講義案内

 

陽光に輝くステンドグラス(サント・シャペル)

講義案内(令和5年度)

後期 仏書講読(小山哲)
後期 特殊講義(伊藤順二)
後期 英書講読(下垣仁志)
後期 独書講読(小俣ラポー日登美)
前期 英書講読(藤田風花)
英書講読(宮崎涼子)
西洋史学実習(小山・金澤・安平) 後期 特殊講義(草生久嗣) 卒論演習(演習Ⅴ)
後期 特殊講義(安平弦司) 前・後期 特殊講義(金澤周作)
前・後期 露書講読(伊東順二)
前・後期 特殊講義(藤原辰史) 前・後期 特殊講義(佐藤公美)
大学院演習
前期 特殊講義(岸本廣太)
後期 特殊講義(桑山由文)
前・後期 特殊講義(竹下哲文)
後期 特殊講義(衣笠太郎)
前・後期 ポーランド書講読(小山哲)
後期 特殊講義(小関隆)
前・後期 イタリア書講読(村瀬有司)
後期 特殊講義(阿部俊大) 演習Ⅰ,II, ,

◇講義内容【講義】

◇講義内容【特殊講義】

  • 【前期】 伊藤順二  ロシア帝国末期のジョージア

<授業の概要・目的>

 19世紀後半から1905年までの帝政ロシア支配下の南コーカサス史を、ジョージア中心に概観する。
 ロシア人がチェチェン人やジョージア人に抱くイメージは、少なくとも19世紀以来現代に至るまで、「高貴な野蛮人」あるいは単に「野蛮人」である。南コーカサスは帝政ロシア初の本格的植民地であり、オスマン帝国との最前線の一つでもあった。住民に対する民族学的視線は帝国の統治政策に直結すると同時に、「高貴な野蛮人」への文学的憧憬をも産み出した。一方、「治安の悪さで悪名高い」南コーカサスは、傭兵の輸出地としても名高く、義賊伝説に溢れ、スターリン等の革命家を輩出した地でもあった。本講義では帝国とジョージア人の関わりを主軸に、19世紀後半におけるナショナリズムと社会主義の相関関係について考えたい。

 

  • 【後期】 伊藤順二  第一次世界大戦期の南コーカサス

<授業の概要・目的>

 南コーカサスは「東部戦線」と並んでロシア帝国の最前線だった。ジョージアの社会主義者やアルメニアやアゼルバイジャンの民族主義者のほとんどは、第一次世界大戦開戦に際し、帝国の戦争に全面協力した。帝国の中心における革命は彼らにとって予期せぬ事件だったが、さまざまな構想を一気に開花させる力となった。本講義では南コーカサスにおける戦争と革命の経緯をジョージア中心にたどりつつ、ロシア革命なるものの影響力を再考したい。

 

  • 【前期】 岸本廣大  「国際社会」としての古代ギリシア――ポリスや連邦の外交―― 

<授業の概要・目的>

 古代ギリシアは、ポリスをはじめ、多様な共同体が並存し、相互にやりとりする「国際社会」であった。本講義では、そのような理解を前提に、古代ギリシア世界の共同体の特徴と、それらによって展開された外交的やりとりについて学ぶ。具体的には、古典期からローマ時代まで(およそ前5世紀~紀元2世紀)のポリスや連邦を対象とし、条約、諸特権の付与、紛争解決、使節演説といったトピックごとに講義する。それらを通じて、アテナイやスパルタといった特定の共同体の歴史ではない、「国際社会」としての古代ギリシアの特質を、歴史学的に理解することが、本講義の目的となる。また、そうした古代ギリシアの特質が、近現代においてどのように受容されたのかについても本講義では扱いたい。それによって後世における歴史の利用や可変的な一面について理解し、歴史に対する批判的な見方を学ぶことも目的の一つとなる。

 

  • 【前期】 金澤周作  二つの世界大戦と国際人道支援――イギリスのNGOに注目して

<授業の概要・目的>

 イギリス史上に顕著な活発なチャリティ活動は、その範囲を国内に限ることなく、帝国全土および世界にまで広がっていた。この文脈を踏まえたうえで、本講義では二つの世界大戦をはさむ時期に実践された国際人道支援の具体的な諸相を、主として3つのイギリス系国際NGOに注目して描いていく。相互不信と敵意で引き裂かれた世界で、民間の「善意」がいかなる意味を持ち得たのかを検討する。国家や国民とは異なる主体に即して戦争と平和の歴史を考えたい。

 

  • 【後期】 金澤周作  ポスト・ナポレオン期の国際秩序とバーバリ諸国問題――イギリスのチャリティ団体に注目して

<授業の概要・目的>

 19世紀初頭に、長く続いた大西洋での黒人奴隷貿易と、地中海での「もうひとつの奴隷貿易」、すなわち北アフリカのバーバリ諸国による白人の虜囚化と身代金ビジネスは、ナポレオン戦争終結後に形成される新たな国際秩序において、原則として否定された。本講義では、あるイギリスのチャリティ財団が行った19世紀初頭の虜囚救出実践から、国際的な「もうひとつの奴隷貿易」禁止のプロセスと大西洋奴隷貿易の廃止、そして新たな国際秩序の形成のかかわりを究明する。

 

  • 【前・後期】 竹下哲文   ラテン語中級講読

<授業の概要・目的>

 ラテン語の初級文法を学んだ人を対象として,サッルスティウス『カティリーナの陰謀』(およびキケロー『カティリーナ弾劾演説』,『カエリウス弁護演説』)を教材に講読を行う.

 

  • 【前・後期】 藤原辰史  食と農の現代史

<授業の概要・目的>

 とりわけ20世紀以降、食と農はどのように変化を遂げてきたのか? ドイツと日本を中心に、食べものをめぐる制度や文化や技術の変遷を追う。この講義の目的は、現代史の知識を蓄えることではない。あるいは、現代史の概略をつかむことでもない。現代史を批判的に眺める目を獲得し、食と農の未来の構築するためのヒントを考えることである。

 

  • 【前期】 小関隆  第二次世界大戦と現代世界

<授業の概要・目的>

 いうまでもなく、第二次世界大戦はその後の現代世界を強く方向づける出来事であった。最新の研究水準に則してこの戦争を理解することは、現代世界に身を置き、それを乗り越えようとする人々にとって、基礎的な教養といってもよい。主としてヨーロッパ現代史の文脈に据えて、きわめて複合的な第二次世界大戦の全体像を把握し、このトラウマ的経験がその後の世界に与えた影響を考察することが授業の課題となる。なお、2023度の授業は2022年度の改訂版であり、重複する内容が多く含まれる。

 

  • 【後期】 小関隆  中立という選択肢:アイルランドの第二次世界大戦

<授業の概要・目的>

 前期の授業を受け、第二次世界大戦というグローバルな動乱の中で中立のスタンスをとることの意味を、アイルランド(厳密には北アイルランドを除くエール)の経験を通じて考える。この授業もまた2022年度の改訂版であり、重複する内容が多いが、2023年度は特に、エールの首相としてイギリスとアメリカから執拗な参戦圧力を受けながらも中立を堅持したエールの首相デ・ヴァレラに注目する。20世紀の戦争において中立はどれほど有効な選択肢たりうるか、授業の中核的な問いはこれである。

 

  • 【前期】 佐藤公美  中世ヨーロッパの政治反乱

<授業の概要・目的>

 本講義のテーマは、中世ヨーロッパの政治反乱をめぐる諸論点である。
 国家、国家的な諸権力、統治者、支配者に向けられる反乱は、政治行為であるとともに、人間集団の慣習的行為と世界観に根差した広義の文化である。それゆえ、社会史や文化史研究の主要研究テーマの一つであり、また中世の政治と国家をボトムアップの視点からとらえることを可能にしてくれる私たちに開かれた数少ない窓の一つでもある。
 本講義ではこのテーマに関わる研究史上の諸論点を概観し、課題と展望を考察する。

 

  • 【後期】 佐藤公美  中世イタリアの反乱の政治文化と社会

<授業の概要・目的>

 本講義のテーマは、中世後期イタリアの政治反乱である。
 中世のイタリアでは、都市コムーネとそこから展開する領域国家を舞台に、高度な政治文化が発達し、広範な層の人々が「政治」行為に関与した。本講義ではそのような政治文化の一環として、中世後期にイタリア半島の人々を動かした政治「反乱」を取り上げる。
 具体的には、成長する諸領域国家と教会の緊張関係の中で、14世紀の教会国家領で生じた反乱を、一つの国家を越えたネットワークと半島内諸国家関係に焦点を当てて検討する。そして成長する国家権力、諸国家の相互関係と同盟、聖俗の権力の再編の複雑な絡み合の中で、国家、君主、党派、戦争、共通善という諸問題を貫く中世の政治行為としての反乱がなぜ、いかにして成立したかを、イタリア半島の固有の文脈の中で理解した上で、中世ヨーロッパ政治史の中に位置付けることを目指す。

 

  • 【後期】 安平弦司  近世オランダにおけるカトリックとジャンセニスム論争

<授業の概要・目的>

 近世のオランダ共和国は、改革派(カルヴァン派)を唯一の公的教会とするプロテスタント国家であり、かつ多宗派共存社会でもあった。オランダのカトリック共同体は、差別的待遇を受けながらも17世紀の過程で再建されていったが、ジャンセニスム論争を経て、1723年にユトレヒト教会分裂を経験した。ジャンセニスムとは、近世カトリック教会内部で異端視された思想である。教会分裂により、オランダのカトリック共同体は、ローマ教皇に認可されるもプロテスタントのオランダ政府には否認されたローマ・カトリックと、教皇に否認されるもオランダ政府には認可された古カトリック(ジャンセニスト)に分裂し、両者の分断は現在も続いている。本講義では、ジャンセニスム論争を通じて、17・18世紀のオランダ共和国のカトリック共同体の復興と内部分裂を考察する。そうすることで、宗教改革後の近世ヨーロッパにおける複数宗派の共存・競合という問題を多角的に理解することを目的とする。

 

  • 【後期】 衣笠太郎  ドイツ=中東欧境界地域の歴史:シレジアを中心に

<授業の概要・目的>

 中世以降の「ドイツ」の歴史・文化・社会を、現在のドイツ領域のみならず、広く旧ドイツ領やドイツ語圏の広がりをも踏まえつつ多角的に概観する。本講義では、主にシレジア(シュレージエン/シロンスク)地方に着目して授業を進める。19世紀初頭のナポレオンによるヨーロッパ中央部の支配以来、いわゆるドイツ地域ではドイツ・ナショナリズムが興隆し、1848年革命を経て、1871年のドイツ帝国創設=統一国家成立へと至ることになる。しかし、この19世紀以降のドイツ統一国家の形成・展開過程では、多様な言語・文化・宗派・帰属意識を持つ人々が入り乱れることになったがために、そこに居住する人々をめぐって包摂と排除が繰り返された。本講義では、そうした「ドイツ」の多様性や包摂・排除の側面に光を当てながら、シレジア地方の歴史について見ていくこととする。

 

  • 【後期】 桑山由文   ローマ帝政前期のアテネとギリシア知識人

<授業の概要・目的>

 ローマ帝国は共和政期半ばの前2世紀以降,東方ギリシア文化圏への支配を拡大していった。本講義はとくにギリシア本土のアテネに焦点をあて,この都市がローマ帝政前期にいかなる変容を遂げていったのかを検討すると同時に,ギリシア文化圏出身の知識人がそうしたアテネ,さらにはローマ帝国中央とどのような関係を築いていたのかを検討する。

 

  • 【後期】 阿部俊大   「レコンキスタ」の展開とその歴史的影響ー中世盛期を中心にー

<授業の概要・目的>

 西欧世界は、異文化との多様な接触の中で自己を形成してきた。本講義では、中世西欧が最も長期間に渡り恒常的な異文化接触を経験した場である中世イベリア半島(スペイン・ポルトガル)を題材に、特に最も激しい形態で異文化接触が展開された中世盛期を中心に、多様な異文化接触の実情と、その政治・経済・社会・文化への影響を分析する。中世イベリアのキリスト教諸国の中で最も人口に膾炙している、カスティーリャ=レオン王国の事例を中心に取り上げ、ポルトガルやピレネー諸国の事例は適宜、比較対象として取り上げる。
中世西欧の国制とその発展過程について、日本では英仏独の事例がよく知られているが、他の地域の事例についての情報は乏しく、体系化もされていない。イベリア半島の事例を他の西欧諸国と比較しつつ学ぶことで、より複合的・多角的な視点から、中世西欧の国家や社会についての理解を深めることも可能となるであろう。

 

  • 【後期】 草生久嗣   西洋中世における異端問題とビザンツ帝国

<授業の概要・目的>

 西洋中世史上、11世紀より各地で展開した「中世異端」問題は、様々な論点を開示しつつ20世紀における西欧中世精神史を代表するトピックとなった。この成果に対し、正教会圏および東地中海世界での異端問題の諸相を取り込むことは、「中世異端」問題に新たな展望をひらき、西欧ローマ・カトリック世界における中世史理解を発展的に問い直す機会になると考えられる。
 13世紀にアルビジョワ十字軍および異端審問制度に帰結した「民衆異端 popular heresy (Moore)」および「宗教運動 Religioese Bewegungen (Grundmann)」現象について、その淵源あるいは先駆として位置付けられがちなビザンツ帝国史上の諸異端、とくに「中世のマニ教(Runciman, Stoyanov)」の見直しに取り組む。その際、同時代において中世異端概念自体が構築されていく様に着目する「異端を見る眼(異端学)」の分析を踏まえる。

 

◇講義内容【集中講義】

本年度は開講されない。

◇講義内容【演習】

  • 演習Ⅰ  西洋古代史演習 (藤井崇)

<授業の概要・目的>

 この授業は、ギリシア・ローマ史を中心とする西洋古代史の研究を本格的におこなう能力を養成することを目的とする。主に外国語で書かれた一次史料ならびに二次文献を分析することで、基本的な歴史的事象やこれまでに学界で議論されてきた代表的論点を学び、自身で歴史学的課題を設定し、それを解決する能力を涵養する。また、研究の成果を口頭・文書で論理的に表現し、他の研究者と意義あるディスカッションをおこなう技能の獲得も目指す。一部を同時双方向型メディア授業とし、多様な素材を通じて西洋古代史をより深く理解することも目的の一部とする。

 

  • 演習Ⅰ  西洋中世史演習 (佐藤公美)

<授業の概要・目的>

 本演習では、ヨーロッパ史に関係する欧米の相対的に新しい英語研究文献を読解し議論する。これにより英語で専門研究文献を精読する力を養うとともに、現在の歴史学方法論、解釈理論、史料論、および研究上の諸論点を学び、理解を深め、ヨーロッパ史についての基本的な知識を身に着ける。本演習では中世史を中心に扱うが、テキストの一部は近世も対象としてる。
 今回のテーマは中・近世における「領土territory」である。
 「領土」とは何だろうか。歴史学のみならず、広く人文諸科学において「領土」は近代主権国家論の中核をなす。近年の前近代史研究は「領土」に対する排他的統治権を行使する主権国家概念を、前近代の現実に基づいて批判的に乗り越えてきた。「領土」は「西洋近代」の思考と行動の枠組みとと不可分に結びついているが故に、歴史学を越えて思想、文化、社会を扱う諸分野を横断する重要性を持つ。ゆえに、近代的「領土」観の相対化とともに、前近代の「領土」の現実と「領土」観を統合的に明らかにしてゆくことが、ヨーロッパ前近代史研究が知の枠組みの刷新に活かされるための重要な道の一つであると言える。
 今回の演習では、この問題に関する最新の研究成果に向き合い、歴史研究の思考力と知識と技術を磨きながら、参加者各自が新たなヨーロッパ史像を考えることを目指す。

 

  • 演習Ⅲ  西洋近世史演習 (小山哲・安平弦司)

<授業の概要・目的>

 近世のヨーロッパ史にかんする欧米の比較的新しい研究文献を読解し、また、個別の論点について討論することをつうじて、近世ヨーロッパにかんする基本的な知識を身につけると同時に、最近の研究動向や研究史上の争点についての理解を深めることを目指す。

 

  • 演習Ⅳ  西洋近代史演習 (金澤周作)

<授業の概要・目的>

 この演習では、西洋の近代(18世紀半~20世紀初頭)を主体的に探求するのに必要な作法を学ぶ。そのために、まとまった分量の欧米の研究文献を精読することを課す。


 

  • 演習Ⅴ  卒論演習 (小山・金澤・安平)

<授業の概要・目的>

 卒業論文の研究テーマについて、参加者が中間報告をおこない、教員3名と受講者の全員で討論する。研究報告と討論を通じて研究テーマに関する理解を深めるとともに、研究を進める上での問題点を認識し、卒業論文の完成度を高めることを目標とする。西洋史学専修4回生は必修。


 

  • 大学院演習 (小山・金澤・安平)

<授業の概要・目的>

この授業では、受講する大学院生が各自の専門研究の成果を発表し、授業に参加する院生・教員全体でその発表にかんして問題点を指摘し議論する。本演習をつうじて、受講者の大学院における研究の発展に資するとともに、西洋史上の様々な時代・地域にかかわる研究テーマ、研究の視角や手法、史料の特徴とその利用の方法などについて相互に理解を広め、また深める場とする。

 

◇講義内容【講読】

  • 【前・後期】英書講読 (下垣仁志)

<授業の概要・目的>

 考古学の射程を大幅に広めたことで名高いV・G・Childeの出世作にして最高傑作である『The Dawn of European Civilization』(6版)の精読をつうじて、①ヨーロッパ新石器時代の概要、②考古学の方法論、③本書が世界考古学および日本考古学におよぼした影響、などを習得する。テキストの輪読と内容についての解説および議論が、講読の基本的な枠組みとなる。

 

  • 【前・後期】独書講読 (小俣ラポー日登美)

<授業の概要・目的>

 学術的なドイツ語文献の読解・運用能力を高める目的で、ドイツ近世史をテーマとする研究テクストを購読する。いわゆる大航海時代以降、複数の世界が接続されたことでヨーロッパは様々な他者と邂逅した。このようなテーマに関しては、新世界やアジアに進出していった南欧諸国やフランドル地方についての研究が注目されがちであるが、実は直接の接触がほぼなかったヨーロッパ内陸のドイツ語圏にもその余波はあった。「アメリカ」はバロック期のドイツ語圏にどのような影響を与えたのか、そしてその「他者」認識は、ヨーロッパ内の「他者」(宗教的他者、イスラム教)の把握にどのように反映したのだろうか。この時代は、ドイツ語圏の歴史上、「他者」とのコンタクトが起こした戸惑いや違和感が、特に様々な表象として残された時代である。多様性が叫ばれる現代こそ、多様性が意識され始めた時代を振り返ることは意味があるだろう。
本講義では、これらの問題を扱う以下の三つのテクストの精読を行なっていく。

・Karl Kohut, Von der Weltkarte zum Kuriositaetenkabinett Amerika im deutschen Humanismus und Barock (1995)
・Dominik Sieber, Jesuitische Missionierung, priesterliche Liebe, sakramentale Magie (2005)
・Eckhard Leuschner, Das Bild des Feindes, Konstruktion von Antagonismen und Kulturtransfer im Zeitalter der Tuerkenkriege (2013)

出席者は日本語翻訳をあらかじめ各自用意し、割り当てられた担当部分については、学期中に必ず1度は授業中に発表する。その他の出席者も必ず予習をして臨み、意見・質問を出すことが望ましい。

 

  • 【前期】英書講読 (藤田風花)

<授業の概要・目的>

 本授業では、M. Mazower (2000),The Balkans: From the End of Byzantium to the Present Day, London: Weidenfeld & Nicolsonの一部を読む。本書は、暴力、野蛮、後進性といった否定的なイメージと結びつけられがちなバルカンという地域の視点から、近代ヨーロッパ史を捉えなおそうとするものである。著者は、宗教にもとづく帰属意識のあり方など、この地域に特有の近代国家形成の諸前提を示し、ヨーロッパの近代史についての西欧中心的な見方を批判する。本書の精読をつうじて、英語で書かれた研究文献の読解力を向上させるだけでなく、南東欧における近代国家の形成をめぐる諸問題や、そこから逆照射される西欧の諸問題についての理解を深めることが、本授業の目的である。
 
授業にさいして、予習は毎週必須である。また、毎回授業内に課題として和訳を提出してもらう予定である。

本授業は講読の授業であるが、読解するうえで必要と思われる背景知識についても、授業中に適宜解説する。

 

  • 【後期】英書講読 (宮崎涼子)

<授業の概要・目的>

 この授業では、次の本を講読する。
Morgan Pitelka and Alice Y.Tseng(eds.), Kyoto Visual Culture in the Early Edo and Meiji Periods: The arts of reinvention, New York, Routledge, 2016.

794年の平安遷都以来、京都は時代によりその存在意義を大きく変化させ、かなりの中断を経ながらも発展を続け、今日では「日本の真髄」としてのアイデンティティが構築されるに至っている。本書は、社会変革により政治的に疎外された二度の特定の時期(17世紀と19世紀後半)の京都の文化生産について、複数の研究者が様々な学問的観点から解釈を示すものである。
本書の精読を通じ、英語の学術文献を読解する能力はもちろん、日本近代文化史に関する基礎的知識や歴史研究の方法論的視座を獲得してもらうことが、本授業の目的である。

授業ではまずIntroductionを読み、その後は19世紀後半について扱ったPartⅡの各章を時間が許す限り読んでいく。授業内では、英書講読という本旨から外れない範囲で、テキストの背景的知識についても適宜確認する時間を設ける。

 

  • 【前・後期】露書講読 (伊藤順二)

<授業の概要・目的>

 19世紀の思想家の文章の読解を通じて、ロシア語の一般的能力、および歴史的・批評的文書に対する読解力を向上させる。

 

  • 【前・後期】ポーランド書講読 (小山哲)

<授業の概要・目的>

 ポーランド語で書かれた歴史書を精読することをつうじて、ポーランド語の読解力の向上を図るとともに、ポーランドにおける歴史認識や歴史研究の現状について理解を深めることを目標とする。

 

  • 【前期】イタリア書書講読 (村瀬有司)

<授業の概要・目的>

 20世紀のイタリアを概観したSimona Colariziの“Storia del Novecento italiano”の第4章:La nascita della dittatura (1922-1929)の冒頭から読み始めます。
 イタリア人による歴史書は、日本人によって執筆されたものとは史観・価値観が異なるうえに、イタリア人の読者を想定したものであるためにこれを読むにあたって必要となる知識もまた異なります。このような原書の講読は、イタリア文化そのものにダイレクトに触れる機会を与えてくれるはずです。
 本書の文章は明晰なイタリア語散文であり、これを精読することによって伊語テクストの読解力を効率よく培うことができるでしょう。この読解力の養成が授業の主要な目的となります。 

 

  • 【後期】イタリア書講読 (村瀬有司)

<授業の概要・目的>

 ルイージ・サルヴァトレッリのイタリア史の概説書“Sommario della storia d’Italia”から、第9章を精読します。
 イタリア人による歴史書は、日本人によって執筆されたものとは史観・価値観が異なるうえ、イタリア人の読者を想定したものであるためにこれを読むにあたって必要となる知識もまた異なります。このような原書の講読は、イタリア文化そのものにダイレクトに触れる機会を与えてくれるはずです。
 また著者サルヴァトレッリの文章はオーソドックスなイタリア語散文であり、これを精読することで伊語テクストの読解力を効率よく身につけることができます。この読解力の養成が授業の主要な目的となります。 

 

  • 【前・後期】仏書講読 (小山哲)

<授業の概要・目的>

 フランス語で書かれた歴史書を精読することをつうじて、フランス語の読解力の向上を図るとともに、歴史研究にかかわる理論、概念、研究方法についての理解を深めることを目標とする。

 

◇講義内容【実習】

 

  • 西洋史学実習

<授業の概要・目的>

 この授業は、学生が西洋史の卒業論文を作成するために必要となる研究能力を、知識と技術の両面から身につけることを目的に開講する。具体的な史料(外国語)の分析法、研究情報の収集手順から西洋史研究の方法論や史学思想、さらには論文における議論の作法まで、具体的に学ぶ。

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