2005年度授業概要

系共通

○内井惣七 科学哲学入門(講義) (金4)

科学研究の具体的事例に即して、科学的知識の成り立ちを考える.

前半は、二十世紀における科学哲学の代表的アプローチを紹介し,検討する.

1. 科学と哲学—二つの分野はどのように関係するか?
 2. 自然科学の方法—科学の方法は一枚岩か?
 3. 反証主義—演繹論理だけを使う反証主義は妥当か?
 4. 科学的説明—説明のエッセンスを一義的に取り出せるか?
 5. 理論、観察、測定—理論と観察の絡み合いを考える
 6. 仮説の形成と確証—いかにして仮説が生まれ、知識となるか?
 7. 科学理論の変遷—クーンのパラダイム論を検討する
 8. 科学の目的—科学の認識的側面と実用的側面

テキスト、内井『科学哲学入門』世界思想社、を使用

○伊藤 科学史入門(講義)(月2)

前半は,近代西欧科学が誕生した17世紀科学革命の核心である力学の誕生について,古代から17世紀までの天文学と運動論の展開を辿って検討する.

1.古代の天文学―地球中心説
 2.近代の天文学―太陽中心説
 3.古代の運動論
 4.中世とルネサンスの運動論
 5.ガリレオの運動論
 6.ニュートンの力学

後半は,20世紀の科学時術について,原子爆弾開発計画(マンハッタン計画)と遺伝学の発展を取り上げ,科学の巨大化および科学と技術の融合を中心に考察する.
 1.原子爆弾開発計画(マンハッタン計画)
 2.遺伝学の発展

○内井惣七 論理学(基礎演習 I)(火3)

命題論理と述語論理について, 基本的な訓練をしながらモデル理論と証明論とをマスターし,二つをつなぐ完全性証明までを目標とする. その後, 関連した話題として有限オートマトン, チューリング・マシン, 決定不可能な問題なども論じる.

テキスト:内井惣七『真理・説明・計算』(ミネルヴァ)

○伊藤和行 英書講読(水2)

前期
 M. Mahoney, “Computer Science: The Search for a Mathematical Theory”, in Science in the Twentieth Century, Amsterdam, 1997.
後期(次のテキストから,いくつかの章を選ぶ)
 W. H. Newton-Smith, ed., A Companion to the Philosophy of Science, Oxford, 2000.

学部・大学院共通特殊講義

○伊藤和行 ルネサンスの文化と科学・技術(水3)

17世紀科学革命の背景となる, イタリア中心としたルネサンス文化と科学・技術の発展を論じる.
 主なるトピックは以下の通りである.
 1.人文主義と古代科学の復興
 2.空間の数学化
   遠近法理論(絵画と建築)の発展と射影幾何学の誕生
 3.機械技術の発展と近代力学の誕生

○中山康雄 心と社会と科学活動(月4)

拙著『共同性の現代哲学 ―心から社会へ』を中心に, 科学哲学的観点を付け加えて, 集団の認識の問題を科学者集団の活動も含めて論じたい.
論じる中心テーマは, 次のようにまとめられる:
 I 心と行為
 II 言語使用と行為
 III 共同の行為と心の共同性
 IV 社会組織成立の基盤と認識の歴史性
これに加えて、心の哲学の議論が、科学哲学や言語哲学の考察に依拠することなども示したい。

中山康雄 (2004) 『共同性の現代哲学 ― 心から社会へ』 勁草書房

○松王政浩 ライプニッツ相対説に関わる新たな解釈とその現代的意義(集中)

現代物理における相対論の哲学的評価を行う上で, ライプニッツの相対説の哲学的評価は不可欠である. ライプニッツの相対空間・相対時間説(関係説)は, しばしばニュートンの強い意味での空間・時間の絶対説(実体説)と対比される中で, あらゆる絶対的なものがそぎ落とされた純粋な相対説であると受け取られている(いわゆるLeibnizian Space-time). しかし, ライプニッツの力学(動力学Dynamics)の形成過程を丹念に跡付けてみるならば, このような見方が維持できないことがわかる.

本講の前半では, 果たしてライプニッツの相対説(関係説)が絶対説に対してどのように対置され,その「相対性」概念がどのような特徴をもつかを考察する. この考察にあたり, ライプニッツのSpecimen Dynamicumほか力学関係の著述の抜粋(英訳), 力学形成に影響を与えたホイヘンス, ベルヌーイ, クラークとの往復書簡抜粋(英訳), およびライプニッツの相対説についての現代的解釈事例として Gueroult, Garberらライプニッツ学者による解釈, ならびにEarman, Friedmanらより広い物理学の哲学からの解釈を適宜参照する.

本講後半では, こうして得られる新たな解釈のもとで, ライプニッツ相対説が, 現代の物理学の哲学においてどのような意義をもち示唆を与えうるかを考察する. マッハ以降の相対説, 絶対説に関する種々の哲学的議論を可能な限り参照しつつこれを行う.

学部・大学院共通演習

○内井惣七 ライプニッツ-クラーク往復書簡(前期火2、金3)

時空論の古典を読み, ライプニッツによる時空の関係説について理解を深める. あわせて, 物理学や力学の基本も習得しよう.
Ariew, ed., G. W. Leibniz and Samuel Clarke: Correspondence, Hackett, 2000. ISBN 087220524X

○内井惣七 ウィリアムズの『適応と自然淘汰』 (後期火2、金3)

適応とは何だろうか、自然淘汰の原理はどのようにはたらくのだろうか?現代進化生物学の古典とも言うべきウィリアムズの名著(初版 1966)を読む。あわせて、進化生物学の基本も習得しよう。 G. C. Williams, Adaptation and Natural Selection, Princeton University Press, Princeton Univ. Press, 1996. ISBN0-691-02615-7.

○伊藤和行 20世紀における遺伝学の発展(月3)

20世紀後半以降,ヒトゲノム計画に代表されるように,遺伝学は大きな発展を遂げた.演習では,メンデルの法則の発見による遺伝学の誕生から,DNAの構造解析,遺伝子工学,そしてヒトゲノム計画までの遺伝学の発展を検討する.

前期は,渡辺政隆『DNAの謎に挑む―遺伝子探究の一世紀』(朝日選書)をテキストに20世紀における遺伝学の発展を辿る.後期は、遺伝学関連の英語論文を取り上げる.

○内井・伊藤 科学哲学科学史セミナー(火4)

発表演習, 大学院生必修. 修論あるいはその他の論文作成や学会発表に向けてプランや途中経過などの報告をしてもらう. 欠席が多い学生には, 発表しただけでは単位を与えないことがあるので注意. また, わかりやすくおもしろいプリゼンテーションを要領よくできるように, いろいろなテクニックも習得していこう.