポジウムの計画は、昨年春に立てられ、高橋宏幸教授(西洋古典文学)、南川高志教授(西洋古代史)、出口康夫助教授(哲学)が中心となって準備を進めた。昨年7月にシンポジウムの趣意書とスケジュール案を準備してケンブリッジ大学古典学部に申し入れをおこない、同学部から理解と協力を得て準備を本格化させた。とくに、ケンブリッジ大学古典学部上級講師John Patterson博士に古典学部と京都大学文学研究科との間の仲介役を引き受けていただき、同博士から準備段階から開催の当日にいたるまで多大の援助をいただいた。本年6月からは古典学部の客員研究員としてケンブリッジでの滞在を始めた南川教授が現地での準備をおこなったが、その際には同学部で客員研究員として研究に励む大草輝政氏(西洋古代哲学)にしばしば助力をいただいた。また、その間に京都では、COE研究員三谷尚澄氏(哲学)、西村正秀氏(哲学)が中心になってシンポジウムの予稿集がまとあげられ、全136ページになる立派な当日配布冊子が完成した。

当日

 9月25日月曜日はイギリスらしい雨の日であった。参加者の出足が心配されたが、京大文学研究科教員を含む事前登録済み参加者54名に加えて、当日登録者や飛び入り参加者をあわせると、参加人数は70名ほどになったと思われる。これは計画当初の予想を大きく上回る数で、まずは盛会であったといってよいであろう。
 午前9時に参加登録を開始し、準備した冊子(予稿集)や参加登録者リスト、ランチ・インフォメーションが来会者に配布された。9時30分に予定通り開会し、COEプログラム総括リーダーである紀平英作教授、前のギリシア語欽定講座教授であるPat Easterling名誉教授、前の哲学教授のHugh Mellor名誉教授の御三方から開会の辞にあたるスピーチをいただいた。次いで、シンポジウム開催趣旨を伊藤邦武教授(哲学)が説明し、同教授の司会で午前の部のセッションが開始され、お茶の時間を挟んで12時30分頃まで報告と討論がおこなわれた。
 昼食の後、午後1時45分からは午後の部が始まり、古典学セッションと哲学セッションに別れてシンポジウムをおこなった。古典学セッションは比較的広い講義室で開催され、前半は古典文学をテーマに、お茶の時間を挟んで後半は古代史をテーマに展開された。一方、哲学は3つのサブセッションが順次おこなわれ、ラウンドテーブルの広いセミナー室で報告と議論がなされた。古典学・哲学いずれのセッションも討論はやや時間不足ではあったが、充実した報告に対して貴重な指摘や意見交換がいくつもなされ、意義深いものとなった。
 夕刻5時40分には両セッションが終了して、参加者は全員が古典学部内の古典考古学博物館に参集し、古代ギリシア・ローマ彫刻のレプリカに囲まれた神秘的な空間でレセプション・パーティーとなった。和やかな雰囲気の中で歓談が続き、不足気味の討論時間を補う意味でも、日英の研究者間の交流を深める上でも、このレセプションはきわめて有意義であった。

今後

 まず何よりも、このシンポジウムの成果を本格的な書物として公刊することが課題である。当日配布された予稿集には、シンポジウム読み上げ用だけではなく、註も付された論文も含まれているので、討論の成果をふまえたセッションのまとめや参加された研究者からの新たな投稿も追加しつつ、できるだけ早いうちに本格的な書物として出版できるよう作業が進められることとなろう。
 また、これを機会に、ケンブリッジ大学古典学部、哲学部と京都大学大学院文学研究科との学術交流がいっそう進展するように、双方の機関のさまざまなレヴェルで努力が重ねられることが重要である。レセプション、及びその後の会食時などで、ケンブリッジ大学の側からもこうした研究交流の機会を継続できるよう希望が表明されており、京大文学研究科内にそうした交流のための組織作りをおこなうことを含めて対応してゆくことができればと希望している。さらに、本シンポジウムでは、ケンブリッジ大学に留まらず、オックスフォード大学、ロンドン大学からも司会者や報告者を得た。これを機に、ケンブリッジ大学ばかりでなく、イギリスの伝統ある諸大学との間にも、研究者個人のレヴェルを越えて、日本の人文学系の研究機関が組織として交流や研究協力を進展させてゆくようになればと願っている。

 

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