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国際シンポジウム「「自然という文化」の射程」

―シンポジウムの概要―

 当日は、まず、本研究科長でCOEプログラムの拠点リーダーでもある紀平英作教授による開会挨拶があり、その後、フランス国立社会科学高等研究院教授のオギュスタン・ベルク博士による基調講演『自然という「文化」』が行われた。

 その中でベルク教授は、人間が、与えられた自然条件ないしは環境を「何物か」として捉えることを「風土現象」と呼び、その典型例として、明治の開拓農民が、北海道という自然環境を、「稲作を行うべき場所」として捉えることで、新たな風土が生まれたというケースをあげた。これは教授自ら北海道で行った調査研究の成果を踏まえた指摘である。さらに教授は、このような風土の産出を、人間が世界を様々なレベルで述語化する働きの一環と位置づけることで、自らの立場が和辻哲郎の『風土』のみならず、西田哲学に対しても持つ親近性を指摘された。その上で、「自然」と「文化」を、ともに人間による世界の述語化の一様相と捉え直すことで、それらを対立するものと見なす考えを克服する可能性が示唆されたのである。なお教授のこの講演は日本語で行われた。

 その後、約15分間の休憩ののち、シンポジウムに移り、まずパネリストによる提題がなされた。

 最初に、鳥取環境大学学長でもある加藤尚武本学名誉教授が、現代日本における景観問題を取り上げ、和歌の浦訴訟や真鶴市の美の基準などの具体例の分析を通じて、そこに潜む様々な哲学的・応用倫理学的問題の摘出を試みられた。

 次に、三名の本研究科教授が、それぞれ以下のような題で講演を行った。

 この後、再度の休憩をはさんで、ディスカッションに移った。討議では、パネリスト同士の質疑応答にとどまらず、会場からの質問をも踏まえ、熱心な議論が予定の時間を延長して続けられた。

 当日の参加人数は217名。多数の立ち見も出る盛況で、会場は冬の最中ながら文字通りの熱気にあふれた。

 シンポジウムの後は、同じく京大会館で、提題者を囲んだ懇親会が開かれた。この懇親会は、11月30日に行われた歴史系シンポジウムとの共通の催しであり、両シンポジウムの関係者が多数出席し、活発な意見交換がなされた。

 また基調講演・シンポジウムともに、司会は本研究科の片柳栄一教授(キリスト教学担当)が務めた。

(本研究科助教授、出口康夫)

[→開会挨拶]