1月12日~15日に、上海の復旦大学文史研究院において、第四回東アジア人文研究博士学生ワークショップが開催され、京都大学文学研究科の中国語学中国文学専修、中国哲学史専修、地理学専修、社会学専修の大学院生、OD合わせて12名、ならびに宇佐美文理教授、緑川英樹准教授が参加しました。
このワークショップは、初回が2013年に京都大学において行われ、その後は14年上海、15年京都と交互に開催され、今年が第四回となります。そして今回は、新たに香港城市大学も加わって、三校によるワークショップとなりました。
発表者は、復旦大学15名、香港城市大学3名と京都大学12名の全部で30名の学生諸君で、「古代詩文小説」「現代語言と文学」「歴史上の思想世界」「図像研究―花鳥、人物、山水」「文字学と経学」「東アジアの宗教と文化交流」「都市研究」「古代の景観と現代の旅行」の8セクションが設けられ、12日、13日の二日間にわたり、9時から18時まで、発表と討論が行われました。使用言語は中国語あるいは英語とし、15分の発表に対して10分の質疑でしたが、しばしば10分ではおさまらぬ、学生諸君の白熱した議論がかわされました。
14日は「蘇州の塔」というテーマで、運河にかけられた宝帯橋の塔、上方山ならびに霊巌山にある塔をまわり、最後に蘇州市街地にある瑞光塔に登り、水の街として知られる蘇州とは違った、「歴史の街」としての蘇州の巡検でした。言うまでもなく蘇州は六朝時代から仏教が盛んな街であり、仏教遺跡はたくさんあるのですが、今回見学できたのは、通常の旅行では見ることがむずかしい場所にあり、このような巡検ならではの企画で、大変貴重な経験でした。なお、上方山と霊巌山は、それぞれ駐車場から往復一時間ほどの、ちょっとした小登山で、蘇州の美しい景色を楽しむこともできました。
15日には「上海の水」というテーマで上海市内の「水」にかかわる遺跡や博物館を回りました。これは、2015年に京都で行われたワークショップで、「京都と水」というテーマで疎水や琵琶湖を巡検した企画の「上海版」です。まず、ビル建設に伴って地中から偶然に発見された元の時代の水門の遺跡をそのまま保存してその場を博物館にした遺跡を見学しました。これは「中国の十大考古発見」のひとつで、上海の歴史を肌で感じるとともに、遺跡の保存の仕方についても示唆を受けました。そのほか、「蘇州河工業文明展示館」において、運河とそれにともなう工業の発展についての展示を見学し、水を利用した「工業都市」としての上海の性格という、これまで意識していなかった上海の新しい側面を知ることができました。
最後に、「現代の水と上海」を象徴する外灘を、歴史的西洋建築を見学しながら散策しました。今回のワークショップは、以上のような充実した発表討論と巡検旅行のうちに終了しました。
次回2017年は、香港城市大学で開催の予定です。
開幕式
論文発表
上海、元代水閘遺跡博物館
蘇州、上方山楞伽寺塔入口
蘇州、瑞光塔