2014年度授業概要

系共通

○伊藤和行「科学史入門1」(講義)(前期 火2)

〔授業の概要・目的〕

科学とは時間や空間を超えた普遍的なものと考えられているが、人間の営みである以上、それが誕生し発展してきた過程は歴史的な文脈によって規定されている。本講義では科学とは何かという問題を歴史的視点から考察する。

前期は古代から17世紀学革命までを検討する。

〔授業計画と内容〕

前期は、近代西欧科学が誕生した17世紀科学革命の核心である力学の誕生について古代から17世紀までの天文学と運動論の展開を辿って検討する。

  1. 古代の天文学と運動論
    地球中心説とアリストテレス自然学
  2. 近代の天文学と運動論
    太陽中心説とガリレオの運動論
  3. 「科学革命」 ニュートンの力学的総合
○伊藤和行「科学史入門2」(講義)(後期 火2)

〔授業の概要・目的〕
科学とは時間や空間を超えた普遍的なものと考えられているが、人間の営みである以上、それが誕生し発展してきた過程は歴史的な文脈によって規定されている。本講義では科学とは何かという問題を歴史的視点から考察する。

後期は19世紀後半から20世紀前半までを中心として検討する。

〔授業計画と内容〕
後期は、19世紀末から20世紀の科学について生物学と物理学の革命を中心に論じる。

  1. 遺伝学 集団遺伝学、分子遺伝学など
  2. 進化論 ダーウィン、進化論の総合など
○伊勢田哲治「科学哲学入門(上)」(講義)(前期 金3)

〔授業の概要・目的〕

科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。 前期の講義においては、科学とはなにかという問題、科学的推論や科学的説明をめぐる問題を、科学全体に関わるテーマと個別の領域に関わるテーマに分けて論じる。

〔授業計画と内容〕

  1. 科学とは何か
  2. 科学的推論
  3. 個別科学における科学的推論
  4. 科学的説明
  5. 個別科学における科学的説明

〔履修要件〕

特になし

〔成績評価の方法・基準〕

2回のレポートで評価を行う。1回でもレポートをさぼると不可となるので注意されたい。

〔教科書〕

サミール・オカーシャ 『科学哲学』 (岩波書店)

〔参考書等〕

授業中に紹介する。

〔その他(授業外学習の指示・オフィスアワー等)〕

オフィスアワーは水曜日15:00-16:30を予定

○伊勢田哲治「科学哲学入門(下)」(講義)(後期 金3)

〔授業の概要・目的〕

科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。 後期の授業では科学的実在論や科学の変化、科学と価値などのテーマを順にとりあげ、関連する個別科学におけるテーマも検討する。

〔授業計画と内容〕

  1. 実在論と反実在論
  2. 個別科学における実在論問題
  3. 科学の変化と科学革命
  4. 個別科学における変化の問題
  5. 科学と価値

〔履修要件〕

特になし

〔成績評価の方法・基準〕

2回のレポートで評価を行う。1回でもレポートをさぼると不可となるので注意されたい。

〔教科書〕

サミール・オカーシャ 『科学哲学』 (岩波書店)

〔参考書等〕

授業中に紹介する。

〔その他(授業外学習の指示・オフィスアワー等)〕

オフィスアワーは水曜日15:00-16:30を予定

○矢田部俊介「基礎演習Ia(論理学演習1)」(前期 火5)

〔授業の概要・目的〕

本授業の最終的な目標は、受講者が論理的で明晰な思考に慣れ、何かを主張する際にはその主張がどのよ うな根拠に基づいているかを明確化し、抜けも漏れもない論証ができるようになることである。そのための練習の題材としては、哲学的論理学、そのなかでも 「論理とは何か」という問題をとりあげる。我々は日常、推論を行い、そして「論理的」という言葉をよく使う。もちろん「論理的」であることが要求される。 しかし、「論理」とはいったい何だろうか。日頃、無反省に、知っているつもりで使っている概念の意味を問い直すのは、哲学の重要な仕事の一つである。

本演習では、数学における定理の証明がシミュレートできる、「論理」と呼ばれうるような、記号を処理する体系(「形式的体系」)を紹介する。 具体的には、最小述語論理の自然演繹の体系の解説と問題演習を行う。

〔授業計画と内容〕

最小述語論理は、論理結合子の導入規則と除去規則のみを持つ、基本的な論理体系の一つである。前期の前半は、まず最小述語論理の自然演繹の体系を紹介する。問題演習を通じ、各自が自然演繹の証明が出来るようになることが目標である。

また、後半には、最小論理上で算術の体系「最小算術Q」を例に、数学における多くの証明が最小論理で遂行可能であることを示す。同時に、原始再帰法など計算の基本概念を紹介する。

〔教科書〕

毎回ハンドアウトを配布する。

〔参考書等〕

  • 小野寛晰『情報科学における論理』(日本評論社)ISBN:4535608148
  • Dag Prawitz 『Natural Deduction: A Proof-Theoretical Study』(Dover Publications)ISBN:0486446557

〔成績評価法〕

ほぼ毎回出題する宿題の累計成績に準じて行う。

〔コメント〕

形式的な体系を理解するためには、まず手を動かして練習問題の証明をやってみよう。記号の意味は何か、と考えるのはそれから。

○矢田部俊介「基礎演習Ib(論理学演習2)」(後期 火5)

〔授業の概要・目的〕

我々は日常、推論を行い、そして「論理的」という言葉をよく使う。もちろん「論理的」であることが要求される。 しかし、「論理」とはいったい何だろうか。日頃、無反省に、知っているつもりで使っている概念の意味を問い直すのは、哲学の重要な仕事の一つである。ま た、「論理」とはいったい何かという問題は、現代の大きな問題である。というのも、古典論理の体系以外にも、20世紀以降、多くの異なる論理体系が提案さ れているからである。それらの非古典的な体系が論理と呼ばれるなら、ある体系が「論理」と呼ばれるためには、どんな性質を満たしていることが必要だろう か。
本演習では、最小述語論理の自然演繹の体系の解説から始め、最小論理・直観主義論理・古典論理での論理式の証明とそのモデルを使った議論が出来るようにす ることを目的とする。その中で、単なる記号の処理を行なう体系が「論理」と呼ばれるにはどんな性質を満たす必要があるかを考察する。また、学期末には、もう一つのトピックとして、「真理とは何か」という、論理と密接に関係する別の話題を取り上げ、その論理学的性質を探る。

〔授業計画と内容〕

前半では、前期に紹介した最小述語論理を例にとり、論理結合子の意味とは何かを、「証明論的意味論」と呼ばれる立場から考察する。具体的には、ベルナップの「トンク」の例を題材に、論理結合子の条件とは何かを考え、保存拡大性や証明の正規化といった論理学の基本概念を理解することを目指す。
後半では、最小論理に論理規則を付加し拡張した論理体系を紹介する。つまり、最小論理に矛盾律、排中律と論理規則を加え、直観主義論理、古典論理の体 系を得る。これらの例により、論理規則が加わるにつれて、論理式の証明は難しくなるものの、そのモデルは簡単になることを示す。また、その考察により、健 全性や完全性といった記号とモデルの関係に関する基本概念の理解を目指す。

最後に、論理学の応用的話題として、近年研究が進んでいる公理的な真理理論をとりあげ、その論理学的な概観を紹介する。時間があれば、その関係で、ゲーデルの不完全性定理等も紹介する。

〔教科書〕

毎回ハンドアウトを配布する。

〔参考書等〕

  • 小野寛晰『情報科学における論理』(日本評論社)ISBN:4535608148
  • Dag Prawitz 『Natural Deduction: A Proof-Theoretical Study』(Dover Publications)ISBN:0486446557

〔成績評価法〕

ほぼ毎回出題する宿題の累計成績に準じて行う。

〔コメント〕

形式的な体系を理解するためには、まず手を動かして練習問題の証明をやってみよう。記号の意味は何か、と考えるのはそれから。

特殊講義(学部・大学院共通)

○伊藤和行「ホイヘンスと重力理論」(前期 金2)

〔授業の概要・目的〕

ホイヘンス(Christiaan Huygens, 1629-1695)は、ガリレオやニュートンと並び、17世紀科学革命において中心的な役割を果たしてことで知られる。彼は晩年に、ニュートンの万有引力を、デカルトの渦動論の立場から機械論的に説明しようと試みた。本講義では、彼の『重力原因論』の読解を通じて、当時の機械論的自然哲学について検討する。

〔授業計画と内容〕

授業では、最初に17世紀科学革命とホイヘンスの業績について概論し、その上でホイヘンスの『重力原因論』を読解していく。

“Discours de la Cause de la Pesanteur (1690)”, in Oeuvres complètes de Christiaan Huygens, Den Haag, 21: 1944, 443-488.

○伊藤和行「ガリレオの望遠鏡と天体観測 」(後期 月5)

〔授業の概要・目的〕

ガリレオの望遠鏡による天体観測は近代天文学の誕生を告げたのみならず、宇宙観の転換を導いたことで知られる。本授業では、彼のテキスト読解と天体観測を通じて彼の科学的活動を検討する。

〔授業計画と内容〕

ガリレオのテクスト(主として日本語訳、必要によってイタリア語とラテン語)を読解しながら、以下のトピックについて考察する。
また天候を考慮しながら、実際に、彼の望遠鏡のレプリカなどによって、月、木星、金星、太陽などを観測してもらう予定である。

  • 望遠鏡の製作と理論
  • 月の観測
  • 木製の衛星の発見
  • 太陽黒点
  • 宮廷科学者とパトロネージ
  • 太陽中心説と宗教裁判
○伊勢田哲治「Science and religion from a philosophical perspecitve (哲学の観点から見た科学と宗教) 」(前期 水2)(総合生存学館提供科目)

〔授業の概要・目的〕

The topic of this special lecture varies every year, picking up various topics related to the philosophical aspects of science. This year, we explore the relationship between science and religion. Since the time of Galileo, there has been many troubles between science and religion, the most recent manifestation of which is the intelligent design controversy in the US. However, on the other hand, there are cases in which religious beleifs seem to promote scientific discovery, such as the quest for simple mathematical law of nature. Can science and religion coexist? If they can, how should the coexistence be arranged? Is there any particular Japanese aspect to the science-religion issue? We try to tackle these questions from philosophical points of view.

この特殊講義のテーマは科学の哲学的側面にかかわるさまざまな話題をとりあげる形で毎年変更されます。今年度は科学と宗教の関係について考えます。科学と宗教の間にはガリレオの時代より多くのトラブルが生じてきました。その最近のものがアメリカにおける知的設計説論争です。しかし、他方で、単純な数学的自然法則の探求など、宗教的信念が科学を促進したように見える例もあります。科学と宗教は共存できるのでしょうか。できるとするならば、その共存はどのような形をとるべきなのでしょうか。この科学と宗教の問題について、日本に特有の側面というのはあるのでしょうか。この授業では、これらの問題に哲学的な観点から挑戦します。

〔授業計画と内容〕

The lectures will be given both in Japanese and English.
Tentative list of topics

  • Historical backgrounds of science-religion relationship
    –Medieval support
  • Kepler and Galileo
  • Geology and Evolution controversy (Europe and Japan)
  • Analysis of the problem
  • Dawkins Gould Debate

〔履修要件〕

No background is required, but if you are not familiar with philosophy of science in general, please read some introductory book by yourself. Okasha’s introductory book (邦訳 オカーシャ『科学哲学』) is recommended.

〔成績評価の方法基準〕

a midterm paper project and the final paper

〔教科書〕

授業中に指示する
Reading assignments will be distributed in the class.

〔参考書等〕

授業中に紹介する。

〔その他〕

Office hour: wed. 15:00-16:30

○伊勢田哲治「19世紀のイギリスの科学哲学:ハーシェル、ヒューウェル、ミル」(後期 水2)

〔授業の概要・目的〕

19世紀のイギリスは、「科学者」という言葉の成立に象徴されるように、科学の制度化が急速に進むとともに、科学に対する方法論的反省もまたこの時期のイギリスに一つの出発点を持つ。今回の授業では、1830~40年代の科学哲学を代表するハーシェル、ヒューウェル、ミルの三人の著作と、その背景を紹介し、彼らの議論の現代への含意について考えていく。
〔授業計画と内容〕

本授業ではおおむね以下のような話題をとりあげていく。

  • 19世紀前半のイギリス科学の状況
  • 科学方法論における帰納法の位置づけ
  • ハーシェルの『自然哲学序説』
  • ヒューウェルの『帰納諸科学の歴史』
  • ヒューウェル=ミル論争

〔履修要件〕

特に履修要件はもうけないが、科学哲学の基礎的事項については知っているものという前提で授業が行われる。最低限オカーシャ『科学哲学』(岩波書店)は全体を読み理解しておくことが望ましい。

〔成績評価の方法と基準〕

二回のレポートで評価を行う。

〔教科書〕

授業中にプリントを配布

〔参考書等〕

授業中に紹介

○植原亮「自然主義入門」(前期・木5)

〔授業の概要・目的〕

現代の哲学的自然主義の大枠は、存在するものはすべてある意味で自然現象であるとする存在論的な主張と、哲学は科学と同じ経験的方法によってアプローチせねばならないとする方法論的主張の二本の柱からなる。この授業では、こうした自然主義の主張と課題を概観し、その哲学上の意義を理解することを目的とする。

〔授業計画と内容〕

まずは自然主義の典型的な姿として認識論における自然主義がどのようなものかを紹介する。次にそこに含まれる存在論的な主張と方法論的な主張を取り出してそれぞれに整理と検討を加える。そのうえで自然主義に関連の深いトピックとして、自然種の理論や認知科学の哲学、倫理の自然化、あるいは自然主義の歴史的な背景などを各論的に取り上げる予定である。授業は質疑応答をまじえながら進めたい。

  1. イントロダクション(1週)
  2. 自然主義的認識論(3~4週)
  3. 存在論的自然主義(2~3週)
  4. 方法論的自然主義(2~3週)
  5. 各論(3~4週)
○平川秀幸「科学技術と社会のガバナンス」(後期 木5)

〔授業の概要・目的〕

現代の社会は科学技術の発展と深く関わっており、それなしに社会は成り立たない。他方、科学技術とそれに伴う産業経済の発展は、環境破壊や生命倫理の問題など様々な社会問題を引き起こしてもいる。そしてそれら問題の解明や解決にも、科学技術の発展は不可欠のものになっている。社会の中での科学技術の影響や役割をいかに理解し、制御していくかは、今日、第一級の学術的かつ実践的な課題であり、そのためには人文・社会科学的なアプローチが不可欠である。本講義では、とくに「リスクとイノベーションのガバナンス」という観点から、現代社会における科学技術の諸問題について理解を深める。

〔授業計画と内容〕

以下のようなテーマについて授業をする予定である。。

  1. イントロダクション(第1週)
  2. 科学技術と社会の関係変化に関する社会思想史的な概観 (第2~5週)
  3. リスクをめぐる科学と政治
    意思決定と不確実性、政治的・規範的なものと認識論的なものとの関係性など。具体的トピックとして遺伝子組換え技術、BSE、原子力などを取り上げる。(第6~12週)
  4. 科学技術と社会の参加型ガバナンスの諸問題
    テクノロジーアセスメントを中心として。具体的トピックとして遺伝子組換え技術、再生医療、ナノテクノロジーなどを取り上げる予定。(第13~15週)

授業のなかでの質疑・討論の内容ならびに社会状況(本講義に関連する重大な社会事象の発生など)次第で、取り上げるトピックや各テーマを扱う週数は変更することがある。

○喜多千草「「知識の循環・共有」について考える 」(後期・木3)

〔授業の概要・目的〕

この講義では、コンピューティングに関わる歴史において、知識の循環・共有がどのようにおこなわれてきたかについて考察する。
具体的には、ユーザコミュニティや、コンピューティングの技術に関する知的所有権をめぐる諸問題等を採り上げる。これにより、受講生はコンピューティング史のアプローチを学び、過去の経緯・帰結が現在のありようにどのように影響してきたかについて理解を深めることになるだろう。

〔授業計画と内容〕

授業は基本的には歴史学的方法論で進めるが、必要に応じて、科学技術社会論の論点についても言及する。
授業概要(各項目について1~3回程度の授業を行う)

  • オリエンテーション
  • ライブラリの構築とユーザグループの誕生
  • ハードウェア設計に関する知識の循環
  • ソフトウェアと知的財産権
  • インターネットと互助的コミュニティ
  • CGM(Consumer Generated Media)の台頭
  • まとめ

演習(学部・大学院共通)

○伊藤和行「物理学の哲学前史2」(前期 火3)

〔授業の概要・目的〕

この演習では、ロベルト・トレッティの『物理学の哲学』を読みながら、現在の物理学の哲学につながるさまざまな考え方がどのように形成されてきたかを学んでいく。今期の授業では、前年度後期の演習(担当:伊勢田)に引き続き、19世紀と相対論に関する章を読み進める。

〔授業計画と内容〕

授業は基本的に一回の授業でテキスト15ページ程度を読み、それについて検討する形で進める。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する (担当者は事前に決めておく)。
今期に扱う内容は次の通りである。

  • 19世紀 非ユークリッド幾何学、場、熱と偶然、(科学)哲学者たち
  • 相対論 特殊相対性理論、ミンコフスキー時空、特殊相対性の哲学的問題
    一般相対性理論、相対論的宇宙論

〔教科書〕
Roberto Toretti (1999) The Philosophy of Physics (Cambridge University Press).

○伊藤和行「John Snowとロンドンのコレラ」(後期 火3)

〔授業の概要・目的〕

John Snowは19世紀中頃に英国で活動した医学者である。彼は、ロンドンにおけるコレラ流行の際に、疫学的考察から、その流行の原因が上水にあることを推論したことでしられる。本演習では、John Snowのコレラの流行に関する論考 “On the Mode of Communication of Cholera”を講読し、疫学の誕生期について考察する。

〔授業計画と内容〕

流行病と疫学の歴史、John Snowの業績について簡潔に紹介した後、次のテキストを読んでいく。
“On the Mode of Communication of Cholera”, in Snow on cholera : being a reprint of two papers, together with a biographical memoir by B.W. Richardson ; and an Introduction by Wade Hampton Frost. — Hafner, 1965.

○伊勢田哲治「科学哲学の実践的転回と頑健性」(前期 水3)

〔授業の概要・目的〕

1990年代の科学哲学における大きな変化の一つとして、研究の焦点を科学理論から科学実践へと移すという一連の運動(practical turn、実践的転回)があった。この流れはいわゆる新実験主義などとも連動しその後の科学哲学のやり方を大きく変えていくことになった。今回の演習では、この運動の主唱者であったアンドリュー・ピッカリングの論文を中心に主要な論文を読む。また、この運動を受け継ぐ近年の動きとして、「頑健性」の概念を中心とした科学実践の分析も検討する。

〔授業計画と内容〕

基本的に一回の授業でテキスト15ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。以下のような論文、書籍を読むことを今のところ考えている。

  • Pickering A. “From Science as Knowledge to Science as Practice”
  • Hacking, I. “The Self Vindication of the Laboratory Sciences”
  • Gooding, D. “Putting Agency Back into Experiment”
  • Pickering A. The Mangle of Practice
  • Solar et al ed. Characterizing the Robustness of Science: After the Practice Turn in Philosophy of Science

〔履修要件〕
特に履修要件はもうけないが、科学哲学の基礎的事項については知っているものという前提で授業が行われる。最低限オカーシャ『科学哲学』(岩波書店)は全体を読み理解しておくことが望ましい。

〔成績評価の方法と基準〕

発表の担当と期末のレポート

〔教科書〕

授業内でプリント配布

〔参考書等〕

授業中に紹介する

○伊勢田哲治「化学の哲学」(後期 水3)

〔授業の概要・目的〕

物理学の哲学と生物学の哲学に挟まれるような形で、化学(chemistry)の哲学は、長らく脚光をあびることがなかった。しかし、物理学とも生物学とも関係が深い一方で、化学物質や化学反応などの独自の研究領域を持つ化学という分野は、哲学的な考察の対象として決して重要性に劣るということはない。近年は化学哲学に特化した雑誌も刊行され、研究も蓄積されつつある。今回の授業では、近年編集されたアンソロジーを手がかりに、この分野の現状について一緒に学ぶ。

〔授業計画と内容〕

基本的に一回の授業でテキスト10ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。
暫定的に、Philosophy of Chemistryに収録された以下のような論文の中から数本をピックアップして読むことを計画している。

  • van Brakel“prehistory of the philosophy of chemistry”
  • van Brakel“Substances: the ontology of chemistry”
  • Needham“Modality, mereology and substance”
  • Goodwin “Mechanisms and chemical reaction”
  • Harre “Laws in Chemistry”
  • Weisberg “Chemical modeling”
  • Hendry “Reduction, emergence and physicalism”
  • Sutcliff and Woolly “Atoms and molecules in classical chemistry and quantum mechanics”
  • Morange “explanatory relationships between chemical and biological sciences”

〔成績評価の方法と基準〕

発表の担当と期末のレポート

〔履修要件〕

特に履修要件はもうけないが、科学哲学の基礎的事項については知っているものという前提で授業が行われる。最低限オカーシャ『科学哲学』(岩波書店)は全体を読み理解しておくことが望ましい。

〔教科書〕

Andrea Woody et. al. ed. Philosophy of Chemistry: Handbook of the Philosophy of Science. 2012 Elsevier. 必要箇所は授業内で配布

○伊藤・伊勢田「科学哲学科学史セミナー」(前期・後期 金4)

〔授業の概要・目的〕

発表演習。四回生必修。卒論作成に向けて、卒論のプランや途中経過などの研究発表をしてもらいます。

〔授業計画と内容〕

欠席が多い学生には、発表しただけでは単位を与えないことがあるので注意してください。

研究科横断型授業

○伊勢田哲治「科学技術と社会に関わるクリティカルシンキング (critical thinking on science, technology and society) 」(Aタイプ 通年 火5)

〔授業の概要・目的〕

伊勢田ほか編『科学技術をよく考える』をテキストとして、科学技術と社会の接点で生じるさまざまな問題についてディスカッションを行い、多面的な思考法と、思考の整理術を学んでいく。目標は、クリティカルシンキング(CT)という考え方について知り、CTのいくつかの基本的なテクニックを身につけること、科学技術社会論の概念を学び、それを使って議論ができるようになること、である。

〔授業計画と内容〕

テキストは10のテーマから構成されているが、本授業ではそのうち6~7つをとりあげることを予定している。実際に何についてディスカッションするかは受講者の興味も踏まえて決定するが、候補となるのはたとえば以下のようなものである。

  • 遺伝子組み換え作物
  • 脳科学の実用化
  • 血液型性格判断
  • 宇宙開発への公的投資
  • 原爆投下の是非を論じること自体の正当性

これらのトピックとあわせて学ぶスキル・知識としては、

  • 議論の特定
  • 暗黙の前提の特定
  • 社会的CT
  • 四分割表
  • メタCT
  • 予防原則
  • リスクコミュニケーション

〔履修要件〕

特になし

〔成績評価の方法・基準〕
3分の2以上の出席と積極的な授業参加

〔教科書〕

伊勢田哲治ほか編 『科学技術をよく考える クリティカルシンキング練習帳』 (名古屋大学出版会) 授業内での著者割引での販売を予定

〔参考書等〕

伊勢田哲治 『哲学思考トレーニング』 (ちくま新書)

○伊勢田哲治、矢田部俊介「論理学上級I (Advanced logic I) 」(Bタイプ 集中)

〔授業の概要・目的〕

真理とは何か、どのような性質を満たすのかは、哲学の大きなテーマの一つである。この分野の専門家である矢田部俊介氏をゲストスピーカーとして招き、本授業では、古典論理上で形式化されるタルスキの真理理論と、また現代的な非古典論理上で展開される真理理論と、それらの非古典論理の体系の証明論を紹介し、現代の哲学的論理学の最前線で何が起こっているかを概観する。この授業を通じ、学生が非古典論理に関する基礎的知識を身につけることを目標とする。

〔授業計画と内容〕

  1. 古典論理とタルスキの真理理論 (9/5 矢田部)
  2. 古典論理上の真理理論とそのなす階層 (9/12 矢田部)
  3. クリプキと不動点 (9/19 矢田部)
  4. 非古典論理上の透明な真理概念 (9/26 矢田部)
  5. 真理概念とω無矛盾性 (9/30 矢田部)

〔履修要件〕

古典命題論理・1階述語論理(それぞれ完全性定理まで)の履修済または自習済。

〔成績評価の方法・基準〕

授業への積極的な参加とレポートの総合評価により修了証を授与する。修了証は全回終了後担当者が要件を確認したのち授与する。

〔教科書〕

使用しない

○伊勢田哲治、村上祐子「論理学上級 II (Advanced logic II) 」(Bタイプ 集中)

〔授業の概要・目的〕

20世紀の分析哲学を含む哲学理論の展開には非古典論理学が欠かせない。この分野の専門家である村上祐子氏をゲストスピーカーとして招き、様相論理の技術的側面を学びながら研究史を追うことで、現在の非古典論理学の枠組みの理解を深めることと、個別体系の扱いについてのスキルを身につけることを狙いとする。

〔授業計画と内容〕

  1. ノーマルな様相論理体系と関係意味論 (9/17 村上)
  2. 様相論理の完全性 (9/17 村上)
  3. 不完全な様相論理体系と一般化意味論 (9/18 村上)
  4. 一般化意味論・近傍意味論とクラシカルな様相論理体系 (9/19 村上)

〔履修要件〕

古典命題論理・1階述語論理(それぞれ完全性定理まで)の履修済または自習済。

〔成績評価の方法・基準〕

授業への積極的な参加とレポートの総合評価により修了証を授与する。修了証は全回終了後担当者が要件を確認したのち授与する。

授業時間割表

※上段は前期を、下段は後期を表す

1限 2限 3限 4限 5限
※前期は
授業なし
伊藤 特講
ガリレオ
伊藤 講義
科学史入門
伊藤 演習
物理学の哲学2
伊藤 演習
スノーと疫学
矢田部 基礎演習 Ia
論理学演習
矢田部 基礎演習Ib
論理学演習
伊勢田 特講
科学と宗教

伊勢田 特講
19Cのイギリス科学哲学

伊勢田 演習
科学哲学の実践的転回
伊勢田 演習
化学の哲学
※前期は
授業なし
喜多 特講
知識の循環・共有
植原 特講
自然主義入門
平川 特講
科学技術論
伊藤 特講
ホイヘンス
※後期は
授業なし
伊勢田 講義
科学哲学入門
伊藤・伊勢田
科哲史セミナー

集中・その他

  • 伊勢田 「クリティカルシンキング」(火5限・通年)
  • 伊勢田、矢田部 「論理学上級Ⅰ」(集中)
  • 伊勢田、村上 「論理学上級II」(集中)