2023年度の授業

◆講義◆

宇佐美文理(教授)中国哲学史講義(Ⅰ)[前期]

「気」や「理」などの中国哲学の基本概念を講義し、中国哲学ならびに中国文化への理解を深める。

 

宇佐美文理(教授)中国哲学史講義(Ⅱ)[後期]

中国の目録学について概要を示すことからはじめて、中国哲学史上の重要な書物について、経部と子部の書物を中心にそれぞれの内容について解説し、その書物が学問全体においてもつ位置についての知識を深める。

 

◆講読◆

池田恭哉(准教授)「「孟子」の思想を読む」

本授業の最大の目的は、漢文を読むための基礎的な知識を習得し、それらを活用して実際の漢文を読み、その読解力を身につけることである。そのため前期の中盤までは、漢文とその読み方について概説をする。
概説の後は、実際の漢文読解の段階に進む。今年度はテキストに「孟子」の代表的な注釈書である清・焦循『孟子正義』を用いる。孟子については性善説など高校の授業でその思想に触れたことのある人も多いだろう。本授業では、原典を自分で読むことを通じて、孟子の思想と向き合ってみたい。その際、清朝の焦循が著した孟子の代表的な注釈書である『孟子正義』に導かれつつ読む。中国古典の読解に欠かせない「注釈」の意義を実感し、またその形式に慣れてもらうためである。
この授業では、原典の読解を通して、色々な読解の可能性を出席者同士で討議することを特に重視する。漢文読解の基礎は前期を中心に概説し、また原典の読解も、履修者のペースに合わせて進めるので、漢文読解の経験、専攻分野を問わず、様々な興味関心から多くの学生の参加を期待する。

 

◆特殊講義◆

宇佐美文理(教授)「 中国文献学講義」(前期)

中国古典に関する文献にまつわるさまざまな知識について、目録学と版本学を中心に、その概要を講述する。

宇佐美文理(教授)「詩と絵画」(後期)

前近代の中国において、世界(風景)がどのように把握され、どのように表現されてきたかを、「詩」と「絵画」の両側面から考える。

池田恭哉(准教授)「北朝正史の儒林伝を読む」

南北朝時代、中国は南北に分かれ、その学問の在り方も様相を異にした部分が多い。中国の思想と言えば儒学をすぐに想起しようが、その根幹たる経書には歴代様々な注釈が施され、南朝と北朝とで、どの注釈書に依拠して各経書を読んだかが異なったことは、よく知られる。
そこで本講義では、北朝における儒学、経学の実態を探る第一歩として、北朝正史の儒林伝を読んでいく。具体的には『魏書』『北斉書』『周書』である。
北朝における学問の共有や伝承の様子を、時には南朝の動向をも視野に入れつつたどることで、北朝ではどのような学問を備えることが目指されたのかを、探っていく。また儒者に対して、社会がどのような役割を期待していたのかについても、考えていきたい。こうした営みは、南北朝時代に限らず、中国社会全般を考える上でのヒントになろう。
なおすでに令和2年度・3年度で『魏書』儒林伝を読み終え、今年度は『周書』儒林伝の途中からになる。ただし過去の内容は当然フォローするので、今年度からの受講も問題ない。分野を問わず、様々な学生の履修に期待したい。

 

船山徹(協力講座・人文科学研究所 教授)「五世紀中国仏教僧の戒律問答『五百問事経』から知られる戒律の実態」

5世紀前半中国仏教の出家者が『律』(出家集団の生活規則)をどのように理解していたか,どこに彼らの興味があったかを知るための資料として『五百問事(経)』がある。この文献は,中国人僧の質問とインド人僧の応答から成る問答集である。問答はどれも短く簡潔だが,その総数は多く,約300余りある。更に,『五百問事』には日本古写本と敦煌写本のみが現存し,名と体裁を変えた『目連問戒律中五百軽重事』という偽経として木版大蔵経に収められているものがよく知られている。
インド起源の『律(ヴィナヤ)』には,東アジアの生活実態と合わない規則も含まれるため,中国の仏教徒にとって,漢訳された『律』にはそのまま使って生活できない内容が含まれ,また,中国人が是非知りたいことであっても,文化の異なりがあるため,インドの『律』には明確な規定がない事項も多い。
この授業では5世紀中国の仏教の実態を知らせる資料として『五百問事』を精読し,内容を学ぶ。

 

倉本尚徳(協力講座・人文科学研究所 准教授)「中国の僧伝を読むーー『続高僧伝』講読」

中国初唐の道宣が撰した『続高僧伝』は、南北朝期から初唐にかけての中国仏教史を考える際に最も基本となる史料であり、日本仏教にも大きな影響を与えている。この書は、道宣自身が僧伝にかかわる関連史料の網羅的な収集と各地の実地踏査をもとに幾度も増補改訂を行ったものであり、同種の書に例をみない豊富な内容と版本ごとの大きな異なりを有している。特に日本の寺院が所蔵する古写本は、版本よりも以前の形態を保存しており、近年研究が進み、その増補過程が次第に明らかとなってきている。
本授業では、『続高僧伝』の各種版本・撰者道宣の伝記について概観した後、主要な僧の伝について、研究史を紹介し、複数の版本を比較検討し、同一人物についての他の史料と比較検討しながら読み進める。それによって、中国仏教史の理解を深め、僧伝の内容にいかに撰者の主観が大きく影響しているかを考えてみたい。関連する石刻資料があれば現物の写真・拓本なども紹介する。
今年度は昨年度に引き続き訳経篇巻に収録された人物を検討する。具体的には北朝後期から隋代にかけて生きた彦琮をとりあげる。彦琮は北斉の名門趙郡李氏の出身であり,早くから梵語仏典にも通じていた。翻訳事業への参与を通じて西域事情にも通じ,玄奘が弟子に『大唐西域記』を編纂させるにあたり彼の『西域伝』を参照させたとされる。近年,彦琮について,その翻訳論や国家論,文学など,多角的に検討した齊藤隆信『釈彦琮の研究』が上梓された。この書を参照しその内容を検討することも同時に行う。

 

塚本麿充(東京大学東洋文化研究所 教授)「中国美術の鑑識と歴史」 [集中講義]

宋代を中心に中国美術の鑑識論の発展を概説します。PPT画像を使って同時代の美術史の基礎的な知識を習得した後で、同時代の代表的な画史・画論をとりあげ、そのうちとくに鑑識(鑑定論)と制作、技法・材料論について考察していきます。近代の美術史において写真図版を比較する様式論のみならず、作品のもつコンテキストや物質性に注目し、図像と文献の両方から理解を深め、新しい角度から「美術」作品に触れることを目的とします。

 

◆演習◆

宇佐美文理(教授)「『困学紀聞注』精読」

王應麟『困学紀聞』ならびに翁元圻の注釈を精密に読むことによって、漢文読解力を高めるとともに、引用されている数々の文献にあたることによって、古典中国学に関する知識を深める。

 

池田恭哉(准教授)「阮元の文章を読む」

阮元(1764-1849)は言うまでもなく清朝考証学を代表する学者である。この授業では、彼の著作『ケン経室集』(ケン:研+手)の中から、経学を中心として思想に関わる内容の文章を選読する。文章のジャンルは序・論・跋・書など多岐にわたる。
多彩なテーマやジャンルの文章を読むことは、特定の分野に偏らない中国古典全般にわたる読解能力を高めるとともに、その考証の手法や表現の方法を学ぶことをも可能にするであろう。そして同時代の学者が、同じテーマに対して考察を展開していた場合、時に阮元を離れてでも、それについて検証していくので、清朝という時代の学的風潮も体感できる。
話題は経学を中心としつつ、中国の多様な時代、分野に及ぶことになる。また文章のジャンルも特定のものにこだわらない。そのため様々な専攻の学生の出席を期待する。

 

吉本道雅(協力講座 本研究科東洋史学専修 教授)「『春秋左伝正義』」

十三経注疏の一つである『春秋左伝正義』を輪読する。

 

古勝隆一(協力講座 人文科学研究所 准教授)「『論語義疏』講読」

この授業では、儒教文献『論語義疏』を講読する。その経文・何晏等集解・皇侃義疏、そして『経典釈文』(論語音義)を講読の対象とする。
テクストに正面から向かい合い、正確な理解を目指すのはもちろんだが、それをサポートする、書誌学的・校勘学的な知識もあわせて習得することを目標としている。
複数の写本の影印に基づき、子罕篇の詳細な校勘記を作成する。

 

福谷彬(協力講座 人間・環境学研究科 准教授)「朱子学の文献を精読する」

中国宋代の朱子学に関わる文献を精読することを通じて、史料を読解し、思想を深く理解するための能力を身に着ける。
朱子学は中国だけでなく、前近代の朝鮮や日本の社会にも大きな影響を与えた。しかし、朱子学を正しく理解するためには、中国の伝統的な経学の知識はもとより、哲学的思考も必要なため、独学は難しい。本授業では、基本的な参照文献・工具書を紹介しつつ、朱子学を深く理解するための素地を養って頂きたい。中国古典初心者の受講を歓迎するが、漢文を読む講義を受講した経験があることを前提としたい。

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