2004年度授業概要

系共通

○内井惣七 科学哲学入門(講義) (金4)

科学研究の具体的事例に即して、科学的知識の成り立ちを考える.

前半は、二十世紀における科学哲学の代表的アプローチを紹介し,検討する.

1. 科学と哲学—二つの分野はどのように関係するか?
 2. 自然科学の方法—科学の方法は一枚岩か?
 3. 反証主義—演繹論理だけを使う反証主義は妥当か?
 4. 科学的説明—説明のエッセンスを一義的に取り出せるか?
 5. 理論、観察、測定—理論と観察の絡み合いを考える
 6. 仮説の形成と確証—いかにして仮説が生まれ、知識となるか?
 7. 科学理論の変遷—クーンのパラダイム論を検討する
 8. 科学の目的—科学の認識的側面と実用的側面
以上の各項目にわたり、それぞれ1週から3週を費やして検討していく。

テキスト、内井『科学哲学入門』世界思想社、を使用

○伊藤 科学史入門(講義)(月2)

科学とは何かという問題を,歴史的視点から考察する. 前半は,近代西欧科学が誕生した17世紀科学革命の核心だった力学の誕生について,古代からの運動論の展開を辿って検討する.

1:アリストテレスの運動論
 2:中世の運動論
 3:ルネサンスの運動論
 4:ガリレオの数学的運動論
 5:近代力学の誕生と科学革命

後半は,20世紀後半の科学技術について,コンピュータの誕生・発展を, その基本構造に触れつつ考察する.
 1:デジタル・コンピュータの誕生
 2:コンピュータの産業化
 3:ハードウェアとソフトウェア
 4:Personal Computer
 5:Internet

○内井惣七 論理学(基礎演習 I)(火3)

論理学は哲学的分析には不可欠である. 命題論理と述語論について, 基本的な訓練をしながら,モデル理論(真偽や意味を問題にする)と証明論(厳密な公理系のなかでの証明を問題にする)をマスターし,二つをつなぐ「完全性定理」までを目標とする.

テキスト:内井惣七『真理・説明・計算』(ミネルヴァ)

学部・大学院共通特殊講義

○内井惣七 時空の哲学(後期火2、金3)

ニュートン. ライプニッツから現代の時空の哲学まで, 物理学の基本を押さえつつ哲学的問題のありかを探る.
テキスト 内井惣七『アインシュタインの思考をたどる』ミネルヴァ書房

○伊藤和行 ガリレオの落下法則と力学の誕生(水3)

ガリレオ(Galileo Galilei, 1564-1642)による落下法則の数学的定式化と実験的確証は,近代力学および近代物理学,さらには近代の数理科学に対して 方法論的モデルを提供したものと知られる.ガリレオの運動論とその影響の検討を通して,近代初期における数理科学の発展を考察する.前半では,ガリレオの運動論を落下法則の数学的証明を中心に検討し,彼の運動論が抱えていた問題を検討する.後半では,彼の成果を受け継いで力学を発展させたホイヘンスやニュートン,さらにはオイラーらの18世紀の科学者の力学理論においてガリレオの落下法則が果たした役割を検討する.

○橋本敬造 中国の科学と技術―東アジア科学史を考える(火5)

この講義の主眼は, 主として前近代の中国における科学的な思考や創造性を考察することにかかわるものであり, それらを推進したり, 抑止したりした知的および社会的要因について考えることにもかかわっている. 言語や時間・空間などについての基本的概念に中国の科学文化の特徴を探り, 次いで中国における自然の法則観について見てから, 科学の社会的次元にかかわる問題を考察する. こうした試みを通じて, 中国においては, なぜ近代科学のレヴェルにまで「科学」が到達し得なかったのかという問題を考察したい.

1) 中国科学の特質
2) 中国の自然哲学と「科学」
3) 中国の天文学と暦法
4) 中国の数学
5) 中国医学の特徴
6) 漢字文化と中国科学
7) 時空の概念
8) 対象と相関:事物の数的類型化
9) 中国科学と定量化の問題
10) 社会の制度と科学技術
11) 中国における「自然の法則」
12) 自然へのアプローチ:その中国的展開
13) 中国技術の世界
14) 「科学革命」期の科学の受容
15) 近代化と科学技術: 導入知識を在来科学の型模に
Toby E. Huff, The Rise of Early Modern Science, Cambridge UP, 1993
講義の性格上, 数回にわたって「科学革命」についても論考する.

学部・大学院共通演習

○内井惣七 ボーア演習(前期火2、金3)

量子力学を築き, 量子力学の「コペンハーゲン解釈」を提唱したニルス・ボーアの代表的な哲学的論文を読む. The Philosophical Writings of Niels Bohr, Vol. 1, Atomic Theory and the Description of Nature, Ox Bow Press. ISBN 0-918024-50-1

○伊藤和行 Thomas Kuhnと科学革命論(月3)

Thomas Kuhn(1922-1996)の科学革命論は「パラダイム」や「不可共約性|といった概念によってよく知られている.演習では,彼のテキストを読みなが ら,彼の科学革命論について考察する.
前半では,『科学革命の構造』や『本質的緊張』といった,邦語訳もある 生前の著作を中心に検討する. 後半では,死後に出版されたThe Road Since Structureを検討する.

○伊藤和行 Norbert Wienerとサイバネティクスの誕生(水2)

Norbert Wiener(1894-1964)が1947年に提唱した「サイバネティクス」(Cybernetics)は,生物や機械における情報伝達と制御を統一的な視点から研究するアプローチであり,情報科学をはじめとする様々な学問分野に大き な影響を与えてきた. 授業では,Wienerの『サイバネティクス』・『人間機械論』などの著作の 検討を通じて,サイバネティクスの基本的な考えとその起源・発展をたどる.

○中才敏郎 デイヴィッド・ヒューム研究(水5)

デイヴィッド・ヒュームの『人間知性研究』を読み、ヒュームの知識論、因果論、宗教論、懐疑論について研究する。 David Hume, An Enquiry Concerning Human Understanding, ed. by Tom L. Beauchamp, Oxford University Press.

○中山康雄 時間と記憶(月4)

『時間と記憶:哲学と心理学における問題』(2001)の中から幾つかの論文を読んで検討したい。記憶という概念を解明し、記憶において時間がどのように現れ、どのような役割を果たしているかという問題を扱いたい。これは、心理学の哲学にとってのみならず、時間の哲学や心の哲学に関しても基本的な問題である。 Cristoph Hoerl and Teresa McCormack (eds.), Time and Memory: Issues in Philosophy and Psychology, Clarendon Press, 2001.

○内井・伊藤 科学哲学科学史セミナー(火4)

発表演習, 大学院生必修. 研究発表を行うのは当然として, 出席が足りない場合には単位を与えないことがあるので注意.
他人の発表に対する質問や議論にも積極的に参加されたい. また, 漫然とした発表ではなく, わかりやすい, 手際のよい発表を心がけること.