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国際シンポジウム「「自然という文化」の射程」

―開会挨拶―

紀平英作

 研究科長の紀平でございます。本日は、平日にもかかわらず多数の方がお集まりいただき、ありがとうございます。

 文学研究科は毎年秋に公開のシンポジウムを開催しております。平成8年から開いておるものですので、今年が七回目の公開シンポジウムということになります。実は、それに加えて、今年は文学研究科において21世紀COEプログラムとして、「グローバル化時代の多元的人文学の拠点形成」という研究教育事業が五年間の計画でスタートいたしました。従来の秋の恒例シンポジウムに加えて21世紀COEプログラムの推進という意味を込めて、今年の公開シンポジウムは以前にも増して充実したものにしていきたいと考えました。そうした趣旨で、今年のシンポジウムは、先週の土曜日11月30日と本日の二日に分けて国際シンポジウムとし、外国からの研究者もお招きして、通常の書物あるいは書簡の交換ではできない生の直接の意見交換を通して、21世紀の人文学のあり方を問う実りある議論をしてみたいと思っております。ということで、本日のシンポジウムはタイトルのように、人文科学の中心分野である哲学の分野に関わって、フランス国立社会科学高等研究院教授オギュスタン・ベルク先生のご講演をいただき、その後、現代の哲学が抱える課題である、自然と人間との関わり合いをどのように考えるかというテーマに沿って五人の先生方による討議を予定しているわけです。

 実は先週の土曜日30日には歴史学に関わって、「歴史学の現在を問う」というテーマで第一日目のシンポジウムを開催いたしました。シンポジウムの報告者のお一人であった西洋史学の谷川稔教授は、ご自身の最近の研究であるピエール・ノラの『記憶の場』という翻訳のお仕事に関わって現代の歴史学の課題を論じられ、人間の歴史認識というのがどういうものであるかを突きつめて議論されておられました。歴史に客観的な事実が存在するというよりも、歴史とは集合的記憶が支えるものであり、また歴史叙述とは現在の中にある過去の再記憶化ではないかという議論と拝聴したわけであります。人間の「過去」とは何か、さらには歴史認識とはそもそも何なのかという、人文科学の基礎的な問題に対して、多くの示唆を含む議論であったと感じております。

 本日のテーマは歴史認識という問題から転じて、人間がそもそも生を営む上で自然という存在をどのように認識するのか、あるいはどのように受け止めるのか、というテーマを内包しているとお聞きしております。我々のCOEプログラムは、大きな変動期である現代世界というものの歴史的な意味というもの、あるいはそこにおける人間の存在あるいは認識の在り方というものを多元的に問おうとするプログラムであります。本日のシンポジウムが、そのプログラムの推進に向けて多くの成果を上げることを期待しております。ご来場の皆様にも、どうかご静聴いただき、報告後の質疑に積極的にご参加いただけることを念じております。

 よろしくおねがいいたします。

[→基調講演]