21世紀COEプログラム

多元的世界における寛容性についての研究

京都大学大学院文学研究科
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■第20回研究会レジュメ

《報告4》

 2006年9月9日(土)
於:京都大学文学部新館

中国におけるキリスト教本色化運動

――中国キリスト教史からの考察――
徐 亦猛

【要旨】

 中国近代以来、プロテスタントは帝国主義の武器と共に中国に入り、色々な不平等条約によって中国で合法の地位を得たのである。そのことが原因で、中国人は初めからキリスト教に対して反感を持ち、中国民衆の間でキリスト教は「洋教」と呼ばれていた。色々な面において民衆の抵抗があったので、宣教は非常に厳しいものであった。このような状況の下で、近代の中国教会の本色化運動を中国キリスト教史において大きな問題として取り上げたのである。本色化(indigenization)は、その地で生まれその地で成長するという意味である。外来の宗教、文化が、その発祥地を離れ、言語、文字、文化が異なる別の地域において現地の宗教、文化と接触するとき、外来の宗教、文化は必ずその地で現地の宗教、文化の中に根を下し、開花し実を結ぶ。そして外来の宗教、文化は新しい環境において発展するゆえに、現地の新しい文化となる。外来の宗教が現地の文化と融合する過程および遭遇した問題は、本色化の過程と呼ぶ。中国におけるキリスト教本色化の意義とは、キリスト教思想を中国文化社会系統の中に根を下す、開花し、実を結ぶという過程である。西洋文化の色彩の濃いキリスト教思想は、順調に中国文化社会系統の中に広めるならば、必ず中国文化に入って、中国文化と結合し、融合する。或いは中国文化の中に相関の文脈を見つけて、根を下ろし発展する。言い換えれば、キリスト教は必ず中国人がよく理解できる内容で中国文化の中で広がる。そうしないと、中国人がキリスト教の神髄を理解することが不可能になる。しかし、西洋から伝来したのはキリスト教信仰かそれとも西洋文化か。中国人はキリスト教の信仰だけを受けるかそれとも西洋文化も一緒に受けるか。中国人は西洋化したキリスト教を受ける必要があるのか。これは中国人がキリスト教を「洋教」と呼び、拒絶する原因である。今日に至るまで、多くの人たちはキリスト教が外来の宗教であり、中国の固有のものではないと認識した。考えもしないで、すぐ西洋化したキリスト教を排斥するゆえ、西洋文化の根源であるキリスト教は順調に中国に発展できなかったし、根を下すこともできなかった。キリスト教が中国において根を下ろし、発展し、真の中国のキリスト教になるために、本色化しなければならないと考えた。本論文は、「本色化」の観点から、キリスト教の中国における発展の状況を解明すると同時に、これから中国にとって「洋教」と呼ばれる外来の宗教キリスト教は、どのようにして中国人自身の宗教として展開し、そして全く異質の宗教・哲学・思想を背景とする中国の文化・社会の中に受容され、異質の文化と結合し、融和していくのか。中国におけるキリスト教史を通して、キリスト教の本色化の必要性と可能性を明らかにする。キリスト教の基本理論、真理及び原則は永遠に変わらないが、異文化社会の中に入り込むと、その文化と融合し、根を下ろし、豊かな実を結ぶことができる。私たちはこれからも本色化の観点から出発して、キリスト教文化と中国文化の間に存在する争点や疑問を解消し、人類文化に多大影響を与えた二つの文化が対話し、融合することができるよう努力しなければならない。
(XU Yi Meng・関西学院大学大学院神学研究科博士課程)

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