講義題目 2015年度

特殊講義 氣多雅子 後期火4 西田幾多郎・清沢満之・井筒俊彦における哲学と宗教 [授業の概要・目的]西田幾多郎、清沢満之、井筒俊彦の思想において、哲学と宗教の関係がどのように考えられているかを考察する。それによってそれぞれの哲学思想の意義を明らかにしたい。

[授業計画と内容]およそ以下のようなスケジュールで進める予定であるが、研究のなまの成果を伝えることを主眼とするので、スケジュール通りにゆかないこともありうる。
(1)授業のテーマについて
(2)(3)清沢満之の宗教哲学思想について
(4)(5)清沢満之における宗教と哲学
(6)西田幾多郎への清沢満之の影響
(7)西田幾多郎と清沢満之における宗教と哲学
(8)(9)井筒俊彦の東洋哲学について
(10)(11)西田幾多郎と井筒俊彦における宗教と哲学
(12)宗教体験の意味
(13)(14)西田幾多郎の宗教論
(15)まとめ
なお、フィードバックの方法は授業中に説明する。

特殊講義 芦名定道 前期水3 キリスト教思想研究入門A [授業の概要・目的]この特殊講義は、すでに系共通科目「キリスト教学講義」を受講し、キリスト教思想研究に関心のある学部生、あるいはキリスト教研究の基礎の習得をめざす大学院生を対象に行われる。キリスト教思想研究を目指す際に身につけておくべき事柄について、またいかなるテーマをどのように取り上げるのかについて、解説 を行う。[授業計画と内容] 本年度前期のテーマは、「聖書学・聖書の思想」である。初回のオリエンテーションに続いて、次のような項目について、講義が進められる。一回の講義で一つの項目が取り上げられる。

1.オリエンテーション、導入──聖書と聖書学・考古学
2.旧約聖書1──宗教史的背景
3.旧約聖書2──創造
4.旧約聖書3──契約
5.旧約聖書4──王権
6.旧約聖書5──預言
7.旧約聖書6──知恵
8.新約聖書1──新約聖書学
9.新約聖書2──神の国
10.新約聖書3──イエスの譬え
11.新約聖書4──富
12.新約聖書5──国家
13.新約聖書6──グノーシス
14.受講者による研究発表1
15.受講者による研究発表2
16.フィードバック

受講者による研究発表については、授業において打ち合わせを行い、またフィードバックの具体的なやり方についても説明を行う。

特殊講義 芦名定道 後期水3 キリスト教思想研究入門B [授業の概要・目的]この特殊講義は、すでに系共通科目「キリスト教学講義」を受講し、キリスト教思想研究に関心のある学部生、あるいはキリスト教研究の基礎の習得をめざす大 学院生を対象に行われる。キリスト教思想研究を目指す際に身につけておくべき事柄について、またいかなるテーマをどのように取り上げるのかについて、解説 を行う。

[授業計画と内容]本年度後期のテーマは、「近代キリスト教思想」である。初回のオリエンテーションに続いて、次のような項目について、講義が進められる。一回の講義で一つの項目が取り上げられる。

1.オリエンテーション、導入──近代キリスト教の歴史的状況
2.宗教改革の思想的意義
3.プロテスタント正統主義、敬虔主義、啓蒙主義
4.17世紀イギリスの思想状況
5.理神論、千年王国論
6.近代聖書学と歴史的精神
7.ドイツ古典的哲学の宗教論
8.シュライエルマッハー
9.宗教批判の系譜1──フォイエルバッハ
10.リッチュルと自由主義神学
11.宗教批判の系譜2──マルクス
12.キルケゴールと実存主義
13.トレルチと宗教史学派
14.受講者による研究発表1
15.受講者による研究発表2
16.フィードバック

受講者による研究発表については、授業において打ち合わせを行い、またフィードバックの具体的なやり方についても説明を行う。

特殊講義 杉村靖彦 前期水4 悪の問いをめぐる思想史 [授業の概要・目的]悪の問いは、哲学的思索にとっても、宗教的信仰にとっても、御し難い躓きの石であるとともに、かえってそれゆえにこれらを突き動かす源泉となってきた。しかし、この問いのあり方は、それぞれの時代とその歴史的状況によって大きく異なっている。そして、現代のわれわれは、これまで人間が悪に面して作り上げてきたさまざまな処し方を引きつぎつつも、全く新たな状況に置かれてそうした処し方が効力を失い、悪の問い自体の輪郭を十分に眺望できないというもどかしさを抱えている。こうした中で、本講義では、悪の問いへの取り組みの変遷という視点から、古代から現代までの西洋思想史を総覧し、この問いが宗教哲学の試金石ともいうべき切実な思索の場となってきたことを示してみたい。
[授業計画と内容]
1. 悪の問いと宗教哲学:問題の提示と説明【2週】

2.「なぜ悪があるのか」:ギリシャ的伝統とヘブライ的伝統の交差
(ソクラテス、プロティノス、アウグスティヌス)【2週】
3.「形而上的悪」とその失権:神義論的パラダイムとその問い直し
(ライプニッツ、ヴォルテール)【2週】
4.「なぜ私は悪を犯してしまうのか」:根元悪とその思弁的深化
(カント、シェリング)【2週】
5.「なぜ私は悪を被るのか」:世界戦争の世紀と犠牲者の視点
(ナベール、ジャンケレヴィッチ、レヴィナス)【2週】
6.「悪はどこにあるのか」:悪の極大化と不可視化の相即
(アーレント、デリダ、デュピュイ) 【3週】
7. 総括 【1週】
8. フィードバック【1週】

特殊講義 杉村靖彦 後期水4 田辺哲学研究 [授業の概要・目的]田辺元の哲学的思索は、その異様なまでの凝縮度と彼固有の論理への偏愛によって異彩を放っている。田辺は西洋哲学の最前線の動向、諸学問の最新の成果を飽くことなく摂取し、歴史的現実にもそのつど敏感に反応しつつ、それら全てに自前の思索によって緊密な総合を与えるべく、生涯血の滲むような努力を続けた。彼の濃密にすぎる文章はそのようにして生み出されたものである。この凝縮体を丁寧に解きほぐし、そこに封じ込められたさまざまな展開可能性を切り出してきて、今日のわれわれがリアルな接触をもちうるような形で語り直すこと、それが本講義の狙いとするところである。本年度は、1930年に田辺が西田幾多郎に対して初めて突きつけた批判(「西田先生の教を仰ぐ」)の生成過程とその背景を詳細に辿り、そこから産み出された「種の論理」期の思索をさまざまな角度から検討していく。
[授業計画と内容]まず最初に、田辺哲学研究の歴史と現状を紹介し、本講義のアプローチの特色と狙いを説明する。また、今学期に扱うのは主に1930年代の田辺であるが、この時期の思索の田辺哲学全体における位置づけを示すために、田辺哲学の通時的展開を概観しておく(第1回‐第3回)。
その上で、1930年の西田批判から種の論理への助走期(第4回‐第7回)と、1934年以降の種の論理の形成・展開期(第8回‐14回)に分けて、それぞれの時期の思索の特徴と哲学的意義を、以下のような種々の切り口から浮き彫りにしていく。

① 西田哲学との相互批判・相互影響
② 同時代の西洋哲学の最前線との(ヴァーチャルな)対話・争論
③ 同時代の個別諸科学の最新の成果の貪欲な摂取とその哲学的・批判的解釈
④ 20世紀の世界史的文脈における位置づけ

なお、最後の授業(第15回)は、本学期の講義内容全体をめぐる質疑応答と議論の場とし、講義内容の受講者へのフィードバックを図る。

特殊講義 岩田文昭 前期月5 近代日本の宗教と青年:近角常観とその時代 [授業の概要・目的]この講義の目的は、近角常観という一人の宗教者を中心にして、近代日本精神史における宗教と人間との関係を解明することにある。宗教と関わりをもった近代日本の青年たちの思索を究明することを通して、「精神分析学」「文学」「哲学」などの分野と宗教との連関を考察する。

[授業計画と内容]以下の各項目について講述する。各項目には、受講者の理解の程度を確認しながら、【 】で指示した週数を充てる。各項目の講義の順序は固定したものではなく、担当者の講義方針と受講者の背景や理解の状況に応じて、講義担当者が適切に決める。
前期
1.本講義の視座と問題意識【2週】
2.近角常観の活動と近代日本宗教の在り方について【2週】
3.三木清の思想形成と宗教哲学【3週】
4.宮沢賢治の著作と宗教【2週】
5.嘉村礒多の私小説と宗教【1週】
6.精神分析と宗教【3週】
7.まとめと総括【2週】

演習 安部浩 金3 ヨーナス『責任という原理』を読む [授業の概要・目的]現代の環境倫理学の古典であり、著者自らもまた『科学技術倫理学論考』と規定するハンス・ヨーナスの『責任という原理』。しかしながらそれは他方で、「反時代的」や「カント以前」といった譏りをも厭わず、現代における形而上学の再興を果敢に試みた問題の書でもある。それでは「形而上学が倫理学を下支えせねばならない」とヨーナスが語る際、その深意は那辺にあるのか。またこうした存在論的な基礎づけを通してヨーナスが呈示せんとしている責任論の眼目とはいかなるものか。
我々は『責任という原理』の主要な箇所を読み進めていくことで、以上の問の考察に努めることにしよう。そしてそれにより、語学・哲学上の正確な知識、及び論理的思考力に基づく原典の厳密な読解力を各人が涵養すること、そしてこの読解の過程において浮上してくる重要な問題をめぐる参加者全員の討議を通して、各人が自らの思索を深化させていくことが、本演習の目的である。
演習 杉村靖彦 前期水5 Ricoeur, Le mal. Un défi à la philosophie et à la théologie を読む [授業の概要・目的]「悪:哲学と神学への挑戦」と題されたこのテクストは、リクールが1986年にスイスで行った講演であるが、30頁程度の分量で、西洋思想史における古代から現代までの悪の問いの変容を跡づけた、きわめて密度の濃い論考である。この論考を通読しつつ、そこで言及される諸々の悪論を辿っていくことによって、フランス語の哲学論文の読解力を養うとともに、悪の問いをめぐる思想史的、宗教哲学的な知識と理解を育てることが、本演習の目的である。

[授業計画と内容]

第一回 導入
テクストを読み進める上で必要な予備知識の解説を行う。
第二回‐第十四回
「授業の概要と内容」に記した方針に基づいて、リクール「悪:哲学と神学への挑戦」を一回に二頁強の速度で精読していく。訳読の担当者には、訳出と内容理解のための準備に加えて、担当箇所でリクールが言及する哲学・神学の諸概念について下調べをして解説することも課せられる。
第十五回
テクスト全体を振り返り、疑問点等について出席者全員で討議を行う。

演習 杉村靖彦 後期水5 M.Hénaff, Le prix de la vérité. Le don, l’argent, la philosophie を読む  [授業の概要・目的]M・エナフはレヴィ=ストロースに関する研究でよく知られているが、哲学と人類学とを往還しつつ注目すべき仕事を次々と発表してきた人物である。2002年刊行のこの著作は、モース以来の人類学における贈与論を哲学知の伝達の無償性という主題に接続した上で、無償の贈与交換と貨幣による等価交換の対比とその歴史的変遷を人類史的なスケールで描いたもので、大きな反響を呼んだ。そこではまた、供儀の営みや超越者への負債感情といった宗教的事象も贈与論的な視点から考察し直されており、贈与や交換という問題を宗教哲学的に問い直す上で導きとなる洞察を数多く含んだ書である。本書を用いた演習は一昨年度の後期から行ってきたが、本年度は、第二部「贈与の世界」の第五章「供犠(犠牲)の時代」を中心に読み進めていきたい。

[授業計画と内容]

第一回‐第二回
導入。本書全体の構成と昨年度までに読んだ箇所の要約的紹介を行う。
第三回‐第十四回
「授業の概要・目的」で示した方針に基づいて、マルセル・エナフ『真理の対価:贈与、貨幣、哲学』の精密な訳読作業を進め、その内容について教師の解説を踏まえて討議を行う。
第十五回
読み進めたテクストの内容を総括し、重要な問題や疑問点について全員で議論する。

演習Ⅱ 氣多雅子
杉村靖彦
金4・5(隔週) 宗教哲学基礎演習 [授業の概要・目的]宗教哲学に関わる基本文献を教師とチューター役の大学院生の解説を手がかりに読み進めていくことで、概論と専門研究の橋渡しになるような知識と思考法の獲得を目指す。また、3回生以上の参加者は、卒論執筆に向けた研究発表を行う。
宗教学専修の学部生を主たる対象とするが、哲学と宗教が触れ合う問題領域に関心をもつ2回生、および他専修学生の参加も歓迎する。

[授業計画と内容] 宗教哲学の基本文献と言えるような著作や論文を選んで各回の授業に割り振り、事前に出席者に読んできてもらう。そして、毎回教師とチューター役の大学院生の解説をもとに、質疑応答と議論を行っていく。また、研究発表の際には、論述の仕方や文献の扱い方なども指導し、論文の書き方を学ぶための機会とする。
隔週15回の授業計画の目安は以下の通りである。

第1回 オリエンテーション
第2回‐7回 宗教哲学の基本文献の読解・解説・考察
第8回    卒業論文の中間発表
第9回‐14回 宗教哲学の基本文献の読解・解説・考察
第15回    総括

演習Ⅱ 氣多雅子
杉村靖彦
金4・5(隔週) 宗教学の諸問題 [授業の概要・目的]演習参加者が、宗教学の諸問題のなかで各人の研究するテーマに即して発表を行い、その内容をめぐって、全員で討論する。研究発表の仕方と討論の態度を訓練するとともに、各人の研究を進展させることが目的である。

[授業計画と内容]最初の授業で、参加者の発表の順番とプロトコールの担当者を決定する。各人の発表は二回にわたって行う。即ち、発表者は1時間以内の発表を行い、続いてそ れについて討論する。発表者はその討論をうけて自分の発表を再考し、次回にその再考の結果を発表して、それについてさらに踏み込んだ討論を行う。したがっ て、1回の授業は前半と後半に分かれ、前半は前回発表者の二回目の発表と討論、後半は新たな発表者の一回目の発表と討論となる。

講読 田鍋良臣 前期木4 Reinhard May, ”Heidegger’s hidden sources: East Asian influences on his work” を読む [授業の概要・目的]この授業ではReinhard May(transl. by Graham Parkes)の『ハイデッガーの隠された源泉――彼の著作への東アジアの影響』(1996年, ドイツ語初版1989年)を精読する。著者は、様々な資料や証言をもとに、ハイデッガーの思索が東アジア思想からの多大な影響下にあったという驚くべき主張を展開している。老荘思想の受容や禅仏教への関心、そして京都学派との関係性を比較哲学的に分析することで浮かび上がるのは、これまで秘匿されてきたハイデッガー哲学の「文化横断的(transcultural)」な側面である。本書を精読することを通じて、研究文献の基本的な読解力や分析力を身につけるとともに、哲学・思想領域における「異文化対話」について考えていきたい。
講義 氣多雅子 前期月5 宗教哲学概説 [授業の概要・目的]宗教哲学がどのように成立し、どのような必然性をもって展開してきたかを明らかにする。それを通じて、宗教とはいかなる事象であるか、現代世界において宗教哲学はいかなる課題を担うか、ということについて理解することが、この授業の目的である。

[授業計画と内容]以下のような課題について授業をする予定である。 1.神話的思惟と哲学的思惟、2.ユダヤ教とキリスト教、3.キリスト教神学の成立と展開、4.宗教改革、5. 近世における宗教的状況の変容、6.近代科学の成立、7.理神論の登場、8.宗教哲学の成立(1)、9.宗教哲学の成立(2)、10.宗教哲学の展開、 11.宗教批判の進展とニヒリズム、12.否定性をはらんだ宗教哲学、13.日本の宗教哲学(1)、14,日本の宗教哲学(2)、15,現代の宗教哲学の諸問題。
なお、フィードバックの方法は授業中に説明する。