科学とは何かという問題を歴史的視点から考察する。
科学哲学の全体像を概観し、そこで使われる基本的な考え方を学ぶ。
我々は「論理的」という言葉をよく使う。哲学においても、もちろん「論理的」であることが要求される。では、「論理」とはなんだろうか。
本演習では、数学における証明を題材に、我々が証明で行う「論理的」操作をシミュレートすることが可能な記号処理体系を紹介する。また、その性質を検討することで、単なる記号の処理を行なう体系が「論理」と呼ばれるにはどんな性質を満たす必要があるかを、証明論の視点から考察する。
コンピュータが誕生したのは1940年代後半のことであるが,この時期には,情報概念を鍵として生物と非生物を統一的な視点から論じる情報科学を唱えた研究者たちが現われているた.コンピュータの理論的考察を最初に行なったチューリングとフォン・ノイマンの他,サイバネティクスを主張したウィーナー,情報量の数学的定義を与えたシャノンらである.
授業では,コンピュータ誕生期における彼らの情報科学に関する考えを検討する.
20世紀後半のコンピュータの発展は自然科学にも大きな影響を与えてきた.コンピュータの父とも称されるフォン・ノイマンは,最初の科学研究用コンピュータともいうべきIASコンピュータを計画したが,それによって行なわれた最初の研究には気象計算があった.
授業では,フォン・ノイマンのIASコンピュータ計画と科学研究への適用の過程を辿るとともに,気象学者として,コンピュータによる気象計算プロジェクトを先導したチャーニイ(Jule Gregory Charney)の論文を読む.
科学理論が措定する対象が実際に存在する、という科学的実在論の立場は、常識的な感覚では非常に説得力のある立場であるにもかかわらず、科学哲学の領域ではさまざまな批判にさらされ、対案が提案されてきた。本講義では20世紀初頭から現在に至るそうした現代の科学的実在論論争の主な立場や議論をPsillosのまとめを手がかりにしながら検討していく。
1 操作主義
2 道具主義
3 科学的実在論と無奇跡論法
4 悲観的帰納法
5 構成的経験主義
6 対象実在論
7 自然な存在論的立場
8 構造実在論
9 近年の展開
歴史科学(ここではいわゆる歴史学のみでなく、考古学、進化生物学、地質学など、過去のできごとを明らかにすることを目的とする科学全般を指す)は科学としてどのような特性を持つであろうか。本講義では科学哲学の観点からこの問題にアプローチする。具体的には、Tuckerの『過去についての我々の知識』などのテキストを参照しつつ、歴史的知識の客観性、歴史科学の方法論、歴史的対象の実在性、科学的説明の一種としての歴史的説明の特性、などについて論じる。
「技術者」という職業が、専門職業として成立し制度化されていったプロセスについて、とりわけ18世紀以降の欧米諸国における展開に焦点をあてて検討する。その際、技術者と社会との関係の変容にも着目し、20世紀以降、技術者集団において職業倫理が誕生・制度化されていった過程についてもあわせて検討する。
近年、「進化発生生物学(evolutionary developmental biology)」と呼ばれる分野が急速に発展してきている。これは、以下のような意味で、科学哲学にとって非常に興味深い問題を投げかけている。
(1)進化発生生物学は、われわれの目の前で起きている、分野統合の見本である。進化学と発生学とはこれまであまり交流がなかった。この「統合」に向けての動きの中で、生物学者自身による基礎概念や方法論の吟味が行われている。
(2)進化発生生物学は、遺伝情報とは何か、進化をどう定義すべきかについての考え直しを促しているように思われる。
(3)進化発生生物学は、還元主義的方法論への見直しを促しているように思われる。
(4)進化発生生物学は、生物学の哲学のやり方の見直しをも促しているようにすら思われる。
以上の観点から、進化発生生物学と呼ばれる研究プログラムの概要と起源を説明し、そこから抽出できる科学哲学的問題について論じる予定。
1940~50年代の米国から日本へのトランジスタの技術移転について、当時の史料を使いながら論じる。トランジスタの日米間の技術移転は、1954年以降日本の技術者が米国に派遣されるようになると、活発になった。この先陣を切ったのが東京通信工業(現、ソニー)である。同社は、技術担当役員を米国に派遣して、トランジスタの製造技術や市場に関する情報の収集に当たらせた。この技術情報の収集結果は、手紙や報告書の形で逐次日本に書き送られた。この手紙や報告書は、技術担当役員の名前を取って、「岩間レポート」と呼ばれる。その後、東京通信工業は、トランジスタとトランジスタラジオを生産し、商業的成功を収める。ジャーナリストの手になる半導体技術史やソニーの社史では同史料が、東京通信工業のトランジスタ製造・トランジスタ生産に重要な役割を果たしたと伝えるものの、現在まで歴史研究者による分析は行われてこなかった。今回、同社の好意によって、史料複写を閲覧・分析する機会を得たので、その成果を中心として、トランジスタの日米技術移転について論じたい。
1) オリエンテーション
2) 半導体とトランジスタの基礎知識
3) トランジスタの誕生
4) 日本へのトランジスタ技術導入の歴史概観
5) 『電子立国 日本の自叙伝』に見るトランジスタの技術移転(視聴覚教材)
6) 半導体産業における知識の普及と拡散-人的ネットワークと弱い知的財産権
7) 東京通信工業と岩間和夫(岩間和夫の伝記ビデオも利用予定)
8) 岩間レポートの分析と電子化の問題
9) 岩間レポートに見るトランジスタの技術移転
10) まとめ
17世紀科学革命に関する基本的文献を輪読し,近代科学の起源に関する基礎的な知識を得る.テキストとしては,ヘンリー『17世紀科学革命』(岩波書店)を用い,毎回各章を読んでいく.
後半では,とくに天文観測を中心としたガリレオに関わる英語の研究文献を読む.
本年は,ガリレオが望遠鏡による天文観測を行なってから,400年にあたる.
ガリレオの観測は,月面の凹凸,金星の満ち欠け,木星の衛星,太陽の黒点などの発見を通じて,当時の伝統的な宇宙像に対する変革を余儀なくし,宇宙観の革命を引き起こしたといわれる.
演習では,ガリレオの『星界の報告者』を主として英語訳を用いて読む.
エリオット・ソーバーの近著『証拠と進化』を題材に、統計的な証拠に関する科学哲学的な考察、自然選択説や共通先祖説にどういう証拠があり、科学哲学的にはどのように評価されるか、また、近年のアメリカで社会問題となっている知的設計説との比較などの話題について考えていく。
現代における英米認識論は、さまざまな立場が提案され、活況を呈している。そこで扱われる話題はけっして科学哲学と無関係ではないにもかかわらず、科学哲学と認識論の分野間の交流はそれほど盛んであるとはいえない。本演習では認識論の基礎文献を読んでいく中で、認識論の問題意識や考え方を学ぶとともに、認識論の成果が科学哲学の話題にどのように結びつけていけるかということについて一緒に考えていきたい。
話題としては、内在主義vs.外在主義、基礎づけ主義、自然化された認識論、認識論的文脈主義、徳認識論、社会認識論、フェミニズム認識論などを取り上げる予定である。
発表演習,四回生・大学院生必修.卒論・修論あるいはその他の論文作成や学会発表に向けて,プランや途中経過などの発表をしてもらいます.
欠席が多い学生には、発表しただけでは単位を与えないことがあるので注意のこと.
またわかりやすくおもしろいプリゼンテーションを要領よくできるように,いろいろなテクニックも習得していこう.
1限 | 2限 | 3限 | 4限 | 5限 | |
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月 | 伊勢田 特講 科学的実在論 中村 特講 技術者の社会史 |
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火 | 伊藤 講義 科学史入門 |
伊藤 演習 17世紀科学革命 伊藤 演習 ガリレオの天文観測 |
矢田部 基礎演習1 論理学演習 |
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水 | ※前期は 授業なし 伊勢田 特講
歴史科学の哲学 |
伊勢田 演習 進化論とその証拠 伊勢田 演習 現代認識論 |
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木 | |||||
金 | 伊藤 特講 情報科学の誕生 伊藤 特講 気象学の変貌 |
伊藤・伊勢田 科哲史セミナー |
伊勢田 講義 科学哲学入門 |