2016年度授業概要

系共通

○伊藤和行「科学史I」(講義)(前期 火2)

〔授業の概要・目的〕
科学とは時間や空間を超えた普遍的なものと一般に考えられているが、人間の営みである以上、科学も歴史のなかで誕生し発展してきたものであり、その成果も歴史的な文脈によって規定されている。とりわけ近代科学は17世紀西欧社会において誕生したと考えられており、当時の歴史的コンテキストの中に科学的活動を位置付けることは、現代科学の理解にとっても重要なものと考えられる。

〔授業計画と内容〕
本講義では、近世日本における科学の発展を、17世紀から20世紀前半(江戸時代から昭和初期)まで辿り、どのようにして近代西欧科学が日本に移入され、咀嚼されていったのかを検討する。以下の項目に従って進める予定である。

    • イントロダクション
    • 西欧における科学の誕生と発展
    • 江戸時代の科学:蘭学から洋学へ
    • 明治維新前後の科学
    • 明治日本の近代科学の導入
    • 大正日本における科学の定着
    • 戦前日本における科学の発展
○伊藤和行「科学史II」(講義)(後期 火2)

〔授業の概要・目的〕
科学とは時間や空間を超えた普遍的なものと一般に考えられているが、人間の営みである以上、科学も歴史のなかで誕生し発展してきたものであり、その成果も歴史的な文脈によって規定されている。とりわけ近代科学は17世紀西欧社会において誕生したと考えられており、当時の歴史的コンテキストの中に科学的活動を位置付けることは、現代科学の理解にとっても重要なものと考えられる。

〔授業計画と内容〕
本授業では、西洋世界における科学の歩みを、古代ギリシアから17世紀科学革命までたどる。具体的には、近代科学誕生の際に中心となった天文学と運動論を扱い、科学革命の中心的人物であるガリレオ・ガリレイに焦点を当てる予定である。次のような計画に従って講義を進める予定である。

    • 1. イントロダクション
    • 2. 天文学の歴史
      • 2-1. 天体の運動について
      • 2-2. 古代の天文学:地球中心説(プトレマイオスの理論)
      • 2-3. 近代の天文学:太陽中心説(コペルニクスからケプラー、ガリレオへ)
    • 3. 運動論の歴史
      • 3-1. 古代・中世の運動論:アリストテレスの理論とインペトゥス理論
      • 3-2. 近代の運動論:ルネサンスの技術者とガリレオの運動論
    • 4. 17世紀科学革命:天上と地上の運動理論の統合へ向けて:ガリレオ、ホイヘンス、ニュートン
    • 5. まとめ
○伊勢田哲治「科学哲学入門(上)」(講義)(前期 金3)

〔授業の概要・目的〕
科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。 前期の講義においては、科学とはなにかという問題、科学的推論や科学的説明をめぐる問題を、科学全体に関わるテーマと個別の領域に関わるテーマに分けて論じる。

〔授業計画と内容〕
以下のそれぞれのテーマについて2~3週をかけて論じる。

  • 1 科学とは何か
  • 2 科学的推論
  • 3 個別科学における科学的推論
  • 4 科学的説明
  • 5 個別科学における科学的説明

フィードバックについては授業内で指示する。

〔教科書〕
サミール・オカーシャ 『科学哲学』(岩波書店)

○伊勢田哲治「科学哲学入門(下)」(講義)(後期 金3)

〔授業の概要・目的〕
科学哲学は「哲学」という視点から「科学」に切り込む分野である。本講義では、多様化のすすむ科学哲学のさまざまな研究領域を紹介し、受講者が自分の関心に応じて今後掘り下げていけるような「入り口」を提供する。 後期の授業では科学的実在論や科学の変化、科学と価値などのテーマを順にとりあげ、関連する個別科学におけるテーマも検討する。

〔授業計画と内容〕
以下のそれぞれのテーマについて2~3週をかけて論じる。

  • 1 実在論と反実在論
  • 2 個別科学における実在論問題
  • 3 科学の変化と科学革命
  • 4 個別科学における変化の問題
  • 5 科学と価値

フィードバックについては授業内で指示する。

〔教科書〕
サミール・オカーシャ 『科学哲学』(岩波書店)

特殊講義(学部・大学院共通)
○伊藤和行「新城新藏と『宇宙物理学』」(特殊講義)(前期 金2)

〔授業の概要・目的〕
この授業では、京都帝国大学における宇宙物理学講座の創設者である新城新藏を取り上げ、20世紀初頭における天文学の展開、日本への天体物理学の導入過程を検討する。20世紀において、天文学は、その主なる研究対象を太陽系から銀河、そして宇宙全体へと広げ、天体物理学へと変容している。変容した天文学がどのようにして日本に移入され発展していったのかを、その活動の中心的人物であった新城新藏の生涯と著作を辿ることによって検討する。

〔授業計画と内容〕
以下の項目に従って進める予定である。

  • 1. イントロダクション
    • 20世紀初頭を中心とした天文学の展開
    • 新城新藏の生涯
    • 京都帝国大学における宇宙物理学
  • 2. 新城新藏の宇宙物理学
    • 宇宙進化論・流星論・変光星理論
○伊藤和行「ガリレオの太陽黒点観測」(特殊講義)(後期 金2)

〔授業の概要・目的〕
この授業では、ガリレオの望遠鏡による天体観測の過程を、とくに太陽黒点の観測を中心に検討する。ガリレオの天体観測は観測天文学の誕生のみならず、17世紀の科学革命の主要なトピックである宇宙論の変革を導いたものであり、この革命についての理解を深める。とくにガリレオが太陽黒点観測の成果を発表した『太陽黒点論』(1613)の内容について詳細に検討する。

〔授業計画と内容〕
以下の項目に従って進める予定である。

  • 1. イントロダクション
    • 17世紀革命
    • ガリレオの生涯と望遠鏡の誕生
    • 『星界の報告』
  • 2. 太陽黒点観測
    • 初期太陽黒点観測
    • 『太陽黒点論』第一書簡・第二書簡・第三書簡
○伊勢田哲治「科学における公表の哲学(Philosophy of scientific publication)」(特殊講義)(前期 水2)

〔授業の概要・目的〕
この特殊講義のテーマは科学の哲学的側面にかかわるさまざまな話題をとりあげる形で毎年変更されます。今回の講義では科学における公表をめぐる問題、すなわち研究成果はどのような形で公開され、共有されるべきなのかという問題について考えていきます。これには、査読システムにまつわる問題、オーサーシップなどいわゆる公表の倫理にかかわる問題、研究成果や自分野の知識を一般市民と共有する科学コミュニケーションにまつわる問題などが含まれます。科学哲学(その中でもとりわけ社会認識論と呼ばれる領域)の観点から、これらの一連の情報の公開と共有はどのような理念に基づいて行われるべきなのか、どういう選択肢がありうるのかなどを考えていきます。また、事例として近年の日本における具体例を利用します。
The topic of this special lecture varies every year, picking up various topics related to the philosophical aspects of science. This year, we explore philosophy of scientific publication; that is, philosophical considerations on how research results should be publicized and shared. This includes problems of peer review, ethics of publication such as the issue of authorship, and issues related to science communication, i.e. sharing research results and disciplinary knowledge with laypeople. We look at the issue from the viewpoint of philosophy of science, especially that of so-called social epistemology, exploring what should be the basic idea for such activities and what are the alternatives. We also use concrete examples from recent Japanese cases.

〔授業計画と内容〕
授業は日本語と英語で行われます。
以下は扱うトピックの暫定的リストです。(一項目に1〜2週かけます)
The lectures will be given both in Japanese and English.
Tentative list of topics (we will spend one or two weeks for each topic)

    • Part I: philosophical theories and positions
      • 1. What is social epistemology
      • 2. David Hull’s evolutionary view of scientific process
      • 3. Helen Longino’s contextual empiricism
      • 4. Social Bayesianism
    • Part II: Peer review system
      • 5. History of peer review system
      • 6. Epistemological implications of peer review
      • 7. Proposed alternatives to peer review
    • Part III: Publication Ethics
      • 8. Plagiarism, self-plagiarism and authorship
      • 9. Epistemological implications of publication ethics
      • 10. Recent issues in Japan
    • Part IV: Science communication
      • 11. Models of science communication
      • 12. Philosophy of science communication
      • 13. Recent issues in Japan
○伊勢田哲治「論理実証主義前夜の科学哲学」(特殊講義)(後期 水2)

〔授業の概要・目的〕
科学哲学の歴史は1920年代のウィーン学団から語り始められることが多い。学会的組織や学術誌を備えた独立分野としての科学哲学は確かにその時期に始まったと言ってよいが、彼らのあつかったテーマに関しては、19世紀末から盛んに論じられてきた話題を受け継ぐものとなっており、むしろ連続性が目立つ。今回の講義では、19世紀末から20世紀初頭の主要な科学哲学者の著作を概観することで、この時期の議論の輪郭をとらえ、現代の視点から再評価を行うことを目的とする。

〔授業計画と内容〕
以下の項目について、それぞれ1~2週で論じる。
原典は英、独、仏の3カ国語にわたるが、基本的に英訳を利用する。

      • 1 19世紀なかごろまでの科学哲学
      • 2 ヘルムホルツ
      • 3 パースとスタロ
      • 4 マッハ
      • 5 クリフォードとピアソン
      • 6 デュエム
      • 7 ポアンカレ
      • 8 キャンベル
○中尾麻伊香「20世紀の科学文化」(特殊講義)(前期 木5)

〔授業の概要・目的〕
科学技術の進展やその社会における受容は、人々のイマジネーションと切り離すことができない。この授業では、科学技術をめぐる言説と表象を検討し、現実世界と想像世界がどのような関わりをもってきたのかという相互作用を考えていく。
具体的には、主に20世紀の核エネルギーと放射線をめぐる言説と表象を科学、文学、ポピュラーカルチャーに関するさまざまな資料から検討していく。毎回の授業では、講師がテーマに沿った概説を行った後、関連するいくつかの資料をどのように解釈できるか、受講者とともに分析する。

〔授業計画と内容〕
以下のテーマについて、各2、3回とりあげる。

      • 1. 原爆・原子力イメージの変遷
      • 2. 放射能と生命、スピリチュアリズム
      • 3. カタストロフィの表象 人災と天災
      • 4. 被爆者と被爆者調査 原爆調査資料と被爆者の手記を読む
      • 5. 戦前・戦後のポピュラーカルチャー アトム、ロボット
      • 6. 原爆の記憶と資料 京大サイクロトロン
○大塚淳「進化論の哲学」(特殊講義)(後期 木5)

〔授業の概要・目的〕
生物学の哲学とりわけ進化論の哲学は、現代の科学哲学において大きなウェイトを占めている。進化論とはどのような理論なのか?そしてそれはどのような(科学)哲学的含意を持つのか?本授業では、この半世紀のあいだ展開されてきた進化論哲学の代表的な問題群と議論を概観したのち、それらを批判的に検討する。

〔授業計画と内容〕
授業は大きく4部に分かれ、それぞれに3~4週を充てる。まずはじめに、現代進化論のパラダイムである「現代的総合」成立の経緯とその後の流れを概観するとともに、その理論的核としての集団遺伝学の基本的な考え方を確認する。次に、その後の生物学哲学の議論を動機付けてきた、進化論にまつわる種々の概念的パズルないし挑戦を紹介する。第3部では、こうしたパズルや挑戦に対する、80年代以降の生物学哲学コミュニティにおけるスタンダードな回答(「定見」)を説明する。しかしこうした「定見」は、決して問題なしとは言えない。最後の4部では、因果モデルに基づく観点から「定見」を批判的に再検討し、伝統的パズルに対する新たな答えを提示するとともに、現代生物学哲学の議論を暗黙裏に支えてきた哲学的前提を明らかにする。

      • 1. 進化論の歴史と基礎
        進化生物学の歴史/適応進化の原理/進化遺伝学の基礎
      • 2. 進化論にまつわる哲学的諸問題
        集団的思考と類型的思考/進化の法則と偶然性/トートロジー問題
      • 3. 進化論哲学における「定見」
        進化論の理論構造/進化の単位/適応度の解釈/統計主義論争
      • 4. 「定見」の批判的検討
        因果モデルの考え方/進化の因果的基盤/因果モデルからの含意

〔参考書等〕

      • Kim Sterelny, Paul E. Griffiths 『セックス・アンド・デス―生物学の哲学への招待』(春秋社)ISBN:4393323238
      • Elliott Sober 『進化論の射程―生物学の哲学入門』(春秋社)ISBN:4393323181

演習(学部・大学院共通)

○伊藤和行「近現代科学史入門」(演習)(前期 火3)

〔授業の概要・目的〕
本授業では、近代(17世紀~20世紀)科学に関する基本的な文献(Bowler and Morus, Making Modern Science: A Historical Survey)をテキストとして、17世紀科学革命以降の西洋科学の発展について理解するとともに、基礎的な知識を得る。

〔授業計画と内容〕
授業ではテキストの第1部を読む。毎回担当者を事前に指名し、各章の内容をまとめて発表してもらう。第1部(EPISODES IN THE DEVELOPMENT OF SCIENCE)の構成は以下の通りである。

      • The Scientific Revolution
      • The Chemical Revolution
      • The Conservation of Energy
      • The Age of the Earth
      • The Darwinian Revolution
      • The New Biology
      • Genetics
      • Ecology and Environmentalism
      • Continental Drift
      • Twentieth-Century Physics
      • Revolutionizing Cosmology
      • The Emergence of the Human Sciences

〔教科書〕
Peter J. Bowler and Iwan Rhys Morus 『Making Modern Science: A Historical Survey』(The University of
Chicago Press)ISBN:0-226-06861-7
授業で使用するテキストは,担当教員が用意して配布する.

○伊藤和行「江戸時代の博物誌」(演習)(後期 火3)

〔授業の概要・目的〕
本授業では、江戸時代の博物誌を取り上げ、当時の人々が自然をどのように捉えていたかを探る。とくに異国から持ち込まれた動物の描写や記述に焦点を当て、『唐蘭船持渡鳥獣之図』を手懸かりとして、描かれている象や駱駝などについての、当時の史料の読解を行う。

〔授業計画と内容〕
以下の項目に従って進める予定である。

      • 1: イントロダクション
        博物学と動植物の描写、鎖国と蘭学の誕生
      • 2: 『唐蘭船持渡鳥獣之図』
      • 3: 各動物についての当時の文献の読解
○伊勢田哲治「科学における基礎カテゴリーと自然種」(演習)(前期 水3)

〔授業の概要・目的〕
化学における物質や元素の概念、生物学における種の概念など、科学のそれぞれの分野で、研究の対象を分類する基礎的なカテゴリーはどのような性質を持つだろうか。哲学者はそうしたカテゴリーを「自然種」の概念を使って分析してきたが、はたして自然種の名に値するものが存在するのか、存在するとしてどのように特徴づけられるべきなのかといったことについて哲学者は論争してきた。他方、実際の科学で用いられる基礎カテゴリーは各分野において特有の問題をはらんでおり、自然種概念を使った分析でそのすべてをすくいとることはできない。この授業では「自然種」をめぐる論争を一つの軸にしつつ、生物学・化学それぞれにおける「種」や「物質」をめぐる特有の議論も確認していく。

〔授業計画と内容〕
基本的に一回の授業でテキスト15ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。現時点では以下の論文集を中心にいくつかの論文をピックアップして読むことを予定している。

      • R. A. Willson ed.(1999) Species: New Interdisciplinary Approach.
      • D. Baird, E. Scerri and L. McIntyre eds. (2006) Philosophy of Chemistry.
      • J. K. Cambpell, M. O’Rourcke and M. H. Slater eds. (2011) Curving Nature at Its Joints.
○伊勢田哲治「シミュレーションの哲学」(演習)(後期 水3)

〔授業の概要・目的〕
コンピュータ・シミュレーションは科学のさまざまな分野において研究のツールとしての重要性を増している。それに伴って科学哲学においてもシミュレーションが話題として取り上げられることが多くなってきた。今回の授業では近年出版された論文集Models, Simulations and Representations に掲載された論文を中心に、シミュレーションの哲学における現在の話題を追う。

〔授業計画と内容〕
基本的に一回の授業でテキスト15ページ程度を読み、それについてディスカッションする形ですすめる。学生は一人ないし複数で一回の発表を担当する(担当者は事前に決めておく)。何を読むかの最終的な決定は第一回の授業で行うが、現時点では主に以下のような論文からいくつかピックアップして読むことを予定している。

      • I. Peschard “Modeling and Experimenting”
      • M.A. Bedau “Weak emergence and computer simulation”
      • B. Epstein “Agent-based modeling and the fallacies of individualism”
      • A. Gelfert “Scientific models, simulation, and the experimenter’s regress”
      • J. Kurikoski “Simulation and the sense of understanding”
      • P. Suppes “Models and simulations in brain experiments”

以上すべてP. Humphreys and C. Imbert eds. Models, Simulations and Representations (2012, Routledge)

○伊藤和行・伊勢田哲治「科学哲学科学史セミナー」(演習)(前期 金4)

〔授業の概要・目的〕
科学史および科学哲学における、基礎的な知識の理解を向上させるとともに、近年の研究動向についての知識を得る。それらを基盤として、卒業論文/修士論文の作成に必要な基礎的な力を養う。また関連する研究会や学会での発表に向けて、日本語および英語での発表の技量を磨くとともに、研究会誌や学会誌への投稿へ向けて執筆に必要な基礎力を養う。

〔授業計画と内容〕
授業に出席する各学生に研究の進行状況を報告してもらい、研究テーマの設定、先行研究についての理解などについて個別に指導を行う。研究会や学会の発表に備えてそのシミュレーションを行ってもらい、各自のプレゼンテーション技法について指導を行う。発表順や具体的な発表課題・内容等については,出席学生と担当教員とで相談をして決める。

○伊藤和行・伊勢田哲治「科学哲学科学史セミナー」(演習)(後期 金4)

〔授業の概要・目的〕
科学史および科学哲学における、基礎的な知識の理解を向上させるとともに、近年の研究動向についての知識を得る。それらを基盤として、卒業論文/修士論文の作成に必要な基礎的な力を養う。また関連する研究会や学会での発表に向けて、日本語および英語での発表の技量を磨くとともに、研究会誌や学会誌への投稿へ向けて執筆に必要な基礎力を養う。

〔授業計画と内容〕
授業に出席する各学生に研究の進行状況を報告してもらい、研究テーマの設定、先行研究についての理解などについて個別に指導を行う。研究会や学会の発表に備えてそのシミュレーションを行ってもらい、各自のプレゼンテーション技法について指導を行う。発表順や具体的な発表課題・内容等については,出席学生と担当教員とで相談をして決める。

○矢田部俊介「論理学演習1」(演習)(前期 火5)

〔授業の概要・目的〕
本授業の最終的な目標は、受講者が論理的で明晰な思考に慣れ、何かを主張する際にはその主張がどのような根拠に基づいているかを明確化し、抜けも漏れもない論証ができるようになることである。そのための練習の題材としては、哲学的論理学、そのなかでも「論理とは何か」という問題をとりあげる。我々は日常、推論を行い、そして「論理的」という言葉をよく使う。もちろん「論理的」であることが要求される。しかし、「論理」とはいったい何だろうか。日頃、無反省に、知っているつもりで使っている概念の意味を問い直すのは、哲学の重要な仕事の一つである。本演習では、数学における定理の証明がシミュレートできる、「論理」と呼ばれうるような、記号を処理する体系(「形式的体系」)を紹介する。具体的には、最小述語論理の自然演繹の体系の解説と問題演習を行う。

〔授業計画と内容〕
最小述語論理は、論理結合子の導入規則と除去規則のみを持つ、基本的な論理体系の一つである。前期の前半は、まず最小述語論理の自然演繹の体系を紹介する。問題演習を通じ、各自が自然演繹の証明が出来るようになることが目標である。また、後半には、最小論理上で算術の体系「最小算術Q」を例に、数学における多くの証明が最小論理で遂行可能であることを示す。同時に、原始再帰法など計算の基本概念を紹介する。

〔参考書等〕

  • 戸次大介 『数理論理学』(東大出版会)
  • 小野寛晰 『情報科学における論理』(日本評論社)
  • Dag Prawitz 『Natural Deduction: A Proof-Theoretical Study』
○矢田部俊介「論理学演習2」(演習)(後期 火5)

〔授業の概要・目的〕
我々は日常的に推論を行う。また「論理的」という言葉をよく使う。哲学においてももちろん「論理的」であることが要求される。 しかし、「論理」とはいったい何だろうか。日頃、無反省に、知っているつもりで使っている概念の意味を問い直すのは、哲学の重要な仕事の一つである。また「論理」とはいったい何かという問題は、現代の大きな問題である。というのも、20世紀以降、古典論理の体系以外にも多くの異なる論理体系が提案されているからである。それらの非古典的な体系が論理と呼ばれるなら、ある体系が「論理」と呼ばれるためには、どんな性質を満たしていることが必要だろうか。
本演習では、最小述語論理の自然演繹の体系の解説から始め、最小論理・直観主義論理・古典論理での論理式の証明とそのモデルを使った議論が出来るようにすることを目的とする。その中で、単なる記号の処理を行なう体系が「論理」と呼ばれるにはどんな性質を満たす必要があるかを考察する。

〔授業計画と内容〕
前半では、前期に紹介した最小述語論理を例にとり、論理結合子の意味とは何かを、「証明論的意味論」と呼ばれる立場から考察する。具体的には、ベルナップの「トンク」の例を題材に、論理結合子の条件とは何かを考え、保存拡大性や証明の正規化といった論理学の基本概念を理解することを目指す。後半では、最小論理に論理規則を付加し拡張した論理体系を紹介する。つまり、最小論理に矛盾律、排中律と論理規則を加え、直観主義論理、古典論理の体系を得る。これらの例により、論理規則が加わるにつれて、論理式の証明は難しくなるものの、そのモデルは簡単になることを示す。また、その考察により、健全性や完全性といった記号とモデルの関係に関する基本概念の理解を目指す。
最後に、論理学の話題として、ゲーデルの不完全性定理等も紹介する。

〔参考書等〕

  • 戸次大介 『数理論理学』(東大出版会)
  • 小野寛晰 『情報科学における論理』(日本評論社)
  • Dag Prawitz 『Natural Deduction: A Proof-Theoretical Study』

授業時間割表

※上段は前期を、下段は後期を表す

1限 2限 3限 4限 5限
伊藤 講義
科学史I

伊藤 講義
科学史II

伊藤 演習
近現代科学史

伊藤 演習
江戸時代の博物誌

矢田部 演習
論理学演習1

矢田部 演習
論理学演習2

伊勢田 特講
公表の哲学

伊勢田 特講
論理実証主義前夜

伊勢田 演習
カテゴリーと自然種

伊勢田 演習
シミュレーション

中尾 特殊講義
20世紀の科学文化

大塚 特殊講義
進化論の哲学

伊藤 特講
新城新藏

伊藤 特講
ガリレオ

伊勢田 講義
科学哲学(上)

伊勢田 講義
科学哲学(下)

伊藤・伊勢田
科哲史セミナーI

伊藤・伊勢田
科哲史セミナーII

集中・その他
なし