〔授業の概要・目的〕
科学史とはどのような学問だろうか。学問としての科学史は、自然科学をめぐる様々な出来事をたどって年表を作ることでも、いわゆる「科学者」の様々なエピソードを集めることでもなく、「科学」だけの歴史だけでもない。その一つの野心は、現在「科学」と呼ばれるものがどのように、いかなるものとして立ち現れたかを歴史的に調べることによって、「科学」が何かを明らかにすることである。その学問的内容は多様であり、さまざまな関心の人がその中から自分にとって興味のある内容や、アプローチを見出すことができる。この授業では科学史という研究分野を形作ってきた数々の名著のうち、日本語でも読める14の魅力あふれる著作を選んでおおよそ年代順に紹介し、関連する研究について述べる。それを通して科学史の研究における様々なアプローチとその可能性について論じ、科学史という学問の面白さを伝える。授業は講義形式で行い、事前に文献を読むことは要求しない。
〔授業計画と内容〕
1. ガイダンス:科学史の通史なるものの虚構性について
2. 科学思想史という方法とその限界:コイレ『コスモスの崩壊』
3. 科学者集団の社会学:マートン『社会理論と社会構造』
4. パラダイムと科学革命:クーン『科学革命の構造』
5. 非西洋学問とニーダム問題:ニーダム『ニーダム・コレクション』
6. 権力と規律と知識:フーコー『監獄の誕生』
7. 実験装置と政治思想の科学史:シェイピン&シャッファー『リヴァイアサンと空気ポンプ』
8. ジェンダーと科学史:シービンガー『科学史から消された女性たち』
9. 物質文化の科学史:ギャリソン『アインシュタインの時計 ポワンカレの地図』
10. 視覚実践と認識論的徳:ダストン&ギャリソン『客観性』
11. 知識のグローバルヒストリー:ラジ『近代科学のリロケーション』
12. 非知の科学論:オレスケス&コンウェイ『世界を騙しつづける科学者たち』
13. サイボーグとアクターネットワーク理論:ミアレ『ホーキングInc』
14. まとめ:グローバルに絡み合った環境とマルチスピーシーズ民族誌:チン『マツタケ』
15. フィードバック
〔授業の概要・目的〕
日本の科学史を通して、科学について何を明らかにできるだろうか。この授業では日本の科学技術に関する歴史研究の重要著作のうち、特に刺激的で興味深いと思われる14の著作を選んでおおよそ年代順に紹介することを通して、日本の科学技術の歴史研究における様々なアプローチを説明し、それが「科学」とは何かを明らかにするのにどのような意義があるのかについて論じる。授業は講義形式で行い、事前に文献を読むことは要求しない。
〔授業計画と内容〕
1. イントロダクション:なぜ日本の科学技術史か?
2. 日本の科学思想史:辻哲夫『日本の科学思想』(1973)
3. 社会史(科学の体制化論):広重徹『科学の社会史』(1973)
4. 戦後日本における科学の社会史::中山茂『科学と社会の現代史』(1981)
5. 科学の文化史:金子務『アインシュタイン・ショック』(1981)
6. 大学史:潮木守一『京都帝国大学の挑戦』(1984)
7. 初期近代の分岐点:板倉聖宣ほか『日本における科学研究の萌芽と挫折』(1990)
8. 国際関係と科学技術:リチャード・サミュエルズ『富国強兵の遺産』(原著1996)
9. 政治と科学:吉岡斉『原子力の社会史』(1999, 2011)
10. 時間技術と近代:栗山茂久・橋本毅彦編『遅刻の誕生』(2001)
11. 科学とイデオロギー:泊次郎『プレートテクトニクスの拒絶と受容』(2008)
12. 科学社会学と災害研究:松本三和夫『構造災』(2012)
13. 科学とジェンダー:古川安『津田梅子』(2022)
14.まとめと番外編:伊藤憲二『励起:仁科芳雄と日本の現代物理学』ができるまで
15.フィードバック
〔授業の概要・目的〕
科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。 前期の講義においては、科学とはなにかという問題、科学的推論や科学的説明をめぐる問題を、科学全体に関わるテーマと個別の領域に関わるテーマに分けて論じる。
〔授業計画と内容〕
1 科学とは何か (4回)
2 科学的推論 (4回)
3 個別科学における科学的推論(2回)
4 科学的説明(2回)
5 個別科学における科学的説明(2回)
フィードバック(1回)
〔授業の概要・目的〕
科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。 後期の授業では科学的実在論や科学の変化、科学と価値などのテーマを順にとりあげ、関連する個別科学におけるテーマも検討する。
〔授業計画と内容〕
1 実在論と反実在論(3回)
2 個別科学における実在論問題(3回)
3 科学の変化と科学革命(3回)
4 個別科学における変化の問題(2回)
5 科学と価値(3回)
フィードバック(1回)
[授業の概要・目的]
量子物理学(量子力学および場の量子論)は、日常的な直観と鋭く対立する物理理論である。これは20世紀の自然科学においてもっとも大きな変革をもたらした科学理論の一つであり、その社会的影響も絶大で、思想的含意も大きい。この物理学はどのように生まれ、どのように受け入れられてきたのだろうか。19世紀から1930年ごろまでの量子物理学を中心とした自然科学の歴史とその背景をたどりつつ、そこで生じた思想的な問題や、科学史研究における議論を紹介する。
[授業計画と内容]
1. イントロダクション:量子物理学の興味深さ
2. 粒子と場をめぐる19世紀の展開
3.電気工学から電子論へ:電子の「発見」と相対論
4.工業化と新しい物理学:熱力学と熱輻射、とくに天野清について
5 量子論における離散性の導入の問題:プランク、アインシュタインとトーマス・クーンの問題提起
6. 化学結合論、エックス線、分光学と原子モデル
7. アメリカ科学の勃興とエネルギー保存:コンプトン効果とアインシュタインとボーアの最初の論争から対応原理へ
8. ワイマール文化と非因果性:フォーマン・テーゼについて
9. 観測可能性と直感性:マッハ主義、相対論と行列力学
10. 波動力学と確率解釈:ド=ブロイ、シュレーディンガー、ボルン
11. 状態、重ね合わせの原理と変換理論:ディラック、ボルン、ヨルダン
12. ハイゼンベルクとボーアの対立から不確定性関係まで
13. ボーアの思想:相補性とその応用
14. ソルベイ会議におけるアインシュタイン=ボーア論争、コペンハーゲン解釈と計算文化
15. フィードバック
[授業の概要・目的]
前期開講科目「量子の歴史と思想(1)」を引き継ぎ、この講義の前半では場の量子論と繰り込み理論までの発展を扱う。後半では量子もつれをめぐる議論や、量子力学の解釈をめぐる議論を歴史的にたどり、最後に20世紀初めから現在に至る量子論に係わる哲学的な議論のいくつかを紹介する。
[授業計画と内容]
1. はじめに:量子力学の歴史記述の問題について
2. 統計性:ボース粒子とフェルミ粒子
3. スピン概念にいたる歴史
4. 相対論的電子論の発展:ディラックと仁科芳雄
5. 交換力の歴史:ハイゼンベルク、ハイトラーとロンドン
6. 原子核理論:ハイゼンベルク、湯川秀樹、ミュー中間子の発見
7. 場の量子化とその思想
8. 繰り込み理論と朝永振一郎
9. 統計力学と物性理論の展開
10. 物理的実在と量子力学の完全性:アインシュタインらの議論とボーアの反論
11. 量子もつれ:ベルの不等式とその実験的検証
12. 量子力学と熱力学と時間:ベルクソン、渡邊慧、プリゴジン
13. 量子力学と京都学派:田辺元と西田幾多郎と相補性
14. 量子力学とフェミニズム:相補性からカレン・バラッドの哲学へ
15. フィードバック
〔授業の概要・目的〕
The aim of this special lecture is to introduce philosophy of social sciences. Philosophy of social sciences is a relatively minor field in philosophy of science, but it deals with many fascinating topics such as methodology of social sciences, ontology of society, rationality and relativism and so on. Using a recent textbook by Kei Yoshida, we look at some basic issues in this field.
〔授業計画と内容〕
The lectures will be given in English, and structured according to the textbook (Kei Yoshida, Philosophy of Social Sciences: An Introduction). The textbook is written in Japanese, so a summary of the textbook in English will be provided in the class.
1 What is the point of learning philosophy of social sciences? (1 week)
2 How do social sciences try to capture social phenomena? (2 weeks)
3 What are the method and aim of social sciences? (3 weeks)
4 For what social scientific theories exist? (2 weeks)
5 Are social sciences just one perspective among many? (2 weeks)
6 What is the relationship between cognition and value in social sciences? (2 weeks)
7 What is the relationship between social and natural sciences (2 weeks)
8 Wrap up (1 week)
〔授業の概要・目的〕
Science, technology and society (STS) is a flourishing interdisciplinary field that deals with various issues that arises between science and technology on the one hand and society on the other. However, space science and technology have been a relatively minor topic within STS, probably because the social relevance of space science and technology have been unclear. The situation seems to be changing rapidly, with various new developments such as private space exploration. This class tries to explore the possibility of STS study of Space science and technology, i.e. space science, technology and society (SSTS).
〔授業計画と内容〕
The lectures will be given in English, and structured according to the textbook (Kureha and Iseda eds., Let Us Discuss Space Activities Together). The textbook is written in Japanese, so a summary of the textbook in English will be provided in the class.
1 Why should we discuss space activities together?
2 Basic ideas of STS
3 History of space exploration: world
4 History of space exploration: Japan
5 Discussion topic 1: manned moon exploration and romanticism
6 Basic ideas of space ethics
7 Discussion topic 2: space resource development
8 Material significance of space exploration
9 Cultural significance of space exploration
10 Discussion topic 3: Dual use of space technology
11 Issues of science and technology communication
12 Science and technology communication of space exploration
13 Discussion topic 4: Space debris
14 Discussion skills for space exploration
15 wrap-up
〔授業の概要・目的〕
「冷戦(東西冷戦)とは,第2次世界大戦後,アメリカ合衆国とソヴィエト社会主義共和国連邦,およびその同盟国の間で展開された,大規模な核軍拡競争をともなう政治的・軍事的対立をいう.……社会思想や文化的価値観までを含む,社会生活の多様な側面を巻き込んだ点にそれまでの単なる大国間の勢力圏争いとの相違があった」(丸善『科学史事典』564ページ).米ソ両国では,夥しい量の研究資金,研究手段と研究者が核開発などに関連した諸分野に恒常的に注ぎ込まれた.アメリカにおける冷戦期科学,および,その前史とも言うべき第2次世界大戦期科学の経験については,これまでさまざまに論じられてきたが,ソ連のそれについて語られることは希であった.本講義では,その前史を含め,ソ連における科学発展を,おもにその社会的側面から辿ってゆく.その際,冷戦期における軍民両方の核開発を相対的な中心として論じたい.
〔授業計画と内容〕
1. ガイダンス: 1998年の問い―“冷戦型科学・技術体制”は克服できるか?―
2. ロシアの近代化と科学:サンクト=ペテルブルグ帝室科学アカデミー
3. “科学の参謀本部”:ヴラジーミル・ヴェルナツキーとソ連邦科学アカデミー
4. イデオロギーと科学:“優生学”,ナチズム,ルィセンコ“学説”
5. 原爆開発への道:原子核物理学の展開と各国における初期核開発
6. РДС(エル・デー・エス)…“ロシアは自力でやる!”:ソ連の初期核兵器開発
7. “冷戦気候(Cold War Climate)”:動員される科学者,イデオロギー的圧迫
8. 核戦略の“トライアド”: ソ連におけるミサイル開発と原子力潜水艦建造
9. 放射能の影:「ビキニ事件」と米ソ“サイエンス・ウォー”
10. ソ連版“平和のための原子”:オブニンスク原子力発電所(1954年)
11. 経済停滞とエネルギー危機:原子力発電所建設の疾走
12. 東側の原子力:原子力分野における“同盟”諸国との“協力”
13.“越境するソヴィエト・サイエンス”:日本への影響
14. 帰結:チェルノブィリ原子力発電所,1986年4月26日午前1時23分
《定期試験》
15.フィードバック
〔授業の概要・目的〕
本特殊講義では、情報学の古典的文献を取り上げながら、各年のテーマに沿って、現在のコンピューティングのスタイルがどのようにできあがってきたのか、それに関わった人々は、どのような技術的背景・知的状況の中で思考し、技術的なアイデアを生み、社会の中で実装につなげてきたのかを考えます。
本年度のテーマは「戦争とコンピュータ」です。
扱う資料はまずは文献ですが、近過去を対象にしているため、映像・音声資料、インタビュー記録、その他のデジタルデータなども史料となりますし、文献資料の中には技術論文、設計図なども含まれます。
〔授業計画と内容〕
1. オリエンテーション
2. 軍事研究をめぐる近年の議論の整理①
3. 軍事研究をめぐる近年の議論の整理②
4. 暗号解読とコンピュータ
5. Giant Brainの構築
6. 英米以外の1940年代から1960年代までのコンピュータ開発
7. 人間機械混成系という概念
8. 全米防空網SAGE
9. 航空宇宙開発とコンピュータ
10. Star Wars構想とCPSR①
11. Star Wars構想とCPSR②
12. コンピュータ・ネットワークの誕生
13. コンピュータ・ネットワークの発展
14. 人工知能と戦争
15. フィードバック
〔授業の概要・目的〕
「新しい○○が△△を変える」という言い回しが、世の中にはいろいろとある。たとえば、Twitterが政治を変える、ビッグデータが経済を変える、AIが仕事を変える、オンライン授業が教育を変える、マッチングアプリが恋愛を変える、メタバースがコミュニケーションなど、とくにデジタルメディアに関する事例は枚挙にいとまがない。それにともなって、新聞やテレビなどが伝える情報を批判的に読み解くという意味でのメディア・リテラシーだけでなく、インターネットを基盤とするデジタルメディアが遍在する社会を生き抜くための素養を身につけることが、小学校から大学にいたるまで、教育の現場で重視されるようになってきた。
もっとも、新しいメディアの「新しさ」を深く追究しようと思えば、結局のところ、古いメディアとの比較を避けて通ることはできない。新しいメディアをめぐるさまざまな現象に興味をもち、積極的に解釈や分析を積極的に試みることは重要だが、同時に、目の前で起こっていることを近視眼的にとらえるのではなく、過去の事例から学び、現在にいかす思考を身につけることが望ましい。
したがって、メディアについて理解するうえで、技術史の思考法はきわめて有用である。電話やラジオ、テレビが日常生活と不可分に結びついた20世紀を経て、インターネットやスマートフォンが普及した現在、メディアと人間、あるいは技術と社会の関係はどのように変わってきたのだろうか。この授業では、われわれの日常に根ざしたさまざまなメディア技術の成り立ちに目を向け、その将来までを展望する。
〔授業計画と内容〕
基本的に以下のスケジュールにもとづいて講義を進める。ただし、講義の進捗状況や受講者の理解度などを踏まえて、若干の変更もありうる。
第1回 イントロダクション:メディア技術史とは何か
第2回 技術としての書物:紙の本 VS 電子本への古くて新しい回答
第3回 写真はどこにあるのか:イメージを複製するテクノロジー
第4回 映画の歴史を巻き戻す:現代のスクリーンから映像の幼年時代へ(①光学装置の開発と視覚理論の発展)
第5回 映画の歴史を巻き戻す:現代のスクリーンから映像の幼年時代へ(②初期映画)
第6回 音楽にとっての音響技術:歌声の主はどこにいるのか
第7回 声を伝える/技術を楽しむ:電話・ラジオのメディア史(①電信と電話)
第8回 声を伝える/技術を楽しむ:電話・ラジオのメディア史(②ラジオ)
第9回 テレビジョンの初期衝動:「遠く(tele)を視ること(vision)」の技術史 (①電子式テレビジョン)
第10回 テレビジョンの初期衝動:「遠く(tele)を視ること(vision)」の技術史 (②機械式テレビジョン)
第11回 ローカルメディアの技術変容:ミニFMという実践を補助線に(①初期CATVの考古学)
第12回 ローカルメディアの技術変容:ミニFMという実践を補助線に(②ポストメディアとしてのミニFM)
第13回 文化としてのコンピュータ:その「柔軟性」はどこからきたのか
第14回 開かれたネットワーク:インターネットをつくったのは誰か
第15回 誰のための技術史?:アマチュアリズムの行方
[授業の概要・目的]
江戸時代の日本に伝来した西洋と中国の天文学・宇宙論知識をとりあげ、その理解や利用のあり方を考察することにより、天文学史・宇宙論史・日本文化史・東西交流史についての理解を深める。また、京大が所蔵する関連史料の実地調査に参加し、その整理や取り扱いの方法を学ぶ。
[授業計画と内容]
1.本授業の位置づけ
2・3.近世日本天文学とその史料
4・5.キリシタンと科学伝来
6・7.西学書の渡来と影響
8・9.江戸後期の天文暦学と蘭学
10~14.京大所蔵史料の調査・整理
15.フィードバック
[授業の概要・目的]
本講義では,因果に関する哲学的問題について論じる.特に,現在の科学哲学において標準説(の1つ)となっている介入主義的理論を中心に,因果概念の一般理論,因果関係の存在論的特性,因果言明の優劣比較,因果選別の理論について検討する.因果そのものに対する哲学的関心を持つ者だけでなく,科学・哲学における因果概念の利用や,法的・道徳的な責任と因果の関係に関心を持つ者の受講も歓迎する.
[授業計画と内容]
基本的に以下の計画にしたがって講義を進める.ただし,進捗に応じて多少変更する場合がある.
01. イントロダクション
I. 因果概念の理論
02. 規則性と確率連動
03. 可操性と行為者性
04. 反事実と可能世界
05. モデルと介入主義
II. 因果関係の特性
06. 水準と開放性
07. 仲介と階層性
08. 条件と派生性
III. 因果言明の優劣
09. 安定性
10. 均整性
11. 特定性
IV. 因果選別の理論
12. 必要性と十分性
13. 規範性と正常性
14. 適合性と偶然性
15. まとめ
[授業の概要・目的]
この講義の目的は人間行動進化学に関して,基礎的・発展的知識を提示することにある.特に人文学(考古学や人類学)のデータをどのようにして文化進化研究に活かしていくのかを考察する.
[授業計画と内容]
基本的に以下に従って講義を進める.ただし進捗や理解度に応じて順序などを変えることがある.
1. 進化論と自然選択
2. 利他性の進化:血縁選択と直接互恵性
3. 利他性の進化:間接互恵性と強い互恵性
4. 利他性の進化:偏狭な利他性
5. 道徳性の進化:自己家畜化とトマセロのモデル
6. 罰の進化
7. 教育の進化
8. 文化進化:理論的基礎
9. 文化進化:実験研究
10. 文化進化:フィールド研究
11. 人類学・考古学データを用いた文化進化研究:先史時代の争い(縄文)
12. 人類学・考古学データを用いた文化進化研究:先史時代の争い(弥生)
13. 人類学・考古学データを用いた文化進化研究:先史時代の争い(世界)
14. 人類学・考古学データを用いた文化進化研究:土器・人骨から見た弥生時代の文化進化
15. 人類学・考古学データを用いた文化進化研究:人骨・古墳サイズ・住居址から見た古墳時代の文化進化
〔授業の概要・目的〕
学術雑誌は現代の知識生産においてきわめて重要な役割を果たしていると同時に、多くの問題に直面している。その仕組みが歴史的にどのように形成され、現在の形になったのかということは今日における科学史のもっとも重要なテーマの一つである。この演習では学術雑誌に関する英語圏の重要な著作を取り上げ、このテーマの研究状況を概観することを目指す。毎回、論文一本ないし本の章一つ程度の英文を読み、担当者の発表の後に、討論を行う。
〔授業計画と内容〕
1. イントロダクションとガイダンス:本セミナーの狙いと担当箇所の分担
2. 古典的社会学的研究: Harriet Zuckerman and Robert Merton, “Patterns of Evaluation in Science: Institutionalization, Structure, and Functions of the Referee System,” Minerva 9 (1971): 66-100.
3. Annalen der Physik:ルイス・パイエンソン「相対論における物理的意味:マクス・プランクによる『物理学年報』の編集, 1906年から1918年」板垣良一ほか訳『若きアインシュタイン:相対論の出現』(共立出版, 1985), pp. 249-276.
4. 同僚評価のSTS的研究:Daryl E. Chubin and Edward J. Hackett, Peerless Science: Peer Review and U. S. Science Policy (State University of New York Press, 1990)から、Chapter 4.
5. Nature (1):Melinda Baldwin, Making “Nature”: The History of a Scientific Journal (The University of Chicago Press, 2015) , IntroductionとChaps 1-4から1章
6. Nature (2):Baldwin (2015), Chaps 5-8から1章と Conclusion.
7. Physical Review: Roberto Lalli, “‘Dirty work,’ but someone has to do it: Howard P. Robertson and the refereeing practices of Physical Review in the 1930s,” Notes and Records: The Royal Society Journal of the History of Science 70 (2016): 151-174.
8. 19世紀英仏の学術雑誌(1):Alex Csiszar, The Scientific Journal: Authorship and the Politics of Knowledge in the Nineteenth Century (The University of Chicago Press, 2018), IntroductionとChaps 1-3から1章.
9. 19世紀英仏の学術雑誌(2):Csiszar (2018), Chaps 4-6から1章とConclusion.
10. ロイヤル・ソサイエティ(1): Aileen Fyfe, Noah Moxham, Julie McDougall-Waters, and Camilla Mørk Røstvik, eds., A History of Scientific Journals: Publishing at the Royal Society, 1665-2015 (UCL Press, 2022), IntroductionとPart Iから1章
11. ロイヤル・ソサイエティ (2): Fyfe et al. (2022), Part II から1章
12. ロイヤル・ソサイエティ (3): Fyfe et al. (2022), Part IIIから1章
13. ロイヤル・ソサイエティ (4): Fyfe et al. (2022), Part IVから1章
14. ロイヤル・ソサイエティ (5): Fyfe et al. (2022), Part Vから1章とConclusion
15. フィードバック
〔授業の概要・目的〕
科学史の研究にはよく用いられる理論的な枠組みや、実際の研究を進めていく上で、役に立つノウハウや、様々な道具が存在する。この演習では、卒業論文、修士論文、博士論文などで、科学史およびその周辺分野の研究をこれからしようとする人を対象に、科学史分野で用いる理論的枠組みを考えるのに有益な論文を読みつつ、研究や研究者としての活動を実際に遂行するにあたって有用なリソースやノウハウを紹介し、実際の研究の一部を演習する。
〔授業計画と内容〕
この授業は各回の授業は理論パートと演習パートからなるが、授業の6回目と14回目は各自の提出物に基づいたワークショップ形式で行う。
理論パート:Biagioli ed., Science Studies Readerから論文をピックアップして演習
実践パート:研究上のリソースやノウハウを紹介し、時には実演する。
ワークショップ:研究に関する実際の作業に基づき、合評をする。
1. ガイダンス、概要説明、分担決定、科学史研究によく使うツール
2. 理論:研究者集団の科学史的分析: Kohler, “Moral Economy”
実践:テーマ設定と研究設計、研究計画書
レポート課題1発表
3. 理論:精度の社会構築: MacKenzie, “Nuclear Missile Testing
実践:先行研究と一次資料の文献調査法:科学史関係のデータベース、図書館、その他
4. 理論:社会構築主義を超えて: Pickering, “The Mangle of Practice”
実践:文献の入手と整理の実践(書籍、論文、その他、図書館と書店の利用法)
5. 理論:「パラダイム論」を超えて: Galison,“Trading Zone”
実践:リーディングとノートテイキィングの技法
課題1レポート提出期限
6. 研究計画書ワークショップ
7. 理論:標準の科学論: Schaffer, “Late Victorian Metrology”
実践:書評と査読
レポート課題2発表
8. 理論:実験の科学史: Shapin, “House of Experiment”
実践:アーカイブズ調査/資料撮影とその整理
9. 理論:実験室とANT: Latour, “Give Me a Laboratory”
実践:新聞データベースの利用
10. 理論:バウンダリー・オブジェクト: Star and Griesemer, “Institutional Ecology”
実践:学会発表とスライド
11. 理論: 非西洋科学: Hart, “On the Problem of Chinese Science”
実践:ライティングの技法とバックアップ
12. 理論:ジェンダーと科学表象: Martin, “Toward an Anthropology of Immunology”
実践:スタイルと論文投稿と改稿
13. 理論:フェミニスト科学論: Barad, “Agential Realism”
実践:科学史における研究倫理
レポート課題2提出期限
14. 書評/査読報告ワークショップ
15. フィードバック
〔授業の概要・目的〕
数や数式などの数学的対象は実在するだろうか、また実在するとしたらどのような形で存在するのだろうか。これは古くから認識されてきた問題でありながら、いまだに満足のいく解答が存在しない。この授業では、数学の哲学に関するハンドブックを利用して、自然主義、唯名論、構造主義など数学の存在論についての主要な立場について理解を深める。
〔授業計画と内容〕
以下のテキストの存在論に関するいくつかの章を輪読形式で読み、内容についてディスカッションを行う。
Shapiro Stewart ed. (2005) The Oxford Handbook of Philosophy of Mathematics and Logic. Oxford University Press.
基本的に一回の授業でテキスト10ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。
授業の進行は以下のとおり。
イントロダクション(1回)
学生による発表担当
Resnik “Quine and the web of belief” (3回)
Maddy “Three forms of naturalism” (2回)
Weir “Naturalism reconsidered” (2回)
Chihara “Nominalism” (3回)
Hellman “Structuralism” (3回)
まとめ(1回)
〔授業の概要・目的〕
実験哲学は、これまでの哲学において特にデータをとることなく主張されてきた事柄について、質問票などに基づく心理学や認知科学の手法を用いて実験的にアプローチしようという近年の潮流を指す。こうした方法論の有効性や適用範囲は哲学者たち自身の論争の対象となってきた。この授業では、実験哲学をめぐる原理的なテーマについての論争と具体例についてのレビューを読むことで実験哲学についてどういうことが問題となるのかをともに考察していく。
〔授業計画と内容〕
以下のアンソロジーからいくつかの論文を輪読形式で読み、内容についてディスカッションを行う。
Sytsma, J. and Buckwalter, W. eds. (2016) A Companion to Experimental Philosophy. Blackwell.
具体的には以下の論文を候補として考えている
Stich and Tobia “Experimental philosophy and the philosophical tradition”
Williamson “Philosophical criticisms of experimental philosophy”
Knobe “Experimental philosophy is cognitive science”
Chan, Deutsch and Nichols “Free will and experimental philosophy”
Sarkissan “Aspects of folk morality: objectivism and relativism”
Pinillos “Experiments on contextualism and interest relative invariantism”
Machery “Experimental philosophy of science”
基本的に一回の授業でテキスト7~8ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。
授業の進行は以下のとおり。
イントロダクション(1回)
学生による発表担当(13回)
まとめ(1回)
〔授業の概要・目的〕
科学史および科学哲学における,基礎的な知識の理解を向上させるとともに,近年の研究動向についての知識を得る.
それらを基盤として,卒業論文の作成に必要な基礎的な力を養う.
〔授業計画と内容〕
授業に出席する各学生に研究の進行状況を報告してもらい,研究テーマの設定,先行研究についての理解などについて個別に指導を行う.(第1回~第15回)
発表順や具体的な発表課題・内容等については,出席学生と担当教員とで相談をして決める.
〔授業の概要・目的〕
科学史および科学哲学における,基礎的な知識の理解を向上させるとともに,近年の研究動向についての知識を得る.
それらを基盤として,卒業論文の作成に必要な基礎的な力を養う.
〔授業計画と内容〕
授業に出席する各学生に研究の進行状況を報告してもらい,研究テーマの設定,先行研究についての理解などについて個別に指導を行う.(第1回~第15回)
発表順や具体的な発表課題・内容等については,出席学生と担当教員とで相談をして決める.
〔授業の概要・目的〕
伊勢田ほか編『科学技術をよく考える』および呉羽ほか編『宇宙開発をみんなで議論しよう』をテキストとして、科学技術と社会の接点で生じるさまざまな問題、特に宇宙開発をめぐる問題についてディスカッションを行い、多面的な思考法と、思考の整理術を学んでいく。理系の大学院のカリキュラムでは、科学と社会の関わりについて学ぶ機会はそれほど多く与えられない。他方、東日本大震災後の状況に特に顕著にあらわれているように、科学技術が大きな影響をおよぼす現在の社会において、研究者が自らの研究の社会的含意について考えること、アカデミズムの外の人々と語り合うことの必要性は非常に高まっている。練習問題を使いながら広い視野を持った大学院生を養成することが目的である。
〔授業計画と内容〕
授業はテーマにそったグループディスカッション、全体ディスカッション、講義、演習の組み合わせで行われる。
テキストは以下の14のテーマを取り上げているが、本授業ではそのうち6つをとりあげ、関連する知識やスキルとあわせて各2回程度を使って議論を行う。取り上げる題材は受講者の興味も踏まえて決定する。
『科学技術をよく考える』
・遺伝子組み換え作物 ・脳科学の実用化
・喫煙 ・乳がん検診
・血液型性格判断 ・地球温暖化
・地震予知 ・宇宙科学・技術への公的投資
・動物実験 ・原爆投下の是非を論じること自体の正当性
『宇宙開発をみんなで議論しよう』
・有人月探査とロマン ・宇宙の資源開発
・宇宙技術のデュアルユース ・宇宙ゴミ(スペースデブリ)
初回に前半のテーマ3つを決定する。5回目の授業で後半のテーマ3つを決定する。
授業の進行は以下のとおり
イントロダクション(1回)
テーマごとのディスカッション(12回)
まとめとフィードバック(2回)
※上段は前期を、下段は後期を表す
1限 | 2限 | 3限 | 4限 | 5限 | |
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月 | 伊藤 特講
量子の歴史と思想(1) 伊藤 特講 量子の歴史と思想(2) |
市川 特講 “ソヴィエト・サイエンス” |
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火 |
喜多 特講 コンピューティングの技術文化史 |
伊藤 演習
学術雑誌の科学史的研究 伊藤 演習 科学史研究法:理論と実践 |
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水 | 伊藤 講義
科学史入門1 伊藤 講義 方法としての日本科学史 |
伊勢田 講義
科学哲学入門(上) 伊勢田 講義 科学哲学入門(下) |
伊勢田・伊藤 演習
科哲史セミナーI 伊勢田・伊藤 演習 科哲史セミナーII |
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木 |
伊勢田 特講 科学技術と社会に関わる 飯田 特講 メディア技術史 |
清水 特講 因果の哲学 |
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金 | 伊勢田 特講
Introduction to Philosophy 伊勢田 特講 Space science, technology |
伊勢田 演習
数学の存在論 伊勢田 演習 実験哲学とは何か |
集中・その他
(前期集中)特講 平岡 東西宇宙観の出会いと交流、 中尾 人間行動進化学