二十世紀における科学哲学の発展を確認した後、科学哲学と言語哲学、心の哲学、社会哲学との関係について考察する。
科学とは何かという問題を、歴史的視点から考察する。
哲学的分析には論理学が不可欠である。本演習では、命題論理と述語論理について、基本的な訓練を行うことで、モデル理論と証明論をマスター、その二つをつなぐ「完全性定理」を証明することを目標とする。
本演習では、命題論理と述語論理について、基本的な訓練を行うことで、モデル理論と証明論をマスターし、その二つをつなぐ「完全性定理」を証明することを目標とする。主に前期に命題論理を扱い、後期に述語論理を扱う予定である。その後、関連した話題として有限オートマトン、チューリング・マシン、決
定不可能な問題なども論じる。余裕があれば非古典論理(様相論理など)の基礎的な話題も適宜補足する。
古典力学は近代西欧科学において最初に成立した学問分野であり、他の分野の発展に際してそのモデルとなったとともに、我々にとっても自然科学のモデルである。それゆえ古典力学の誕生、科学史の中でももっとも歴史の古いテーマの一つであるが、近年になっても新しい研究が発表されている。授業ではガリレオの落下法則に焦点を当て、このテーマを検討する。
前半では、ガリレオの数学的運動論の起源や彼の証明方法の問題など、落下法則自体を歴史的文脈の中で検討する。後半では、落下法則が以後の力学の誕生と発展において、そのような役割を果たしたのかを17世紀から18世紀にかけてたどる。
ベイズ主義は科学哲学における検証理論の代表的な理論であるが、科学哲学においてベイズ主義の評判は必ずしもよいとはいえない。本講義では、ベイズ主義とは何かという基本から始めて、ベイズ主義を利用したさまざまな議論を概観し、ベイズ主義に対する評価を試みる。取り上げる予定の話題はおおむね以下のとおりである。
・確率の哲学的解釈
・確率論とベイズ主義
・古典的統計学とベイズ統計学
・検証理論におけるさまざまな立場とベイズ主義
・科学哲学上の論争とベイズ主義
・ベイズ主義に対するさまざまな批判
テキスト・参考文献
Howson, C. and Urbach, P. (2006) Scientific Reasoning (3rdedition)
を主なテキストとし、その他は授業内で紹介する。
近世の日本において研究された数学を「和算」と称しているが、本講義ではその全体像を概観すると共に、最近の和算史研究の動向をより広い科学史的な文脈の中にとらえ直して紹介・検討していきたい。
和算の公式や理論といった内容の細部の解説に立ち入るのではなく、様々な分野の歴史研究の視点を考慮した、マクロ的な話題を提供していく。また、できる限り当時の原史料(和算書)に基づいた事例紹介も試みたい。
具体的には次のテーマを取り上げる。
(1)近世初期の和算から関孝和の登場まで[概説]
(2)近世後半の和算の様相[概説]
(3)近世社会と和算家の関わり[事例研究]
(4)近世日本科学史の方法論とその批判[事例研究]
受講に当たっては、和算史に関する予備知識は求めない。むしろ、受講者の専門とする研究分野との比較や、積極的に問題提起をしてもらうような態度で臨んでいただくと、ありがたい。
テキスト・参考文献 参考文献として次のものを挙げるが、参加者の関心に応じて適宜参照して欲しい。
(1)銭宝編(川原秀城訳)『中国数学史』、みすず書房、1990
※中国の数学史について適確な全体像が得られる
(2)佐藤賢一『近世日本数学史 関孝和の実像を求めて』、東京大学出版会、2005
※関孝和以前までの和算史についてまとめている。
(3)遠藤利貞『増修日本数学史』、恒星社厚生閣、第二版1981
※和算史研究の古典として, 史料批判的に読んでいただきたい。
大冊なので、通読はしなくともよい。
(4)日本学士院編『明治前日本数学史』全5巻、岩波書店、補訂版1983
※今のところこれを凌ぐ総合的な和算史研究書は無いといってよい。
和算史研究をめざす者にとっては必読書であるが、やはり批判的視点での参照が不可欠。
(5)三上義夫『文化史上より見たる日本の数学』、岩波文庫、1999
※大正時代にまとめられた文化史的視点からの和算史概説である。
(6)藤原松三郎『日本数学史要』、勉誠出版、復刻版2007
※数学の内容に踏み込みつつも平易にまとめた概説書。
藤原は文献(4)の実質的な著者である。
機械学習はコンピュータに学習させることをいう。オンラインショップ等で、自分の購買傾向にあった商品を薦められることがあるが、これには機械学習が使われている。この機械学習の概念を基礎とする新しい論理学 LCM (Limit Computable Mathematics)について講じる。講義は実質的には通年だが、前期のIと後期のIIの二つに分かれる。
前期のIでは記号論理学の入門的話も行う。ただし、ゲーデルの完全性定理とその証明、チューリング・マシンと決定不可能性定理程度は、すでに学習しているものと仮定する(これは現代文化系共通科目の「論理学」程度の内容である)。後期のIIでは、かなり高度の数学的理論の話もする。こちらは上級者向けである。
2007年度の特殊講義では哲学者船山信一の研究を元に明治期の我国における論理学受容の歴史を追った。本特殊講義では、これを大正・昭和、特に西田、田辺、務台の「場所の論理(学)」「種の論理」等の論理学、あるいは論理に結びつけることを試みる。
2007年度特殊講義「明治論理学受容史」では、船山の先行研究を元に、文明開化・富国強兵を目指す「新生日本」がJ.S.ミル等のプラクティカルな論理学の強い影響下にあったことを見たが、この特殊講義では、明治後半に入り、ドイツ観念論の影響を受けて認識論的論理学が中心的役割を果たすようになり、さらに西欧の論理学受容期を脱し、日本独自の論理(学)を打ちたてようとする動きを京都学派の中にみる。
日本独自、東洋独自の論理学への指向は、すでに明治前期に、西周の「行門の論理学」や、複数の論者の因明論理学の称揚や研究に見ることができる。これらとの関連も論じたい。
デジタルコンピュータの歴史は、まだ半世紀を過ぎたばかりであるが、技術的な進展の速さと社会的な適用の拡がりにより、技術史分野の中でも、特に社会的側面を多分に含んだ研究対象領域を形成している。この領域は英語圏では、History of Computingと呼ばれており、様々な研究成果のほか、一般向け著作群も出されている。この特殊講義では、この領域の文献を実際に読み進めながら、研究および記述方法のあり方について、 批判的に検討する。
主な内容
●コンピューティング史の流れ概説
●テーマ別テキスト比較検討
(テーマ例:初期インターネットの歴史、情報検索の歴史、パソコン史 等)
●Annals of the History of Computing誌に現れた方法論議論の流れ
●受講者の興味関心領域に合わせて選定したテキストの記述方法論の批判的検討
受講生は事前に提示されたテキストを読んで講義に臨むこと。
(初回はオリエンテーションなのでその限りではない。)
ジェイムズの多元的宇宙論は彼の晩年に考案されたユニークな形而上学、世界観である。彼はこの思想を構築するために、フランスのジャネの多重人格論やドイツのフェヒナーの神秘主義的宇宙論など、多くの理論を総合的に利用している。演習ではこの理論に関するいくつかの最新の解釈を読解して、新しい解釈の方向を見定めることを目指す。
テキスト・参考文献 参考文献:ジェイムズ『純粋経験の哲学』、岩波文庫
講義内容 自然化と自然主義・古典的世界観(1)・古典的世界観(2)・20世紀の擬人化・統計力学 相対論 量子論・擬人化された進化論
この講義では科学哲学の主題の中から上のような項目について講義したい。自然化(Naturalization)がどのようなものかを解説した上で、古典力学に基づく古典的世界観がどのような世界観かを二回にわたって扱う。この世界観が現在でも私たちの日常生活で常識として通用しているものである。日常世界では何ら支障がなくても、これが余りに理想化された、自然化の行き過ぎであることを示し、19世紀末以降の物理学の展開がこの古典的な自然化の行き過ぎを是正する役割を果たしてきたことを、統計力学、相対論、量子論について具体的に示してみたい。確率・統計、情報、観測等が入り込むことによって非古典的な制約がもたらされ、それらを考慮した是正を擬人化と呼ぶことによって、過度の自然化の是正が擬人化によってなされてきたことが明らかになる。
以上の一般的な主張を具体的な例で示すために進化論を取り上げたい。自然選択と遺伝的浮動はともに進化を引き起こす要因と言われているが、サンプリングという人だけが行う行為を理論の中心に置くと、選択と浮動はサンプリングエラーとして特徴付けることができる。人為選択と同じようにサンプリングは人の行う行為でありながら、進化論の要因をまとめて説明できる概念として扱えることを詳しく論じてみたい。
講義ノートは事前に用意するつもりなので、内容を読んでから講義に出席してほしい。自然科学の理論は知っているほうがよいが、知らなくても講義に必要な事柄は説明するつもりである。院生諸君には講義中に積極的に議論に参加してほしい。
テキスト:『科学の哲学』慶應義塾大学出版会 2004年
1920年代に誕生した量子力学は、1930年代に入り、中性子や陽電子の発見を契機として、原子核物理として発展していく。とくに湯川秀樹による中間子理論の提唱は、素粒子物理学の誕生を告げるものだった。授
業では、量子力学の発展を概観し、湯川秀樹の中間子理論の誕生と展開、その時代的背景について検討する。
参考文献
・『素粒子の世界―湯川秀樹・朝永振一郎の人と時代』(京都大学出版会,2006)
・『物理学の20世紀』(朝日選書,1999)
・ブラウン・ホジソン篇『素粒子物理学の誕生』(講談社,1988)
近年の科学哲学においては科学者共同体が持つ社会的な側面を哲学者の目で分析する、いわゆる社会認識論の取り組みが盛んとなっている。この演習では、ミリアム・ソロモンの『社会経験主義』やヘレン・ロンジーノの『知識の運命』などの読解を手がかりに、こうした動向について批判的に考えていきたい。
授業は毎回担当者を決めて読み進めていく輪読会形式ですすめていく。
テキスト・参考文献
Miriam Solomon (2003) Social Empiricism (MIT Press),
Helen Longino (2002) The Fate of Knowledge (Princeton University
Press).
その他授業内で指示.
現代の数理哲学・科学哲学・認識論に関連する文献を読む。扱う予定のトピックは、統計学の哲学・科学的実在論・シミュレーションの哲学・カオス研究の哲学的含意・非古典論理を用いた東洋思想の解釈などである。文献は基本的には英語。また随時、講義形式をも取り入れる。
発表演習、四回生必修。卒論作成に向けて、プランや途中経過などの研究発表をしてもらいます。欠席が多い学生には、発表しただけでは単位を与えないことがあるので留意してください。
1限 | 2限 | 3限 | 4限 | 5限 | |
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月 | 林 特講 学習概念に基づく 論理学I, II |
伊勢田 演習 科学者共同体の 認識論 |
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火 |
伊藤 講義
科学史入門 林 特講(後)
京都学派 |
佐野 基礎演習I 論理学 |
出口 演習 数理哲学 |
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水 | 伊藤 特講 落下法則と 古典力学の誕生 |
伊藤 演習 湯川秀樹と 中間子理論 |
伊勢田 特講 ベイズ主義の 科学哲学 |
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木 | 喜多 特講(後) コンピューティング史 方法論序説 |
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金 | 伊藤邦武 特講 ジェイムズの 多元的宇宙論 |
伊藤・伊勢田 科哲史セミナー |
中山 講義 科学哲学入門 |