2022年度の授業

◆講義◆

宇佐美文理(教授)中国哲学史講義(Ⅰ)[前期]

「気」や「理」などの中国哲学の基本概念を講義し、中国哲学ならびに中国文化への理解を深める。

 

宇佐美文理(教授)中国哲学史講義(Ⅱ)[後期]

中国の目録学について概要を示すことからはじめて、中国哲学史上の重要な書物について、経部と子部の書物を中心にそれぞれの内容について解説し、その書物が学問全体においてもつ位置についての知識を深める。

 

◆講読◆

池田恭哉(准教授)『文選』の文章を読む(司馬遷による書簡「報任少卿書」)

漢文を読むための基礎的な知識を習得し、それらを活用して実際の漢文を読み、その読解力を身につけることを最大の目的とする。最初は漢文とその読み方について概説をし、またテキストとなる『文選』について紹介する(主として前期)。
その上で、実際の『文選』収録の文章として、司馬遷「報任少卿書(任少卿に報ずる書=書簡)」を精読する(主として前期後半~後期)。司馬遷は『史記』の著者として、名前を知っている人も多いであろう。また『文選』に附された唐の李善による注釈もあわせて読むことで、漢文読解における注釈の意義について考えてもらう。
この授業では、原典の読解を通して、色々な読解の可能性を出席者同士で討議することを特に重視する。漢文読解の基礎は前期を中心に概説し、また原典の読解も、履修者のペースに合わせて進めるので、分野を問わず様々な興味関心から、多くの学生の参加を期待する。

 

◆特殊講義◆

池田恭哉(准教授)北朝正史の儒林伝を読む

南北朝時代、中国は南北に分かれ、その学問の在り方も様相を異にした部分が多い。中国の思想と言えば儒学をすぐに想起しようが、その根幹たる経書には歴代様々な注釈が施され、南朝と北朝とで、どの注釈書に依拠して各経書を読んだかが異なったことは、よく知られる。
そこで本講義では、北朝における儒学、経学の実態を探る第一歩として、北朝正史の儒林伝を読んでいく。具体的には『魏書』『北斉書』『周書』である。
北朝における学問の共有や伝承の様子を、時には南朝の動向をも視野に入れつつたどることで、北朝ではどのような学問を備えることが目指されたのかを、探っていく。また儒者に対して、社会がどのような役割を期待していたのかについても、考えていきたい。こうした営みは、南北朝時代に限らず、中国社会を考える上でのヒントになろう。
なおすでに令和2年度から『魏書』儒林伝を読み始めており、今年度はその途中からになる。ただし過去の内容は当然フォローするので、今年度からの受講も問題ない。分野を問わず、様々な学生の履修に期待したい。

 

永田知之(協力講座・人文科学研究所 准教授)漢籍目録法[前期]

漢籍目録の作成要領を理解することを通じて、中国学の基本構造を把握する。

 

永田知之(協力講座・人文科学研究所 准教授)漢籍分類法[後期]

四部分類法を理解することを通じて、中国学の基本構造を把握する。

 

船山徹(協力講座・人文科学研究所 教授)『金剛般若経』から漢訳仏典を学ぶ

『金剛般若経(こんごう・はんにゃきょう)』はインド中国で最もよく読まれた大乗般若経である。サンスクリット語原典には異なる数種があり、また中国で訳された漢訳にも複数種類ある。岩波文庫に収める漢訳とサンスクリット語原典が唯一のものではないし、岩波文庫の和訳も問題を含む箇所がある。この授業では、インド中国の大乗佛教を知るための素材として、『金剛般若経』のサンスクリット語原典・漢訳数種・チベット語訳を比較しながら、細かな相違を適確に理解する読解訓練を行いながら、特に漢訳諸本の訳語のニュアンス(含蓄)にどのような違いがあるかを、原文に即して理解できるようにすることを目指す。
またその基となる基本知識として、佛教漢語の特色・訳語(漢訳)の特異性・大藏経の使い方・佛教漢語の意味を確定するために行う常套的手法も身に付けるようにする。

 

倉本尚徳(協力講座・人文科学研究所 准教授)中国の僧伝から見た隋の仏教:『続高僧伝』講読

中国初唐の道宣が撰した『続高僧伝』は、南北朝期から初唐にかけての中国仏教史を考える際に最も基本となる史料であり、日本仏教にも大きな影響を与えている。この書は、僧伝にかかわる関連史料の網羅的な収集と各地の実地踏査をもとに幾度も増補改訂がなされ、同種の書に例をみない豊富な内容と版本ごとの大きな異なりを有している。特に日本の寺院が所蔵する古写本は、版本よりも以前の形態を保存しており、近年研究が進み、その増補過程が次第に明らかとなってきている。
本授業では、『続高僧伝』の各種版本・撰者道宣の伝記について概観した後、主要な僧の伝について、研究史を紹介し、複数の版本を比較検討し、同一人物についての他の史料と比較検討しながら読み進める。それによって、中国仏教史の理解を深め、僧伝の内容にいかに撰者の主観が大きく影響しているかを考えてみたい。なお時間の関係上適宜省略しつつ読み進める。関連する石刻資料があれば現物の写真・拓本なども紹介する。
基本は講義形式と講読形式を交互に併用して進めるが、進捗状況に応じて柔軟に対応する。講読にあたっては受講者の状況に応じて、一部分の現代語訳担当を御願いする。それが難しい場合はレポート提出とする。
前期は講義では主に北朝後期から隋代の僧をとりあげ、北周の廃仏と隋文帝の仏教復興政策とインド・西域の仏教との関係について考察する。講読は前年度に引き続き隋の訳経僧、闍那崛多の伝から読み進める。

 

三浦秀一(東北大学大学院文学研究科 教授)明代儒仏道三教交渉史
[集中講義]

この授業では明代における儒仏道三教交渉の歴史的展開をあとづける。明学の精華とされる陽明学が仏道両教、とりわけ禅仏教と親和的な思想内容を有することは周知のとおりだが、そうした思想が明朝正徳嘉靖期に登場するにいたる思想史的背景や、陽明後学の活動と明末における仏道両教との関連性などについて、科挙制度の普及や出版活動の興隆というこの時代の社会や文化を特徴づける要素にも触れながら考察してゆきたい。

 

◆演習◆

宇佐美文理(教授)『困学紀聞注』精読

古典文献の講読を通して、漢文読解力を養うと共に、中国文化への理解を深める。そのために『困学紀聞注』を精読する。授業は、訳注を作らず、授業の場で適宜一条ずつ担当をしてもらい訓読ならびに出典などの報告をしてもらう。出典に確実に当たることを重視し、本文の文章や語句などすべての典拠、用例について、もとの書物を調べる作業を重視する。今年は『困学紀聞注』(翁注困学紀聞)の巻十、諸子の部分を読む。

 

池田恭哉(准教授)阮元の文章を読む

阮元(1764-1849)は言うまでもなく清朝考証学を代表する学者である。この授業では、彼の著作『ケン経室集』(ケン:研+手)の中から、経学を中心として思想に関わる内容の文章を選読する。文章のジャンルは序・論・跋・書など多岐にわたる。
多彩なテーマやジャンルの文章を読むことは、古典読解能力を高めるとともに、その考証の手法や表現の方法を学ぶことをも可能にするであろう。そして同時代の学者が、同じテーマに対して考察を展開していた場合、時に阮元を離れてでも、それについて検証していくので、清朝という時代の学的風潮も体感できる。
話題は経学を中心としつつ、中国の多様な時代、分野に及ぶことになる。また文章のジャンルも特定のものにこだわらない。そのため様々な専攻の学生の出席を期待する。

 

吉本道雅(協力講座・本研究科東洋史学専修 教授)『春秋左伝正義』

十三経注疏の一つである『春秋左伝正義』を輪読する。

 

古勝隆一(協力講座・人文科学研究所 准教授)『論語義疏』講読

この授業では、儒教文献『論語義疏』子路篇を講読する。その経文・何晏等集解・皇侃義疏、そして『経典釈文』(論語音義)を講読の対象とする。
テクストに正面から向かい合い、正確な理解を目指すのはもちろんだが、それをサポートする、書誌学的・校勘学的な知識もあわせて習得することを目標としている。
慶應義塾大学蔵の中国写本の影印に基づき、子罕篇の訳注を作成する。

 

中純夫(協力講座・京都府立大学文学部 教授)呉志忠「附攷序」「四書章句附攷」巻1「大学」、「四書章句集注定本辨」

朱熹『大学章句』は60歳でひとまず脱稿するが、朱熹はその後も改訂を繰り返し、その改訂作業は死の3日前にまで及んだ。今日に伝わる『四書章句集注』には興国本と淳祐本の2系統が有り、そのいずれもが朱熹による幾多の改訂を経た最終稿(晩年絶筆)であると見なされている。ただ両本には重大な点で異同が有り、その異同を含んだまま両本をともに晩年絶筆本と見なすことには問題が有ろう。また呉志忠は両本のうち淳祐本が勝るとしてこれを底本としたため、呉志忠校本に拠った芸文印書館本、中文出版社本、中華書局本(新編諸子集成本)は、いずれも淳祐本系統である。ただ淳祐本を採った呉志忠の判断の妥当性も、改めて検討する必要が有る。
授業ではこのような問題意識のもとに、呉志忠の「附攷序」「四書章句附攷」巻1「大学」、「四書章句集注定本辨」を精読する。

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