講義題目 2014年度

特殊講義 氣多雅子 前期火4 西田哲学の後期哲学思想について [授業の概要・目的]西田幾多郎の思想が現代の宗教哲学的課題を考察する上でどのような意義をもつかということを、多様な角度から明らかにしたい。
[授業計画と内容]西田の後期の思想において論じられている社会的・歴史的世界の問題について考察する。まず西田の論述をたどって、その難解な思索を追理解することをめざす。さらにその思想の可能性と問題点を追究する。ただし、この授業は予定通りに授業を進めることよりも、担当者が課題を追究しつつ行なう思索の導きに従う ことを重視する。
特殊講義 芦名定道 前期水3 キリスト教思想研究入門A [授業の概要・目的]この特殊講義は、すでに系共通科目「キリスト教学講義」を受講し、キリスト教思想研究に関心のある学部生、あるいはキリスト教研究の基礎の習得をめざす大 学院生を対象に行われる。キリスト教思想研究を目指す際に身につけておくべき事柄について、またいかなるテーマをどのように取り上げるのかについて、解説を行う。
[授業計画と内容]本年度前期のテーマは、「聖書と哲学」であり、創造、契約、堕罪、知恵、神の国、終末などの諸問題、またアウグスティヌス、パスカル、カント、キルケゴール、ブーバー、リクールなどの哲学者が取りあげられる。
特殊講義 芦名定道 後期水3 キリスト教思想研究入門B [授業の概要・目的]この特殊講義は、すでに系共通科目「キリスト教学講義」を受講し、キリスト教思想研究に関心のある学部生、あるいはキリスト教研究の基礎の習得をめざす大 学院生を対象に行われる。キリスト教思想研究を目指す際に身につけておくべき事柄について、またいかなるテーマをどのように取り上げるのかについて、解説 を行う。
[授業計画と内容]本年度後期のテーマは「キリスト教思想、古代から中世・宗教改革」であり、講義は、初期キリスト教から古代教会の成立と展開、ゲルマン民族移動から中世キリスト教世界と宗教改革までの範囲から、研究テーマを設定しつつ進められる。
特殊講義 杉村靖彦 前期水4 贈与の問題系 [授業の概要・目的]本講義でいう「贈与」とは、「与えられて在る」という存在様態、およびそれを起点として存在者間に生起する「与える/与えられる」という交流など、「与え る」ことにまつわる諸観念を広く包括する問題系を指す。この意味での贈与に関わる語彙は、古来宗教的文脈でさまざまに活用されてきたが、20世紀以降の現 代思想において、数々の注目すべき思索が交差する場となっている。一方で、現象学やハイデガー哲学では、事象それ自体が現出する究極の様態を語る際に、し ばしば「与える」ことにまつわる語彙が動員される。他方で、モースの『贈与論』を起点とする人類学の潮流は、贈り物の儀礼的・象徴的交換に人間の社会形成 の核心を見てとることによって、理論と実践の両面にわたって革新的な思想が産み出してきた。そして、とくにフランスでは、バタイユからデリダ、マリオン、 エナフ等に至るまで、この両方の流れを結びつけることによって、特異な贈与論を展開してきた思想家たちがいる。以上のような「贈与の問題系」を概観し、批 判的な検討を加えていくことで、今日の宗教哲学においてこの問題系がもつ射程を見定めることが本講義の目的である。
[授業計画と内容]まず最初に、本講義でいうところの「贈与の問題系」について、可能な限り包括的な見取図を提示し、問題の広がりを明確にする。次いで、現象学系統の哲学に おけるこの問題の扱いと位置づけを論じるとともに、モース以来の人類学における贈与論の展開を概観する。その上で、デリダやマリオン、場合によってはレ ヴィナスやリクールらの贈与論を適宜紹介し、批判的検討を加えていくことによって、そこで争点となる事柄を浮かび上がらせていく。最後に、以上の行程を踏 まえて、贈与の問題系が今日の宗教哲学に対してもちうる意味を考察する。
特殊講義 杉村靖彦 後期水4 田辺哲学研究 [授業の概要・目的]田辺元の哲学的思索は、その異様なまでの凝縮度と彼固有の論理への偏愛によって異彩を放っている。田辺は西洋哲学の最前線の動向、諸学問の最新の成果を飽 くことなく摂取し、歴史的現実にもそのつど敏感に反応しつつ、それら全てに自前の思索によって緊密な総合を与えるべく、生涯血の滲むような努力を続けた。 彼の濃密にすぎる文章はそのようにして生み出されたものである。この凝縮体を丁寧に解きほぐし、そこに封じ込められたさまざまな展開可能性を切り出してき て、今日のわれわれがリアルな接触をもちうるような形で語り直すこと、それが本講義の狙いとするところである。田辺哲学の独自な展開は、1930年に西田 幾多郎に対して初めて突きつけた批判(「西田先生の教を仰ぐ」)を起点にするといえるが、今学期は、この西田批判に至るまでの田辺の歩みを辿り直し、さま ざまな観点から考察を加えることによって、田辺哲学がその独自な立場をうち出すまでの過程を明らかにしていきたい。

[授業計画と内容]まず最初に、田辺哲学研究の歴史と現状を紹介し、本講義のアプローチの特色と狙いを説明する。また、今学期に扱うのは1930年までの田辺であるが、この 時期の思索の田辺哲学全体における位置づけを示すために、田辺哲学の通時的展開を概観しておく。その上で、1910年代から渡独(1922-24)までの 時期と、帰国してから1930年までの時期に分けて、それぞれの時期の思索の特徴と哲学的意義を、以下のような様々な切り口から浮き彫りにしていく。
① 同時期の西田からの影響と力点の相違
② 同時代の西洋哲学の最前線との(ヴァーチャルな)対話・争論
③ 同時代の個別諸科学の最新の成果の貪欲な摂取とその哲学的・批判的解釈
④ 20世紀の世界史的文脈における位置づけ

特殊講義 美濃部仁 前期集中 ドイツ観念論と西田・西谷における絶対的なものと相対的なもの [授業の概要・目的]ドイツ観念論は、絶対的なものの探求によって特徴づけられる。本講義の第一の目標は、ドイツ観念論における絶対的なものを明らかにすることである。その 際、とりわけドイツ観念論の哲学者たちが相対的なものをどのように位置づけているかに注目する。絶対的なものの性格は、絶対的なものにおける相対的なもの の位置づけによって最も明らかになると考えられるからである。その上で、西田の哲学に目を転じ、そこにおいて絶対的なものと相対的なものがどのように関係 しているかを取り出し、ドイツ観念論の哲学者たちと西田の間に見出される一致点と相違点を明らかにする。これが本講義の第二の目標である。できればさら に、西田と西谷の間に、絶対的なものと相対的なものの関係について根本的な見解の相違があるかどうかも考えてみたい。
[授業計画と内容]主に以下のようなテーマを取り上げる。(講師の知識が限られているため、ドイツ観念論の考察は、フィヒテを中心とした限定されたものとならざるをえない。あらかじめおゆるしいただきたい。)
1.ドイツ観念論の時代の思想状況
2.フィヒテにおける自我
3.ヤコービのフィヒテ批判
4.シェリングのフィヒテ批判
5.フィヒテとヤコービとシェリングにおける絶対者
6.ヘーゲルにおける絶対者
7.西田における「映す」ということ
8.西田における絶対無の場所
9.西谷における空
演習 安部浩 金3 フッサール『イデーン』第一巻を読む [授業の概要・目的]哲学においては畢竟「汝[自身]の事柄が問題とされている(tua res agitur)」。現象学の鼻祖、E. フッサール(1859-1938)は、「哲学の名の下で自分が本来何を目指さんとしているのか」という問題をめぐって大略このように述べている。己事究明 ―これこそが現象学の出発点である。但しその際、現象学が問題にせんとするのは、あくまでも「世界[/世間]的に(weltlich)存在する者としては 前提され続けることが[…]可能でない」ような「純粋に自己自身において、また自己自身で存在する私」に他ならぬ。だがこうした最早尋常ならぬ有り様にお いてあるところの「私」とは、一体何者であるのか。我々は何故にそのような「私」を問題にすべきであり、そして又如何にしてこれに接近しうるのか。フッ サールが世に残した膨大な著述群の中でも、就中『イデーンⅠ』は、彼の主著と目せらるべき著作である。我々はその主要な箇所を読み進めていくことで、以上 の問の考察に努めることにしよう。そしてそれにより、語学・哲学上の正確な知識、及び論理的思考力に基づく原典の厳密な読解力を各人が涵養すること、そし てこの読解の過程において浮上してくる重要な問題をめぐる参加者全員の討議を通して、各人が自らの思索を深化させていくことが、本演習の目的である。
[授業計画と内容]原則的には毎回、予め指名した二名の方にそれぞれ、報告と演習の記録を担当して頂くことにする。それぞれの回には、次の箇所を読む予定である。以下、内容の梗概に続いて、括弧内に教科書の節番号を示す。
1. ガイダンス
2. 「自然的態度の定立とその遮断・その1」(27-29)
3.「自然的態度の定立とその遮断・その2」(30-32)
4.「意識と自然的現実性・その1」(33-34)
5.「意識と自然的現実性・その2」(35-36)
6.「意識と自然的現実性・その3」(37-38)
7.「意識と自然的現実性・その4」(39-40)
8.「意識と自然的現実性・その5」 (41-42)
9.「意識と自然的現実性・その6」 (43-44)
10.「意識と自然的現実性・その7」 (45-46)
11.「純粋意識の領域・その1」(47-48)
12. 「純粋意識の領域・その2」(49-51)
13. 「純粋意識の領域・その3」 (52)
14. 「純粋意識の領域・その4」(53-55)
15. 総合討論
演習 杉村靖彦 前期水5 レヴィナスの哲学コレージュ講演原稿を読む [授業の概要・目的]現在刊行中のレヴィナス著作集の第2巻 (Oeuvres 2, Parole et Silence et autres conférences inédites au Collège philosophique, Grasset/Imec, 2011) には、ジャン・ヴァール主宰の哲学コレージュでレヴィナスが1947年から1964年までに行った講演原稿の大半が収められている。これらの原稿は、初期 の代表作『実存から実存者へ』(1947) から主著『全体性と無限』(1961)の時期までのレヴィナスの道程を如実に伝える貴重な資料である。
本演習では、前年度に読んだ「諸能力と起源(Pouvoirs et Origine)」(1949)に続いて、「糧(Les Nourritures)」(1950)を取り上げ、公刊著作との内容的な連関をたえず確認しながら精読していく。この新資料の読解を通して、『全体性と 無限』に結実するまでのレヴィナスの思索の紆余曲折を照らし出し、新たな解釈へとつながりうる論点を掘り起こしていきたい。
[授業計画と内容]最初の授業で、哲学コレージュでレヴィナスが行った一連の講演について最小限の予備知識を与えるべく、教師が解説を行う。その後の授業では、訳読および要約の担当者を決め、1回2頁ほどのペースで読み進めていく。
演習 杉村靖彦 後期水5 M.Hénaff, Le prix de la vérité. Le don, l’argent, la philosophie を読む [授業の概要・目的]M・エナフはレヴィ=ストロースに関する研究でよく知られているが、哲学と人類学とを往還しつつ注目すべき仕事を次々と発表してきた人物である。2002 年刊行のこの著作は、モース以来の人類学における贈与論を哲学知の伝達の無償性という主題に接続した上で、無償の贈与交換と貨幣による等価交換の対比とそ の歴史的変遷を人類史的なスケールで描いたもので、大きな反響を呼んだ。そこではまた、供儀の営みや超越者への負債感情といった宗教的事象も贈与論的な視 点から考察し直されており、贈与や交換という問題を宗教哲学的に問い直す上で導きとなる洞察を数多く含んだ書である。昨年度はその序論を精読したが、本年 度は、本書の核心部である第二部「贈与の世界(L’univers du don)」の重要箇所を抜粋しながら、ある程度の速度で読み進めていきたい。
[授業計画と内容]最初の授業で、教師がこの著作の全容と序論で提示された争点を解説する。その後は訳読および要約の担当者を決めて、1回4,5頁程度のペースで読んでいく。分野横断的な著作なので、読む箇所の選択については、出席者の顔ぶれを見て決めることにしたい。
演習Ⅱ 氣多雅子
杉村靖彦
金4・5(隔週) 宗教哲学
基礎演習・卒論演習
[授業の概要・目的]宗教哲学に関わる基本文献を教師とチューター役の大学院生の解説を手がかりに読み進めていくことで、概論と専門研究の橋渡しになるような知識と思考法の獲得を目指す。また、3回生以上の参加者は、卒論執筆に向けた研究発表を行う。
宗教学専修の学部生を主たる対象とするが、哲学と宗教が触れ合う問題領域に関心をもつ2回生、および他専修学生の参加も歓迎する。
[授業計画と内容]宗 教哲学の基本文献と言えるような著作や論文を数点選び、事前に出席者に読んできてもらう。そして、毎回教師とチューター役の大学院生の解説をもとに、質疑 応答と議論を行っていく。また、研究発表の際には、論述の仕方や文献の扱い方なども指導し、論文の書き方を学ぶための機会とする。
演習Ⅱ 氣多雅子
杉村靖彦
金3・4(隔週) 宗教学の諸問題 [授業の概要・目的]演習参加者が、宗教学の諸問題のなかで各人の研究するテーマに即して発表を行い、その内容をめぐって、全員で討論する。研究発表の仕方と討論の態度を訓練するとともに、各人の研究を進展させることが目的である。
[授業計画と内容]最初の授業で、参加者の発表の順番とプロトコールの担当者を決定する。各人の発表は二回にわたって行う。即ち、発表者は1時間以内の発表を行い、続いてそ れについて討論する。発表者はその討論をうけて自分の発表を再考し、次回にその再考の結果を発表して、それについてさらに踏み込んだ討論を行う。したがっ て、1回の授業は前半と後半に分かれ、前半は前回発表者の二回目の発表と討論、後半は新たな発表者の一回目の発表と討論となる。
講読 田鍋良臣 前期木4 Iain D. Thomson, Heidegger, Art, and Postmodernity を読む [授業の概要・目的]この授業ではトムソンの『ハイデッガー、芸術、そしてポストモダニティ』(2011年)を精読する。この著作の眼目は、ハイデッガーの芸術論を近代美学批 判の観点から捉えなおすことで、ポストモダニティの美学・芸術論の可能性を追究することにある。たしかなハイデッガー理解にもとづいてトムソンは、「われ われの時代の体温をはかる」ため、現代芸術を幅広く(シュールレアリズムからロック、アメコミまで)現象学的に考察する。難解なハイデッガー中・後期思想 を平易にして明解な英語で論じた本書の評価は高く、原典読解および哲学研究のスキルを学ぶテクストとしても優れている。近年高まりをみせる英語圏でのハイ デッガー研究の動向を見定めつつ、ハイデッガーとポストモダニズムやポップカルチャー、あるいはニヒリズムといった現代的諸事象との関係性を深く理解する ことがこの授業の目的である。
[授業計画と内容]・訳読と訳読箇所についての議論を中心に進めるが、論点が多岐に渡るため、受講人数や希望によっては訳読担当者以外にも調べもの担当者を決めて報告してもらう。
・議論には積極的に参加してほしい。
・議論の内容に応じて適宜講師から解説を行う。
講義 氣多雅子 前期月5 宗教哲学概説 [授業の概要・目的]宗教哲学がどのように成立し、どのような必然性をもって展開してきたかを明らかにする。それを通じて、宗教とはいかなる事象であるか、現代世界において宗教哲学はいかなる課題を担うか、ということについて理解することが、この授業の目的である。
[授業計画と内容]以下のような課題について授業をする予定である。 1.神話的思惟と哲学的思惟、2.キリスト教と神学、3.近世における宗教的状況の変容:宗教改革、4.近代科学の成立、5.理神論の登場、5.宗教哲学 の成立(1)、6.宗教哲学の成立(2)、7.宗教哲学の展開、 8.宗教批判の進展とニヒリズム、9.否定性をはらんだ宗教哲学、10.日本の宗教哲学